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<解説>平和安全法制と憲法の関係について

憲法上「武力の行使」が許容されるのは、

  • 我が国に対する武力攻撃が発生したこと、または我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険があること
  • これを排除し、我が国の存立を全うし、国民を守るために他に適当な手段がないこと
  • 必要最小限度の実力行使にとどまるべきこと

との新三要件が満たされる場合に限られます。この新三要件の下で認められる「武力の行使」においても、

  • 憲法第9条はその文言からすると、国際関係における「武力の行使」を一切禁じているように見えるが、憲法前文で確認している「国民の平和的生存権」や憲法第13条が「生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利」は国政の上で最大の尊重を必要とする旨定めている趣旨を踏まえて考えると、憲法第9条が、我が国が自国の平和と安全を維持し、その存立を全うするために必要な自衛の措置を採ることを禁じているとは到底解されない。
  • 一方、この自衛の措置は、あくまで外国の武力攻撃によって国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆されるという急迫、不正の事態に対処し、国民のこれらの権利を守るためのやむを得ない措置として初めて容認されるものであり、そのための必要最小限度の「武力の行使」は許容される。

との昭和47年の政府見解で示した憲法解釈の基本的論理は全く変わっていません。

また、新三要件の下で認められる「武力の行使」は、砂川事件に関する最高裁判決の範囲内です。同判決は、

  • 「我が国が、自国の平和と安全を維持し、その存立を全うするために必要な自衛の措置をとりうることは、国家固有の機能の行使として、当然のことと言わなければならない」

と述べています。つまり、個別的自衛権、集団的自衛権の区別をつけずに、我が国が、自衛権を有することに言及した上で、自国の平和と安全を維持し、その存立を全うするために必要な「自衛の措置」を取り得ることを認めたものであると考えられます。

この新三要件が過不足なく反映されている平和安全法制は、従来から政府が示してきた憲法解釈の基本的論理を維持したものであるとともに、憲法の解釈を最終的に確定する機能を有する唯一の機関である最高裁判所の出した砂川判決の範囲内であり、憲法に合致したものです。