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<解説>最先端技術と中国の軍事

中国においては、都市部の顔認識改札や無人店舗など、社会のいわゆる「スマート化」が進展していますが、中国軍もその例外ではありません。17(平成29)年10月に行われた中国共産党大会において、習近平総書記は、「新型の作戦力・保障力を発展させ(中略)、軍事の知能化の発展を加速させ、ネットワーク情報システムに基づく統合作戦能力、全域作戦能力を向上させ(中略)、戦争を抑止し、戦争に勝利する」と述べました。この発言にみられるように、中国は「情報化建設」や「軍事の知能化」などを旗印に、軍事面への最先端技術の導入を進めているとみられます。

中国国内で開発が進められており、軍事転用の可能性がある最先端技術の一例として、無人機の「スワーム(群れ)」技術があります。17(平成29)年6月に中国電子科技集団公司は119機からなるスワーム技術を披露し、米国の記録を破りましたが、このスワーム技術と人工知能が結びついた場合、人工知能が敵の行動や戦場環境の変化を認知した上で、無人機が柔軟に各種作戦を行う可能性があることなどから、軍事面でのインパクトの大きさは各所で指摘されています。また、中国は半導体産業の育成などを通じて製造業の強化を目指しており、大規模な資金投入などを行っていますが一方で、半導体は軍事技術の性能向上に貢献するものであり、米国は17(平成29)年9月、軍事・安全保障上の技術流出につながる懸念があるとして、中国系投資メーカーによる米半導体メーカーの買収阻止を決定しました。

中国は、科学技術分野での軍民融合を国家戦略として推進しており、非軍事分野での技術開発であっても、軍事分野に活用されることは当然考えられます。

技術の進展が戦争の性質を変化させ、各国が先端技術開発・応用に注力している中、特に米国と中国が、人工知能を始めとする新たな分野で激しい競争を繰り広げているとみられます。中国における技術開発については、その軍事利用の可能性も念頭に置きつつ注目する必要があります。