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第III部 国民の生命・財産と領土・領海・領空を守り抜くための取組

4 民生技術の積極的な活用

先進的な民生技術を取り込み、効率的な研究開発を行うため、防衛装備庁と大学や独立行政法人などの研究機関との間で、研究協力や技術情報の交換などを積極的に実施している。また、平成27(2015)年度から、防衛分野での将来における研究開発に資することを期待し、先進的な民生技術についての基礎研究を公募・委託する「安全保障技術研究推進制度」(競争的資金制度)を開始している。

平成29(2017)年度までに33件の研究課題を採択したところであるが、同年度に、大規模かつ長期間にわたる研究課題についても採択し得るよう、本制度を拡充(総額:約110億円)しており、平成30(2018)年度も引き続き同様の規模で推進する。

本制度が対象とする基礎研究においては、研究者の自由な発想こそが革新的、独創的な知見を獲得する上で重要である。このため、研究の実施に当たっては、学会などでの幅広い議論に資するよう研究成果を全て公開できるなど、研究の自由を最大限尊重することが必要である。よって、本制度では、研究成果の公表を制限することはなく、防衛省が研究成果を秘密に指定することや研究者に秘密を提供することもない。研究成果については、既に学会発表や学術雑誌への掲載などを通じて公表されている。なお、研究の円滑な実施の観点から、本制度は他省庁の競争的資金制度と同様に、採択された研究計画に基づいて研究の進捗管理を行う職員(プログラムオフィサー)を設置し、研究の進捗状況の確認や予算執行に係る手続などのサポートを行っている。

本制度などを通じて、先進的な民生技術を積極的に活用することは、将来にわたって国民の命と平和な暮らしを守るために不可欠であるのみならず、米国防省高等研究計画局(DARPA)による革新的な技術への投資が、インターネットやGPSの誕生など民生技術を含む科学技術全体の進展に寄与してきたように、防衛分野以外でもわが国の科学技術イノベーションに寄与するものである。防衛省としては、引き続き、こうした観点から関連する施策を推進していくとともに、本制度が学問の自由と学術の健全な発展を確保していることの周知に努めてゆく。

また、総合科学技術・イノベーション会議(CSTI)の下、統合的な戦略の策定に関する調整を行うため、内閣官房長官を議長とする「イノベーション戦略調整会議」が発足し、産学官連携を一層強化するなど、国民の安全・安心の確保に直結する科学技術政策の推進に向けて、防衛大臣が構成員として参画している。

参照図表III-4-1-1(安全保障技術研究推進制度の平成29年度採択研究課題)

図表III-4-1-1 安全保障技術研究推進制度の平成29年度採択研究課題