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第III部 国民の生命・財産と領土・領海・領空を守り抜くための取組

4 厳正な服務規律の保持のための取組など

1 厳正な服務規律の保持のための取組

近年、防衛省・自衛隊に対して国民から多くの期待が寄せられており、自衛隊がその実力を最大限に発揮して任務を遂行するためには、国民の支持と信頼を勝ち得ることが必要不可欠であり、そのためには常に規律正しい存在であることが何より求められている。

防衛省・自衛隊では、高い規律を保持した隊員を育成するため、従来から「防衛省薬物乱用防止月間」、「自衛隊員等倫理週間」、「防衛省職員セクシュアル・ハラスメント防止週間」、「防衛省職員パワー・ハラスメント防止週間」の期間を設けて、遵法意識の啓発に努めるとともに、服務指導の徹底などの諸施策を実施している。

しかしながら、隊員の懲戒処分者数は、依然として高い水準で推移しており、国民の支持と信頼を勝ち得るためにも規律違反の根絶に向けた対策を採ることが喫緊の課題となっている。こうした現状を踏まえ、防衛省においては、小野寺防衛大臣が17(平成29)年10月に懲戒処分の厳罰化や懲戒処分の業務処理の迅速化などを柱とする「規律違反の根絶に向けた防衛大臣指示」を発出するなど、規律違反の根絶に向けた対策を進めている。

これまでの間、防衛省・自衛隊においては、南スーダンPKOの日報問題11やイラク日報問題12などに加え、国会議員に対する自衛官による不適切発言事案13が発生した。わが国を取り巻く安全保障環境が大変厳しい状況にある中、国の平和と安全を保つためには、国民の理解と信頼を受け、任務を全うし、国民からの強い期待に応える必要がある。防衛省・自衛隊としては、国民の信頼を回復すべく、再発防止に全力で取り組んでいく考えである。

2 自衛隊員の自殺防止への取組

自衛隊員の自殺者は平成17(2005)年度に101人と過去最多となり、その後増減しつつ、平成29(2017)年度は90人となっている。自衛隊員の自殺は、隊員本人や残された御家族にとって極めて不幸なことである。防衛省・自衛隊としても有為な隊員を失うことは極めて残念なことであり、自殺防止のため、①カウンセリング態勢の拡充(部内外カウンセラー、24時間電話相談窓口、駐屯地・基地などへの臨床心理士の配置など)、②指揮官や一般隊員へのメンタルヘルスに関する教育などの啓発教育の強化、③メンタルヘルス強化期間の設定、異動など環境の変化を伴う部下隊員に対する心情把握の徹底、各種参考資料の配布などの施策も継続して行っている。

3 殉職隊員への追悼など

1950(昭和25)年に警察予備隊が創設され、保安隊・警備隊を経て今日の自衛隊に至るまで、自衛隊員は、国民の期待と信頼に応えるべく日夜精励し、旺盛な責任感をもって、危険を顧みず、わが国の平和と独立を守る崇高な任務の完遂に努めてきた。その中で、任務の遂行中に、不幸にしてその職に殉じた隊員は1,900人を超えている。

防衛省・自衛隊では、殉職隊員が所属した各部隊において、殉職隊員への哀悼の意を表するため、葬送式を行うとともに、殉職隊員の功績を永久に顕彰し、深甚(しんじん)なる敬意と哀悼の意を捧げるため、内閣総理大臣参加のもと行われる自衛隊殉職隊員追悼式など様々な形で追悼を行っている14

11 特別防衛監察の結果や再発防止策については、III部5章2節2項2参照

12 事案の概要や再発防止策については、III部5章2節2項4参照

13 本事案の最終報告はhttps://www.mod.go.jp/j/press/news/2018/05/08b.html(別ウィンドウ)参照

14 自衛隊殉職者慰霊碑は、1962(昭和37)年に市ヶ谷に建てられ、1998(平成10)年、同地区に点在していた記念碑などを移設し、「メモリアルゾーン」として整理された。防衛省では毎年、殉職隊員の御遺族をはじめ、内閣総理大臣と防衛大臣以下の防衛省・自衛隊高級幹部のほか、歴代の防衛大臣などの参列のもと、自衛隊殉職隊員追悼式を行っている。また、メモリアルゾーンにある自衛隊殉職者慰霊碑には、殉職した隊員の氏名などを記した銘版が納められており、国防大臣などの外国要人が防衛省を訪問した際、献花が行われ、殉職隊員に対して敬意と哀悼の意が表されている。このほか、自衛隊の各駐屯地及び基地において、それぞれ追悼式などを行っている。