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第III部 国民の生命・財産と領土・領海・領空を守り抜くための取組

3 人的資源の効果的な活用に向けた施策など

1 人事制度改革及び隊員の処遇の充実に関する施策

自衛隊の人的構成は、これまで全体の定数が削減されてきた一方、装備品の高度化、任務の多様化・国際化などへの対応のため、より一層熟練した者、専門性を有する者が必要となっている。

このような状況を踏まえ、防衛大綱などでは、自衛隊の精強性を確保し、厳しい財政事情のもとで人材を有効に活用する観点から、人事制度改革に関する施策を行うこととしている。

また、自衛官は厳しい環境下での職務遂行となるため、隊員が誇りを持ち安心して職務に専念できるよう、職務の特殊性を考慮した俸給と諸手当の支給、福利厚生などの充実を図り、防衛功労章の拡充をはじめ、栄典・礼遇に関する施策を推進している。

2 家族支援への取組

平素からの取組として、部隊と隊員家族の交流や隊員家族同士の交流などのほか、大規模災害など発生時の取組として、隊員家族の安否確認について協力を受けるなど、関係部外団体などと連携した家族支援態勢の整備についても推進している。また、海外に派遣される隊員に対しては、メールやテレビ電話など家族が直接連絡できる手段の確保や、家族からの慰問品の追送支援などを行っている。さらに、家族説明会を開催して様々な情報を提供するとともに、留守家族専用の相談窓口(家族支援センター)や隊員家族向けホームページなどを設置して各種相談に応じる態勢をとっている。

アデン湾に派遣された隊員家族への家族説明会

アデン湾に派遣された隊員家族への家族説明会

慰問品を受け取る派遣海賊対処行動支援隊(陸自)要員

慰問品を受け取る派遣海賊対処行動支援隊(陸自)要員

3 隊員の退職と再就職のための取組

自衛隊の精強性を保つため、多くの自衛官は、50代半ば(若年定年制自衛官)又は20代(大半の任期制自衛官)で退職することから、その多くは、退職後の生活基盤の確保のために再就職が必要である。

再就職の支援は、雇用主たる国(防衛省)の責務であり、自衛官の将来への不安の解消や優秀な人材確保のためにも極めて重要であることから、再就職に有効な職業訓練などの援護施策を行っている。また、再就職のための取組は、社会に退職自衛官が持つ様々な技能を還元し、人的インフラを強化する観点からも重要である。

防衛省は自ら職業紹介を行う権限を有していないため、一般財団法人自衛隊援護協会が、厚生労働大臣と国土交通大臣の許可を得て、無料職業紹介事業を行っている。

退職自衛官は、職務遂行と教育訓練によって培われた、優れた企画力・指導力・実行力・協調性・責任感などのほか、職務や職業訓練などにより取得した各種の資格・免許も保有している。このため、地方公共団体の防災や危機管理の分野をはじめ、金融・保険・不動産業や建設業のほか、製造業、サービス業など幅広い分野で活躍している。防衛大綱を踏まえ、これまで地方公共団体の防災や危機管理の分野における退職自衛官のさらなる活用の推進のほか、関係省庁と連携して人材が不足している分野への退職自衛官の再就職の支援に取り組んできたところであり、引き続き、再就職環境の改善を図っていく。

参照資料64(再就職援護のための主な施策)
資料65(退職自衛官の地方公共団体防災関係部局における在職状況)

また、自衛官が安心して職務に専念できる環境を確保するため、定年退職に伴う自衛官の再任用では、60歳前においては3年以内の任期(事務官などは1年以内)を可能としている。なお、中期防では、高度な知識・技能・経験を有する隊員について、精強性の向上に資すると認められる場合には、積極的に再任用を行うこととしている。

一方、自衛隊員の再就職については、従来の事前承認制に替わって、15(平成27)年10月から新たな再就職等規制が導入され、一般職の国家公務員と同様に、公務の公正性に対する国民からの信頼を確保するため、3つの規制(①他の隊員・OBの再就職依頼・情報提供等の規制、②在職中の利害関係企業等への求職の規制、③再就職者による依頼等(働きかけ)の規制)10が設けられた。これらの規制の遵守状況については、隊員としての前歴を有しない学識経験者から構成される監視機関(防衛人事審議会再就職等監視分科会、内閣府再就職等監視委員会)において監視するとともに、不正な行為には罰則を科すことで厳格に対応することとしている。併せて、内閣による再就職情報の届出・公表について制度化し、再就職情報の一元管理・情報公開を的確に実施するため、自衛隊員のうち管理職隊員(本省企画官相当職以上)であった者の再就職状況について毎年度内閣が公表することとしている。本制度が平成27(2015)年度に導入されたことを受け、17(平成29)年9月、平成28(2016)年度に提出された再就職情報の届出のうち管理職隊員であった者の届出を取りまとめ、計203件を公表した。

10 自衛隊法第65条の2、第65条の3及び第65条の4に規定