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第III部 国民の生命・財産と領土・領海・領空を守り抜くための取組

2 日々の教育訓練

1 自衛官の教育

部隊を構成する自衛官個々の能力を高めることは、部隊の任務遂行に不可欠である。このため、各自衛隊の教育部隊や学校などで、階級や職務に応じて段階的かつ体系的な教育を行い、必要な資質を養うと同時に、知識・技能を修得させている。

教育には、特殊な技能を持つ教官の確保、装備品や教育施設の整備など、非常に大きな人的・時間的・経済的努力が必要である。また、専門の知識・技能をさらに高める必要がある場合や、自衛隊内で修得することが困難な場合などには、海外を含む部外教育機関、国内企業、研究所などに教育を委託している。

2 自衛隊の訓練
(1)各自衛隊の訓練

各自衛隊の部隊などで行う訓練は、隊員それぞれの職務に必要な技量の向上を目的とした隊員個々の訓練と、部隊の組織的な能力の練成を目的とした部隊の訓練とに大別される。隊員個々の訓練は、職種などの専門性や隊員の能力に応じて個別的、段階的に行われる。部隊の訓練は、小部隊から大部隊へと訓練を積み重ねながら、部隊間での連携などの大規模な総合訓練も行っている。

また、わが国の防衛のための訓練に加え、国際平和協力活動や大規模災害への対応など、近年の自衛隊の任務の多様化に対応した訓練の充実にも努めている。さらに、統合運用及び各種事態への対応の強化を図るため、統合訓練や各自衛隊による二国間、多国間の共同訓練の拡大も図っている8

参照資料62(主要演習実績(平成29年度))

基本的な訓練に臨む陸・海・空自の新入隊員

基本的な訓練に臨む陸・海・空自の新入隊員

(2)訓練環境

自衛隊の訓練は、可能な限り実戦に近い環境で行うよう努めているが、制約も多い。このため、防衛大綱などで示された北海道の訓練環境の一層の活用を含め、限られた国内演習場などを最大限に活用している。また、国内では得られない訓練環境を確保できる米国やその周辺海空域で共同訓練などを行い、実戦的な訓練を行うよう努めている。

参照資料63(各自衛隊の米国派遣による射撃訓練などの実績(平成29年度))

「平成30年第1空挺団降下はじめ」で空挺隊員を激励する小野寺防衛大臣(18(平成30)年1月)

「平成30年第1空挺団降下はじめ」で空挺隊員を激励する小野寺防衛大臣
(18(平成30)年1月)

3 事故防止への取組など

国民の生命や財産に被害を与え、また、隊員の生命を失うことなどにつながる各種の事故は、絶対に避けなければならない。このため、防衛省・自衛隊は、日頃の訓練にあたって安全確保に最大限留意するなど、平素から安全管理に一丸となって取り組んでいる。

こうした中、17(平成29)年8月には海自護衛艦「せとぎり」搭載ヘリコプターSH-60Jが訓練飛行中、青森県竜飛崎西方海上に墜落し、隊員3名が殉職した。さらに、同年10月には空自浜松基地(静岡県)所属のヘリコプターUH-60Jが訓練飛行中、静岡県浜松市南方の太平洋上に墜落し、隊員4名が殉職した。

18(平成30)年2月には、陸自目達原駐屯地(佐賀県)所属のヘリコプターAH-64Dが、佐賀県神埼市の民家に墜落し、住民の方1名が負傷され、建物3棟の火災及び墜落地点近隣の建物の損傷など、民間の方々に多大な被害を生じさせたことに加え、隊員2名が殉職する事故が発生した。防衛省・自衛隊としては、被害に遭われた方々に対し、一日でも早く日常の生活に戻っていただけるよう、事故後から、心のケア及び損害賠償について、誠心誠意対応しているところである。また、事故の原因については、陸自に設置されている航空事故調査委員会において、特別に民間の航空工学などの有識者も参加する形で調査が進められており、同年5月に中間報告9が公表された。

このような事故は、地元住民の方々の安全を脅かし、自衛隊の運用や訓練などに関して広く国民に不安を与えるものであり、また、隊員の生命に関わる事柄でもあり、極めて遺憾である。防衛省・自衛隊としては、これらの事故について徹底的な原因究明を行った上で、今一度、隊員一人一人が安全管理に係る認識を新たにし、防衛省・自衛隊全体として再発防止に全力で取り組んでいくこととしている。

8 わが国への直接の脅威を防止・排除するための演習である自衛隊統合演習、日米共同統合演習、弾道ミサイル対処訓練などのほか、国際平和協力活動などを想定した国際平和協力演習、捕虜などの取扱いについて演練する統合国際人道業務訓練などがある。

9 AH-64D航空事故の調査状況について:https://www.mod.go.jp/gsdf/news/press/2018/pdf/20180528.pdf(別ウィンドウ)