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第II部 わが国の安全保障・防衛政策と日米同盟

5 沖縄を除く地域における在日米軍の駐留

防衛省は、沖縄を除く地域においても、在日米軍の抑止力を維持しつつ地元負担の軽減を図り、在日米軍の安定的な駐留を確保する施策を行っている。

1 神奈川県における在日米軍施設・区域の整理など

地方公共団体などからの強い返還要望を踏まえ、日米間で協議した結果、横浜市内の6施設・区域の返還と「池子住宅地区及び海軍補助施設」(横浜市域)における米軍家族住宅などの建設を行うこととされた。これまでに、返還予定面積約419haのうち、上瀬谷通信施設など4施設・区域、約375haが返還されたところである。

参照図表II-4-3-10(神奈川県における在日米軍施設・区域の整理など)

図表II-4-3-10 神奈川県における在日米軍施設・区域の整理など

2 ロードマップに示された米軍再編の現状など
(1)在日米陸軍司令部能力の改善

キャンプ座間(神奈川県相模原市、座間市)に所在する在日米陸軍司令部は、高い機動性と即応性を有し、かつ、統合任務が可能な司令部となるよう、07(平成19)年12月に在日米陸軍司令部・第1軍団(前方)として発足し、08(平成20)年9月末に改編された。

また、各種事態への迅速な対応のため在日米陸軍司令部との連携強化を図るため、平成24(2012)年度末に、陸自中央即応集団司令部(当時)を朝霞駐屯地(埼玉県朝霞市、和光市、新座市、東京都練馬区)から在日米陸軍司令部が所在するキャンプ座間へ移転した。なお、平成29(2017)年度末の陸上総隊の新編に伴い、陸自中央即応集団司令部を廃止するとともに、陸上総隊司令部に日米調整の役割を担う日米共同部を新たに設置した。

さらに、キャンプ座間及び相模総合補給廠(神奈川県相模原市)の、より効果的かつ効率的な使用のため、それぞれ一部返還などの措置が講じられ、16(平成28)年2月にはキャンプ座間の一部土地(約5.4ha)の返還が実現し、同年4月、返還跡地に、座間市が誘致した「座間総合病院」が開設された。また、相模総合補給廠の一部土地(約35ha)については、15(平成27)年12月に相模原市との共同使用が実現した。その他、在日米陸軍司令部能力の改善に伴う再編事業は、図表II-4-3-11のとおり進められてきた。

参照図表II-4-3-11(在日米陸軍司令部能力の改善及び負担軽減の取組)

図表II-4-3-11 在日米陸軍司令部能力の改善及び負担軽減の取組

(2)横田飛行場及び空域

ア 共同統合運用調整所の運用開始及び空自航空総隊司令部の移転

日米の司令部間の連携向上は、統合運用体制への移行とあいまって、日米両部隊間の柔軟かつ即応性のある対応の観点から極めて重要である。そのため、平成23(2011)年度末に、横田飛行場において共同統合運用調整所11の運用を開始するとともに、空自航空総隊司令部及び関連部隊を横田飛行場へ移転した。これらにより、防空やBMDにおける情報共有をはじめとする司令部組織間の連携強化が図られた。

イ 横田空域

米軍が進入管制を行っている横田空域における民間航空機の運航を円滑化するため、06(平成18)年以降、空域の一部について管制業務の責任を一時的に日本側に移管する措置、横田ラプコン(RAPCON:Radar Approach Control)施設への空自管制官の併置、空域の約40%の削減(米軍の管制業務の返還)が行われている。

ウ 横田飛行場の軍民共用化

横田飛行場の軍民共用化については、03(平成15)年5月の日米首脳会談において検討していくこととされた。これを受け、政府関係省庁と東京都との実務的な協議の場として「連絡会」を設置したほか、日米両国政府は、横田飛行場の軍事上の運用や安全などを損なわないとの認識のもと、具体的な条件や態様に関する検討を行っている。

(3)横須賀海軍施設への米空母の展開

米太平洋艦隊のプレゼンスは、アジア太平洋地域における海洋の安全や地域の平和と安定に重要な役割を果たしており、米空母はその能力の中核となるものである。

米海軍は、横須賀海軍施設(神奈川県横須賀市)に前方展開している原子力空母12「ロナルド・レーガン」をはじめ、わが国の港に停泊中のすべての原子力艦について、通常、原子炉を停止させることや、わが国において原子炉の修理や燃料交換を行わないことなど、安全面での方針を守り続けることを確約しており、政府としても、引き続きその安全性確保のため、万全を期する考えである。

(4)厚木飛行場及び岩国飛行場に関する施策

ア 空母艦載機の移駐

空母艦載機の拠点として、厚木飛行場(神奈川県綾瀬市、大和市)が使用されていた。厚木飛行場は市街地の中心に位置し、特に空母艦載ジェット機の離発着にともなう騒音が、長年にわたり問題となっており、空母の運用を安定的に維持していくためには、こうした問題を早期に解決することが必要であった。

そのため、滑走路移設事業13により、周辺地域への影響がより少ない形で運用することが可能となる岩国飛行場(山口県岩国市)へ、厚木飛行場の第5空母航空団を移駐することとし、17(平成29)年8月から移駐を開始し、18(平成30)年3月移駐が完了した。本移駐の実現により、アジア太平洋地域における安全保障環境が一層厳しさを増す中、抑止力を維持するため、米空母や艦載機の長期にわたる前方展開能力が確保されるとともに、厚木飛行場周辺の騒音状況は、相当程度軽減される。このことは、山口県や岩国市などの皆様がこの移駐を受け入れていただいたことによるものである。

また、移駐に伴って運用が増大する岩国飛行場への影響を緩和するなどのため、図表II-4-3-12の各種施策が実施されることとなっており、その結果、岩国飛行場周辺の騒音は、住宅防音の対象となる第一種区域の面積が約1,600haから約650haに減少するなど、現状より軽減されると予測されている。

参照図表II-4-3-12(厚木飛行場及び岩国飛行場に関する施策と進捗状況など)

図表II-4-3-12 厚木飛行場及び岩国飛行場に関する施策と進捗状況など

イ 空母艦載機着陸訓練

ロードマップにおいては恒常的な空母艦載機着陸訓練施設について検討を行うための二国間の枠組みを設け、恒常的な施設をできるだけ早い時期に選定することが目標とされた。11(平成23)年6月の「2+2」では、新たな自衛隊施設のため、馬毛島(まげしま)が検討対象となる旨地元に説明することとされた。同施設は、大規模災害を含む各種事態に対処する際の活動を支援するとともに、通常の訓練などのために使用され、併せて米軍の空母艦載機離発着訓練の恒久的な施設として使用されることになるとされている。なお、05(平成17)年の「共同文書」においては、空母艦載機着陸訓練のための恒常的な訓練施設が特定されるまでの間、現在の暫定的な措置に従い、米国は引き続き硫黄島で空母艦載機着陸訓練を行う旨確認されている。

ウ 岩国飛行場における民間航空機の運航再開

山口県や岩国市といった地元地方公共団体などが一体となって民間航空機の運航再開を要望していたことを踏まえ、ロードマップにおいて「将来の民間航空施設の一部が岩国飛行場に設けられる」とされた。これに基づき、12(平成24)年12月に岩国飛行場に岩国錦帯橋(きんたいきょう)空港が開港し、民間機による定期便が48年ぶりに再開された。

(5)弾道ミサイル防衛(BMD)

BMDについては、日米双方がそれぞれのBMD能力の向上に応じ、緊密な連携を継続することとされている。06(平成18)年6月には米軍のTPY-2レーダー(いわゆる「Xバンド・レーダー」)が米軍車力(しゃりき)通信所(青森県つがる市)14に、同年10月には米軍のペトリオットPAC-3が嘉手納飛行場(沖縄県嘉手納町、沖縄市、北谷町)と嘉手納弾薬庫地区(沖縄県読谷(よみたん)村、沖縄市、嘉手納町、恩納村、うるま市)に、また、14(平成26)年12月には、日本国内で2基目のTPY-2レーダーが米軍経ヶ岬通信所(京都府京丹後市)に配備された。

これに加えて、15(平成27)年10月及び16(平成28)年3月に米軍BMD能力搭載イージス艦が横須賀海軍施設(神奈川県横須賀市)に配備された。また、18(平成30)年5月にもBMD能力搭載イージス艦「ミリウス」が追加配備された。

参照III部1章2節3項(弾道ミサイル攻撃などへの対応)

(6)訓練移転

ア 航空機訓練移転(ATR:the Aviation Training Relocation)

当分の間、嘉手納、三沢(青森県三沢市、東北町)及び岩国の3つの在日米軍施設・区域の航空機が、自衛隊施設における共同訓練に参加することとされたことに基づき、07(平成19)年以降、訓練移転15を行っており、防衛省は、必要に応じ訓練移転のためのインフラの改善を行っている。

訓練移転として、国内における米海兵隊との実動訓練(フォレストライト02)の際、演習場(宮城県)に着陸する米海兵隊オスプレイ(18(平成30)年2月)【米国防省提供】

訓練移転として、国内における米海兵隊との実動訓練(フォレストライト02)の際、演習場(宮城県)に着陸する米海兵隊オスプレイ
(18(平成30)年2月)【米国防省提供】

10(平成22)年の「2+2」の成果に基づき、11(平成23)年1月、日米合同委員会において、移転先として新たにグアムなどを追加するとともに、訓練規模の拡大が合意された。同年10月、日米合同委員会において、訓練実施場所などの詳細について合意された後、初めてグアムなどへの訓練移転が行われ、その後も実績を重ねている。

また、14(平成26)年3月、三沢対地射爆撃場(青森県三沢市、六ヶ所村)を使用した空対地射爆撃訓練を追加することについて日米合同委員会で合意し、この合意に基づき、同年6月、三沢対地射爆撃場を使用した空対地射爆撃訓練を実施した。

これらの訓練移転は、日米間の相互運用性の向上に資するとともに、これまで嘉手納飛行場を利用して実施されていた空対地射爆撃訓練の一部を移転するものであり、嘉手納飛行場周辺における騒音軽減にもつながることから、沖縄の負担軽減に資するものである。

防衛省・自衛隊は、米軍の支援に加え、周辺住民の安心、安全を図るため、現地連絡本部の設置、関係行政機関との連絡や周辺住民への対応など、訓練移転の円滑な実施に努めている。

イ MV-22などの訓練移転

日米両政府は、13(平成25)年10月3日の「2+2」共同発表において、同盟の抑止力を維持しつつ、わが国本土を含め沖縄県外における訓練を増加させるため、MV-22の沖縄における駐留及び訓練の時間を削減する、わが国本土及び地域における様々な運用への参加の機会を活用すると決定したことなどを踏まえ、普天間飛行場のMV-22の沖縄県外での訓練などの実施を進めてきた。

16(平成28)年9月1日、日米合同委員会において、沖縄県外での訓練の一層の推進を図り、訓練活動に伴う沖縄の負担を軽減するため、現在普天間飛行場に所在するAH-1やCH-53といった回転翼機やMV-22などの訓練活動を日本側の経費負担により沖縄県外に移転することについて合意した。

平成29(2017)年度は3回の訓練移転を計画し、17(平成29)年8月には北海道、同年12月には熊本県、そして18(平成30)年2月から3月には宮城県において、日米共同訓練(陸自及び米海兵隊による実動訓練)としてそれぞれ実施した。

引き続き、MV-22の参加を伴う訓練を、沖縄からわが国本土やグアムなどに移転していくことにより、MV-22の沖縄における駐留及び訓練の時間を削減するとともに、沖縄の一層の負担軽減に寄与する取組を推進していく。

11 共同統合運用調整所は、日米の司令部組織間での情報の共有や緊密な調整、相互運用性の向上など、日本の防衛のための共同対処に資する機能を果たすものである。

12 原子力空母は、燃料を補給する必要がないうえ、航空機の運用に必要な高速航行を維持できるなど、戦闘・作戦能力に優れている。

13 岩国市などの要望を受け、岩国飛行場の滑走路を東側(沖合)に1,000m程度移設する事業。10(平成22)年5月に新滑走路の運用が開始され、平成22年度末に事業完了

14 レーダーは、06(平成18)年6月、青森県の空自車力分屯基地に配備されたが、その後、隣接する米軍車力通信所に移設された。

15 日米間の相互運用性を向上させるとともに、在日米軍飛行場の周辺地域における訓練活動の影響を軽減することを目的として、在日米軍航空機が自衛隊施設において共同訓練を行うこと。