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第II部 わが国の安全保障・防衛政策と日米同盟

4 日米間の政策協議

1 各種の政策協議

日米両国は、首脳・閣僚レベルをはじめ様々なレベルで緊密に連携し、二国間のみならず、アジア太平洋地域をはじめとする国際社会全体の平和と安定及び繁栄のために、多岐にわたる分野で協力関係を不断に強化・拡大させてきた。

日米間の安全保障に関する政策協議は、通常の外交ルートによるもののほか、日米安全保障協議委員会(「2+2」)、日米安全保障高級事務レベル協議、防衛協力小委員会など、防衛・外務の関係者などにより、各種のレベルで緊密に行われている。中でも、防衛・外務の閣僚級協議の枠組みである日米安全保障協議委員会(「2+2」)は、政策協議の代表的なものであり、安全保障分野における日米協力にかかわる問題を検討するための重要な協議機関として機能している。

また、防衛省としては、防衛大臣と米国防長官との間で日米防衛相会談を適宜行い、両国の防衛政策や防衛協力について協議している。また、防衛副大臣と米国防副長官との間や、事務次官、統幕長、防衛審議官、陸・海・空幕長をはじめとする実務レベルにおいても、米国防省などとの間で随時協議や必要な情報の交換などを行っている。

このように、あらゆる機会とレベルを通じ情報や認識を日米間で共有することは、日米間の連携をより強化・緊密化するものであり、日米安保体制の信頼性の向上に資するものである。このため、防衛省としても主体的・積極的に取り組んでいる。

参照資料24(日米協議(閣僚級)の実績(15(平成27)年以降))
図表II-4-2-6(日米安全保障問題に関する日米両国政府の関係者間の主な政策協議)

図表II-4-2-6 日米安全保障問題に関する日米両国政府の関係者間の主な政策協議

2 「2+2」(17(平成29)年8月17日)

17(平成29)年8月17日、ワシントンDCにおいて、「2+2」を開催した。日本側からは、河野外務大臣及び小野寺防衛大臣が、米側からは、ティラソン米国務長官(当時)及びマティス米国防長官がそれぞれ出席した。

「2+2」及び共同発表の概要については、次のとおりである。

ア 概観

○ アジア太平洋地域の安全保障環境が一層厳しさを増す中、日米同盟を更に強化する意図を確認するとともに、同盟がアジア太平洋地域の平和と安全の礎であり続ける旨を確認した。

○ 米国の核戦力を含むあらゆる種類の能力を通じた日本の安全に対する同盟のコミットメントが重要であることを改めて確認した。

イ 地域の戦略環境

○ 北朝鮮による核・ミサイル開発は断じて容認できないとした上で、新たに採択された国連安保理決議の厳格かつ全面的な履行を含め、北朝鮮に対する圧力強化を更に進めていくことが必要である旨確認した。また、引き続き、日米及び日米韓で緊密に連携しながら、中国及びロシアに更なる役割を果たすよう求めるとともに、北朝鮮の脅威を抑止するため、同盟としての防衛態勢の強化と能力の向上を図る具体的取組を進めていくことで一致した。

○ 尖閣諸島に日米安保条約第5条が適用されること、及び同諸島に対する日本の施政を損なおうとするいかなる一方的な行動にも反対することを改めて確認するとともに、東シナ海の平和と安定のため、日米が引き続き協力していくことで一致した。

○ 南シナ海情勢について、航行の自由を支える各々の活動を始め、日米の継続的な関与が重要である旨一致した。

ウ 安全保障・防衛協力の強化

○ 日米同盟の抑止力・対処力を一層強化する取組を進めることで一致した。特に、あらゆる事態において同盟としてのシームレスな対応を確保するため、日米両国の各々の役割、任務及び能力の見直しを通じたものを含め、同盟を更に強化する具体的な方策及び行動を立案した。

  • 日本は、次期中期防計画期間を見据え、同盟における役割の拡大と防衛能力の強化を意図した。
  • 米国は、最新鋭の能力の日本への展開にコミットする。
  • 既に進めている作業を加速させるため、閣僚は以下の方針を示した。①ガイドラインの実施を加速し、平和安全法制下での更なる協力の形態を追求すること。②情報収集、警戒監視及び偵察(ISR)、訓練及び演習、研究開発、能力構築並びに施設の共同使用等の分野における新たな、かつ、拡大した行動を探求すること。

○ 「日米防衛協力のための指針」の実施についてコミットメントを再確認した。

  • 相互のアセット防護の運用開始及び新「日米ACSA」発効を歓迎する。
  • 米国の拡大抑止が日本の安全とアジア太平洋地域の平和と安定の確保に果たす不可欠な役割を再確認する。
  • 共同計画、防空及びミサイル防衛、非戦闘員退避活動(NEO:Non-combatant Evacuation Operation)、防衛装備・技術協力、情報協力・情報保全に係る協力の強化・加速を確認する。
  • 宇宙、サイバーにおける協力の拡大、協力に向けた協議の深化を図る。

エ 三か国及び多国間の協力

○ 韓国、オーストラリア、インド、東南アジア諸国など地域のパートナーとの三か国及び多国間の安全保障・防衛協力の進捗を強調した。

○ 日米韓共同訓練(ミサイル警戒、対潜水艦、海上阻止)を拡大し、情報共有を強化することを強調した。東南アジア諸国への能力構築支援や防衛装備・技術移転を一層強化する意図を確認した。日米間で政府全体にわたる、海洋安全保障に係る能力構築に関する対話の立ち上げに係るコミットメントを確認した。

オ 日本における米軍のプレゼンス

○ 在日米軍再編

米軍の抑止力を維持しつつ地元への影響を軽減し、在日米軍のプレゼンス及び活動に対する地元の支持を高めると同時に、米軍の強固なプレゼンスの維持のため既存の取決めを実施することについてのコミットメントを再確認した。

  • 普天間飛行場のキャンプ・シュワブ辺野古崎地区への移設が、普天間飛行場の継続的使用を回避するための唯一の解決策であることを再確認した。辺野古移設と普天間飛行場返還の早期実現への決意を強調した。
  • 既存の再編計画(沖縄統合計画、在沖米海兵隊のグアム移転、艦載機着陸訓練、ティルト・ローター機/回転翼機の訓練移転など)の着実な実施へのコミットメントを再確認した。

○ 在日米軍駐留経費負担

在日米軍駐留経費負担全体の水準、提供施設整備費の年額を再確認した。

○ その他

共同使用の促進を再確認。環境及び軍属に関する日米地位協定の補足協定を歓迎し、これらの着実な実施の重要性を強調した。

参照資料25(日米安全保障協議委員会(「2+2」)共同発表(仮訳)(平成29年8月17日))

市ヶ谷に展開中の空自PAC-3部隊を視察するペンス米副大統領と小野寺防衛大臣(18(平成30)年2月)

市ヶ谷に展開中の空自PAC-3部隊を視察する
ペンス米副大統領と小野寺防衛大臣(18(平成30)年2月)

3 最近行われた主な日米会談
(1)日米防衛相会談(17(平成29)年8月17日)

小野寺防衛大臣とマティス米国防長官は、日米「2+2」の機会に日米防衛相会談を実施した。

ア 総論

両閣僚は、日米両国の国防当局のトップの間の信頼関係の確立の重要性や、協力して日米同盟強化に取り組むことで一致した。

イ 北朝鮮問題への対応

両閣僚は、喫緊の課題である北朝鮮の問題について意見交換し、小野寺防衛大臣から、今は圧力を強化すべき時であること、今後も米軍と連携してあらゆる事態に万全を期すために必要な措置を講じる旨を述べた。

両閣僚は、北朝鮮の問題への対応については、日米の緊密な意思疎通と連携が不可欠であることを確認し、北朝鮮への圧力を一層強化していくことや、北朝鮮の脅威を抑止するため防衛態勢と能力の向上に取り組むことで一致した。

ウ 日米同盟の抑止力・対処力の強化

両閣僚は、厳しさを増す安全保障環境を踏まえ、日米双方が能力向上に取り組むとともに、ガイドラインの実効性確保の取組を進め、日米同盟の抑止力・対処力を一層強化していくことで一致した。

(2)日米首脳会談(17(平成29)年9月21日)(安全保障部分)

安倍内閣総理大臣は、国連総会出席のためニューヨークを訪問し、トランプ米大統領との間で日米首脳会談を実施した。

両首脳は、北朝鮮情勢について議論し、北朝鮮による17(平成29)年8月29日及び同年9月15日のわが国上空を通過する形での弾道ミサイルの発射や、同年9月3日の核実験の実施など一連の挑発行動は、わが国を含む国際社会全体に対するこれまでにない重大かつ差し迫った脅威であるという認識を改めて共有するとともに、核及び通常戦力の双方によるあらゆる種類の米国の軍事力を使ったわが国防衛に対する米国のコミットメントが揺るぎないこと、日米両国が100パーセント共にあることを改めて確認した。

また、両首脳は、全会一致で採択された新たな安保理決議第2375号を歓迎するとともに、関連安保理決議の完全な履行を確保し、また、北朝鮮に対し最大限の圧力をかけるべく、中国及びロシアを含む関係国への働きかけを含め、日米及び日米韓で引き続き連携していくことを確認した。

(3)日米防衛相会談(17(平成29)年10月23日)

小野寺防衛大臣とマティス米国防長官は、拡大ASEAN防衛相会議(ADMMプラス)の機会に日米防衛相会談を実施した。

ア 北朝鮮問題への対応

両閣僚は、北朝鮮の核・ミサイル開発の状況・見通しについて情報を共有し、小野寺防衛大臣から、わが国を含む地域の安全に対するこれまでにない重大かつ差し迫った脅威となっていることを踏まえ、いかなる事態にも同盟として連携した対応がとれるよう、マティス米国防長官としっかりと議論していく必要がある旨述べた。マティス米国防長官からも同様の立場が示され、米国の拡大抑止のコミットメントを含め、わが国の防衛に対する強い決意が改めて示された。

両閣僚は、北朝鮮の弾道ミサイルの脅威の高まりを踏まえ、万全の防衛態勢を確保することで一致し、イージス・アショアを中心とした新規の弾道ミサイル防衛(BMD)アセットの導入について日米が協力していくことを確認したほか、イージス艦を含む日米のアセットによる運用面での連携を一層緊密なものとしていくことで一致した。

両閣僚は、累次の北朝鮮の挑発行動に際しての電話会談などを通じ、高いレベルのコミュニケーションが確保されていることを歓迎し、引き続き日米間で緊密に情報共有していくことを確認した。また、北朝鮮に対する目に見える形での圧力をかけ続けていくことや、今後の対応における日米の緊密な連携の重要性を確認した。

さらに、両閣僚は、日米韓三か国での緊密な協力を進めることを改めて確認した。

イ 地域情勢など

両閣僚は、東シナ海の情勢を引き続き注視し、その平和と安定のため、日米が協力していくことで一致した。

また、両閣僚は、南シナ海の情勢も踏まえた東南アジア地域への関与の重要性を確認し、ADMMプラスの枠組みによる域内の多国間安全保障協力・対話の発展を歓迎した。小野寺防衛大臣から、日ASEAN防衛協力の指針「ビエンチャン・ビジョン」に基づきASEANの能力向上のための取組を進めていく旨述べた。両閣僚は、能力構築支援をはじめ、日米が連携して東南アジア諸国との防衛協力を推進していくことで一致した。

さらに、CH-53Eの事故については、マティス米国防長官から、飛行の安全の重要性に係る認識が示され、小野寺防衛大臣から、在日米軍の安定的な駐留を確保するためには、地元の理解を得ることが不可欠であり、安全な運用を心がけるよう伝達した。

(4)日米首脳会談(17(平成29)年11月6日)(安全保障部分)

安倍内閣総理大臣は、訪日したトランプ米大統領とワーキングランチ及び日米首脳会談を実施し、北朝鮮、地域情勢、沖縄を含む二国間の安保情勢などについて議論を行った。

ア 北朝鮮

○ 総論

両首脳は、日米両国が北朝鮮問題に関し100パーセント共にあること、日米同盟に基づくプレゼンスを基盤とする地域への米国のコミットメントは揺るぎないことを確認するとともに、核及び通常戦力の双方によるあらゆる種類の米国の軍事力を通じた日本の防衛に対する米国の揺るぎないコミットメントを改めて確認した。

○ 圧力強化

両首脳は、今は対話ではなく北朝鮮に最大限の圧力をかける局面であるとの考えで一致するとともに、北朝鮮が朝鮮半島の非核化に向けて政策を変更しない限り、北朝鮮に明るい未来はないとの認識を共有した。

安倍内閣総理大臣から、わが国として更なる対北朝鮮措置をとる考えである旨述べ、トランプ米大統領は、これを歓迎した。

両首脳は、日米韓三か国の連携が深まっていることを歓迎するとともに、こうした協力を更に前に進めていくことを確認した。

両首脳は、北朝鮮に関する関連安保理決議の完全な履行が不可欠であるとの認識を改めて確認し、各々の相手方への直接の関与を含め、中国及びロシアを含む関係国に働きかけ、国際社会全体で北朝鮮に対する圧力を最大限まで強化していくことを確認した。

イ 地域・国際情勢

○ 自由で開かれたインド太平洋戦略

両首脳は、法の支配に基づく自由で開かれた海洋秩序が、国際社会の安定と繁栄の基礎であることを確認するとともに、全ての国に、航行及び飛行の自由並びに国際法上適法な海洋の利用を尊重することを求め、両国が、国際法で認められる飛行、航行及び行動を行うことを再確認した。

両首脳は、莫大な人口と経済的ダイナミズムなどの観点から、世界の活力の中核であるインド太平洋地域が有する重要性を強調した。

また、両首脳は、日米が主導してインド太平洋を自由で開かれたものとすることにより、この地域全体の平和と繁栄を確保していくため、以下の三本柱の施策を進めることを確認し、関連する閣僚、機関に具体的な協力策の検討を指示した。

  1. ① 法の支配、航行の自由などの基本的価値の普及・定着
  2. ② 連結性の向上などによる経済的繁栄の追求
  3. ③ 海上法執行能力構築支援などの平和と安定のための取組

両首脳は、こうした考え方に賛同するいずれの国とも協働して重層的な協力関係を構築していくことを確認した。

○ 東シナ海及び南シナ海

両首脳は、東シナ海及び南シナ海における状況について懸念を表明し、現状を変更し緊張を高める、威圧的な一方的行動への反対を再確認した。

両首脳は、海洋紛争が国際法に基づき平和的に解決されなければならないことを再確認した。

両首脳は、南シナ海における行動規範(COC)に関する議論の進展に留意し、南シナ海の係争ある地形の非軍事化の重要性を強調した。

○ 中国

両首脳は、中国が地域及び国際社会の平和と繁栄のため積極的に貢献していくことを歓迎し、中国と建設的な対話を継続することの重要性を確認した。

ウ 日米関係

両首脳は、地域の安全保障環境が厳しさを増す中、日米同盟の抑止力・対処力の強化に引き続き取り組んでいくことで一致した。その観点から、両首脳は、8月に開催された「2+2」の成果を評価するとともに、関係閣僚に対して、その成果の着実なフォローアップを指示した。

両首脳は、在日米軍の運用能力及び抑止力を維持する観点から、これまでの取決めに従って在日米軍再編を進めるとのコミットメントを改めて確認した。特に、普天間飛行場の辺野古崎沖への移設が同飛行場の継続的な使用を回避するための唯一の解決策であることを確認するとともに、一層の遅延が平和及び安全を提供する能力に及ぼす悪影響に留意しつつ、普天間飛行場代替施設(FRF:Futenma Replacement Facility)の建設計画の着実な実施を求めた。また、安倍内閣総理大臣は、事件・事故などに関する地元の懸念に対応することが重要であると述べ、両首脳は、地元に訓練の目的について周知し、安全に対する懸念を軽減する重要性を再確認した。

(5) 日米首脳会談(18(平成30)年4月17日及び18日)(安全保障部分)

安倍内閣総理大臣は、トランプ米大統領と3回にわたって日米首脳会談を実施した。

ア 北朝鮮

両首脳は、来る米朝首脳会談を含めた北朝鮮問題への今後の対応に関し、両国の方針を綿密にすり合わせ、北朝鮮との接触の全ての分野に関して両国が完全に連携し続けるとの意思を表明した。また、引き続き日米韓三か国が緊密に連携していくことが重要であることを確認した。

まず、両首脳は、最近、北朝鮮の側から対話を求めてきていることは、日米韓三か国が緊密に協力し、中国など国際社会とも連携して、北朝鮮に最大限の圧力をかけてきた成果であるとの認識を共有した。また、両首脳は、これまでの韓国政府の努力を賞賛した。

両首脳は、北朝鮮自身から非核化に向けた具体的な取組が対外的に明らかにされていないことに留意し、引き続き、北朝鮮の意図をしっかりと分析することが必要であるとの認識で一致した。

その上で、両首脳は、北朝鮮に対して最大限の圧力を維持していくことを確認した。米国が「全ての選択肢がテーブルの上にある」との立場を維持していることを踏まえ、安倍内閣総理大臣は、このトランプ米大統領の信念を持った姿勢への支持を改めて表明した。また両首脳は、北朝鮮が対話に応じることのみをもって、見返りを与えるべきではなく、この方針を国際社会として堅持する必要があるとの認識で一致した。

両首脳は、北朝鮮の非核化の実現にコミットすることを確認した。両首脳はまた、北朝鮮が完全な、検証可能な、かつ、不可逆的な方法での全ての大量破壊兵器及びあらゆる弾道ミサイルの計画を放棄する必要があることを確認した。両首脳は、こうした目的を達成するために北朝鮮が具体的な行動を取る必要があるとの認識を共有した。

安倍内閣総理大臣は、トランプ米大統領に対し、来る米朝首脳会談において拉致問題を取り上げるよう要請した。トランプ米大統領は、17(平成29)年11月に訪日した際、拉致被害者の御家族と面会し、強い印象を受けたことに言及しつつ、金正恩国務委員長との会談でこの拉致問題を取り上げ、北朝鮮に対し日本人拉致問題の早期解決を働きかけることを確認した。

両者は、韓国を含む国際的なパートナーと緊密に連携しながら、北朝鮮による制裁回避の問題に取り組み、国際社会が関連安保理決議を完全に履行することの重要性につき一致した。この文脈で、トランプ米大統領は、北朝鮮関連船舶による違法な船舶間の物資の積替え(いわゆる「瀬取り」)に対する日本政府の取組を賞賛するとともに、米国は他の多様なパートナーと共に、日本と連携してこの取組を進めていくことを表明した。

両首脳は、米朝首脳会談などを通じて、事態が打開されることへの期待感を共有するとともに、北朝鮮はアジア・太平洋の成長圏に隣接し、立地条件に恵まれている、また勤勉な労働力があって、天然資源もあり、北朝鮮が正しい道を歩めば市民を豊かにすることができる、それらを活用するなら、北朝鮮には経済を飛躍的に伸ばし、民政を改善する途があり得る、そこにこそ北朝鮮の明るい未来はあるとの認識で一致した。

イ 日米関係

現下の北朝鮮情勢を踏まえ、トランプ米大統領は、核及び通常戦力の双方によるあらゆる種類の米国の軍事力を通じた日本の防衛に対する米国の揺るぎないコミットメントを改めて確認した。

両首脳は、平和安全法制及びガイドラインの着実な実施を通じた日米安保協力の一層の推進を再確認した。

両首脳は、在日米軍の運用能力及び抑止力を維持しつつ、引き続き沖縄を始めとする地元の負担を最小化するために、共に取り組みたい旨述べた。両首脳は、普天間飛行場の辺野古崎沖への移設が同飛行場の継続的な使用を回避するための唯一の解決策であることを改めて確認するとともに、同盟による地域の平和及び安全を提供する能力を確保するためにも、普天間飛行場代替施設(FRF)の建設計画の着実な実施を求めた。さらに、両首脳は、安全な運用に継続的にコミットしていくことで一致した。

両首脳は、東シナ海及び南シナ海における状況について懸念を共有し、引き続き日米で共に連携していくことを再確認した。両首脳は、日米安全保障条約第5条が尖閣諸島に適用されること、また、現状変更を試みるいかなる一方的行動にも反対することを再確認した。

安倍内閣総理大臣から、厳しい安全保障環境に対応するため、今後とも米国装備品を含め、高性能な装備品を導入することが、わが国の防衛力強化のために重要であることを伝え、トランプ米大統領はこれを歓迎した。

ウ その他

両首脳は、自由で開かれたインド太平洋の実現に向け、日米の協議が進展していることを歓迎するとともに、国際スタンダードに適合した質の高いインフラ開発を含め具体的な協力を進展させていくとの認識で一致した。

両首脳は、中国についても議論を行い、中国が地域及び国際社会の平和、安全及び繁栄のために更なる貢献を行うよう働きかけていくことの重要性を共有した。

(6) 日米防衛相会談(18(平成30)年4月20日)

小野寺防衛大臣とマティス米国防長官は、米国防省において日米防衛相会談を実施した。

ア 北朝鮮

両閣僚は、米朝首脳会談を含めた今後の北朝鮮問題への対応に関し、国防当局間の認識・方針を綿密にすり合わせ、一致していることを確認した。両閣僚は、最近、北朝鮮側から対話を求めてきているといった姿勢の変化はあるものの、北朝鮮による非核化に向けた具体的な取組が確認されていないことに留意し、引き続き北朝鮮の動向を注視する必要があるとの認識で一致した。その上で小野寺防衛大臣から、北朝鮮に全ての大量破壊兵器及びあらゆる弾道ミサイルの計画を放棄させるため、最大限の圧力を維持する必要があることを述べ、両閣僚は、北朝鮮が完全で、検証可能な、不可逆的な方法で全ての大量破壊兵器及びあらゆる弾道ミサイルの計画の放棄を目指すとの方針の下、圧力・制裁を維持していくことを確認した。

海自によるいわゆる「瀬取り」に関する取組について、マティス米国防長官から、同取組を賞賛するとともに、米国は他の多様なパートナーと共に、日本と連携してこの取組を進めていく旨の発言があった。また、共同訓練の実施などを通じて日米韓三か国や多国間の協力を推進していくことを確認した。

両閣僚は、いかなる事態に対しても同盟として連携した対応をとるため、引き続き緊密なコミュニケーションを図ることで一致した。

イ 日米同盟の抑止力・対処力の強化

両閣僚は、自衛隊による米軍の警護や、米軍への物品・役務の提供など、平和安全法制及びガイドラインの下での新たな日米協力が進められていることを歓迎し、平和安全法制及びガイドラインの着実な実施を通じた日米防衛協力の一層の推進を再確認した。

小野寺防衛大臣から、わが国の将来の防衛力整備について、18(平成30)年末に向けて防衛大綱の見直しや次期中期防策定の検討を進めている旨説明し、両閣僚は、引き続き緊密に情報交換していくことで一致した。また、小野寺防衛大臣から、厳しい安全保障環境を踏まえ、わが国の防衛力強化のため、今後とも米国装備品を含む高性能な装備品の導入が重要であることを伝え、両閣僚は、イージス・アショアを始めとするわが国の米国製装備品の導入について、FMSに関わる諸課題の改善などを通じ、円滑かつ速やかに日本側が調達できるよう協力して取り組んでいくことを確認した。

ウ 在日米軍、沖縄

小野寺防衛大臣から、18(平成30)年に横田飛行場に配備されるCV-22や沖縄の米軍機を含め、引き続き米軍の安全な運用の確保を要請し、マティス米国防長官から、安全な運用の確保は重要である旨の認識が示された。さらに、小野寺防衛大臣から、沖縄を始めとする地元の負担軽減に向けた協力を要請し、両閣僚は地元の理解を得る取組について協力していくことで一致した。

(7)日米防衛相会談(18(平成30)年5月29日)

小野寺防衛大臣とマティス米国防長官は、ハワイにおいて日米防衛相会談を実施した。

ア 北朝鮮

両閣僚は、直近の北朝鮮問題をめぐる状況を踏まえ、今後の北朝鮮問題への対応に関し、防衛当局間の認識・方針をすり合わせ、一致していることを改めて確認した。小野寺防衛大臣から、米朝首脳会談を、核、ミサイル、拉致問題といった諸懸案が前進する機会にすることが重要との認識を伝え、マティス米国防長官とは、北朝鮮による生物及び化学兵器を含む全ての大量破壊兵器及びあらゆる射程の弾道ミサイルの完全な、検証可能な、かつ、不可逆的な方法での廃棄を目指すとの方針の下、圧力・制裁を維持し、国際社会の連携の下で北朝鮮の政策を変えさせることが重要との認識で一致した。

その上で、両閣僚は、北朝鮮によるいわゆる「瀬取り」に対し、英国、オーストラリア、カナダなどの関係国との連携した取組を歓迎し、引き続き日米が有志国と連携して進めていくことで一致するとともに、在韓米軍を含む地域の米軍の抑止力の重要性を再確認した。

マティス米国防長官から、米国のわが国防衛へのコミットメントが改めて示され、両閣僚は、いかなる事態に対しても同盟として連携した対応をとるため、引き続き緊密なコミュニケーションを図ることで一致した。

イ 地域情勢など

両閣僚は、地域の課題について意見交換し、中国が東シナ海・南シナ海で力を背景とした一方的な現状変更の試みを続けていることを踏まえ、引き続き東シナ海の情勢を注視し、平和と安定のために協力していくこと、また、南シナ海への日米の継続的な関与が重要であることで一致した。また、中国の軍事力強化やわが国周辺海空域における活動の活発化に留意しつつ、地域の平和と安定のために日米が連携し、防衛力強化の取組を通じて同盟の抑止力・対処力の強化に取り組むことで一致した。

ウ 自由で開かれたインド太平洋

両閣僚は、自由で開かれたインド太平洋の確保のため、同盟国や多様なパートナーと協力していくことの重要性を改めて確認し、法の支配、航行の自由などの基本的原則の定着や能力構築支援などにおいて、日米や日米豪が連携して進めることで一致した。

エ 在日米軍

小野寺防衛大臣から、米軍の安全な運用の確保や沖縄を含む地元の理解を得る取組に向けた協力を改めて要請した。

(8)日米首脳会談(18(平成30)年6月7日)(安全保障部分)

安倍内閣総理大臣とトランプ米大統領は、ワシントンDCにおいて日米首脳会談を実施した。

両首脳は、予定されている米朝首脳会談への対応を含め、北朝鮮問題に関する今後の方針について綿密なすり合わせを行い、同会談が、拉致、核・ミサイルといった諸懸案が前進する歴史的な会談となるよう日米、日米韓で緊密に連携していくこととともに、北朝鮮に対して安保理決議の完全な履行を求め、現行の措置を継続して、北朝鮮から具体的な行動を引き出していくことで一致した。

両首脳は、米朝首脳会談後、速やかに日米、日米韓で情報共有を行い、方針のすり合わせを行うことを確認した。

(9)日米防衛相会談(18(平成30)年6月29日)

小野寺防衛大臣とマティス米国防長官は、防衛省において日米防衛相会談を実施した。

ア 北朝鮮

両閣僚は、直近の北朝鮮問題をめぐる状況を踏まえ、今後の北朝鮮問題への対応に関し、防衛当局間の認識・方針をすり合わせ、一致していることを改めて確認した。両閣僚は、国連安保理決議に従い、北朝鮮による生物及び化学兵器を含む全ての大量破壊兵器及びあらゆる射程の弾道ミサイルの完全な、検証可能な、かつ、不可逆的な方法での廃棄を実現するため、日米が国際社会と連携して取り組むことで一致し、北朝鮮によるいわゆる「瀬取り」に対し、引き続き日米が有志国と連携して取り組むことを確認した。

この際、マティス米国防長官から、米韓合同軍事演習の停止について説明があり、両閣僚は、在韓米軍の撤退・縮小は検討されていないこと、在韓米軍を含む地域における米軍の抑止力の重要性を再確認した。また、マティス米国防長官から、日本防衛へのコミットメントが改めて示され、日米共同訓練の着実な実施をはじめ、同盟の抑止力・対処力強化の取組を進めることで一致した。両閣僚は、いかなる事態に対しても同盟として連携した対応をとるため、引き続き緊密なコミュニケーションを図ることで一致した。

イ 地域情勢など

両閣僚は、マティス米国防長官の中国訪問を踏まえ意見交換を行い、尖閣諸島が日米安全保障条約第5条の適用範囲であること、同諸島に対する日本の施政を損なおうとするいかなる一方的な行動にも反対することを改めて確認し、引き続き東シナ海の情勢を注視し、平和と安定のために協力していくことで一致した。

また、両閣僚は、法の支配、航行の自由などの基本的原則の定着に向けた協力の重要性を確認した。

ウ 防衛装備分野における取組

両閣僚は、FMSに関わる諸課題の改善などが進捗していることを歓迎し、日本側が効率的な調達をできるよう引き続き協力して取り組んでいくことを確認した。

エ 在日米軍

両閣僚は、米軍再編計画の着実な進展のため、日米で緊密に協力していくことで一致し、小野寺防衛大臣から、米軍の安全な運用の確保に向けた協力を要請した。