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第II部 わが国の安全保障・防衛政策と日米同盟

2 ガイドライン見直しの概要

日米両国がわが国に対する武力攻撃などに迅速に対処するためには、あらかじめ両者の役割について協議し、決定しておくことが必要である。

日米両国間でのこのような役割に関する枠組みが、ガイドラインとその実効性を確保するための諸施策であり、日米両国はこの枠組みに基づき、わが国を取り巻く安全保障環境の変化を踏まえつつ、両国間の協力計画などについて継続的に検討作業を実施し、協議を行うとともに、現状に即したガイドライン見直しの作業を行ってきた。

1 ガイドライン見直しの経緯

97ガイドラインが策定されて以降、わが国を取り巻く安全保障環境は、周辺国の軍事活動などの活発化、国際テロ組織などの新たな脅威の発生、海洋・宇宙・サイバー空間といった国際公共財の安定的利用に対するリスクの顕在化など、様々な課題や不安定要因が顕在化・先鋭化・深刻化してきた。さらには、海賊対処行動、PKO、国際緊急援助活動のように自衛隊の活動もグローバルな規模に拡大してきていた。

そのため、日米防衛協力のあり方を、これらの安全保障環境の変化や、自衛隊の活動・任務の拡大に対応させる必要が生じていた。

12(平成24)年末、このような安全保障環境の変化を背景として、安倍内閣総理大臣より小野寺防衛大臣(第2次安倍内閣当時)にガイドラインなどの見直しの検討が指示された。また、13(平成25)年2月の日米首脳会談においても、安倍内閣総理大臣からオバマ米大統領(当時)に対し、「安全保障環境の変化を踏まえ、日米の役割・任務・能力(RMC:Roles, Missions and Capabilities)の考え方についての議論を通じ、ガイドラインの見直しの検討を進めたい」旨述べた。

13(平成25)年10月、これらの経緯を経て、「2+2」において、防衛協力小委員会(SDC:Subcommittee for Defense Cooperation)に対して、97ガイドラインの変更に関する勧告を作成するよう指示され、14(平成26)年末までに97ガイドラインを見直すこととなった。

その際の「2+2」共同発表においては、わが国の防衛を日米防衛の中核的要素としつつ、海賊や国際テロなどといった同盟のグローバルな性質を反映する協力範囲の拡大に加え、宇宙及びサイバー空間といった新たな戦略的領域における課題を含め、変化する安全保障環境において効果的で効率的かつシームレスな同盟の対応を確保するための緊急事態における防衛協力の指針となる概念の評価及び同盟の強化を可能とする追加的な方策の探求などを97ガイドライン見直しの目的とした。

13(平成25)年10月の「2+2」共同発表に基づき、防衛大綱及び米国の「4年毎の国防計画の見直し」(QDR:Quadrennial Defense Review)で示された考え方も踏まえつつ、日米間で精力的に見直し作業が行われた。

14(平成26)年10月には、同年7月の日米防衛相会談での合意に基づき、それまでの作業を要約するものとして、「日米防衛協力のための指針の見直しに関する中間報告」が公表された。さらに、同年12月、日米安全保障協議委員会(SCC)は、ガイドラインの見直しと日本における安全保障法制の整備との整合性を確保することなどの重要性を再確認したうえで、日本における法制の整備の進展を踏まえながら、15(平成27)年前半のガイドライン見直し完了に向けて、議論をさらに深めることを決定した。

15(平成27)年4月の「2+2」において、日米安全保障協議委員会(SCC)は、防衛協力小委員会(SDC)が勧告した新たなガイドラインを了承した。

参照資料19(日米防衛協力のための指針(平成27年4月27日))

2 ガイドラインの内容

97ガイドラインに代わるガイドラインは、日米両国の役割及び任務についての一般的な大枠及び政策的な方向性を更新するとともに、同盟を現代に適合したものとし、また、平時から緊急事態までのあらゆる段階における抑止力及び対処力を強化することで、より力強い同盟とより大きな責任の共有のための戦略的な構想を明らかにするものである。

(1)防衛協力とガイドラインの目的

ガイドラインは、安全保障及び防衛協力の強調事項を新たに明記した。また、ガイドラインの目的は、97ガイドラインの考え方を維持している。

  • 平時から緊急事態までのいかなる状況においても日本の平和及び安全を確保するとともに、アジア太平洋及びこれを越えた地域が安定し、平和で繁栄したものとなるよう、日米両国間の安全保障及び防衛協力は、次の事項を強調する。
    • 切れ目のない、力強い、柔軟かつ実効的な日米共同の対応
    • 日米両政府の国家安全保障政策間の相乗効果
    • 政府一体となっての同盟としての取組
    • 地域の及び他のパートナー並びに国際機関との協力
    • 日米同盟のグローバルな性質
  • 日米両政府は、その国家安全保障政策に基づき、各自の防衛態勢を維持する。米国は、引き続き、核戦力を含むあらゆる種類の能力を通じ、日本に対して拡大抑止を提供し、また、アジア太平洋地域に即応態勢にある戦力を前方展開するとともに、戦力を迅速に増強する能力を維持する。
  • ガイドラインは、日米両国の役割及び任務並びに協力及び調整のあり方についての一般的な大枠及び政策的な方向性を示す。
  • ガイドラインは、日米同盟の重要性についての国内外の理解を促進する。
(2)基本的な前提及び考え方

基本的な前提及び考え方については、次のとおりであり、 97ガイドラインのものを維持している。

  • 日米安保条約及びその関連取極に基づく権利及び義務は変更されない。
  • ガイドラインのもとでの行動及び活動は国際法に合致するものである。
  • 日本及び米国により行われる全ての行動及び活動は、各々の憲法及びその時々において適用のある国内法令並びに国家安全保障政策の基本的な方針に従って行われる。日本の行動及び活動は、専守防衛、非核三原則などの日本の基本的な方針に従って行われる。
  • ガイドラインは、いずれの政府にも立法上、予算上、行政上又はその他の措置をとることを義務付けるものではなく、また、ガイドラインは、いずれの政府にも法的権利又は義務を生じさせるものではない。しかしながら、二国間協力のための実効的な態勢の構築がガイドラインの目標であることから、日米両政府が、各々の判断に従い、このような努力の結果を各々の具体的な政策及び措置に適切な形で反映することが期待される。

参照資料19(日米防衛協力のための指針(平成27年4月27日))
図表II-4-2-2(日米防衛協力のための指針の概要)

図表II-4-2-2 日米防衛協力のための指針の概要

図表II-4-2-2 日米防衛協力のための指針の概要