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第II部 わが国の安全保障・防衛政策と日米同盟

2 わが国の周辺地域の平和と安定の確保

日米安保条約第6条では、米軍に対するわが国の施設・区域の提供の目的として、「日本国の安全」とともに、「極東における国際の平和及び安全の維持」があげられている。これは、わが国の安全が、極東というわが国を含む地域の平和や安全と極めて密接な関係にあるとの認識に基づくものである。

わが国の周辺地域には、大規模な軍事力を有する国家などが集中し、核兵器を保有又は核開発を継続する国家なども存在する。また、パワーバランスの変化に伴い生じる問題や緊張に加え、領域主権や権益などをめぐり、いわばグレーゾーンの事態が生じやすく、これがさらに重大な事態に転じかねないリスクを有している。

こうした安全保障環境の中で、わが国に駐留する米軍のプレゼンスは、地域における様々な安全保障上の課題や不安定要因に起因する不測の事態の発生に対する抑止力として機能し、わが国や米国の利益を守るのみならず、地域の諸国に大きな安心をもたらすことで、いわば「公共財」としての役割を果たしている。

また、日米安保体制を基調とする日米両国間の緊密な協力関係は、わが国の周辺地域の平和と安定にとって必要な米国の関与を確保する基盤となっている。このような体制は、韓国、オーストラリア、タイ、フィリピンなどの地域諸国と米国の間で構築された同盟関係や、その他の国々との友好関係とあいまって、アジア太平洋地域の平和と安定に不可欠な役割を果たしている。