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第II部 わが国の安全保障・防衛政策と日米同盟

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第4章 日米同盟の強化

日米安保条約に基づく日米安保体制は、わが国自身の努力とあいまってわが国の安全保障の基軸である。また、日米安保体制を中核とする日米同盟は、わが国のみならず、アジア太平洋地域、さらには世界全体の安定と繁栄のための「公共財」として機能している。

わが国を取り巻く安全保障環境が一層厳しさを増す中、アジア太平洋地域への関与及びプレゼンスの維持・強化を進めている米国との間で、日米同盟を強化していくことは、わが国の安全の確保にとってこれまで以上に重要となっている。

わが国に駐留する米軍のプレゼンスは、わが国の防衛に寄与するのみならず、アジア太平洋地域における不測の事態の発生に対する抑止力及び対処力として機能しており、日米安保体制の中核的要素である。

このように、日米安保条約に基づくわが国への米軍の駐留は、単にわが国の利益につながるだけでなく、この地域に利益を有する米国自身の利益につながるものである。

一方、在日米軍の駐留は、地域住民の生活環境に影響を与えることから、沖縄をはじめとする各地域の実情に合った負担軽減の努力が必要である。

第1節 日米安全保障体制の意義

1 わが国の平和と安全の確保

現在の国際社会において、国の平和、安全及び独立を確保するためには、核兵器の使用をはじめとする様々な態様の侵略から、軍事力による示威や恫喝(どうかつ)に至るまで、あらゆる事態に対応できる隙のない防衛態勢を構築する必要がある。

しかし、米国でさえ一国のみで自国の安全を確保することは困難な状況にある。ましてや、わが国が独力でこのような態勢を保持することは、人口、国土、経済の観点からも容易ではなく、必ずしも地域の安定に寄与するものではない。

このため、わが国は、民主主義、人権の尊重、法の支配、資本主義経済といった基本的な価値観や世界の平和と安全の維持への関心を共有し、経済面においても関係が深く、かつ、強大な軍事力を有する米国との安全保障体制を基調として、わが国の平和と安全を確保してきた。

日米首脳会談においてトランプ米大統領と握手を交わす安倍内閣総理大臣(17(平成29)年11月6日)【内閣広報室提供】

日米首脳会談においてトランプ米大統領と握手を交わす安倍内閣総理大臣
(17(平成29)年11月6日)【内閣広報室提供】

具体的には、日米安保条約第5条に基づき、わが国に対する武力攻撃があった場合、日米両国が共同して対処するとともに、同第6条に基づき、米軍に対してわが国の施設・区域を提供することとしている。この米国の日本防衛義務により、仮にどこかの国がわが国に対して武力攻撃を企図したとしても、自衛隊のみならず、米国の有する強大な軍事力とも直接対決する事態を覚悟しなければならなくなる。この結果、相手国は侵略を行えば耐えがたい損害を被ることを明白に認識し、わが国に対する侵略を思いとどまることになる。すなわち、侵略は抑止されることになる。

わが国としては、このような米国の軍事力による抑止力をわが国の安全保障のために有効に機能させることで、自らの適切な防衛力の保持と合わせて隙のない態勢を構築し、わが国の平和と安全を確保していく考えである。