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第II部 わが国の安全保障・防衛政策と日米同盟

3 米軍等の部隊の武器等防護(自衛隊法第95条の2)の運用開始

1 経緯

防衛省・自衛隊は、平和安全法制成立以降、米軍等の部隊の武器等防護(自衛隊法第95条の2)の適正な運用を図るため、米国との間で説明・調整を行いつつ、必要な規則類の作成作業を行った。これらの作業が完了したことから、16(平成28)年12月、国家安全保障会議において、「自衛隊法第95条の2の運用に関する指針」を決定し、米軍を対象に、同条の運用を開始した。今回の運用開始により、自衛隊と米軍の連携した警戒態勢などの更なる強化につながり、日米同盟の抑止力及び対処力は、より一層強化されることとなる。

2 自衛隊法第95条の2の運用に関する指針

この運用指針は、政府としての同条の基本的な考え方のほか、本条の運用に際しての内閣の関与や情報の公開などについて定めるものであり、概要は次のとおりである。

(1)本条の基本的な考え方

ア 本条の趣旨

本条は、自衛隊と連携してわが国の防衛に資する活動(共同訓練を含み、現に戦闘行為が行われている現場で行われるものを除く。)に現に従事している米軍その他の外国の軍隊その他これに類する組織(米軍等)の部隊の武器等という、わが国の防衛力を構成する重要な物的手段に相当するものと評価できるものを武力攻撃に至らない侵害から防護するための、極めて受動的かつ限定的な必要最小限度の武器の使用を認めるものである。

同条第1項において「現に戦闘行為が行われている現場で行われるものを除く。」と規定することにより、同項の警護が米軍等による「武力の行使と一体化」しないことを担保するとともに、同条の規定による武器の使用によって戦闘行為に対処することはないものとし、したがって、自衛隊が武力の行使に及ぶことがなく、また、同条の規定による武器の使用を契機として戦闘行為に発展しないようにすることなどを明らかにしている。

このような武器の使用は、憲法第9条で禁止された「武力の行使」には当たらない。

イ わが国の防衛に資する活動

本条における「我が国の防衛に資する活動」に当たり得る活動については個別具体的に判断するが、主に①弾道ミサイルの警戒を含む情報収集・警戒監視活動、②わが国の平和及び安全に重要な影響を与える事態に際して行われる輸送、補給などの活動、③わが国を防衛するために必要な能力を向上させるための共同訓練が考えられる。

ウ 警護の実施の判断

米軍等から警護の要請があった場合には、防衛大臣は、米軍等の部隊が自衛隊と連携して従事する活動が「我が国の防衛に資する活動」に該当するか及び自衛官が警護を行うことが必要かについて、活動の目的・内容、部隊の能力、周囲の情勢などを踏まえ、自衛隊の任務遂行への影響も考慮したうえで主体的に判断するとしている。

(2)内閣の関与

本条第2項の規定による米軍等からの警護の要請を受けた防衛大臣の警護の実施の判断に関し、次の場合には、国家安全保障会議で審議することとしている。ただし、緊急の要請に際し、そのいとまがない場合には、防衛大臣は、速やかに、警護の実施の判断について国家安全保障会議に報告する。

  1. ① 米軍等から、初めて警護の要請があった場合
  2. ② 第三国の領域における警護の要請があった場合
  3. ③ その他特に重要であると認められる警護の要請があった場合

また、重要影響事態における警護の実施が必要と認める場合は、その旨基本計画に明記し、国家安全保障会議で審議の上、閣議の決定を求めることとしている。

このほか、国家安全保障会議幹事会を機動的に開催し、国家安全保障会議を補佐するとともに、平素から全ての警護の要請に関する情報を関係省庁間で共有し、緊密に連携することとしている。

(3)情報の公開

本条の運用に際し、本条による警護の実施中に特異事象が発生した場合には、速やかに公表し、また重要影響事態において警護の実施にかかる事項が明記された基本計画を公表するほか、行政機関の保有する情報の公開に関する法律(平成11年法律第42号)を踏まえ、政府として適切に情報の公開を図ることとしている。

3 平成29年の警護の実績

17(平成29)年は、わが国を防衛するために必要な能力を向上させるための共同訓練の機会に、米軍の艦艇に対して自衛隊の艦艇が、米軍の航空機に対して自衛隊の航空機が、それぞれ1回の計2回の警護を実施した。

参照本章2節3項7(米軍等の部隊の武器等の防護)