これまでの周辺事態安全確保法においては、わが国周辺の地域におけるわが国の平和と安全に重要な影響を与える事態(「周辺事態」)に際し、わが国が行う対応措置として、後方地域支援13、後方地域捜索救助活動14、船舶検査活動(船舶検査活動法に規定するもの)などを定めていた。
先般の法改正では、わが国を取り巻く安全保障環境の変化に伴い、これまでの、「我が国周辺の地域における我が国の平和及び安全に重要な影響を与える事態」について、「我が国周辺の地域における」という部分を削除し、事態の名称を「周辺事態」から「重要影響事態」に改める15とともに、重要影響事態における支援対象や対応措置を次のとおり拡大した。
KEYWORD重要影響事態とは
そのまま放置すればわが国に対する直接の武力攻撃に至るおそれのある事態等わが国の平和及び安全に重要な影響を与える事態
支援対象となる重要影響事態に対処する軍隊等に、これまでの「日米安保条約の目的の達成に寄与する活動を行う米軍」に加え、「国連憲章の目的の達成に寄与する活動を行う外国の軍隊」及び「その他これに類する組織」を追加した。
重要影響事態への対応措置を、①後方支援活動、②捜索救助活動、③船舶検査活動、④その他の重要影響事態に対応するための必要な措置としつつ、①の後方支援活動において自衛隊が提供する物品・役務の種類に、これまでの「補給、輸送、修理・整備、医療、通信、空港・港湾業務、基地業務」に加え、「宿泊、保管、施設の利用、訓練業務」を追加した。また、これまでと同様、武器の提供は行わないものの、「弾薬の提供」と「戦闘作戦行動のために発進準備中の航空機に対する給油及び整備」を新たに実施できることとした。
外国領域での対応措置については、当該外国などの同意がある場合に限り、新たに実施できることとした。
他国の武力の行使との一体化を回避するとともに、自衛隊員の安全を確保するため、次の措置を規定した。
これまでと同様、事前の国会承認を原則とし、緊急の必要がある場合は事後承認を可とする。
重要影響事態に際しての後方支援活動としての役務の提供又は捜索救助活動において、自衛官は、自己又は自己と共に現場に所在する他の自衛隊員若しくはその職務を行うに伴い自己の管理下に入った者の生命又は身体の防護のためやむを得ない必要があると認める相当の理由がある場合、その事態に応じ合理的に必要と判断される限度で武器を使用することができる(いわゆる「自己保存型の武器使用」)。また、宿営地に所在する者の生命又は身体を防護するための措置として諸外国の軍隊等の要員と共同して、武器を使用することができる(ただし、いわゆる「自己保存型の武器使用」において、人への危害が許容されるのは、正当防衛・緊急避難に該当する場合のみ)。
船舶検査活動とは、国連安保理決議に基づいて、又は旗国17の同意を得て、わが国が参加する貿易その他の経済活動にかかわる規制措置の厳格な実施を確保する目的で、船舶(軍艦などを除く。)の積荷・目的地を検査・確認する活動や必要に応じ船舶の航路・目的港・目的地の変更を要請する活動である。
いわゆる「自己保存型の武器使用」が可能である。
13 周辺事態安全確保法における後方地域支援とは、「周辺事態に際して日米安保条約の目的の達成に寄与する活動を行っている米軍に対する物品及び役務の提供、便宜の供与その他の支援措置であって、後方地域において我が国が実施するもの」をいう。
14 周辺事態安全確保法における後方地域捜索救助活動とは、「周辺事態において行われた戦闘行為によって遭難した戦闘参加者について、その捜索又は救助を行う活動(救助した者の輸送を含む。)であって、後方地域において我が国が実施するもの」をいう。
15 「周辺事態」は、事態の性質に着目した概念であって地理的な概念ではないと整理されていたところ、昨今の安全保障環境の変化も踏まえ、わが国の平和と安全に重要な影響を与える事態が生起する地域を地理的に限定するかのような表現を用いることは適当ではないことから改めたもの。これに伴い、法律の名称も「周辺事態に際して我が国の平和及び安全を確保するための措置に関する法律」から「重要影響事態に際して我が国の平和及び安全を確保するための措置に関する法律」に改正
16 重要影響事態に際しての船舶検査活動は、「重要影響事態等に際して実施する船舶検査活動に関する法律(船舶検査活動法)」に基づいて行われる。なお、国際平和共同対処事態における船舶検査活動については、本節5項(国際社会の平和と安定への貢献に関する枠組み)を参照
17 海洋法に関する国際連合条約第91条に規定するその旗を掲げる権利を有する国