第I部 わが国を取り巻く安全保障環境
3 各国の軍の近代化
東南アジア各国は、近年、経済成長などを背景として国防費を増額させ、第4世代の近代的戦闘機を含む戦闘機や潜水艦などの装備品の導入を中心とした軍の近代化を進めている。その要因としては、国防費の増額のほか、近隣諸国の軍事力発展に反応するという東南アジア各国間の関係や、中国の影響力拡大への対応、地域安全保障機構の信頼醸成措置としての役割が十分でないことが背景にあるとの指摘がある23。なお、東南アジア諸国の多くは装備品を多様な国から調達しているため、各国で統一的な運用やメンテナンスを行いづらくしている面があるとみられる。
インドネシアは、13（平成25）年までに、ロシア製Su-27戦闘機及びSu-30戦闘機を計16機導入している。11（平成23）年には、米国からF-16戦闘機24機の供与を受けることに合意しており、14（平成26）年7月以降、順次引渡しを実施している。また、17年（平成29）年8月、ロシアからSu-35戦闘機11機を追加調達する計画を発表している。韓国とは、11（平成23）年12月、韓国製209級潜水艦3隻を購入する契約を締結しており、17（平成29）年8月、1隻目を受領した。また、韓国とは第4.5世代戦闘機（KF-X/IF-X）の共同開発を検討しており、16（平成28）年1月には、費用分担や協力内容を定めた合意書を締結している。このほか、オランダ製シグマ10514をベースとしたマルタディナタ級フリゲートを建造し、17（平成29）年4月に1隻目を、18（平成30）年1月に2隻目を、それぞれ就役させている。
マレーシアは、09（平成21）年までにロシア製Su-30戦闘機18機を導入している。また、同年、同国初の潜水艦であるスコルペン級潜水艦（フランスとスペインが共同開発）2隻を導入したほか、14（平成26）年11月、韓国とコルベット6隻の購入契約を締結したと伝えられている。さらに、国産の沿岸海域戦闘艦（LCS：Littoral combat ship）6隻の建造を推進しており、17（平成29）年8月に1番艦が進水した。加えて、16（平成28）年11月、中国から沿海域任務艦（LMS：Littoral mission ship）4隻の購入に合意している。
フィリピンは、南シナ海における領有権をめぐる係争などを背景に、近年装備の近代化を進めている。
航空戦力については、05（平成17）年にF-5戦闘機が退役した後、戦闘機を保有しない時期が続いていたが、15（平成27）年11月から韓国製FA-50PH軽戦闘機を順次導入し、17（平成29）年5月までに合計12機を配備した。
海軍戦力としては、16（平成28）年までに、米国からハミルトン級フリゲートを3隻導入するとともに、17（平成29）年までにインドネシア製ドッグ型輸送揚陸艦を2隻導入した。
シンガポールは軍の近代化に努めており、世界有数の武器輸入国である。
航空戦力については、12（平成24）年までに米国製F-15戦闘機を24機導入したほか、F-35統合攻撃戦闘機計画に参加している。
海軍戦力としては、12（平成24）年までにスウェーデンからアーチャー級（ヴェステルイェトランド級）潜水艦2隻を導入しているほか、13（平成25）年12月には、ドイツ製218SG級潜水艦2隻の購入契約（21（平成33）年以降、導入予定）を締結している。現在、推進している国産の哨戒艦8隻の建造計画に関しては、17（平成29）年5月に1番艦が就役しており、20（平成32）年までに全ての哨戒艦の運用を開始することを目標としている。
タイは、14（平成26）年7月、潜水艦隊司令部を発足させており、17（平成29）年4月には、中国からユアン潜水艦を今後11年間で合計3隻、購入することを海軍が計画、うち1隻の購入を閣議決定24し、フリゲートに関しては、12（平成24）年9月に2隻を導入する計画が閣議で了承され、1隻目として韓国製フリゲートの購入契約を締結した。このほか、13（平成25）年までに、スウェーデン製JAS-39グリペン戦闘機12機を導入している。
ベトナムは、17（平成29）年1月までにロシア製キロ級潜水艦6隻を導入したほか、18（平成30）年2月までにロシア製ゲパルト級フリゲート4隻の運用を開始した。航空戦力については、ロシア製Su-30戦闘機を04（平成16）年から順次、導入しており、これまでに最大36機が導入されたと報じられている。
