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第I部 わが国を取り巻く安全保障環境

第5節 オーストラリア

1 全般

オーストラリアは、戦略的利益、自由と人権の尊重、民主主義といった普遍的な価値をわが国と共有する特別な戦略的パートナーであり、わが国や韓国と同様、米国と同盟関係にある。

オーストラリアでは、15(平成27)年9月に行われた与党自由党党首選挙の結果、ターンブル党首が誕生し、保守連合のターンブル政権が発足した。16(平成28)年7月には29年ぶりとなる上下両院の同時解散が行われ、下院を制したターンブル首相が続投を決めている1。アボット前政権は、それまでの労働党政権による国防費の削減を非難し、より強じんな国防力の建設に向けて必要とみなす投資は積極的に行う姿勢を示してきたが、こうした方針はターンブル政権にも引き継がれている。

16(平成28)年2月に発表された国防白書においては、今後20年間、豪軍の高い能力水準を維持するため、豪政府として重要な投資を行っていくとして、兵力を増強するとともに、高性能な装備品の取得などを継続する方針を示している。また、国防予算についても、今後10年間における増額方針を明確に示すとともに、20(平成32)年までに対GDP比2パーセントを達成するという具体的な目標も提示している。対外関係においては、米国との同盟関係を引き続き最重要視しつつ、わが国を含むインド太平洋地域のパートナーとの実用的な関係の成熟・深化を目指していくとしている。さらに、ルールに基づく国際秩序における国益に資する共同オペレーションへの軍事的貢献という国防戦略上の目標を達成するため、海外への豪軍派遣などを通じて積極的に国際社会の平和と安定に向けた貢献を行っている。

1 同選挙では、下院において、自由党や国民党などからなる保守連合が、150議席中76議席と過半数を獲得し、ターンブル首相が続投を決定したものの、当初の89議席から大きく議席数を減らす結果となった。また、上院においては、保守連合が選挙制度を改正して少数派勢力からの議席奪還を狙ったものの、過半数獲得には至らず、今後も厳しい政権運営を強いられる可能性がある。実際、ターンブル政権は17(平成29)年11月、二重国籍問題で議員の辞職が相次ぎ、一時的に少数与党に転落したものの、現在は辛うじて過半数を維持している状況にある。