令和2年度 全自衛隊美術展入賞作品
絵画の部

総評(大谷 喜男氏のコメント)

 コロナ禍で自己を見つめる時間を絵画に求めたのだろうか。
隊員の部の出品作品が増えている。絵画は上手い下手ではない。制作に熱中している自分が、そこにいたことを知った時の満足感が貴重なのである。二次元の世界に三次元の世界を描き出す楽しさと難しさを知り、次への挑戦に繋がる。
 受賞には漏れたが、入選の「オオクチマガミのコロナ退治」は力みなぎる堂々たる力作、「再度、緑々と描く」は杉の木の対比が見事であり、「ジパング2020」はパズル式な抽象描写が印象に残る。他、隊員の部で注目した作品は、温かい色調の「夏」、冬の厳しさ伝わる「凍空の戦車隊」、「吉野桜」の美しさの対比、花々をエネルギッシュに描いた「雨後の華々」、夜景の美しい「光の港町」、哀愁の「岬にて」、空の雲と木の緑が美しい「支える力」、「狼頭」は大作に期待、家族の部では丁寧に描いた「神角寺渓谷」に注目した。
 これからも、大自然、人や動物、身近な所などからヒントを得て描き続けていただきたい。

内閣総理大臣賞

「神の子池」
倶知安駐屯地業務隊
野原 恵一朗

【講評】
 水面に沈み込む倒木、写る木々や浮かぶ落ち葉、射し込む光。
 画面下の熊笹から森林の奥行まで、見事な写生である。小さな島の様な部分も利いている。この場所に出合った感動が瑞々しく表現されている。観察力、描写力に優れた作品である。

文部科学大臣賞

「凛」
北部方面航空隊
第1対戦車ヘリコプター隊
吉田 萌々子

【講評】
 左から射し込む光により、人物を明と暗に分け、力強く描かれている。髪の毛の質感、穏やかさと精悍さを合わせ持つ顔、日頃より鍛え上げた体。現代に生きる若者が、多少の不安を抱えながらも、未来への希望が感じられ、心打つ作品である。デッサン力にも注目した。

防衛大臣賞

「いつもそこにいる」
第105基地システム通信大隊
第316基地通信中隊久里浜派遣隊
中塚 麻裕

【講評】
 森に魔物が棲むという。森の中に足を踏み入れたら、戻れなくなりそうな恐怖が募る。赤い丸は一体何か。作者の強いメッセージが感じられる。暗い森と明るい空との対比が異様に美しく、一層闇が際立って見える。

防衛大臣賞(家族等の部)

「愛する人を守る心」
隊員家族
早野 慎吾

【講評】
 過去にタイムスリップしたような、時空を越えたものが感じられる。細部まで丁寧に描き、物に対する愛情が伝わる。不安と希望が交錯し、作者の心理がよく表現されている。

入選作品一覧

「オオクチマガミのコロナ退治」
駐留軍等労働者労務管理機構
藤原 麻子

「再度、緑々と描く」
防衛医科大学校
小林 珠々加

「ジパング2020」
宇都宮防衛事務所
山田 浩二

2021年8月2日更新