平成25年度 防衛省シンポジウムの概要2「德地防衛政策局長による基調講演」

第1段落

今日は防衛計画の大綱について説明をするわけではありますが、重要なポイントは先ほどの小野寺防衛大臣のお話につきていますし、また会場の皆様から頂いた質問を拝見しても、内容を十分御存知いただいていると思います。先ほどの大臣の話の補足という形で何点か指摘をさせていただきたいと思います。適宜お配りした資料を参照するかたちで御説明させていただきます。

第2段落

まず、防衛計画の大綱の歴史的な経緯についてです。一番最初の昭和51年の大綱についてですが、冷戦期の中でもデタントの時代に書かれたものであります。国内においては自衛隊が合憲なのか違憲なのかについて今よりも大きな議論がされていた時です。また、この51年の大綱以前には、日本としての防衛力整備の目標となる水準については、必ずしも明確にはされていませんでした。そのような状況を踏まえ、日本としてどれくらいの大きさの防衛力を持つべきかについて、その水準を明らかにしたのが51年大綱です。この時は、我が国に対する侵略の未然防止のため、独立国として必要最小限の基盤的な防衛力を持つという「基盤的防衛力構想」を打ち出しました。そして平成7年の大綱は、「基盤的防衛力構想」を継承しつつも冷戦終結後の防衛力整備構想について明らかにしたものです。そして、平成16年の大綱は、平成13年に9.11テロが起こり、また、大量破壊兵器や弾道ミサイルの拡散といった課題が提起されていたことを踏まえて、我が国への侵略に対する実効的対応について踏み込んだ内容になっています。平成22年の大綱は、グローバルなパワーバランスの変化を踏まえて「動的防衛力構想」を打ち出しました。運用を重視するという考えのもとでそれまでの防衛大綱の考え方を見直しました。

第3段落

今回の大綱では、一層厳しさを増す安全保障環境、米国のアジア太平洋地域へのリバランス、震災の教訓、といったことを踏まえております。ポイントとなる以下の6つの点について説明します。一点目は、同時に策定された国家安全保障戦略との関係です。二点目は、統合機動防衛力の考え方。三点目は、防衛力の能力発揮のための基盤を重視すること。四点目は防衛生産・技術基盤。五点目は地域コミュニティとの連携。最後に経費、防衛関係費について説明します。

第4段落

一点目、国家安全保障戦略との関係です。防衛計画の大綱は、防衛政策の基本方針、今後の防衛力の役割及び目標となる水準を定めたものです。また、防衛計画の大綱の水準に達するための5年ごとの事業計画として、中期防衛力整備計画を策定しています。本来、国の防衛政策は国家安全保障戦略の中でしっかりと位置づけられたものでなければならず、自衛隊の防衛力だけで安全が図られているわけではありません。自衛隊の防衛力は国としての不可欠の要素ですが、あくまで安全保障全体のためのツールの一つだと思います。平成16年の大綱以降、国全体としての安全保障の考え方について防衛計画の大綱の中で明示していこうと試みてきましたが、今回はひとつの独立した本格的な政策文書として国家安全保障戦略を正式に決定しました。我が国の国家安全保障全般の基本的な考え方を明らかにできたと思いますし、それを諸外国にも明確に示すことができると思います。国家安全保障戦略の全体像が明らかになったことで、防衛力の非代替的な重要性も明らかになったと思います。また、防衛力は、我が国への侵略を未然に防ぎ侵略があればこれを排除するという我が国の意志と能力を表すものであるということを大綱で明示しています。

第5段落

次に統合機動防衛力についてです。「基盤的防衛力構想」は防衛力の空白をなくすことで我が国への侵略を未然に防ぐという考え方でしたが、平成22年に策定した防衛大綱において打ち出した「動的防衛力」の考え方では、警戒監視など普段からの活動を継続することや、有事の際に切れ目なく対応すること、さらに外国と協調した平和活動を推進することを重視し、自衛隊の運用を高めることに重点を置きました。しかしながら、厳しさを増す安全保障環境や大規模災害への自衛隊の派遣を踏まえ、自衛隊の活動を支える防衛力の質と量に不足があることが明らかになってきました。そこで、我が国の安全保障環境について少し説明しますと、北朝鮮の挑発行為や中国の東シナ海、南シナ海での活動の活発化などがあげられます。中国の国防費は、過去25年間で約33倍以上にまで増えています。これは中国自身による公表額であり、中国の実際の費用はよくわかっておらず、例えば、研究開発費や外国からの兵器の調達費用は含んでいないという指摘もあります。サイバー攻撃への対応といったものも課題として浮上してきています。平成22年の大綱以降、東日本大震災のような大規模災害が起こった場合に国民の生命・財産を守るという役割もより重要になっています。防衛力の質と量の見直しについてですが、陸海空の統合運用を踏まえた能力評価を実施することで必要な防衛力を導き出したことも統合機動防衛力の大きな特色です。統合運用の徹底、海上優勢・航空優勢の確保、機動展開能力の整備、指揮統制・情報通信能力の強化などに配意して状況の変化に臨機に対応できる防衛力を目指しています。

第6段落

次に、統合機動防衛力を発揮するための基盤を重視している点についてです。国家安全保障戦略におきましても、「国家安全保障を支える国内基盤の強化と内外における理解の促進」として、防衛生産・技術基盤など4つの事項を重視しています。今回の大綱ではこの部分を踏まえて、防衛力の能力発揮のための基盤として訓練、演習をはじめ11の項目について強化策を示しており、中期防ではそれぞれについてより具体的な方向性を示しています。この中で特に、人の重要性を強調させていただきます。自衛官の募集の主要なソースは18歳から26歳までの若者、特に高校を卒業したばかりの若者でありますが、今の少子化や大学進学率の向上等によって、募集環境が悪化してきています。自衛隊に対する社会からの信頼は有難いことに大きくなっていますが、高校生が自衛官を自分の将来の職業として意識しているかというとそのような意識は必ずしも高くないという印象です。自衛官が職業として意識されるために施策を推進していく必要があると考えています。また、精強性を旨とすることから一般公務員よりも若年で定年退職を余儀なくされる自衛官について、退職後の生活を支えることは重要であり、国の責務であります。再就職環境を改善するために企業の雇用インセンティブを高めるなどの方策を検討することも中期防に明記しています。また、長期間部隊を運用するために幅広く予備自衛官を活用することも必要です。

第7段落

防衛生産・技術基盤についてですが、現在日本では装備品の研究開発から製造、維持、整備、修理などはほとんど民間企業に依拠しており、防衛産業は防衛力そのものと言っても過言ではありません。この防衛関連産業が潜在的に抑止力の向上に寄与すると大綱でも記述しております。大手の防衛関連企業の多くは防衛の専業企業ではなく、民生部門と経営資源の融通を図りながら防衛部門を維持しているのが現状で、防衛産業は経営資源上民生部門に依存している事業形態です。したがって、日本経済全体の発展が防衛生産・技術基盤の強化にも寄与するといえます。生産・技術基盤の強化のために、基盤の将来ビジョンを策定することを大綱に盛り込んでいます。また防衛装備品の効率的な取得について、厳しい財政事情を踏まえ、よりよいものをより安く買うためにいくつか考え方を示しております。

第8段落

次に地域コミュニティとの連携ですが、基地、演習場の維持運営には地元の皆様の協力は欠かせません。自衛隊の募集、若年退職自衛官の再就職についても支援を頂いているわけであります。また、地方公共団体は、地域住民の生命・身体・財産を守る使命を有するとの観点から、緊急時、国と協力していただくことになっています。このようなことを踏まえ、今後ずっと地元と手を携えていくことができるよう、防衛省・自衛隊として普段からどうしたらよいのかということも併せて検討を進めていくところであります。

第8段落

最後に、防衛費の問題についてです。中期防衛力整備計画では向こう5年間の主要な事業とそれにかかる経費の総額を一体のものとして示しています。全体経費では、5年間で経費は実質24兆6700億円です。23年中期防と比較すると1兆2800億円増額しています。ただし、このうち7000億円については調達改革によって実質的な財源を確保していかなければならないとされています。これまでの調達改革では例えば、平成19-23年度の5ヵ年で8700億円を縮減しています。ここまで改革をした上で更に、改革を進めることは非常に重要な課題であります。防衛省としてはさらに一層力を絞って目標を達成していかなければならないと思っているところであり、この点についても専門家の方々から有意義な御示唆がいただければと考えています。

講演の様子 その1 講演の様子 その2

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