令和8年度自衛隊指揮官幹部会同 小泉防衛大臣訓示

本日、最高指揮官である高市早苗内閣総理大臣の御臨席の下、自衛隊指揮官幹部会同を開催できたことを大変嬉しく思います。

戦後最も厳しく複雑な安全保障環境を前に、私は幹部の皆さんに、これまでにないスピードで防衛政策を検討し、実行することをお願いしてきました。この場を借りて、日々、日本の防衛を共に前に進めてくれていることに心からの感謝を申し上げます。

令和8年熊本地震では、40度を超える記録的な酷暑にも見舞われ、被災地は極めて厳しい環境に見舞われました。

そのような中、自衛隊は発災直後から被害情報を収集し、人命救助を最優先に活動を開始しました。また、熱中症対策のためのクーラーの輸送や、給水支援、入浴支援など、被災された方々のニーズに応じた様々な支援を実施してきました。被災地の状況を的確に捉え、必要な支援を迅速に実施した隊員の姿は、自衛隊の高い能力と使命感を示すものです。任務に当たっている隊員の皆さんに心から敬意と感謝を表します。

先日、熊本の被災地を視察した際、鳥海西部方面総監は、取材中の記者にも被災している方がいることを把握し、私に報告してくれました。部隊指揮官の皆さんにおかれては、引き続き現場の状況を細やかに把握し、各種任務に当たっていただきたいと思います。

安全保障環境は、これまでにない速度で、複雑性・不透明性を伴って変化しています。これまで以上に強い危機感と切迫感を持って、防衛力の抜本的強化を着実に進めるとともに、その在り方について変革し続ける必要があります。

習志野駐屯地を視察した際、特殊作戦群と第1空挺団の隊員から、現場で行える救命処置に制限があるので、いざというときには自分たちで救命できるようにしてほしいとの要望を受けました。即日、衛生監に検討を指示し、日下衛生監はこれまでにないスピードで有識者への説明や規則改正などを行い、隊員の命を守るための救命処置を新たに追加することができました。

防衛力の変革は、誰かから与えられるものではありません。救命処置の例のように、現場の課題に向き合い、知恵を出し合い、試行錯誤を重ねる中で初めて実現されるものです。

幹部の皆さんには、変革の受け手ではなく担い手として、それぞれの持ち場で先頭に立ってもらいたいと思います。私は、防衛大臣として、変革に挑む皆さんを全力で支えます。

今やどの国も、一国だけで自国の平和と安全を守り抜くことは困難です。同盟国・同志国等との連携を、一層強化していく必要があります。

このため、私は防衛大臣として各国の国防大臣や国防当局関係者との会談を積み重ねてきました。こうした取組を支えてくれている国際担当部局の皆さんに、萬浪防政局長をはじめとして心から感謝します。また、海外における我が国の防衛外交を支え、各国との信頼関係の構築に日々尽力している防衛駐在官の皆さんにも感謝を申し上げます。

私自身が、様々な国の国防関係者と接してきた中で感じるのは、国や立場の違いを超えて、任務に向き合う者同士には共通する誇りと相互の敬意があるということです。そして、日々の交流や訓練を通じて培われる信頼関係こそが、協力関係の土台となり、極めて重要な財産となります。

その積み重ねを担っているのは、共同訓練や部隊間交流などの現場で真摯に任務に励む隊員一人一人です。私は、こうした現場での積み重ねこそが、我が国の防衛協力を支える大きな力になっていると考えています。

また、私たちが向き合う相手は、同盟国や同志国だけではありません。国家間に認識の違いや摩擦があるときこそ、制服を着た者同士、敬意を持って話し合うことが、よりよい安全保障環境を創出し、不測の事態を防ぐことにつながります。

その担い手は、幹部の皆さんであり、現場の隊員たちです。積極的に各国との連携強化に取り組んでいただきたいと思います。

先日、海上自衛隊厚木航空基地で海賊対処行動に向かう部隊の出国行事に出席した際、力強く行進する隊員の後ろを、小さなお子さんが一生懸命について歩く姿がありました。その光景を目にし、隊員を支える御家族の絆と、送り出す御家族の想いに改めて思いを致すとともに、隊員一人一人と、その帰りを待つ御家族を守り抜くとの決意を新たにしました。

国防という崇高な使命を担う隊員とその御家族は、国の宝であり、誇りです。

自衛官の処遇改善、退職自衛隊員や御家族への支援の充実、新たな庁の設置を含む体制の強化など、必要な施策を着実に前に進めていきます。

幹部の皆さんには、部下の任務だけでなく、その生活や健康、御家族にも心を配っていただきたいと思います。本年4月、日出生台演習場で戦車事故が発生し、他部隊の御家族にも御心配をおかけする中、武田第7師団長は所属隊員の御家族に手紙を書いてくれました。こうした心配りが、自衛隊と御家族との絆を支えています。

強い組織とは、隊員が安心して任務に専念でき、隊員とその御家族が誇りを持てる組織です。皆さん一人一人が、そのような組織づくりの先頭に立つことを期待しています。

最後に、幹部の皆さんには、これまでにないスピードで、前例にとらわれることなく考え、実行することをお願いしてきました。正解のない課題に向き合い、限られた時間の中で判断を下し、大きな責任を背負いながら部隊を率いてきたことと思います。人の上に立つということは、「孤独」を伴います。周囲に相談し、意見を聞くことはできても、決断を誰かに委ねることはできません。時には、その決断の理由をすべて説明することはできず、理解されないことまで含めて引き受けてきたと思います。

国民の皆様が安心して平和な日々を送ることができるのは、指揮官の皆さんと部下たち、そして御家族の献身的な努力のおかげです。皆さん本当に、ありがとうございます。

国民の命と平和な暮らしを守り抜くこと。我が国の領土・領海・領空を断固として守り抜くこと。そして、一人一人の隊員とその御家族を守り抜くこと。私は防衛大臣として皆さんの先頭に立ち、これらの使命を全うする覚悟です。

幹部の皆さんが、これからもそれぞれの持ち場で職責を全うし、国民の期待と信頼に応えることを強く期待し、私の訓示といたします。

本当にいつもありがとうございます。

令和8年9月2日
防衛大臣 小泉 進次郎