第54回自衛隊高級幹部会同 岸防衛大臣訓示

動画URL:https://www.youtube.com/watch?v=q3JADWJTvyM

防衛大臣の岸 信夫です。

本年9月に、私が防衛大臣を拝命してから、早3か月が過ぎました。24時間、365日、私と共に日夜、厳しい任務に精励していただいている全国の隊員諸官に改めて敬意と感謝を表するとともに、我が国の防衛という崇高な任務を共に担えることを改めて光栄に思います。

本来であれば、菅内閣総理大臣の御臨席の下、自衛隊高級幹部会同をここ市ヶ谷で開催する予定でしたが、昨今の事情を考慮した結果、本年は、VTCという形で実施することと致しました。画面を通した形ですが、今の私の想いを幹部諸官に伝えます。

防衛省・自衛隊の様々な活動は、国民一人一人、つまり、地域の方々の御理解があってはじめて可能となるものです。そしてそのことは、全国各地で任務にあたっている諸官が、一番よく理解しているはずです。

防衛省・自衛隊は、今年で創設66年。

創設から今日に至るまで、自衛隊は、その職務を力強く果たしてきました。

しかし、この66年という歩みを振り返ると、自衛隊に向けられた眼は、決して温かいものばかりではありません。

ただひたすら国民のことを思い、実直に日々の任務に取り組んできたにも関わらず、心ない批判に晒されたこともありました。

そんな逆境の中でも、諸官と諸先輩たちは、変わらず国民に寄り添い続けました。

創設以来、積み上げてきた国民の皆様からの信頼は、自衛隊の大きな財産であり、決してこの信頼を損なうことがあってはなりません。

我が国安全保障上の目的の達成には、全国47都道府県に所在する自衛隊部隊それぞれの日頃からの十分な能力発揮が不可欠であり、そのためには、地域の皆様の理解と協力が大前提であります。

今後も私が先頭に立って、それぞれの地域の皆様の理解と協力を得られるよう、全力を尽くしてまいります。

諸官におかれても、地域社会・国民の皆様と自衛隊相互の信頼関係をより一層深めるために、弛まぬ努力をお願いいたします。

諸官が日々実感しているとおり、我が国を取り巻く安全保障環境は、国際社会のパワーバランスが大きく変化しつつある中、一層厳しさと不確実性を増しており、安全保障環境上の課題に対抗するためには、我が国と基本的価値を共有する国々との緊密な連携が不可欠です。

私は、防衛大臣就任以来、防衛相会談を9か国と行い、地域情勢や防衛に関する諸課題などについて緊密に認識と方針をすり合わせてきました。

これからも引き続き「自由で開かれたインド太平洋」というビジョンの下、地域の特性や相手国の実情を考慮しながら、共同訓練、能力構築支援、防衛装備・技術協力等の手段を活用し、民主主義や法の支配といった基本的価値や安全保障上の利益を共有する国々と緊密に連携しつつ、防衛協力・交流を戦略的に推進してまいります。

特に、我が国唯一の同盟国である米国との連携は最も重要であり、日米同盟は我が国の安全保障の要です。

日米安全保障条約締結から今年で60年という節目を迎えたこの揺るぎない同盟を防衛省・自衛隊としても、堅持していかねばなりません。

私も、先月、ミラー米国防長官代行と電話会談を実施し、東シナ海、南シナ海や北朝鮮をはじめとするインド太平洋地域の情勢について、日米が引き続き緊密に連携していくことを確認いたしました。

我が国が、卓越した活動能力を有する米国と協力してグローバルな課題解決に取り組んでいくことにより、我が国の平和と繁栄は、より確かなものになります。

幹部諸官。

日米同盟をはじめ、二国間、多国間の安全保障協力が進む中で、多様な相手を理解し、自身の考えを言葉で伝えることがますます重要になります。

今後も引き続き、我が国の抑止力・対処力の強化のために、不断の努力を続けて下さい。

加速度的に変化する安全保障環境の中、我が国は、引き続き平和国家として更に力強く歩んでいかねばなりません。

そのためには、我が国自身が、国民の生命・財産と領土・領海・領空を主体的・自主的な努力によって守り抜いていく体制を抜本的に強化することが大切です。

我が国の安全を確保するための最終的な担保は、我が国自身の防衛力であり、それを支える隊員一人ひとりです。

防衛力の中核をなす自衛隊員が心身ともに健全な状態で、高い士気を保ち、その能力を十分に発揮できる環境を作っていくことが重要です。

それを実現させる有効な手立てが、仕事と家庭の両立支援や長時間労働の是正といった働き方改革です。特に、仕事と家庭の両立支援については、女性だけではなく男性隊員の家庭生活への参画を推進することが必要であり、これは女性の活躍推進や、ひいては、少子化対策の観点からも極めて重要であります。

幹部諸官は「男が育休を取るなんて」といった古臭い考えを改め、男女問わず育児休業の取得を更に推進し、防衛省・自衛隊さらには日本社会の価値観を率先して変えていきましょう。

自衛隊の最高指揮官たる菅総理の指揮の下、我が国と世界の平和と安定のため、そして国民を守るという崇高な任務の遂行のため、幹部諸官の一層の奮励努力を期待し、私の訓示といたします。

令和2年12月16日
防衛大臣 岸 信夫