今回は前回の約2倍の応募作品があり、書体と書風は、これまで以上に多種多様でした。書という芸術の多彩な姿が、各応募者の手づくりの作品によって、審査会場に所狭しと繰り広げられている感じでした。
概して、これまでにも応募され、受賞歴、入選歴のある方々の作品に水準の高いものが集中していたように思います。今回の受賞作、入選作は、その中でも出色の作品でした。残念ながら受賞・入選には至らなかった作品の中にも、日ごろの努力の姿が目に浮かぶような佳作もあり、今後の更なる精進が期待されるところです。
書の表現は、筆一本を武器にした、紙の上での自分自身との戦いです。自分が理想とする表現を求めて、現実の自分との落差を少しでも埋めるための戦いです。
過去の優れた書でも、自分がほれ込んだ師匠の書でもかまいません。それをしっかり鑑賞し、技術的に分析し、手習いを繰り返すことによって、実践としての制作力を蓄積することが大切です。このこと以外に、理想に近づくための道がないのが、書という芸術の宿命です。
「飲中八仙歌」
航空自衛隊第4整備群修理隊
的野 誠
有名な杜甫の詩を題材とし、行書と草書を織り交ぜた秀作。変幻自在の筆の操作により、文字の造形と墨の調子の変化が巧みに協合している。上下二段に分けて揮毫しているが、全体として一貫性があり、しかも行の組み立てと流れには物語性があるように見える。筆文字としての主役と脇役の演技が、無理なく書の舞台を引き立てている。
「臨 張瑞圖 行草書西園雅集図記軸」
海上自衛隊航空補給処
若泉 仁志
明代末期の大官僚で、失脚後は参禅と詩書画三昧の余生をおくった張瑞図(ちょうずいと)の書の臨書作。張瑞図の筆法を忠実に模倣した作ではない。むしろ作者自身の筆法が主となって表現されているが、墨の気を感じさせる秀作で、四行にわたる全体構成も巧みである。
2025年4月10日更新