令和6年度 全自衛隊美術展入賞作品
今回の「書道の部」は出品数は必ずしも多くなかったようです。しかし、上位入賞の作品はいずれも水準が高く、日ごろの修練が、この結果につながったものと思われます。
書は文字の表現にかかわる芸術です。表現方法は様々であり、作者の創意と工夫次第で、いろいろな作品を生み出すことができます。ただし、どのような表現であれ、書としての技術が必要です。
技術を無視した表現にも価値がないとは言えません。しかし、書としての技術を無視すると、単に墨がついた野性の文字の連続に終わってしまうことが多いようです。野性に流れず、品格ある個性的表現を追究するためには、どうしても書としての技術的訓練が欠かせません。
あらゆる優れた書の表現は、書の歴史的名品の中に見出すことができます。それらを無心に手習いすることの効用は絶大です。日々少しずつでも、そのことに当てる時間を工面することが肝要かと思います。
臨書の作品でも創作の作品でも構いません。次回もまた皆さんからの多くの出品を期待しています。
「臨趙之謙隷書張衡霊憲四屏」
自衛隊神奈川地方協力本部
山下 真美
【講評】
清代末期の書画篆刻の名手、趙之謙の隷書作品を臨書した秀逸の作。臨書は書を学ぶ上での欠かせぬ手段です。この臨書作品は、趙之謙が漢代の隷書を学んで打ち立てた独自の運筆法を、きわめて忠実に再現したもので、字形も的確に模倣されています。また、墨の感触も趙之謙の実作品に近似しており、見事な臨書作品に仕上がっています。十分時間をかけた念入りの傑作です。
「阿吽」
防衛研究所企画部企画調整課
須藤 勝則
【講評】
「阿吽」の二字を、唐代の名臣で書家としても優れた顔真卿の楷書法に則り、堂々と縦に並べた快作。このような大きな文字を二字だけ揮毫するためには、細心の準備と計画が必要になります。しかし、この大胆な筆致は、そのような舞台裏の苦心を飲み込んでしまっているようです。顔真卿の運筆を、余分な要素をそぎ取って再現し、字形もゆるぎなく、安定しています。やや薄い墨を使うことで、紙の紋様が墨の線に現れているところがあり、このことも作品全体の中で、効果的に働いているようです。