今回は決して出品数は多くなかったようですが、高水準の作品が多く含まれていました。書道の部では、漢字、かな、漢字かな交じり、そして篆刻の諸分野がありますが、特に様々な書体を有する漢字の分野に秀作が多かったように思われます。
書は文字を使った造形表現ですが、創作であれ臨書であれ、結局、作者の筆遣いの技術が、作品の水準を決めることになります。個性的な表現こそ重要だ、と言われます。しかし、本当の意味での個性的な表現をめざすためには、技術を磨くしかないのです。野性美と個性美を混同しないようにしなければならないと思います。確かな個性は、技術の練磨の中で、いつの間にか少しずつ現れてくるものです。歴史的な書の名品には個性的なものが多いですが、例外なく技術的な裏付けがあります。
日常の中で、出来るだけ筆をもつ時間をつくりだし、技術的向上を図りたいものです。次回もまた皆様からの多くの出品を期待しています。
「萬葉歌(まんようか)」
第6航空団整備補給郡修理隊
的野 誠
この作品は萬葉歌を素材にし、きわめて斬新な手法により制作された書の作品です。
まず、上下二段に文字を配置した全体構成に独特の工夫があり、金属的なイメージをもつ額装の雰囲気とも美しく調和しているように思います。
また、筆の運びが大胆で、墨の使い方も豪快であり、鑑賞者の目を引き込む迫力に満ちています。適度な線のカスレも、作品全体の立体感を醸し出していて、魅力的です。
「陶淵明・雑十二首より(とうえんめい・ざつじゅうにしゅ)」
第135地区警務隊国分派遣隊
長谷川 孝之
中国の名詩人・陶淵明の詩を素材にした作品です。
文字は陶淵明の時代には、すでにあまり使われなかった隷書に類するもので、特に竹簡等の肉筆の文字資料を巧みに応用した書風です。
作品全体の構成にも工夫が見られ、書かれている書風とうまく調和しています。運筆も慎重かつ大胆で、線質も歯切れがよく、颯爽とした作風に仕上がっているようです。文字と文字との上下の関係にも適度の余裕が見られ、全体として調和がとれています。
2021年8月2日更新