写真の部

平成30年度 全自衛隊美術展入賞作品

総評(野町 和嘉氏のコメント)

前回と比較し、自然風景が増えてきたのは良かったと思います。各作品とも非常にレベルが高く、特に描写力には目を見張るものがありました。情景や、技術力も申し分なく、よく撮影されていたと思います。
今回特賞に選んだ4点はバラエティに富んでおり、自衛隊の美術展という枠を超えた広がりのある作品になっています。
改めてよく見ますと、見応えのあるいい瞬間を捉えた作品が多く、みなさんの共感を呼ぶのではないかと思います。充実した展示になると思います。

内閣総理大臣賞

「廻る社」

「廻る社」
基礎情報支援隊付
海士長 小森 拓磨

講評

長時間の露光を重ねている作品です。よく見る、よく撮影される場所ですが、波の描写といい、非常にシュールなイメージが出ています。一般的に夜景の撮影ではこれほど鮮明にはなかなか写りません。波がこれだけ描写されて、星もしっかり写っている不思議な写真です。多重露光が成功した稀有な作品であると思います。なによりも日本でこれだけの星空が見られる瞬間はそうないと思いますし、色調も全く崩れておらず、素晴らしい描写で、よく撮影されています。聖域特有の緊張感、波の描写に非常に成功した作品です。

文部科学大臣賞

「ザ・パーン」

「ザ・パーン」
警戒航空隊
3等空曹 住吉 誠

講評

シャッタースピードが的確で、稀有なチャンスをものにした作品です。パイロットの掌の表情といい、水の描写といいワンチャンスを見事に捉えています。高速シャッターを使い逆光で撮影したことで、水しぶきが立体的に映っており、背後の戦闘機の配置を含め、構図的造形的にも非常にうまく切り取られています。ラストフライトの緊張感が表現されている印象を受けました。

防衛大臣賞

「火の鳥」

「火の鳥」
特科教導隊
陸曹長 山本 典子

講評

画面にノイズが出たことで、緊張感、訓練のリアリティが表現されています。なによりも、別の部隊の発射した照明弾が決定的な効果を生んでいます。富士山がしっかりと描写されており、右下のライトや発射の時の煙の動きも非常に効果的です。射撃の訓練の緊迫感と、夕景の中で行われている演習、訓練を超えたシュールなイメージがでています。緊迫感と迫力がある素晴らしい作品です。

防衛大臣賞(元隊員等・家族の部)

「働くオジィ」

「働くオジィ」
元航空自衛官
吉直 新一郎

講評

人っ子一人いないサトウキビ畑の一本道を、野良仕事帰りの老人が歩いてくる。
たち上る白雲、道路に落ちた影。
あっけらかんとした、いかにも沖縄らしい空気感のなか、カメラに向かって微笑む姿が健やかでいいですね。前で結んだややくたびれた作業着の着こなしも板についていて、決定的な一瞬を切り取っています。

入選

隊員等の部:5点

「我が子に届ける」

「我が子に届ける」
第2対舟艇対戦車中隊
2等陸尉 髙橋 忠照

「またきてね」

「またきてね」
第39普通科連隊
1等陸曹 中野渡 茂治

「鎮魂の海~水深60mに眠る駆逐艦追風~」

「鎮魂の海~水深60mに眠る駆逐艦追風~」
対潜支援群
2等海曹 谷口 剛

「雪曇りの中で」

「雪曇りの中で」
第6高射群
2等空尉 中島 貴史

「春の舟めぐり」

「春の舟めぐり」
防衛医科大学校
学生 野口 桃佳

元隊員等・家族の部:2点

「朝霧の上富良野丘陵」

「朝霧の上富良野丘陵」
元陸上自衛官
多田 吉志

「天使の翼」

「天使の翼」
中島 綾乃