平成26年 小野寺防衛大臣 年頭の辞

平成26年 小野寺防衛大臣 年頭の辞

明けましておめでとうございます。

平成二十六年の年頭に当たり、国内外で日夜任務に精励している隊員諸君に、新年のお慶びを申し上げます。

昨年は、東京が2020年のオリンピック・パラリンピックの開催地に決まるなど、大変喜ばしい出来事がありました。

一方で、中国は、火器管制レーダーの照射や、公海上空の飛行の自由を妨げる「東シナ海防空識別区」の設定、公船による度重なる領海侵入など、我が国周辺海空域において活動を拡大・活発化させ、かたや、北朝鮮は、核実験実施を含む軍事的挑発を行うなど、我が国を取り巻く安全保障環境が一層厳しさを増した年でもありました。

また、国内外で過去に経験したことのない豪雨や台風などに見舞われ、伊豆大島などで災害派遣を行ったほか、フィリピンにも自衛隊の国際緊急援助隊としては過去最大の1180名体制で救援に当たりました。我が国としては、自衛隊の高い災害対処能力を活かし、東日本大震災で同国から受けた支援に対する恩返しができたと思います。

私は、防衛大臣就任以来、直接隊員諸君を激励するとともに、このような厳しい安全保障環境を間近で確認するため、北海道から沖縄まで50を超える駐屯地・基地を視察いたしました。行く先々で、黙々と真剣な眼差しで任務に取り組む隊員諸君に接してきました。東日本大震災において、私の出身地、宮城県気仙沼市を含む、様々な被災地で献身的な救援活動に当たった多くの隊員諸君にも会うことができました。

今、そうした頼もしい諸君と共に二度目の新年を迎えることができ、大変嬉しく思います。

本年、防衛省・自衛隊は発足から60年を迎えます。この節目の年の初めに当たり、諸君と共に取り組むべき主な施策について、以下、申し述べたいと思います。

一点目は、現下の厳しい安全保障環境に対応した、防衛力の強化です。

昨年末、外交・安全保障政策の司令塔として新たに発足したNSCにおける議論を経て、さっそく、外交・安全保障政策等の基本指針となる「国家安全保障戦略」が我が国として初めて策定されるとともに、この指針を踏まえた「防衛計画の大綱」及び「中期防」が決定されました。

我々は、この方針に従い、国民の生命・財産、我が国の領土・領海・領空を断固として守り抜くという強い決意を持って、自衛隊に求められる役割に十分対応できるよう、防衛力の「質」と「量」を必要かつ十分に確保し、抑止力と対処力を高めていかなければなりません。このために、幅広い後方支援基盤の確立に配慮しつつ、高度な技術力と情報・指揮通信能力に支えられ、ハード・ソフトの両面で、即応性や持続性、強靱性、連接性を重視した「統合機動防衛力」を構築してまいります。

具体的には、統合機能の更なる充実に留意しつつ、特に、警戒監視能力、情報機能、輸送能力、指揮統制・情報通信能力のほか、島嶼部に対する攻撃への対応、弾道ミサイル攻撃への対応、宇宙空間及びサイバー空間における対応、大規模災害等への対応、並びに、国際平和協力活動等への対応のための機能・能力を重視して、統合防衛力を整備してまいります。

二点目は、各種事態に際し迅速かつ的確に対処しうる危機管理体制の強化です。

昨年の在アルジェリア邦人に対するテロ事件から得られた課題を解決するため、自衛隊法が改正されました。これにより、自衛隊による在外邦人等輸送について、従来までの航空機や船舶に加え、車両による輸送も可能となるなど、外国における緊急事態に際し、より適切に対応できるようになったと考えております。

また、昨年は、北朝鮮による弾道ミサイル発射の示唆を含む挑発的言動に対処するため、必要に応じて所要の部隊を展開するなどの措置を講じてまいりましたが、今後とも、国民の生命・財産を守るべく、即応態勢を維持・向上させなければなりません。

さらに、6年後のオリンピック・パラリンピック東京大会の成功の基礎となる日本の安全を守るため、防衛省・自衛隊としても、平素から広域にわたる常続監視を行うとともに、各種事態への対処態勢の実効性を一層高めてまいります。

三点目は、日米同盟の更なる強化です。

日米同盟は、我が国の安全のみならず、アジア太平洋地域の平和と安定のために引き続き重要です。我々は、昨年10月、初めて4閣僚が東京に集まる形で開催された歴史的な「日米2+2」において打ち出した方向性を踏まえ、「日米防衛協力のための指針」を見直すとともに、弾道ミサイル防衛、サイバー、共同訓練などの分野での防衛協力も拡大し、同盟関係をより強固にしてまいります。同時に、米軍の抑止力を維持しつつ、沖縄を始めとする地元の負担軽減を図るため、在日米軍再編計画も着実に進める必要があります。

また、オスプレイについては、昨年に引き続き沖縄県外での訓練の増加を図るため、自衛隊との訓練も含め様々な機会を活用してまいります。

四点目は、国際的な安全保障環境の安定化のための積極的な取組です。

自由と民主主義といった基本的価値を、安全保障上の利益を、我が国と共有する関係諸国との防衛協力・交流を一層進めてまいります。私自身、昨年は、アジア太平洋や欧州・ロシアの国防大臣などの間で関係強化に努めたところでありますが、今後とも、様々な機会を通じて関係を強化してまいります。中国に対しては、不測の事態の防止・回避のための海上連絡メカニズムの早期運用開始に向け、引き続き対話を働きかけてまいります。

また、国際協調主義に基づく積極的平和主義の下、海洋国家たる我が国の繁栄に不可欠な海洋の安全確保のためにも重要なソマリア沖・アデン湾における海賊対処行動や、昨年派遣部隊の活動地域を拡大した南スーダンPKOなどについても、現地情勢を注視しつつ、引き続き取り組んでまいります。

現在、自衛隊は、諸君や諸君の先輩たちの60年にわたる積み重ねにより、国内外から高い評価を得、大多数の国民から期待と信頼を集める組織となっております。

新年を迎えた今、諸君におかれては、こうした国民の期待と信頼に一層応えるべく、改めて、一人一人が、「国民のための自衛隊」の一員として、我が国を守り、国民生活の基盤を守るという高い意識をもって、厳正な規律を維持しつつ、一層職務に精励されることを切に望みます。

私も、諸君と共に、国民の生命・財産、我が国の領土・領海・領空を断固として守り抜くという決意を新たにし、全身全霊をもって、職務に当たる所存です。

最後になりますが、隊員諸君並びに御家族の皆様の益々の御健勝と御多幸を心からお祈りするとともに、本年が、防衛省・自衛隊発足60周年という節目に相応しい成長の年となることを祈念し、私の挨拶といたします。

平成26年1月6日
防衛大臣 小野寺 五典