防衛大臣記者会見

日時
令和5年12月15日(金)11:07~11:31
場所
防衛省A棟11階第1省議室
備考
木原防衛大臣閣議後会見

動画版①

動画版②

1 発表事項

国産のスタンド・オフ・ミサイルの早期整備についてであります。防衛省・自衛隊は、我が国への侵攻部隊を早期・遠方で阻止・排除するため、スタンド・オフ防衛能力を強化することとしています。より厳しい安全保障環境を踏まえて、先般、スタンド・オフ防衛能力の構築の更なる前倒しを行うよう私から事務方に指示し、検討を行ってまいりました。その結果、国産スタンド・オフ・ミサイルである12式の地対艦誘導弾の能力向上型、地上発射型であります。これについて、これまでは令和8年度から配備を計画していたところ、令和7年度から配備することが可能となりました。この前倒しは、我が国が実践的なスタンド・オフ防衛能力を早期に獲得しなければならないとの切迫感を具現化したものであります。その他の研究開発中の国産スタンド・オフ・ミサイルについても、引き続き、より早期の取得に向けて検討を行っているところであります。防衛省としては、引き続き、早期のスタンド・オフ防衛能力の構築に向けて取組を進めてまいります。

2 質疑応答

Q:13日に自公の与党ワーキングチームが装備移転三原則見直しに関する提言を正式決定し、国際共同開発の第三国への直接移転が見送られましたが、大臣の受け止めと、第三国移転ができなければ、次期戦闘機などの単価が上がるなどの影響も指摘されますが、開発計画にどのような影響が出るとお考えかお聞かせください。また、提言では、結論を得るべき時期についての言及がありますが、政府として結論を得るべき時期のめどや、与党に伝達するのはいつ頃になるのかお聞かせください。

A:与党ワーキングチームにおいては、本年の4月から合計23回の精力的な議論を経て、政府への提言が取りまとめられたと承知しており、与党ワーキングメンバーをはじめとする関係者の御尽力に感謝をいたします。政府としては、その提言に示された内容を踏まえて、第一弾として、防衛装備移転三原則及び運用指針を年内に改正したいと考えています。その上で、質問の2番目になりますでしょうか、国際共同開発・生産における第三国への完成品の直接移転を含め、残された課題について、ワーキングチームにおいて引き続き議論を継続するというふうにされていることから、その具体的な内容に関わる御質問というのは、この場では、与党のことですので、差し控えさせていただきます。また、今後、次期戦闘機に係る議論が本格化する中で、結論を得るべき時期という御質問につきましては、与党ワーキングの提言を踏まえて調整していくということになりますが、いずれにしても、我が国としての対応について、年明け以降もですね、政府・与党一体となって議論を継続していきたいというふうに考えております。

Q:安保関連の3文書についてお伺いします。明日16日で国家安全保障戦略など安保関連3文書の閣議決定から1年となります。冒頭大臣からスタンド・オフ・ミサイルの早期整備の話もありましたけれども、安保関連3文書に基づいて具体的な取組、今進んでいると思います。この1年の取組の状況の評価、今後の課題について、大臣のお考えをお聞かせください。

A:3文書について、ちょうど1年ということでございます。戦後最も厳しく、そして、複雑な安全保障環境、常々申し上げておりますが、そういう中において、国民の命と平和な暮らし、そして、我が国の領土・領海・領空を断固として守り抜くために、約1年前に策定された3文書では必要となる防衛力の内容をしっかりと積み上げておりました。私も当時は与党ワーキングチームにも参加しておりましたし、関わった者の一人でもありました。その後、各種取組の進捗について申し上げれば、防衛力整備計画対象期間の今年度1年目ということになるわけですが、その令和5年度においては、当初予算で過去最高額となる約6.6兆円を計上し、将来の防衛力の中核となるスタンド・オフ防衛能力、無人アセット防衛能力等の強化を図ったほか、冒頭発言でも申し上げたように、スタンド・オフ・ミサイルの取得開始時期の前倒しの実現、また、防衛生産基盤強化法、これを、法律を成立をさせていただきました。その成立・施行、あるいは同法に基づく基本的な方針の策定など、防衛力の抜本的強化の実現に向けて各種取組を一つ一つ着実に進めることができたというふうな認識をもっております。課題もありまして、課題としましては、この記者会見の場でも御質問がありましたし、国会でも質問もありましたけども、円安やあらゆる物価の上昇などによって、結果として装備品価格の上昇への対応といった点が挙げられますが、防衛力整備の一層の効率化・合理化を徹底することによって、計画に定められた金額の範囲内で、必要な防衛力の強化をしっかりと行っていく考えであります。引き続き、防衛力の抜本的強化の速やかな実現に向けて、防衛省一丸となって、全力で取り組んでいくとともに、国民の理解をしっかりと得られるよう、丁寧な説明や、わかりやすい形での情報発信を心掛けてまいりたいというふうに思っております。

Q:最初の質問の関係で、国際共同開発品の第三国輸出の関係で質問なんですけれども、昨日、イギリスとイタリアの防衛大臣との会合ありましたが、両国は輸出を重視するという立場なんですが、日本の今の現状の制度についてですね、日本の立場について、大臣その中でどのように説明をされたかということと、先方の大臣がですね、どのような反応があったか教えてください。

A:昨日の日英伊の防衛大臣会合につきましては、英国、イタリアそれぞれ国防大臣からGCAP全体にとっての輸出の重要性であるとか、あるいは3か国の平等なパートナーシップの精神に基づく貢献について重ねて言及があったところであります。実際にこれ外交に深く関わる問題であり、また、それぞれの国の安全保障に関わる問題でありますので、相手との関係上もありますので、あまり詳細を語ることはできませんけども、そういった今申し上げたようなことを言及があったということでございます。

Q:大臣から日本の立場についてはどういった説明をされたかというのはありますか。

A:これも相手に申し上げることなので、日本の立場とはいえですね、相手との関係に関わること、しかも次期戦闘機という非常に機微な装備品に関わることですので、これまで、防衛省の中で、あるいは与党の中でですね、問題意識として持っているそういう課題であるとか、あるいは今後の、これはある意味、GIGOというですね、新しく設立された機関の問題でもあります。民間の会社にも深く関わることでもありますので、そういったことを、官民のセッションというのもありましたから、そういったことについて、いろんな話をさせていただいたということであります。

Q:南シナ海の情勢についてお伺いします。フィリピン政府が10日の朝にですね、フィリピン軍の輸送船が南シナ海で中国海警局の船に衝突されて損傷したとして非難する声明を発表しました。こうしたことなど、南シナ海をめぐっては、中国によるフィリピン船舶への妨害活動が頻繁に発生しておりますけれども、防衛省としての受け止めをお伺いできればと思います。

A:御指摘の事例も含めまして、南シナ海においては近年、中国の海警局に所属する船舶等によるフィリピン船舶への妨害活動が頻繁に報告されているということは承知しております。防衛省としては、こうした地域の緊張を高める行為を深刻に懸念しております。南シナ海をめぐる問題というのは、地域の平和と安定に直結し、我が国を含む国際社会の正当な関心事項であり、南シナ海における力による一方的な現状変更の試みや緊張を高めるいかなる行為にも強く反対いたします。また、防衛省としては、南シナ海に限らず、いかなる地域においても、法の支配に基づく自由で開かれた海洋秩序が重要であるというふうに考えています。今後とも法の支配に基づく自由で開かれた海洋秩序の維持・強化のため、引き続き、米国を始めとする国際社会と連携していきたいというふうに考えております。

Q:次期戦闘機の話に戻って恐縮なんですけれども、そもそも論として、今、共同開発した装備品を日本が第三国に輸出できないというこの現状について、大臣としてどういうふうに受け止めていらっしゃるか御見解をお願いいたします。

A:今回、与党ワーキングによって、提言が取りまとめられました。そして、それには、一定のですね、変更内容というものも提言として中には、盛り込まれているところです。第一弾として今回は、提言がされたものというふうに考えておりまして、その第一弾に基づいて防衛装備移転三原則及び運用指針というものを年内に改正したいというふうに考えています。その上で、第三国への完成品の直接移転を含めてですね、残された課題もあるわけで、これは、もうワーキングチームにおいて既に会見をされたと聞いておりますが、引き続き議論は継続ということであり、年末年始を含めてですね、これは速やかに議論は、継続するというような話も伺っております。その具体的な内容についてはですね、なかなか政府の立場ではお答えすることは差し控えなければいけませんが、いずれにしても次期戦闘機の将来的な第三国への輸出ということはですね、これは昨日の会談、3か国で会談をしましたけれども、これは英国もイタリアもですね、次期戦闘機の輸出というのは非常に重要視しているということは、よく分かりました。その可能性についてですね、3か国の様々なレベルで検討していますけども、現時点においては、何ら決定したものというのはございません。ですので、その点については、予断をもって答えるというのはなかなか難しいということになります。

Q:話題変わりまして、防衛大臣補佐官について伺います。安倍派の政治資金パーティ問題に絡んで和田補佐官が辞任されました。防衛省として注力する防衛生産・技術基盤強化の担当ということで、初めて補佐官を置かれて2か月で離れることになったわけですけれども、今後の装備移転や産業強化など、政策への影響をどうお考えか、また、後任を置くお考えがあるかどうか、2点お願いいたします。

A:和田補佐官におかれては、着任以降ですね、様々な活動をお願いしてきました。例えば、オーストラリアで開かれた国際展示会というものに参加をしていただいたりですね、また、昨日の会議、次期戦闘機の共同開発についてもですね、3か国で大臣会合というのを定期的にやってたわけですが、私が国会会期中で参加できない場合には、例えば和田補佐官にはちょうどローマで開催された時には、その英国のシャップス大臣であったり、イタリアのクロセット大臣と直接御議論をしていだくということもやっていただきました。また、我が国の防衛生産・技術基盤の担当ということでしたから、その点においても強化に取り組んでいただいたところであります。戦略3文書でも明記されているとおりですが、我が国の防衛力の抜本的強化を実現する上では、いわば防衛力そのものである防衛生産・技術基盤の維持・強化は不可欠でありますので、防衛省としては、今後とも、必要な取組を着実に進めまいりたいと考えておりますので、今後の大臣補佐官の任命については、これは人事のことでありますので、適切に考えていきたいというふうに思っております。

Q:冒頭、御紹介あった12式の能力向上型の前倒しに関連してなんですけども、どのような工夫をして、前倒しができるようになったのかっていうのと、前倒しによって、取得する予算が更に追加で必要になった予算面への影響があるのか教えてください。

A:企業との関係でありまして、その詳細についてなかなか申し上げることは控えなければいけないと思ってますが、企業とは調整を行ったところですね、今回の前倒しについては、物理的に可能であるということになったわけです。今般の前倒しは既に12式の地対艦誘導弾能力向上型はこれまで、開発の試作の経費として、既に令和3年度、4年度、5年度、そして量産の経費として5年度ということでですね、ずっとこれは予算を獲得してきたところでありまして、その結果として私の指示にもよってですね、前倒しができないかというその期待に応えていただいたということになります。これ一般論として申し上げるならばですね、現在開発中の誘導弾の前倒しというのはそれぞれ工程があると思ってまして、開発のプロセスであるとか、誘導弾の製造のプロセスとか、また、プラットフォームの製造プロセス、それのみならずですね、運用を開始をするためのプロセス、そういったものがあるというふうに考えてまして、早期配備のための採りうる措置を総合的に調整して、企業側ともですね、細かく詰めながら、こういう前向きな結果になったというところであります。

Q:予算面はどうですか。

A:予算については、もう既に計上しているその範囲内でやっていくということになります。

Q:関連なんですけども、今回の12式のミサイルの前倒し取得であったり、トマホークの前倒し取得が実現しますけれども、この前倒しによって、日本の抑止力強化にどのような影響があると大臣お考えですか。

A:まず、スタンド・オフ・ミサイル、これは国産のものと、輸入のものとあるわけですけども、私はまず、全般について、とりわけまずは、最終的には国産のスタンド・オフ・ミサイルを重視しているわけですので、そちらの方の前倒しをできないかということですね、申し上げてきたところです。そして、結果としては、先に米国製のトマホークの前倒しから、それが先に前倒しすることになったんですが、その後、今回国産ということになりました。これも、常々申し上げておりますが、このいわゆる反撃能力、そして、それを担うスタンド・オフ・ミサイルというのはですね、今の本当に厳しい安全保障環境の中において、我が国が実践的なスタンド・オフ防衛能力というものを早期に獲得しなければならないという、先ほども申し上げましたけども、切迫感というものを具現化したものでありまして、これによって抑止の意思と、そして能力ということを示すことが可能となるというふうに考えております。

Q:安保関連3文書から1年に関連してなんですけども、日本の防衛力強化と、この1年の様々な外交の取組など安保3文書を具現化していくこの1年の取組によって、東アジアを含む日本の周辺の地域の軍事的緊張感というのは低下してると思われますか。情勢認識として、日本周辺の軍事的緊張は日本の取組によって偶発的な衝突も含めて、軍事的緊張が下がっている、低下していると思われますか。

A:勿論これは相対的なものでありますので、今現在も特に南シナ海においてですね、例えば一方的な力による現状変更への試み、挑戦的なそういう試みというものが行われているということ、そして、北朝鮮からは、先般もですね、衛星の発射ということでしたが、実際には弾道ミサイルの技術を使った衛星だったわけで、これは明らかに国連安保理決議違反ということになります。そういう刻々と脅威というのは増えていると、あるいは拡大していると、その中で私どもも、防衛力、あるいは対処力というのを強化していく、そういう相対的なものなので一概に言えないと言いますか、その時点時点で、様々なそういうフェーズが変わっていくんじゃないかなというふうに思っております。

Q:冒頭発表ありました、12式能力向上型の配備前倒しについて教えていただきたいんですけれども、配備先の検討状況、また、最終的には、全ての12式地対艦誘導弾が能力向上型に置き換わるという理解でよろしいのか、見通しを教えていただけますでしょうか。

A:配備先というのは、今回、スタンド・オフ・ミサイルの配備場所というのは、現在検討中でありまして、決まっていないということであります。

Q:順次換えていって、最終的には大臣、全て置き換わるという見通しなんでしょうか。

A:現在、開発中のまだ他のスタンド・オフ・ミサイルなどもあるので、その研究開発中のものも含めましてですね、その進捗を見ながらというところになっていくと、今の御質問は、米国製のものと置き換えていくのかとう、そういう御質問ですか。

Q:国産の12式の能力向上型を、今、12式の従来型がある場所は全て能力向上型に変更していくということでよろしいのか、ということを伺いたくて。

A:当然、能力向上型の方がアップグレードされているというところですので、当然、そういうものを目指していくということになりますが、あるいは配備する場所によってですね、必ずしも長射程というものが必要にならない場合も、そういうケースもあると思いますから、その点は、どこに配備するかによってちょっと状況は変わってくる、どの辺りをカバーできるのかというところとリンクしてくる、そういう問題だと認識をしております。

以上