防衛大臣記者会見

日時
令和4年12月23日(金)11:18~11:41
場所
防衛省A棟11階第1省議室
備考
浜田防衛大臣閣議後会見

1 発表事項

 なし

2 質疑応答

Q:先日、日本が国家安全保障戦略など3文書に反撃能力を保有をしたことについて、北朝鮮の外務省報道官が反発する談話を出しました。これに対する大臣の受け止めと、今後、政府・防衛省としてどのような対応をお考えでしょうか、お願いします。

A:北朝鮮外務省がですね、我が国の国家安全保障戦略等が策定されたことについて反発する談話を発表したことは承知をしておりますが、北朝鮮の発表の内容の一つ一つについてコメントすることはいたしません。いずれにせよ、北朝鮮は、今般の3文書の策定以前から、かつてない高い頻度と新たな態様でのミサイル発射を繰り返し、朝鮮半島、そして地域の緊張を著しく高めてきたところであります。北朝鮮による、急速に挑発をエスカレートさせる一連の行動は、我が国、地域及び国際社会の平和と安全を脅かすもので、断じて容認できるものではありません。その上で、我が国の防衛政策は特定の国や地域を念頭に置いたものではありませんが、国民の命と平和な暮らしを守り抜くため、反撃能力を含む、防衛力の抜本的強化にしっかりと取り組んでまいりたいと考えております。

Q:反撃能力に関してお伺いします。2003年の参院外交防衛委員会で敵基地攻撃能力に必要な装備体系を一般論として戦闘機からの攻撃を例に説明されていますが、政府が今回保有を決めた、反撃能力を行使する際に必要と考える装備体系について、地上発射型ミサイル、艦艇発射型、戦闘機発射型それぞれで必要な機能について教えてください。

A:御指摘の答弁についてはですね、あくまでもイラクにおける米国の航空機による攻撃力について、過去の事例に基づき一般論としてその代表的な機能を述べたものであります。今般、我が国が保有することとした反撃能力は、スタンド・オフ防衛能力等を活用するものであって、これを行使する際に活用される自衛隊の能力の詳細については、実際に発生した武力攻撃の規模、態様等に即して判断されるべきものであるため、使用する具体的な装備品についてお答えをすることは困難であります。その上で申し上げれば、スタンド・オフ防衛能力の発揮に必要な機能については、精確な目標情報の収集、そしてリアルタイムな情報伝達や指揮統制といった機能が必要になると考えております。

Q:関連なんですけれども、その反撃能力を行使する際に、移動式のミサイルを含む標的となる相手の軍事拠点を正確にリアルタイムに把握するための情報収集体制について、防衛力整備計画に盛り込んだ装備品の中には、こうした機能を果たす目的のものがあるのか、あればどれか教えてください。また、反撃能力を行使する際のそのターゲティングの情報収集は日本が自前ですべて行うのか、米国に頼る考えなのか、現時点での見解をお願いします。

A:防衛省としては、我が国に侵攻してくる艦艇等に対して、その脅威圏の外から対処するスタンド・オフ防衛能力を強化することとしており、その能力の発揮には、精確な目標情報の常時継続的な情報・分析能力の整備が不可欠であります。この認識の下、防衛省としては、各種取組によって補完しつつ、目標の探知・追尾能力の獲得を目的とした衛星コンステレーションの構築などの事業を行っていく予定であります。その上で、反撃能力は、こうしたスタンド・オフ防衛能力等を活用するものであり、また、弾道ミサイル等の対処と同様に、日米で協力していくものであります。日米の協力の内容の詳細についてはですね、今後米側と協議してまいりたいと考えております。

Q:今の反撃能力に関連してなんですけれども、大臣、前回の20日の記者会見でですね、反撃能力の行使のタイミングに関連して、他国が我が国に対する武力攻撃に着手した時が、武力攻撃の発生のタイミングであることは変わらないと御説明されたと思うんですけれども、ただ一方でですね、実際には、現在ミサイルの発射形態は多様化して、特に第一撃の探知が難しくなって、着手時点での対処は難しいとの指摘がなされていますけれども、大臣のお考えをお聞かせ願いますでしょうか。

A:お尋ねの点についてはですね、前回の会見においては、法理的観点からお答えをさせていただきました。その上で、我が国へのミサイル攻撃に対する対応能力を踏まえた実態的な観点から申し上げれば、周辺国・地域におけるミサイル関連技術の著しい向上に伴い、相手側のミサイル発射の特に第一撃を事前に察知し、その攻撃を阻止することは難しくなってきております。こうした状況を踏まえ、国家防衛戦略においても、「ミサイル防衛網によって、飛来するミサイルを防ぎつつ、相手からの更なる攻撃を防ぐため、我が国から有効な反撃を相手に加える」能力を保有すると記載したところであります。

Q:スタンド・オフ・ミサイルについてお伺いしたいんですけれども、国産を開発されることを決められたりとかですね、戦闘機発射の他のミサイルを導入されることを決めてらっしゃるんですけれども、今回、なぜ新しくトマホークの取得を決められたのか理由を教えてください。

A:今、ご指摘の点については、我々このスタンド・オフ・ミサイルというものを、開発をこれからしていくわけでありますが、それを導入するまでの間の、要するに、どうするか、その間どうするのかということの中で、今、現在、そこに存在するものを入手するということを考えながら、検討してきたところもあるわけであります。その中で、長距離射程のものということになると、我々とすればトマホークというものが選択肢の中にあったということであります。

Q:ただ導入の時期が2026年度ということは、ひょっとして12式のですねミサイル配備の時期、上手くいけば、あまり変わらないような気もするのですが、その辺トマホークで間に合うとお考えでしょうか。

A:時期的な長さの問題から言えばですね、開発していく段階において、何が起きるか分からないところもあるわけでありますんで、そういったことも踏まえて、その抑えとしてのものが必要であると、いうふうに考えたところであります。

Q:防衛費を増やす理由についてお伺いいたします。16日に閣議決定した防衛力整備計画では、スタンド・オフ防衛能力とか弾薬取得にそれぞれ5兆円の事業を見込んでおりまして、近く閣議決定する来年度予算案でもトマホークの取得費2千億円などと報じられております。防衛省はBMD用の迎撃ミサイルが必要量の6割しか確保できていないと一例だけ挙げて説明していましたけれども、これら長射程ミサイルに関して、積算の根拠ですとか、今回の防衛費増によって、どういう事態に、どういうふうに対処できるようになるのか、そういった点について具体的にお聞かせください。

A:防衛省においてはですね、防衛力の抜本的強化に向けて、スタンド・オフ・ミサイルを含め、我が国を防衛するため、十分な弾薬・誘導弾等の所要量を見定めるために様々な試算を行ってまいりましたが、その詳細は、我が国の能力や手の内が明らかになるおそれがあることから、お答えできないことを御理解いただきたいと思います。その上で、我が国に侵攻してくる艦艇や上陸部隊等に対して脅威圏の外から阻止・排除できる必要かつ十分な能力を保有するため、国産・外国製の各種のスタンド・オフ・ミサイルの取得を進めることとしております。こうした取組を通じて、2027年度までの5年間で、スタンド・オフ・ミサイルを実践的に運用する能力を獲得し、我が国への侵攻が生起する場合に、我が国が主たる責任をもって対処し、同盟国等からの支援を受けつつ、これを阻止・排除し得る防衛力を構築してまいりたいと考えているところであります。

Q:関連して、中々手の内になるので具体的な弾の数とか言えないというのは理解できるのですけれども、一方で、そのこれだけの防衛費増額を5年間で決定して、国民に負担をお願いする中で、もう少しその理由を具体的に説明できる方がいいんじゃないかなと思うですけれども、そういったことについては、大臣はどういうふうにお考えでしょうか。

A:これからそういった意味においては、今御指摘の点もついてですね、いろいろと検討してまいらなければならないと思っておりますが、今の現時点でこの我々がこれを御説明できない、詳細にお答えできないということについてはですね、今後また、努力をしていきたいなというふうには思いますが、今後どのような検討がなされていくのかというのは、今ここでお話ができないので、このようにお答えしているというふうに思います。

Q:先ほど、反撃能力のいわゆる着手、第一撃のお答えについて確認なんですけれども、法理上はともかくですね、部隊運用上ですね、この第一撃の被害が実際に発生してからでないと、反撃能力を行使できないという御認識なのか、それとも実際に被害がない着手段階で反撃能力を行使することも排除しないということなのか、そのあたりの解釈を改めてお願いします。

A:我々とすれば、従来から政府はですね、我が国に対する武力攻撃が発生した場合とは、攻撃のおそれがあるときにとどまるときでなく、また我が国が現実的に被害を受けたときでもなく、他国が我が国に対して武力攻撃に着手したときであると解してきております。この事実認定の問題として、どの時点で武力攻撃の着手があったとみるべきかについては、その時点の国際情勢、相手方の明示された意図、攻撃の手段、態様等によるものであり、個別具体的な状況に即して判断すべきものと考えているところであります。反撃能力の保有後も、この考え方に変更はございません。いずれにせよ、反撃能力の行使はですね、武力行使の三要件に満たして、初めて行使され、武力攻撃が発生していない段階で、自ら先に攻撃する先制攻撃は許されないことは言うまでもありません。また従来から一貫して説明しているとおり、他国は我が国に対して武力攻撃に着手したときが武力攻撃が発生したときである以上、現実に被害を受けることを待たず、我が国が自衛権を行使し得るものであります。これは反撃能力であるか否かにかかわらず、同様だと考えております。

Q:防衛力整備計画で、南西地域に補給処の支処を新編するということが書かれているんですけども、南西地域を含むそういう地域にですね、補給処支処を造ることの必要性、大臣、どのようにお考えになっているか、お伺いします。

A:南西地域の防衛体制の強化はですね、喫緊の課題だと考えております。その上で、自衛隊が粘り強く戦う上ではですね、各種装備品や弾薬、燃料のほか、築城資材や整備用部品、そしてまた衛生資材といった補給品がですね、不可欠でありますが、事態生起時に防衛態勢を迅速に構築するためには、これらの補給品を平素より集積して備蓄しておくことが重要であると考えております。現在、最も南西地域に近い陸自の補給拠点は九州補給処、目達原及び各支処、健軍、富野、大分、鳥栖であり、南西地域の島嶼部から地理的に隔たっていることから、事態生起時等において、平素から南西に配備されている部隊及び南西に展開した部隊の活動を迅速かつ継続的に支援するため、沖縄訓練場の敷地内に補給処支処を新編することを計画をしております。

Q:反撃能力の抑止力に関する考え方についてお伺いします。昨日、吉田陸幕長が記者会見で、「反撃能力による抑止力は相手が軍事侵攻するコストと、得られる利益で割に合わない、費用対便益の計算をさせる拒否的抑止だ」というふうに説明されました。大臣は国会などで、反撃能力で期待する抑止力について、懲罰的抑止、拒否的抑止のいずれかに分類するのは困難だと説明していますが、政府が考えるこの抑止は拒否的抑止ではないのでしょうか。陸幕長は誤った認識なのでしょうか。大臣の見解をお願いします。

A:その点についてですね、これは反撃能力というのは我が国への武力攻撃を抑止するためのものであるというふうには、考えておるということは従来からも言わさせていますけれども、相手からミサイルによる攻撃がなされた場合に、ミサイル防衛により飛来するミサイルを防ぎつつ、我が国から有効な反撃を加える能力を保有するこの2つの能力によって、現状に比して、相手国の戦略的、戦術的な計算を複雑化させ、日本にミサイルを撃ちこもうとしている相手に、目的を達成することは容易ではない、攻撃をやめた方がいいと思わせる、そのような抑止効果を得られるものと考えております。拒否的、懲罰的ともこれは分類することは中々難しいというふうに思っております。

Q:安保3文書改定に伴い、航空自衛隊が救難捜索機U-125Aが廃止されます。廃止によりどれぐらいのコストが節約できるのか教えてください。

A:今、用途廃止のスケジュール等についてはですね、検討を進めているところであります。現時点ではどの程度のコスト低減が見込まれるかお答えすることは困難でありますが、一般論として申し上げれば、用途廃止を進めることで、将来必要となるU-125Aの整備を行うための修理費や  部品費といった運用維持コストが低減することが期待をできます。いずれにしましても、防衛省としては、装備品の効果的かつ効率的な運用を目指し、最適化のための取組をしっかりと進めてまいりたいと考えております。

Q:関連しまして、U-125Aは災害派遣に頻繁に使われています。代替となる救難ヘリUH-60Jは速度では劣るため、捜索の初動や災害派遣の対応が従来より遅くなるのではないかとの懸念もあります。この点、大臣はどのようにお考えでしょうか。

A:現在、U-125Aは、災害派遣において、様々な情報収集の用途として活用されておりますが、U-125Aが担っている当該任務を全て救難ヘリであるUH-60Jが代替する構想にはなっておりません。各種事態への対処に際しては、自衛隊が保有する他の固定翼機等のアセットを最大限活用して対応していく考えであります。御懸念には当たらないと思いますが、いずれにせよ、U-125Aが用途廃止された後も、捜索や災害派遣に遺漏のないよう万全を期してまいりたいと考えております。

Q:さらにもう1点。この、国家安保戦略改定に伴い、自衛隊が有事に備えた主たる任務、防衛出動への体制をより重視し、従たる任務である災害派遣への対応への余力がなくなったり、抑制したりするのではないかという懸念もありますが、この点、大臣いかがでしょうか。

A:今、おっしゃられたように、自衛隊の任務は、我が国の国民の命と平和な暮らしを守り抜くことであり、今後、そのために必要となる、5年以内の防衛力の抜本的強化を防衛力整備計画に基づき実現することとしております。その上で、国家防衛戦略においては、災害等への対応に当たり、抜本的に強化された防衛力を活用して、効果的に人命救助、応急復旧、生活支援等を行う旨の方針も示しております。このように、防衛省・自衛隊としては、新たな国家安全保障戦略等の下、抜本的に強化された防衛力を活用しながら、引き続き、災害派遣についてもですね、防衛省・自衛隊の重要な任務として、しっかりと取り組んでまいりたいと考えております。

Q:一部報道でですね、中国の空母打撃群が、南西諸島等を念頭に置いたとみられた訓練を実施しているというふうな報道がありますけれども、統幕の発表からでも、遼寧の日本周辺海域での活動というのがすでに何回かにわたって公表されています。これとの関連性と防衛省としての分析をお願いします。

A:御指摘の報道については承知をしております。報道内容一つ一つにコメントすることはいたしません。今月16日に沖縄本島と宮古島の間を南下した、空母「遼寧」を含む中国海軍艦艇については、17日から20日にかけ、太平洋において、約130回の艦載戦闘機・艦載ヘリの発着艦を行っており、その後も艦載機の発着艦を継続していることを確認をしております。こうした空母等の活動に対しては、海上自衛隊の護衛艦による警戒監視・情報収集を行うとともに、必要に応じて航空自衛隊の戦闘機を緊急発進させるなどして対応しています。今般の空母「遼寧」等の活動については、空母等の運用能力向上や、より遠方の海空域における作戦遂行能力の向上を企図している可能性が考えられます。防衛省・自衛隊としては、引き続き高い緊張感を持って警戒監視などの対応に万全を期してまいりたいと考えております。

以上

下線部:大臣発言中、情報(誤)を収集(正)に修正