防衛大臣記者会見

日時
令和4年8月30日(火)13:14~13:31
場所
防衛省A棟11階第1省議室
備考
浜田防衛大臣閣議後会見

1 発表事項

 〇 昨日、井野防衛副大臣を座長とする第5回気候変動タスクフォースを開催をし、気候変動という世界的な課題について、現状の評価と分析を行い、防衛省として戦略的に取り組むべき施策を取りまとめさせていただいた「防衛省気候変動対処戦略」を策定いたしました。各国の国防組織では、気候変動は安全保障上の課題であるとの認識の下、様々な取組を進めてきております。防衛省においても、気候変動への対処をですね防衛力の維持・強化と同時に進めることを目指し、今後本戦略を掲げた施策について、全力で取り組んでまいりたいと思っているところであります。

2 質疑応答

Q:米軍のミサイル巡洋艦2隻がですね28日に台湾海峡を航行しました。アメリカのペロシ下院議長による台湾訪問で中国軍が演習を実施した後、初めての航行となり、中国の報道官談話を発表するなどして反発をしています。この一連の動きについて大臣の受け止めをお聞かせください。

A:米海軍の巡洋艦2隻、「アンティータム」及び「チャンセラーズビル」が28日に台湾海峡を通過した旨、米軍が公表したことは承知をしておるところであります。米軍の発表によれば、今回の米艦艇による台湾海峡通過は、国際法により航行の自由が適用される海域を通過する米軍の定期的な活動であり、自由で開かれたインド太平洋に対する米国のコミットメントを実演するものであると承知しております。中国側がこれに反発していることは承知しておりますが、その発表内容の逐一についてお答えすることは差し控えさせていただきます。先般のペロシ下院議長の訪台を受け、中国軍が台湾周辺での軍事活動を活発化させるなど、地域の安全保障環境が厳しさを増す中、米国によるコミットメントは極めて重要であると認識しております。いずれにいたしましても、台湾をめぐる情勢の安定は、わが国の安全保障にとってはもとより、国際社会の安定にとっても重要であり、防衛省として今後、一層緊張感を持って注視していく必要があると考えております。

Q:今の質問に関連しまして、今後、海上自衛隊もですね、こうした行動ですね、米海軍と共にする予定があるのでしょうか。あるいは、ないにしてもですねアメリカをはじめ同盟国から同種の共同行動を求められた場合に、行動を共にするお考えはありますでしょうか。

A:今お話ししたようにですね、この巡洋艦2隻が28日に台湾海峡を通過した旨は、米軍が公表したこと承知しておりますがその上で、現時点では自衛隊は、ご指摘のような具体的な計画は有しておりません。いずれにせよ、台湾海峡の平和と安定が重要であると考えており、防衛省として今後、一層緊張感を持って注視してまいりたいと思っております。また、要請等のあった場合について、今お話がありましたが、予断をもってお答えすることは差し控えさせていただきたいと思います。

Q:ロシアが、極東にて大規模な軍事演習「ヴォストーク」をはじめました。この演習には、大変大規模なものになるという見通しがいろいろ報道されています。特筆すべきはですね、中国が参加するばかりではなく、インドも参加を表明したことだと思います。QUAD加盟国のインドがロシアの大規模軍事演習に参加することの意味を大臣はどのように受け止められていらっしゃいますか。

A:ロシアの国防省の発表においてですね、同国主催の大規模軍事演習「ヴォストーク2022」へのインドの参加に言及があったことは承知をしております。ロシア国防省は、本件演習について、北方領土を含む形で実施する旨発表しておりますが、北方領土においてロシアによる軍事演習が実施されることは、北方領土に対するわが国の立場と相入れず、到底受け入れられません。日本政府としては、インド政府と様々なやりとりの中で、こうしたわが国の立場を伝達してきており、インド側からは、北方領土における軍事演習には参加しない旨の説明を受けているところであります。いずれにせよ、防衛省・自衛隊としては、インドとの防衛当局間の緊密なコミュニケーションを継続するとともに、「自由で開かれたインド太平洋」の維持・強化のため、日米豪印の防衛協力を含め、インドとの防衛協力・交流を引き続き推進させていく考えであります。

Q:先週防衛省は、台湾有事を念頭に置いた反撃能力の核となる、射程1,000km程度の国産中距離ミサイル1,000発以上の保有を目指すと発表しました。ですが、現状、ミサイルの数、性能において、核の保有も含め、中国、ロシア、北朝鮮などとは大きな開きがあり、実際にミサイル戦となれば、日本は対抗できないのではないでしょうか。また、実際に台湾有事となれば、米軍、自衛隊、そしてミサイル基地など、また原発も含め日本全土がミサイル戦に巻き込まれます。現状、早急にミサイル防衛や空爆に対する防衛、そして原発の防衛のために自衛隊を配備する必要があると思いますが、防衛省は具体的な対策案はあるのでしょうか、ご教示ください。

A:今、お話しになった仮定の質問にお答えをするのは、適当ではないと思います。ただ、もしも細かな点について、ご質問があるということであれば、現場の方にですね、問い合わせていただければというふうに思いますので、よろしくお願いいたします。

Q:話題変わりまして、安倍元総理の家族葬についてお伺いいたします。7月に行われた、安倍元首相の葬儀に陸上自衛隊の儀じょう隊が参列したことをめぐって、戦後の首相経験者の家族葬としては、初めてだったというふうに報じられておりますけれども、事実関係と他の総理経験者の方との対応の違い、こういうふうになった経緯など、教えてください。

A:自衛隊の最高指揮官であった元内閣総理大臣について、国葬儀や内閣と党との合同葬に際しては、政府としての弔意表明が行われることも踏まえ、葬儀の儀じょうについてご遺族のご意向を確認した上で儀じょうを実施しておるところであります。また、その際に、ご遺族から、合同葬に加え、地元で行われる葬儀における儀じょうのご希望があった時は、併せて儀じょうを実施しております。安倍元内閣総理大臣のご逝去に際しては、ご遺族で執り行われる通夜・葬儀の当日に、政府としての弔意を表すため、半旗を掲揚することとされました。このことを踏まえ、防衛省・自衛隊としては、家族葬に際し、ご遺族のご意向を伺った上で防衛省・自衛隊における弔意表明の一環である儀じょうを実施しました。なお、元防衛庁長官の家族葬への参列につきましても、訃報に接した際に、ご遺族のご意向を確認し、対応をしております。今後の元内閣総理大臣の葬儀における儀じょうについても、政府としての対応を踏まえた上でご遺族のご意向を確認して対応してまいりたいと思っております。

Q:弾道ミサイルについて見解をお伺いします。政府は、憲法9条を踏まえて、例えば大陸間弾道ミサイル、長距離爆撃機、攻撃型空母については自衛のための最小限度の範囲を超えるとして、保有は許されないとしてきています。弾道ミサイルを保有することは、必要最小限度の範囲内であると考えるかどうか、見解をお願いします。

A:一般論で申し上げれば、政府としては、従来から、憲法第9条の下で、わが国が保持することが禁じられている戦力とは、自衛のための必要最小限度の実力を超えるものを指すと解されており、これに当たるか否かは、わが国が保持する全体の実力についての問題である一方で、個々の兵器のうちでも、性能上専ら相手国の国土を潰滅的破壊のためにのみ用いられる、いわゆる攻撃的兵器を保有することは、これにより直ちに自衛のための必要最小限度の範囲を超えることとなるため、いかなる場合にも許されないと考えてきているところであります。この一貫した見解を変更する考えはありません。

Q:それを踏まえて、弾道ミサイルはどのように考えますか。

A:繰り返しになりますけれども、性能上専ら相手国の国土の潰滅的破壊のためにのみ用いられる、いわゆる攻撃的兵器を保有することは、これにより直ちに自衛のための必要最小限度の範囲を超えることとなるため、いかなる場合も許されないと考えてきているところであり、この一貫した見解は変更する考えはありません。

Q:ロシアの軍事演習に関することなんですけれども、インドは当初は、北方領土での演習に参加する予定だったが、日本の申し入れを受けて、取り止めたのかなど事実関係と、あとやり取りの日付みたいなものもあれば教えていただきたいのと、あとあわせて軍事演習には日本が能力構築支援をしているモンゴルも参加する予定とロシア側が発表していますが、こうした国も含めてインド以外の国への働きかけ等、それぞれの国への対応について可能な範囲で教えていただけますでしょうか。

A:今ご質問のあったことに関しまして、外交上のいろいろなやり取りについてはですね、今この場で私からお答えするというのは差し控えさせていただきたいというふうに思います。

Q:鹿児島県の馬毛島基地整備計画についてお伺いします。本年度の基地関連工事契約がすでに約593億円に上っているんですけれども、現状として、地元の西之表市長、鹿児島県知事とも賛否を明言しておらず、環境アセスの手続きも終わっていません。計画をめぐっては地元の理解が重要だという答弁は前大臣もですね繰り返されてきたわけですけれども、計画に対する地元同意というのは大臣はどのように考えていらっしゃいますか。

A:わが国を取り巻く厳しい安全保障環境を踏まえ、政府としてできる限り早期に馬毛島における自衛隊施設の整備が行えるよう取り組んでいるところであります。自衛隊施設の整備に当たっては、地元のご理解とご協力が重要であると認識しており、これまでも、西之表市や鹿児島県に対して、ご説明を積み重ねてまいりました。その上で、八板西之表市の市長からご提案をいただいた協議の場等を通じ、西之表市とは有意義な意見交換を行い、積極的に連携しているところであります。引き続き、地元の思いをしっかりと受け止め、住民の期待に応え不安を解消するための措置を積極的に講じる考えであります。

Q:海自鹿屋航空基地への米軍無人機展開についてなんですけれども、大臣、就任会見でも警戒監視の強化の重要性を訴えてらっしゃったと思うんですが、台湾情勢が急激に緊迫化するなど安保環境が厳しさを一層増したとしても、今回の一時展開の「1年限り」という期間なんですが、これを延長される可能性というのはないのでしょうか。

A:米軍無人機MQ-9の鹿屋航空基地への展開期間は、これまでも繰り返しご説明しているとおり、運用が開始されてから1年間であり、また、展開の延長が計画されていないことを日米間で確認をしております。その上で、日米の情報収集能力を強化するための取組としては、MQ-9の一時展開だけでなく、自衛隊による無人機の導入を含めたわが国自身の能力強化も当然含まれます。具体的には、滞空型無人機グローバル・ホークの配備を本年3月から進めているほか、海上自衛隊においても本年度予算に滞空型無人機の試験的運用の事業を計上したところであります。防衛省・自衛隊としては、MQ-9の一時展開を含め、情報収集・警戒監視能力を一層強化するための日米の対応について、引き続き米側との間で様々な検討を行ってまいります。

以上