防衛大臣記者会見

日時
令和4年7月22日(金)10:17~10:44
場所
防衛省A棟11階第1省議室
備考
岸防衛大臣閣議後会見

1 発表事項

 〇 本日の閣議におきまして、令和4年の防衛白書を説明の上、配布いたしました。本年の防衛白書は、ロシアによるウクライナ侵略や米中を中心とした戦略的競争の一層の顕在化など、わが国が直面する安全保障上の課題について説明をしています。また、このような厳しい安全保障環境下での防衛省・自衛隊の防衛力強化のための取組について、宇宙・サイバー・電磁波領域や先端技術分野も含めてご紹介しています。加えて、日米同盟の抑止力・対処力の強化や、望ましい安全保障環境創出のための各国との協力についても、しっかりと発信する内容としています。この「令和4年版防衛白書」は、まもなく防衛省ホームページ上にも掲載いたしますが、あわせて「はじめての防衛白書」の第二版についてもホームページにて公表することとしております。「はじめての防衛白書」については、昨年初版を公表いたしましたが、今回の第二版では「令和4年版防衛白書」の内容について、主に若年層向けにできる限り分かりやすくまとめています。また、中学生・高校生による現役自衛官へのインタビュー記事を掲載するなど、初版よりも若年層の視点を取り入れたものとしています。国の防衛には、国民の皆さまのご理解とご支援が必要不可欠であります。一人でも多くの皆さまにご覧いただき、防衛省・自衛隊に対するご理解を深めていただけることを願っております。

 〇 新型コロナウイルスの急激な感染拡大を踏まえ、7月31日に終了予定であった自衛隊大規模接種会場の運営を9月30日まで継続することといたしました。3回目、4回目のワクチンをまだ受けていない方は、この機会に是非接種をされるように検討していただければと思います。

 〇 既に公表しましたとおり、7月20日、午後8時頃から午後11時30分頃にかけて、中国海軍の測量艦が、屋久島及び口永良部島周辺のわが国領海内を航行したことを確認しました。中国海軍艦艇がわが国の領海内を航行したことを確認し、公表したのは今年4月に続きまして6回目であります。政府としては、海上自衛隊の艦艇や哨戒機による監視等を行うとともに、中国側に対して外交ルートを通じて、わが国周辺の海域における中国海軍艦艇のこれまでの動向を踏まえて、わが国の懸念を伝えたところであります。近年、中国の海空戦力によるわが国周辺の海空域における軍事活動は、益々拡大・活発化している傾向にあります。加えて、例えば6月には中国海軍艦艇が日本列島を周回するような形で航行したほか、今月4日には、中国海軍艦艇が尖閣諸島の接続水域に入域したところです。今回、領海内航行についても、こうした拡大・活発化の一環とみられております。防衛省・自衛隊としては、こうした領海内航行について、懸念を持って注視しているところであります。艦艇、航空機による平素からの警戒監視とともに、こうした個別の事案についても、万全の警戒監視を行ってまいります。

2 質疑応答

Q:冒頭ご紹介のありました、防衛白書についてですね、巻頭言の方で初めて台湾に言及されていますが、安全保障であったり、防衛力強化に対する大臣ご自身の思いを込められていたように思われますが、改めて白書を通じて、どういったメッセージを伝えたいとお考えか教えてください。

A:現在の安全保障環境として、ロシアによるウクライナ侵略をはじめとする、力による一方的な現状変更が世界共通の課題となっております。これまで国際社会の平和と繁栄を支えてきた普遍的な価値観に基づく国際秩序は深刻な挑戦、これに晒されております。また、台湾をめぐっては、中国はその統一に武力行使も辞さない考えを示しており、地域の緊張が高まりつつあります。こうした中で、「令和4年版防衛白書」においては、普遍的価値に基づく国際秩序をこの先も確かなものとするため、わが国の持てる叡智と技術を結集し、総力をあげて、わが国自身の防衛力強化を急ぐとともに、同盟国である米国や価値観を共有する国々との協力を進めてまいります。また、いつ如何なるときにも日本という国を断固として守り抜くため、いかなる困難も果敢に立ち向かい、試練の時を切り拓いていくという防衛大臣としての強い意志を示しているところであります。

Q:防衛白書についてお伺いします。今回の白書では、防衛費の表現について、以前からの表現を追加したりですね、かなり他国に比べて少ないということを強調されましたけれども、その狙いについてまず教えてください。

A:わが国を取り巻く安全保障環境は、これまでにないスピードで厳しさを増しているところであります。こうした中で、防衛省としては、現下の安全保障環境に対応できるように、防衛力を抜本的に強化するため、必要な予算をしっかり確保していきたいと考えておるところです。また、防衛費については、国防の国家意思を示す上で大きな指標となるものだと思います。このような考えの下で、防衛白書では、国民の皆さまに防衛費の取り巻く安全保障環境、現状についてご理解を深めていただけるように、一人当たりの国防費やNATO諸国の対GDP比2%目標についても、初めて記述をいたしました。わが国の安全保障環境が一層厳しさを増す中で、まず行うべきことは、国民の命や暮らしを守るために何が必要なのか、具体的かつ現実的に議論をしていくところであります。先般、閣議決定したいわゆる骨太方針において「防衛力を5年以内に抜本的に強化する」としたことも踏まえて、防衛費の内容や規模について、新たな国家安保戦略等の策定や今後の予算編成過程を通じて検討してまいります。いずれにしても、防衛省として、厳しさを増す安全保障環境の下で、わが国を守っていくために必要な取組について、国民の皆さまのご理解を得られるように、引き続き十分に説明を行っていきたいと考えております。

Q:ミサイル防衛で追加で1点お伺いします。今回の防衛白書では、イージス・アショアに関する記述、秋田・山口への配備計画への撤回についての記述は詳細には記述されませんでした。秋田・山口の配備撤回からまだ2年ということで、記述を削除するのは早いんではないかという指摘があると思いますが、この点について大臣のお考えはどうでしょうか。

A:ご指摘の点も含めまして、防衛白書の個々の記述については、記述の対象期間に生じた新たな事象等の追記や全体の記述の分量等を総合的に勘案して、年度ごとに判断をしております。いずれにせよ、ご指摘の点については、防衛省のホームページに引き続き掲載をいたします。

Q:今日の閣議で、安倍元総理の国葬が9月27日に実施されることが決まりました。法的根拠がなく、国民の意見に耳を傾けずに閣議決定することに批判の声があるのですが、大臣はこのあたり、どのようなお考えで賛成されたんでしょうか。

A:本日の閣議で安倍元総理の葬儀の執行について決定がなされました。安倍総理の国葬については、様々なご意見があることは承知をしております。親族としては、大変名誉なことだと思っておりますので、政府の決めたことに対して従ってまいりたいと思います。

Q:防衛白書の関連でお伺いいたします。今年の防衛白書ではですね、台湾に関する記述を倍増させた上に、中国による台湾侵攻の具体的な想定プロセスを掲載しました。これの意図について教えてください。

A:台湾に関しては、中台の軍事バランスの拡大傾向、中国の台湾に対する各種の圧力の一層の強化、また、台湾を支援する姿勢の一層の強化、国際社会による台湾海峡への平和と安定への関心、また、懸念が相次ぐ表明がありました。注目すべき関連事象が立て続けに起こっているところであります。こうした中からですね、関連動向の重大性や、国際社会全体に与える影響力、こうした大きさ等を踏まえまして、「ロシアによるウクライナ侵略」という新たな章を設けるとともに、台湾についても記述を増強することといたしたところであります。

Q:防衛白書ではないんですけれども、自衛官の募集に関して教えていただきたいと思います。各地域の地本が、各自治体から募集対象者の情報の提供を受けて、募集の資料を郵送していることについて、一部の住民から驚きや不快感を示す声があり、個人情報保護の観点から、違法性を指摘する法学者もいらっしゃいます。防衛省として、各自治体からの名簿提供や住基の閲覧等を行わない形で募集業務を行う考えはないでしょうか。

A:まず、防衛力の中核であります自衛隊員の人材確保は防衛力の強化に必要不可欠であります。そのため、防衛省・自衛隊としては、自治体や学校等の協力を得ながら、自衛官の募集に係る様々な取組を行っているところであります。そのような取組の一環として、各地方協力本部が自衛官等の募集に関する案内を送付すること等を目的として、自治体から募集対象者の氏名や住所等に関する情報を提供いただいておるところです。募集対象者に関する情報の提供は、自衛隊法の法令上、明確な根拠に基づくものであります。この点について、各自治体に対して、防衛大臣名での文書により、お示ししているところであります。募集に関する案内の送付については、募集対象者やその保護者の方々に、職業としての自衛官を正しく理解していただくための募集活動であり、それに際しては、自治体から募集対象者に関する情報を提供いただくことが必要不可欠であります。引き続き、防衛省としての考え方を丁寧にお伝えし、ご理解を得られるように努めてまいりたいと思います。

Q:防衛白書に戻ります。防衛費に関連して、2021年度の日本の対GDP比は0.95%と記述されていますが、NATO基準に含まれる退役軍人の恩給費や海上保安庁の予算などのほか、主要装備品の新規購入費等で7700億円を計上した補正予算を加えると、日本の対GDP比は1.24%になります。試算として1.24%になることは大臣も今年1月の会見で述べていますが、防衛白書にはこうした説明がなく、0.95%という数字だけを見ると、日本の防衛費は各国より低いという印象を国民に与えることになると思いますが、国民への説明責任という観点から問題ないでしょうか。日本の防衛費はNATO基準では1.24%になるという試算を白書に書かなくてもいいと判断された理由を教えてください。

A:わが国はNATOの加盟国ではありません。NATO定義に基づいて所要の経費を整理していないところであります。また、その運用は各国で一律ではありません。防衛当局以外の省庁が所管する予算をどこまで防衛費に含めるかについては様々な議論があると承知しております。その範囲を確定させることは困難であります。このようなことを踏まえて、令和4年版の防衛白書においては、ご指摘のNATO定義を参考に、わが国の予算を計算した上で対GDPというものは記載をしていないところであります。いずれにしても、防衛省としては、厳しさを増す安全保障環境の下で、わが国を守っていくために必要な取組について、国民の皆さまにご理解を得られるように引き続き説明を行ってまいります。

Q:大臣おっしゃった測量艦の領海侵入の件についてなんですけれども、この海域での測量艦の侵入は昨年11月から8カ月間で3回という高い頻度で行われていますけれども、現状、防衛省が分析するこの地域での測量艦侵入が相次いでいる理由についてどのように分析されていますでしょうか。

A:中国側の測量艦の意図ということについては、現在分析中であります。

Q:沖縄県米軍嘉手納基地でですね、米軍が新設を計画している防錆整備格納庫の関連でお伺いします。昨日は、地元の嘉手納町當山町長がですね、在沖の米国総領事館を訪ねて、現行の計画の撤回を求めた上で、より住宅地から離れた基地内の別の場所に造るよう要請をしています。大臣は、先日の会見でですね、町の懸念を米側に伝えたというふうにおっしゃっていたと思いますけれども、今回のこの嘉手納町の提案を受けてですね、米側と何かやりとりをされているか、今後、どのように対応されるかについてお伺いします。

A:格納庫の建設計画については、先日、嘉手納町長から沖縄の防衛局に対して、計画の撤回の要請がございました。また、昨日、嘉手納町長から今おっしゃられたような在沖の米国総領事館に対しても、同様の要請があったと承知をしております。14日の嘉手納町からの要請を受けて、防衛省から米側に対して、嘉手納町のご懸念を伝達した上で、建設計画の詳細についても米側へ説明を求めているところであります。防衛省としては、防錆整備格納庫の建設計画について、地元の皆様に与える影響を最小限にとどめるように、米側と調整を行いながら、しっかりと取り組んでまいります。

Q:防衛白書の関係で、国家安全保障戦略の項目の本文にですね、「積極的平和主義を基本理念として掲げ」という文言が今回ないんですけれども、2014年以降、必ず入っていたと思うんですが、今年、国家安全保障戦略の改定など控えて削ったということなのか理由を教えてください

A:防衛白書の個々の記述につきましては、記述対象期間を通じた新たな事象等の追記や全体の記載の分量等を総合的に勘案して、年度ごとに判断をしています。いずれにせよ、政府として国際協調主義に基づく「積極的平和主義」、わが国の国家安全保障の基本理念であることに変わりはございません。

Q:白書について、追加でお伺いさせてください。大臣、冒頭でもご発言がありましたけれども、中国艦艇の動きやロシア艦艇の動きが更に活発化しています。今回ですね、中露のいわゆる共同行動について、かなり警戒感を持って表現されていますけれども、表現にいたった理由とですね、今後、3文書の改定の中で中国とロシアへの表現ぶりが更に強まる可能性というのはどうでしょうか。

A:まず、3文書の記載について、予断をもってお答えすることは控えたいと思います。最近、中露の艦艇の動き等についても、活発化を増しているところであります。また、共同行動のところもですね、見られるところでありました。ロシアがウクライナ侵略を進める中で、そのような行動をアジアで行っていること、そういった動きに中国が加わるということ、こうしたことに関しては懸念を持って注視してまいりたいと考えております。そういう意味で、記載についても、入れたところであります。

以上