防衛大臣記者会見

日時
令和4年5月10日(火)10:13~10:41
場所
防衛省A棟11階第1省議室
備考
岸防衛大臣閣議後会見

1 発表事項

 北朝鮮が5月7日に発射した弾道ミサイルについて、現時点までに得られた諸情報を総合的に勘案いたしますと、北朝鮮は、7日14時6分頃、朝鮮半島東岸の新浦付近から、1発の弾道ミサイルを東方向に発射しました。当該ミサイルは、最高高度約50km、距離約600km程度を変則軌道で飛翔し、わが国のEEZ外である朝鮮半島東側の日本海に落下したものと推定されます。今回発射されたミサイルは、2011年10月19日に発射された新型の潜水艦発射弾道ミサイルと同型のものとみられ、前回発射時と同様、コレ級潜水艦から発射された可能性がありますが、詳細については分析中であります。これまでの弾道ミサイル等の度重なる発射も含め、一連の北朝鮮の行動は、わが国、地域、国際社会の平和と安全を脅かすものであり、断じて容認できません。また、ウクライナへの侵略が発生している中で、立て続けにミサイルを発射していることは許されません。関連する安保理決議に違反するものでもあり、強く非難をいたします。防衛省として、北朝鮮の軍事動向について、引き続き、米国等とも緊密に連携しながら、諸情報の収集・警戒監視に全力を挙げ、わが国の平和と安全の確保に万全を期してまいります。また、こうした状況を踏まえ、いわゆる敵基地攻撃能力も含め、あらゆる選択肢を検討し、今後とも防衛力の抜本的な強化に取り組んでまいります。防衛省・自衛隊は、中国海軍空母「遼寧」等8隻の中国海軍艦艇が、5月2日に沖縄本島と宮古島の間を太平洋に向けて南下した上で、3日から8日の間、沖縄県沖大東島の南西約160kmから石垣島の南約150㎞の、これまで確認された中でわが国に最も近接した海域において、空母「遼寧」の艦載戦闘機及び艦載ヘリが100回を大きく超える発着艦を実施したことを確認をいたしました。防衛省・自衛隊としては、護衛艦「いずも」により情報収集・警戒監視を行うとともに、戦闘機を緊急発進させる等を行い対応したところです。今般の中国軍の活動は、空母等の運用能力やより遠方の海空域における作戦遂行能力の向上を企図した活動である可能性があり、わが国南西諸島及び台湾に近接した海空域における活動であることを踏まえれば、このような活動は懸念をもって注視せざるを得ないものであります。防衛省として、中国軍のわが国周辺海域における動向について、引き続き強い緊張感をもって警戒監視にあたってまいります。陸上自衛隊は、北海道の良好な訓練環境を積極的に活用し、より実践的な訓練・演習の実施に努めてきております。令和2年度から「北海道訓練センター」という事業を行っております。今回7回目を迎える、令和4年度北海道訓練センター第1回実動対抗演習では、5月13日から6月21日までの間、香川県に所在する第14旅団が北海道まで機動展開した上富良野演習場において、第5旅団と実動対抗演習を実施をいたします。ロシアがウクライナを侵略するなど、一層厳しさを増す安全保障環境にあって、自衛隊が持つ能力を最大限発揮できるように、引き続き、北海道の良好な訓練環境を最大限に活用し、機動展開から実動対抗演習を行うことで、戦術技量の維持・強化を図り、各種事態への抑止力・対処力を向上させてまいります。

2 質疑応答

Q:大臣、大型連休中に初めて訪米され、ワシントンでオースティン国防長官と75分間の会談に臨まれました。ロシアによるウクライナ侵攻なども議題になったかと思いますけれども、改めてこの時期に訪問された意義とですね、狙い、そして、成果についてご紹介ください。

A:これまでもオースティン長官とは、2回の「2+2」、数回の電話会談などを実施をしてまいりました。今回、防衛大臣として初めてワシントンDCを訪問することができました。日米同盟がかつてなく強固であること、地域と世界の平和と安定の実現に大きな役割を果たしていることを、私自身強く感じることができました。まず、会談の前日にも北朝鮮による弾道ミサイル発射がありましたけども、北朝鮮の動きに対しては、日米が一瞬の隙も無く、迅速に対処する構えができていることを確認をいたしました。ウクライナ情勢について突っ込んだ議論も行いました。特にこの中で、ロシアの核兵器による威嚇も行われる中、オースティン長官から、米国の日本に対する核を含めた拡大抑止へのコミットメントが揺るぎない旨の発言があったことは非常に心強いものでありました。米国がインド太平洋地域を重視する姿勢に変わりないということを確信をすることができました。今回の議論の成果を国家安保戦略の策定、わが国防衛力の抜本的強化の議論に生かしていきたいと考えております。

Q:韓国の新大統領就任についてお伺いします。韓国の尹大統領が今日、就任しました。北朝鮮が核ミサイル開発を進める中で、改めて、新政権発足の受け止めとレーダー照射問題等の懸案解決に向けての期待がありましたらお願いいたします。

A:北朝鮮の核・ミサイルをめぐる状況について、日韓両国を取り巻く安全保障環境は非常に厳しさと複雑さを増しています。その中で、日韓、日米韓の連携は益々重要になっています。現在、日韓防衛当局間では、様々な課題があり両国の防衛協力・交流に影響を及ぼしていますが、これらの解決のために、韓国の尹新政権がリーダーシップを発揮することを期待しております。私も、北朝鮮への対応をはじめ、インド太平洋地域の平和と安定のため、韓国の新政権と緊密に意思疎通を図り、日米韓の連携強化を推進してまいります。

Q:ロシアのウクライナ情勢に関連してお伺いします。先日ロシアは対独戦の戦勝記念日を迎えまして、プーチン大統領は、演説の中でですね、ウクライナ侵攻の正当性を主張する一方で、欧米で観測が上がっていた戦争の権限といったところまでは踏み込みませんでした。大臣は昨日のプーチン大統領の演説をどのようにご覧になったかお願いいたします。

A:プーチン大統領の意図したところが当初、企図したところが昨日までになしえたかどうかということは、甚だ疑問でありますが、その中でやはり欧州諸国を中心に一致した連帯を示すことができた。強固な連帯を示すことができたと。あるいはそれに基づいて、制裁が行われているということ。それからウクライナの非常に国を守るということに対する強い意志が示されていること。このことは、非常に重要なファクターになっているというふうに考えております。

Q:冒頭の北朝鮮のミサイルの話に戻るんですが、4日、7日に2回発射したにも関わらず、北朝鮮からの発表が今のところ何もなくてですね、極めて異例だと言えると思うんですが、その点についてどのように分析しているのでしょうか。お聞かせください。

A:北朝鮮が彼らのミサイル発射について発表を行っていないことに対するコメントは控えますが、4日の発射については、これまでに発表しているとおり、1発の弾道ミサイル、最高高度800km、距離500kmを飛翔しております。日本海側のEEZ外に落下したものと推測されますが、これ以上の詳細については、現在も分析中であります。

Q:沖縄での県民投票の実施を呼びかけた大学院生がハンガーストライキを始めて辺野古新基地建設の即時断念、普天間飛行場の数年以内の運用停止、日米地位協定に関するすべての日米合意を公開し、見直すことの3つの要求を求めています。この要求を政府が受け入れるまで、医師が許す限り、ハンガーストライキを続けると言っているのですけれども、これらの要求事項について検討するお考えはありますでしょうか。

A:普天間飛行場の辺野古移設をめぐる問題の原点は、市街地に位置し、住宅や学校に囲まれ、世界一危険と言われる飛行場の危険性の除去と返還であります。普天間飛行場の固定化、危険なまま置き去りにされるようなことは、絶対に避けなければなりません。地元の皆様と共通の認識と考えております。日米同盟の抑止力の維持と普天間飛行場の危険性の除去を考え合わせた時に、辺野古移設が唯一の解決策であり、引き続き、地元の皆様の理解を得るために努力を続けながら、普天間飛行場の1日も早い返還を実現するための、辺野古への移設工事を着実に進めていきたいと考えております。また、地位協定について様々な御意見があることは承知しておりますが、日米地位協定は、同協定の合意議事録等を含んだ大きな法的枠組みであり、政府としては、事案を通じて、効果的かつ機敏に対応できる最も適切な取組みを通じ、一つ一つ具体的な問題に対応していきます。今後とも、目に見える取組みを積み上げることで、日米地位協定のあるべき姿を不断に追求していく考えであります。

Q:「遼寧」について、お伺いします。「台湾有事を想定した訓練をしているのではないか」という見方もあると思うのですけれども、防衛省としても同じような見方をさせているのか、お願いします。

A:「遼寧」の動きでありますが、中国軍の活動は、空母等の運用能力やより遠方への海空域における作戦遂行能力の向上を企図した活動である可能性があります。わが国南西諸島及び台湾に近接した海空域における活動であることを踏まえれば、このような活動は懸念をもって注視せざるを得ません。防衛省として、中国軍のわが国周辺海域における動向について、引き続き高い緊張感をもって警戒監視を続けてまいります。

Q:今の関連ですが、中国軍の活動というのは、日本やあるいは台湾に対する示威活動のようなものはあるんでしょうか。そのあたりのご見解を教えてください。

A:中国軍の今回の活動というものは、わが国に最も近接した地域で行われています。そういう意味で、わが国も懸念をもって注視せざるをえないと考えておりますし、今後ともこうした動きに対して、緊張感をもって警戒監視を続けてまいりたいと思います。

Q:また、北朝鮮のミサイルに戻るんですけれども、変則軌道の飛行があったということですが、変則軌道の方向は縦方向・横方向などの分析はありますでしょうか。

A:今回の発射については、距離が600km程度の変則軌道で飛翔したものと推定されているところでありますが、現時点でこれ以上の詳細についてお答えすることは困難であることをご理解をいただきたいと思います。いずれにいたしましても、今後、引き続き関連情報の収集と分析に努めるとともに、警戒監視に万全を期してまいりたいところです。 

Q:今日の閣議後ですね、総理と面会されたと思いますが、差し支えない範囲で、どのようなことをお話になられたのか、お願いします。

A:今日総理とは、先般行われました日米の防衛相会談の中身等々について、ご報告を申し上げたところであります。まず、日米同盟の抑止力の強化が大変重要であるということ等について、ご理解をいただいたものと思います。それからもう一つは、これから国家安保戦略の策定に向けまして、非常に強い期待がアメリカからも寄せられる、そういうことを申し上げました。

Q:鹿児島県の海自鹿屋航空基地への米軍無人機の配備計画について、3月に実施した現地調査の結果分析の進捗状況と地元への結果説明の時期についてお答えて下さい。また、地元選出の国会議員から配備の時期は7月末から8月以降、配備機数は10機以上など、具体的な内容が明らかにされているんですが、これらの内容について防衛省としての見解と、既に無人機配備について決定した事項がありましたらお答えください。

A:米軍無人機MQ-9の日本への一時展開に係る今後の対応については、本年2月から3月にかけて実施をいたしました現地調査の結果を精査して検討・判断の上、まずは地元自治体に対して丁寧に説明してまいりたいと考えております。現時点で予断をもってお答えできないことをご理解いただきたいと思います。説明日程は現時点で具体的に決まっているわけではございません。防衛省においては、平素から、国会議員の方々に対し、様々な案件について説明をさせていただいております。個別のやり取りは避けたいと考えています。

Q:森山先生がおっしゃっている内容について間違っているかどうかということも現時点では言えないということでしょうか。

A:国会議員の先生とのやり取りについてこれ以上のやり取りをお答えすることは避けたいと思います。

Q:すみません。もう1点なんですけれども、鹿児島の馬毛島へのFCLP移転と自衛隊基地整備計画について、本日から環境アセス準備書の準備説明会が行われます。防衛省として、どのように地元理解を広げる考えか、特に強調したい内容などがあればお願いします。

A:馬毛島の施設整備についてですね、環境影響評価法を順守し、環境に配慮して進めていくことといたしております。現在、環境に及ぼす影響の調査、予測及び評価、そして環境保全措置等をとりまとめた環境影響評価準備書を縦覧しているところであります。この準備書の記載事項に関する説明会を、本日から、種子島の西之表市、中種子町、南種子町に加え、南大隅町及び屋久島町において開催をいたします。説明会において、準備書にとりまとめた内容を丁寧に御説明した上で、住民の方々の御意見を伺いまして、御質問にしっかりと答えてまいりたいと考えます。

Q:話題変わりますが、沖縄本島内にある米軍キャンプ瑞慶覧のロウアー・プラザ住宅地区というところなんですが、ここをですね2024年度以降の返還ということで、今、日米で合意されていますけれども、その返還前に、日米で共同利用する方針を固めたと伺っています。関係者によりますと、そちらに公園を整備する方向で、岸田総理もですね、沖縄の復帰式典がある15日当日に、現地を視察されるというふうに聞いておりますが、この事実関係とですね、その公園の整備、いつ頃までにされる方針なのかお伺いします。

A:「沖縄統合計画」において返還予定地となっているキャンプ瑞慶覧のロウワー・プラザ住宅地区においては、本年4月に松野官房長官が現地を視察し、当該土地の利用が早期に実現できるように事務方に指示を行ったところであります。現在、防衛省において当該指示を踏まえて、具体的な検討、調整を行っているところでありますが、現時点において具体的に定まった計画はございません。その上で、同地区は、沖縄県の東西南北を結ぶ幹線道路が交差をし、大型商業施設や病院にも隣接するという好立地にあり、有効な跡地利用の潜在的な可能性を持つ場所であります。引き続き、「沖縄統合計画」に定められた返還条件の達成に向けた取組を進めるとともに、可能な限り早期に、沖縄県民の皆さんの生活の利便性の向上に資するものとして同地区が利用されるよう、政府としてできる限りのことをしっかりと進めてまいりたいと考えております。

Q:今年1月の「2+2」において、「日米の共同計画作業についての確固とした進展を歓迎する」という文書が発表されました。この文書により、台湾有事を想定した米海兵隊と陸上自衛隊のミサイル部隊によって、南西諸島約40か所を臨時攻撃用軍事拠点とする共同作戦が了承されたと見られています。これは、中国にとってはウクライナに侵攻したロシアにとってのNATOの東方拡大と同様の脅威に映るはずです。実際、中国外交部の外務次官が6日、台湾問題に介入し続ける米国を名指しして、「NATOの東方拡大のアジア太平洋版だ」と強く批判しています。この共同作戦計画は、日本の国民を守るためではなく、中国を攻撃するためのものであり、日本がウクライナのような戦場になり、米国の代理戦争を遂行することになると思います。この共同作戦計画について、大臣は、「相手があることですので」とお答えになりませんが、日本国民の命の犠牲を前提にしたものですので、国民にその内容を説明していただき、また、中国が表明した懸念に対し、日本政府としての回答をお示しいただけますでしょうか。よろしくお願いします。

A:共同計画についての、今のあなたの御所見は、個人的な御意見でございますから、それに対してのお答えは差し控えさせていただきたいと思います。

下線部:修正事項(2011年10月19日→2021年10月19日)

以上