防衛大臣記者会見

日時
令和4年3月29日(火)09:46~10:01
場所
防衛省A棟11階第1省議室
備考
岸防衛大臣閣議後会見

1 発表事項

 なし

2 質疑応答

Q:北朝鮮が24日に発射したICBM級のミサイルについて、海外メディアを含む一部報道で、韓国や米国の軍当局の分析では、北朝鮮が主張する新型の「火星17」ではなく、旧来型の「火星15」だったと結論付けたとされています。防衛大臣は25日の記者会見で、今般発射されたミサイルは2月27日、3月4日に発射されたものと同じで、20年10月の軍事パレードで初めて確認された新型のICBMであると報告されていますが、日本の分析結果を修正する考えはありますか。また、米国、韓国からは「火星15」だったとの分析結果は、日本側に報告されているのかも含め、日米韓の情報共有がうまくいっているのかについて御見解をお願いします。

A:そのような報道があったということは承知をしております。防衛省としては、2017年11月のICBM級の弾道ミサイル「火星15」発射時を大きく超える高度で飛翔したことなどを含め、諸情報を総合的に勘案した結果、今般発射したミサイルは、2月27日及び3月5日に発射されたものと同じもので、2020年10月に実施された軍事パレードで確認をされた、新型ICBM級の弾道ミサイルであると考えており、現時点で分析に変更はございません。 その上で、今般発射されたICBM級の弾道ミサイルは、単純計算した場合に、1万5,000kmを超える射程となり得ると考えております。今般の発射が、これまでの一連の発射とは次元の異なる、わが国、地域及び国際社会の平和と安定に対する深刻な脅威であることに変わりはありません。いずれにしても、防衛省として、北朝鮮の軍事動向について、引き続き米国等と緊密に連携しながら、情報収集・警戒監視に全力を挙げ、わが国の安全の確保に万全を期してまいります。

Q:今朝の話で恐縮なんですけれども、自民党の佐藤正久外交部会長は今日の部会で、防衛省がウクライナの首都「キエフ」の名称について、ウクライナ語の「キーウ」に変更したということを明らかにしました。いつから変更されたのかと、今後公文書などで名称を変えていくのか、今後の方針についてお伺いしたいです。

A:ウクライナの地名についてはですね、基本的にウクライナ語に基づく片仮名の表記を基本としつつ、すでに慣用して相当程度定着している「キエフ」市については、「キエフ」と呼称を使用してきています。その上で、主要メディアにおいて、ウクライナ語の発音に基づいた「キーウ」との表記も用いられるようになってきていることを踏まえ、今般の防衛省の資料においては、国民のみなさまに向けた情報発信との位置づけを踏まえつつ、「キーウ」及び「キエフ」を併記したものであります。防衛省の資料においては、あくまでもそういうことで、「キーウ」と「キエフ」を併記したものでありますが、外務省の場合、「在外公館の名称・位置・給与法」で「キエフ」となっておりますので、在外公館の所在地の名称表記も含めて、ウクライナの首都にかかる呼称を変更する考えは現時点ではないものと承知をしております。

Q:資料などでは、国民向けの説明としてウクライナ語の「キーウ」を用いるということで、公文書としては「キエフ」を用いるという理解でいいんでしょうか。

A:当面、法律上は「在外公館の名称・位置・給与法」でそういうことになっておりますので、慎重に考えていかなければならないと思います。

Q:話題変わるんですけれども、防衛大を卒業した方のうち、72人が任官を辞退されたかと思うんですけれども、これ過去2番目に大きな数字だと聞いてますが、この要因については、大臣はどのように分析されていますでしょうか。今後、こういった任官辞退が多く発生することに対して、何かしら対策みたいなものを講じるお考えはありますでしょうか。

A:本年度の本科卒業生から留学生を除いた479名の卒業生のうちですね、任官辞退者は、今、お話しにあったような72名ということで、平成2年94名が最も多く、今年はその次に多いというような状況になってます。幹部自衛官となるべき者を養成する防衛大学校において、任官辞退者が多数出ることは極めて残念なことであります。辞退の理由としては「他業種の希望」を挙げた者が33名、「大学院への進学」を挙げた者が9名、「家庭の事情等のその他」というものが30名と承知をしております。これまでも任官辞退を抑制するために、任官辞退の可能性の高い学生に対する早い時期からの指導教官による面談とか、卒業研究担当教官等による継続的な面談とか、部内外のカウンセラーによるカウンセリング、陸海空の要員区分の希望がかなわなかった学生に対する、自衛隊の魅力、特性・職務についての丁寧な説明、あるいは女子学生と女性自衛官との懇談といった取組を行ってきているところであります。今後、分析も含めて、防大生が誇りと使命感を持って、全員が揃って任官するように、一層努めてまいりたいと思います。

Q:今年多いというのはどうしてなのかなと疑問に思うんですけれども、例えばコロナの影響であったりですとか、ロシアによるウクライナ侵略ですとか、そういった今回特有の事情というのが影響した可能性はあるとお考えでしょうか。

A:様々な要因も考えられると思うんですけれども、今、この時点でその要因を特定するわけにはいかないと思います。

Q:ポーランドに退避しているウクライナ人の、政府専用機を使って日本へ輸送する計画があるという報道が一部ありますが、検討状況についてお聞かせいただけますでしょうか。

A:御指摘のようなことを決定したという事実は今のところありません。今回のロシアによるウクライナ侵略に対して、国際社会が結束をして対応しようとすることが重要であって、わが国としても、G7を始めとする国際社会と連携しながら、ウクライナ及び避難民を受け入れている近隣国に寄り添った支援を引き続き実施していく考えであります。ウクライナに係る支援の検討状況についてはお答えを差し控えさせていただきますけども、今後とも、防衛省・自衛隊として、関係省庁と連携しながら、できる限りの支援を行ってまいります。

Q:決定した事実はないとのことは、検討はしてらっしゃるということでよろしいでしょうか。

A:できる限り支援をしてまいります。

Q:5月に50年を迎える沖縄返還に関連してお伺いします。防衛省・自衛隊は南西方面の防衛力強化を進めていますけれども、ウクライナ情勢に関連して極東方面では、ロシア軍の活動も活発化しております。防衛力を様々な正面に振り向ける必要性もあるかと思うんですけれども、南西方面の防衛力強化の方向性に変わりはないのか、大臣のお考えをお聞かせください。

A:南西方面については、南西地域の全長が約1,200kmにも及ぶ広大な地域です。南西地域の防衛体制の強化は、極めて重要な課題だと思っております。現行の防衛大綱においては、防衛力が果たすべき役割として「島嶼部を含むわが国に対する攻撃への対応」を明確に位置付け、海上優勢・航空優勢を獲得・維持するための「海空領域における能力」や、「機動・展開能力」を強化しており、これまで必要な施策を進めています。その上で、新たな国家安全保障戦略については、今回のウクライナ侵略も含めて、しっかりと検討してまいりますが、南西方面の防衛体制の強化は、引き続き極めて重要な課題であると考えております。

Q:関連してもう1問伺います。政府は、特に沖縄に関して抑止力の維持、地元負担の軽減と両立を掲げてますけども、大臣としては、この両立が現状着実に進んでいるとお考えですか。また、その両立に必要なものを大臣としての考えを教えてください。

A:今、その方向で政府一丸となって進めております。この地元に対する丁寧な説明をしながらですね、御理解を得ていきたいと考えております。

Q:話題戻って恐縮なんですけれども、防衛省による「キーウ」という表記についてです。大臣先ほど、在外公館の公称では「キエフ」となっているとおっしゃっていましたが、今回あえて外務省と一緒にではなく防衛省単体でこのような表記にすることを決めた理由、ありましたらお聞かせください。

A:別に「キエフ」を我々として消したわけではなくて、併記をしているだけであります。別に防衛省だけが政府の指針に反してということではないんですけれども、最近ではマスメディアもこの「キーウ」という言葉をですね、使うようになってきているところだと思います。そういうことも踏まえて、防衛省の中ではですね、皆様に向けた情報発信という位置付けから、「キーウ」と「キエフ」を併記したということであります。

Q:安全保障関連法施行6年についてお伺いします。29日で、安全保障関連法の施行から6年を迎えまして、自衛隊はこの1年では、オーストラリア軍への武器等防護の初実施など、活動の幅を広げています。安全保障環境の変化も踏まえて、大臣の御見解をお願いします。

A:今年6年を迎えるわけですね。いかなる事態においても国民の命や平和な暮らしを守り抜くことは、政府の最も重い責務であります。2015年に成立をしました、この平和安全法制により、日米同盟はかつてないほど強固なものになっております。抑止力・対処力も向上しております。このことは、地域の平和と安定にも寄与していると考えております。また、国際社会の平和と安定に、より積極的に貢献できるようになりました。法律施行後、必要な教育・訓練を重ねつつ、米軍等の部隊の武器等警護、米軍に対する物品・役務の提供、いわゆる「駆け付け警護」の任務付与、シナイ半島多国籍部隊・監視団への司令部要員の派遣など、平和安全法制に基づく任務の実績は一つ一つ重なっています。政府としては、引き続き平和安全法制を効果的に運用し、いかなる事態にも、国民の命と平和な暮らしを守るべく、緊張感をもって対応に万全を期してまいります。

以上