防衛大臣記者会見

日時
令和4年3月11日(金)09:36~10:07
場所
防衛省A棟11階第1省議室
備考
岸防衛大臣閣議後会見

1 発表事項

 本日の閣議において、令和4年3月30日付、将官人事5件について、内閣の承認がなされました。北朝鮮によるミサイル発射事案について申し上げます。北朝鮮が、2月27日及び3月5日に発射した弾道ミサイルについて、これまで得られた情報を基に、米国政府とも緊密に連携しつつ更なる分析を進めた結果、発射されたものはいずれもICBM級の弾道ミサイルであり、これは、2020年10月に実施された軍事パレードで初めて確認されたものと同一であるとの評価に至りました。これらは、いずれも平壌近郊から発射されたものと分析しており、2月27日の弾道ミサイルについては、最高高度約600km程度、距離約300km程度を飛翔し、3月5日の弾道ミサイルについては、最高高度約550km、距離約300km程度を飛翔したと評価していますが、これは、当該ミサイルの最大射程での発射試験を行う前に、何らかの機能の検証を行うことを目的とし、発射された可能性があると考えています。防衛省として、平素から北朝鮮の軍事動向について米国等とも緊密に連携しながら必要な情報収集・分析を行っているところですが、今般、更なる分析を進めた結果、日米で同じタイミングで公表することとしたものであります。事態を更に緊迫化させる今般の弾道ミサイルの発射を含め、一連の北朝鮮の行動は、わが国、地域及び国際社会の平和と安全を脅かすものであります。国際社会がロシアによるウクライナ侵略に対応している中にあっても、国際社会に対する挑発を一方的にエスカレートさせるような発射を強行しており、重ねて、断じて容認できません。関連する安保理決議に違反し、国際社会に背を向ける行為にほかならず、強く非難をいたします。防衛省として、強固な日米同盟のもと、引き続き高度の警戒態勢を維持し、わが国の平和と安全の確保に万全を期してまいります。また、米国及び韓国をはじめとする国際社会とも緊密に連携しながら、関連する国連安保理決議の完全な履行を進め、北朝鮮の完全な非核化を目指してまいります。昨日、航空自衛隊のKC-767がウクライナ近隣国の空港に着陸し、その後、防弾チョッキ及び鉄帽をウクライナ政府に渡しました。このKC-767は、既に日本への帰路に就いております。また、昨日、C-2も防弾チョッキ及び鉄帽を搭載後、美保基地を離陸して、ウクライナ近隣国へと向かっています。今回の迅速な物資輸送を可能としたのは、本件に関わった全ての自衛隊員や政府職員、ウクライナ等関係国職員の昼夜を問わない献身と努力であり、深い敬意を表します。また、今般の運航に御理解を頂いた、基地関係自治体の皆様に、感謝を申し上げます。わが国は、法の支配に基づく自由で開かれた秩序を実現することにより、地域全体、ひいては世界の平和と繁栄を確保していくという考えのもと、ロシアの力による一方的な現状変更という国際秩序の根幹を揺るがす蛮行に対して、国際社会と結束をして毅然と行動してまいります。我々は、引き続きウクライナのためにできる限りの支援を行ってまいります。今回引き渡された防弾チョッキと鉄帽が、粘り強く侵略に抵抗するウクライナの人々の命を護る一助となってくれることを強く願っています。3月10日から本日にかけて、海上自衛隊は、ロシア海軍艦艇10隻が、津軽海峡を太平洋側から日本海に向けて航行したことを確認をいたしました。ロシア海軍は、2月以降、ウクライナ周辺におけるロシア軍の動きと呼応する形で、ロシア軍が東西で活動し得る能力を誇示するため、オホーツク海等において大規模な海上演習を行っており、今回確認した10隻は、当該海上演習に参加していたものと考えられます。今般のロシアによるウクライナ侵略は、国際秩序の根幹を揺るがす行為であり、日本政府としても厳しく非難してきているところですが、このような情勢の下において、わが国周辺においてロシア軍の活動が活発化していることは懸念すべきものであります。このような活動に対して、わが国として、重大な懸念を持って注視しているところ、外交ルートを通じて関心表明を行うとともに、防衛省としても、ウクライナ情勢を含むロシア軍の活動について、引き続き、緊張感をもって情報収集・警戒監視を実施してまいります。1月31日に発生したF-15戦闘機の墜落事故を受けて、小松基地所属のF-15戦闘機については、飛行前後の入念な点検だけでなく、徹底した点検を行って機体の健全性を確認する「特別な点検」も実施するとともに、操縦者に対する安全管理や緊急時の手順についても教育を徹底しました。今般、かかる点検や教育が終了したことから、小松市をはじめとする周辺自治体の皆様に、訓練飛行を再開したい旨、御説明させていただいたところ、昨日、宮橋小松市長ほか周辺自治体の皆様から訓練飛行再開について御理解をいただいたことから、本日以降、小松基地においてF-15戦闘機の訓練飛行を実施していくこととなりました。防衛省としては、二人の命を失ったという重大な結果を重く受け止め、事故の原因究明と再発防止策に全力を挙げるとともに、今後とも、自衛隊機の飛行に当たっては、飛行の安全に万全を尽くしてまいります。

2 質疑応答

Q:冒頭2問伺います。1問はミサイルについてですけれども、2月27日と3月5日のミサイル、ICBM級ということでしたけれども、飛行距離は300kmでした。発射結果をどのように評価されているか、また、今後最大射程での発射時期についてどのように見ているか、伺います。もう1点は、ウクライナへの装備品提供等についてです。昨日、第2便が派遣されましたけれども、今後の派遣のスケジュール感や、自衛隊機以外の使用も検討するのか、また提供物品の数量を明示されていませんけれども、どの程度の支援をしているのか、知ることは必要かと思います。どの程度なのか。出せない場合は、その理由も併せて伺います。

A:北朝鮮が2月27日、3月5日に発射した弾道ミサイルについては、更なる分析を進めた結果として、発射されたものはいずれもICBM級の弾道ミサイルであり、これは2020年10月に実施をされた軍事パレードで初めて確認されたものと同一であるとの評価を得るに至ったところであります。当該弾道ミサイルについては、少なくとも、過去に北朝鮮が発射したICBM級弾道ミサイル「火星14」「火星15」と同等以上の射程を有しているものと推定していますが、これ以上の詳細については、引き続き分析中であり、現時点で確たることを申し上げることは差し控えさせていただきます。その上で、当該弾道ミサイルは、パレードに登場した際、北朝鮮が保有するTELの中では最多の11軸の車輪を有するTELに搭載されており、既存のICBM「火星15」を超えるとみられる大きさから、射程の延伸や弾頭の大型化、多弾頭化を企図しているとの指摘もあります。いずれにいたしましても、防衛省としては、強固な日米同盟のもと、引き続き高度の警戒態勢を維持し、わが国の平和と安全の確保に万全を期していくとともに、引き続き米国等とも緊密に連携しながら必要な情報収集・分析に努めてまいります。ウクライナの侵略が続く中で、ウクライナ政府から要請を受けて、防衛省・自衛隊は、装備品等を自衛隊機等により輸送しております。今週火曜に航空自衛隊小牧基地を発ったKC-767は、本日未明に現地に到着し、防弾チョッキ、ヘルメットをウクライナ政府に引き渡しました。また、昨日、 第2便として航空自衛隊美保基地から、輸送機C-2、1機が防弾チョッキ及びヘルメットを搭載し、離陸をいたしました。今後の輸送計画について、現地の情勢を踏まえつつ、ウクライナ等の関係国と具体的な調整を行っているところであり、お答えすることは差し控えたいと思います。防衛省としては、装備品等を一日でも早く提供できるように全力で取り組んでまいります。

Q:2問目の質問に関連してお伺いします。第2便は防弾チョッキと鉄帽ということでしたけれども、第1便と第2便で、すべてウクライナに送る予定の防弾チョッキ、鉄帽について送りきるという認識でよろしいでしょうか。

A:全体については、今、調整中であります。具体的な数量については、現在全体計画が調整中であることから、第1便を含む輸送数については、現時点でお答えできませんけれども、最終的に調整が済んだ段階でお答えをしたいと思います。

Q:米国のブリンケン国務長官は、6日、ポーランドを通じてウクライナにミグ29戦闘機の供与を検討していると明らかにしました。しかし、ポーランド政府は、この米国のプランに反発し、ヤブウォンスキ外務副大臣は、ポーランドだけがリスクを負い、他のNATO加盟国がリスクを共有したり埋め合わせしたりしないのはありえないと公言しました。その上で、ポーランド政府は8日、同戦闘機をドイツにある米空軍のラムシュタイン空軍基地にただちに無償で送るので、米国の管理下でウクライナに供与したらどうかと発表しましたが、米国はポーランドの提案を受け入れない意向を示しています。ロシアの報復リスクを考えると、米国は戦闘機をウクライナに送れないというものです。これはブリンケン長官が8日に明らかにしました。米国は、自身では戦闘機を送るのは嫌なので、ポーランドにやらせようとしていたことが明らかになってしまっています。NATOの集団自衛権は幻想だったのではないかと疑心暗鬼が広がっています。EUのボレル外交・安全保障上級代表、つまり外相が4日、米欧は今、仲裁役としては無力だと認め、仲裁役は中国であるべきだという見解を表明し、実際に、中国の王毅外相に連続して仲裁役の提案を行っています。実現したら、米国から中国に覇権が移動するのではないかとすら思わされます。米国のこうした態度や同盟国からの信頼が低下する模様を目の当たりにすると、日本が中国やロシアと対立を深めたとき、米国が本当に同盟国である日本のために体を張って守ってくれるかどうか、疑わしく思えてきます。岸大臣は米国が日本のためにロシアや中国と戦うとお思いでしょうか。解釈改憲までして集団的自衛権行使容認に踏みきった日本ですが、日本は日米同盟を神聖化しすぎてないでしょうか。また、仮に日本がポーランドのような立場に立たされ、米国から戦闘リスクとなる要求を押し付けられたようなとき、日本は国益を最優先して、ポーランドのように米国の要求をはっきり拒否できるでしょうか。大臣のお考えを御教示ください。

A:ヨーロッパやNATO諸国が、ウクライナに対する連帯や支援を示すために、様々な工夫、努力を行っていると承知をしております。わが国は、まずそういった努力を評価したいと思いますが、わが国としてできることをやってまいりたいと考えております。

Q:北朝鮮のミサイルについてお伺いします。今回、2月27日と3月5日に発射されたミサイルがICBM級と分析されたということなんですけれども、これは2018年に北朝鮮がICBMの発射実験と核実験の中止を表明していましたが、これを再開したことが明白になったといえるのではないかと思います。この点についての受け止め、米朝関係、また、日本を含む安全保障環境に与える影響について受け止めをお願いいたします。

A:北朝鮮の意図するところについて予断をもってお答えすることは差し控えたいと思いますが、これまでも北朝鮮が2021年1月の党大会においてICBM級関連事業の推進に言及することなどを踏まえれば、引き続き、弾道ミサイルの長射程化を追求する姿勢であることは変わりないと見られています。また、北朝鮮は国際社会に対する挑発を一方的にエスカレートさせるような発射を強行し、関連する安保理決議に違反し続け、国際社会に背を向ける姿勢を示し続けており、今後より一層挑発の度合いを強めていく可能性も考えらえます。どういった狙いがあるにせよ、今回のような、事態を更に緊迫化させる今回の弾道ミサイル発射を含め、一連の北朝鮮の行動は、わが国、地域、国際社会の平和と安定を脅かすものであります。国際社会がロシアによるウクライナ侵略で対応している中であっても発射を強行しており、重ねて、断じて容認できません。いずれにしても、防衛省として強固な日米同盟の下、引き続き高度の警戒態勢を維持し、わが国の平和と安全の確保に万全を期してまいります。また、米国および韓国をはじめとする国際社会とも緊密に連携しながら、関連する国連安保理決議の完全な履行を求め、北朝鮮の完全な非核化を目指してまいります。

Q:ウクライナの関係でお伺いします。先ほど言及のあった、火曜に出発したKC-767なんですが、現地に到着しウクライナ政府に防弾チョッキとヘルメットを引き渡したというお話でしたけれども、この現地というのは、隣国ポーランドに到着し、ポーランド国内でウクライナに引き渡したという理解でよろしいでしょうか。

A:KC-767の到着地としては、近隣国のポーランドであります。それ以上の詳細については、控えさせていただきたいと思います。

Q:本日、こちらの日付で本日引き渡したということでよろしいでしょうか。

A:すでに引き渡しを完了したということであります。近隣国の空港には、日本時間の昨夜、到着をしました。そこで荷下ろしをしておりますので、その時点で引き渡しがされております。

Q:北朝鮮のミサイルに戻りたいと思うんですけれども、先ほど大臣も、米国とも連携して分析した結果とおっしゃってましたけど、米国の発表を見ますとですね、ICBMに関連しているとか、関連技術を用いたとか、こういったように読めるような表現になっているんですけど、日本政府としてはあくまでICBMと認定したということでいいのかと、あと、そういった表現の違いが出ている理由、分析結果などありましたら。

A:分析に当たって、基本的には米国と連携して行っておりますので、基本的な中身については同じであると考えております。

Q:関連して、米国はですね、インド太平洋軍がミサイル防衛部隊の即応態勢を強化するなどといった態勢をとっているんですけど、日本として何かしら北朝鮮のミサイルに関して態勢を強化するようなお考えあるでしょうか。

A:既にですね、わが国として北朝鮮のミサイルに関連して、情報収集・警戒監視に最大限の警戒をしておりますが、引き続き警戒態勢で臨んでまいりたいというふうに考えております。

Q:韓国でですね、大統領選がありまして、野党のユン・ソギョル候補が当選を決めました。米韓同盟の強化などですね、ムン・ジェイン政権とは異なる安全保障政策を提案してきましたけれども、東アジアの安全保障環境に今回の韓国の政権交代がどのような影響を与えるか、どのように分析されているかについてお願いします。

A:新政権が発足するのは、まだしばらく先のことでもありますので、予断をもってお話しをすることは差し控えたいと思っております。まず、彼らが実際にどのような安全保障政策で臨んでくるのか、そうしたことを見極めてまいりたいと考えております。

Q:北のミサイルの関係なんですけども、予想される発射時期というのはなかなか詳細にはならないと思うのですが、少なくとも、近くそういったことは考えられるということなのか、また、日本に与える影響ということなんですけども、どういう事態が想定されるのか、日本の上空を飛び越える可能性があるのかないのか、あるいは日本国民に向けてですね、どういったことに注意してほしいか、お願いします。

A:北朝鮮の軍事動向については、防衛省として平素から重大な関心をもって、情報収集・警戒監視、分析にあたっておりますが、個々の具体的な情報の内容については、わが国の情報収集能力が明らかになりかねないため、お答えを差し控えさせていただきます。その上で、北朝鮮が2021年1月の党大会などにおいて、ICBM級関連事業の推進に言及していることを踏まえれば、引き続き、弾道ミサイルの長射程化を追求していく姿勢であることに変わりはないと考えております。また、北朝鮮は、国際社会に対する挑発を一方的にエスカレートさせるように発射を行っております。関連している安保理決議にも違反し続け、国際社会に背を向ける態度を示しています。今後より一層挑発の度合いを強めていく可能性も考えられます。いずれにしても、防衛省として強固な日米同盟の下、引き続き高度の警戒態勢を維持し、わが国の平和と安全の確保に万全を期してまいりたいと思います。

Q:ロシアの国防省が昨日ですね、北方領土に配備された地対空ミサイルシステムS-300の訓練を行ったと発表しました。2020年にミサイルを配備した択捉か国後とみられますけれども、防衛省として把握している事実と、政府の対応について教えてください。

A:ロシアの国防省の発表について承知をしておりますが、「S-300V4」については、2020年12月に択捉島及び国後への配備が報じられており、その他にも、2016年に択捉島への地対艦ミサイル「バスチオン」及び国後島への地対艦ミサイル「バル」の部隊配備を発表するなど、ロシアは北方領土における軍備を強化しています。防衛省としては、北方領土を含めた極東地域におけるロシア軍の動向について、引き続き注視をしてまいりたいと思います。

Q:こうした訓練なんですけれども、ウクライナ侵攻後というのは初めてになるんですが、欧米は、日本の制裁に反発しているという見方も出てます。意図や狙いについてはどのようにお考えでしょうか。

A:断定的にお答えすることは差し控えたいと思いますが、ロシアがウクライナ侵略を進める中で、このアジアにおいても、そのような訓練を行う能力があることを示す、示威行動の一つであるとも考えられます。

Q:もう1点、訓練について、日本政府には事前に通告っていうのはあったんでしょうか。

A:その点については、事務的に確認をさせていただきたいと思います。

Q:冒頭大臣、ロシアによるウクライナ侵攻について、私の聞き間違いでなければ、蛮行という非難の言葉を使われていたと思うんですが、最大級の非難の表現ではないかと思うんですけれども、敢えて使われてる意図があれば。まず聞き間違えかどうか教えて下さい。

A:冒頭の発言についてですよね。私は、繰り返しになりますけれども、ロシアの力による一方的な現状変更という国際秩序の根幹を揺るがす蛮行に対して、国際社会と結束をして毅然と行動しています、と述べました。蛮行と申し上げました。

Q:本日3月11日、東日本大震災から11年ということですけれども、当時、自衛隊員の皆さん、かなり活動されたと思います。改めて、災害派遣に対しての考えをお願いいたします。

A:東日本大震災から今日で丸11年ということであります。未曾有の大震災、津波を体験し、大きな悲しみを皆さんと共有するところでありますが、自衛隊の皆さんも、当時災害派遣で全力であたっていただきました。また、今、わが国を取り巻く安全保障環境も非常に厳しい中で、災害についても、当時よりも複雑化、大規模化していることも多いと思いますが、その中で、自衛隊としても様々な事態に対してきちんと対応できるように、万全の備えを尽くしてまいりたいと思います。

以上