防衛大臣記者会見

日時
令和3年11月16日(火)11:15~11:37
場所
防衛省A棟11階第1省議室
備考
岸防衛大臣閣議後会見

1 発表事項

 まずコロナですが、前回の会見以降、2名の隊員が感染が確認されました。合計で4,877名ということになります。本日、国家安全保障会議の九大臣会合及び閣議において、シナイ半島国際平和協力業務実施計画の変更が決定され、多国籍部隊・監視団、いわゆるMFOへの司令部要員として自衛官の派遣が、来年11月30日まで1年間延長されました。MFOへの要員派遣は、引き続き、わが国の「平和と繁栄の土台」である中東の平和と安定に資するものであり、わが国の「積極的平和主義」の実践例の一つであるところ、防衛省・自衛隊としては、優秀な人材を派遣することにより、引き続き、シナイ半島国際平和協力業務への貢献を継続してまいります。また、同じく国家安全保障会議の九大臣会合及び閣議において、ソマリア沖・アデン湾における自衛隊の海賊対処行動について、活動期間を来年11月19日まで1年間延長することが決定されました。今般の延長にあたっては、新型コロナウイルスの感染拡大以降の部内外との調整業務の負担増大に対応するため、派遣海賊対処行動支援隊の人員数を増員し、人員数の規定ぶりを変更することとしております。防衛省・自衛隊としては、極めて重要な海上交通路における航行の安全確保に万全を期するとともに、国際社会の平和と安定に貢献するため、引き続き、諸外国の部隊を含む国際社会と連携して、ソマリア沖・アデン湾における海賊対処行動を確実に実施してまいります。海上自衛隊は、11月21日から30日までの間、わが国周辺海空域において、「令和3年度海上自衛隊演習」を実施いたします。この演習は、海上自衛隊創設以来、ほぼ隔年実施している海上自衛隊最大規模の実動演習であり、海上自衛隊の艦艇約20隻及び航空機約40機が参加して、海上自衛隊の任務遂行能力の向上を図ります。また、本演習には、米海軍の艦艇約10隻、豪海軍の艦艇2隻、カナダ海軍の艦艇1隻が参加するほか、欧州諸国から初参加となるドイツ海軍の艦艇も1隻参加し、日米豪加独5か国の艦艇が集結いたします。ドイツが本演習に参加することは、インド太平洋地域の平和と安定に積極的に貢献するとのドイツのコミットメントを示す上で重要な意義を有するものであり、わが国として歓迎いたします。防衛省・自衛隊としては、本演習を通じ、海上自衛隊の任務遂行能力の向上のみならず、米海軍との共同対処能力及び相互運用性の向上、豪州・カナダ・ドイツ海軍との連携強化も図り、わが国と基本的価値を共有する国々との間でFOIPの維持・強化に向けた結束を示していきます。

2 質疑応答

Q:オーストラリアの艦艇に対して初めて武器等防護を実施したと先週発表がありましたが、アメリカ軍以外の国に武器等防護を実施した意義を教えてください。また、今後、オーストラリア軍に対する事例が増えるのか、オーストラリア以外の国を対象に加える検討はしているかについても見解をお願いします。

A:海上自衛隊護衛艦の「いなづま」は、豪州軍からの要請を受け、日豪共同訓練(日豪トライデント)の機会に、豪州軍フリゲートの「ワラマンガ」に対して、隊法第95条の2に基づく初めての警護を実施をいたしました。これは、共に米国との同盟国であり、基本的価値や戦略的利益を共有する「特別な戦略的パートナー」である豪州とわが国との間で、部隊間の相互運用性が向上し、より一層緊密に連携が可能となったことを示すものであって、わが国や地域の平和と安定を確保するための日豪防衛協力にとって極めて重要な進展となるものであります。今後の警護については、豪州軍から要請があり、法的要件を満たすことを前提として、防衛大臣が必要と判断する場合には、実施することが考えられますが、予断をもってお答えすることは差し控えさせていただきます。いずれにしても、防衛省・自衛隊としては、こうした取り組みも通じて、FOIPの維持・強化に向けて、豪州との防衛協力を新たな次元へと引き上げてまいります。また、警護対象国については、条文上、米国以外の国についてはあらかじめ特定しておりませんが、「自衛隊と連携」して「わが国の防衛に資する活動」に現に従事する部隊であり、また、自身のアセット警護を要請するという性質を踏まえれば、情報共有をはじめとして、防衛分野においてわが国と緊密な協力関係にある国におのずから限られてまいります。各国の防衛当局とは平素から様々なレベルでやり取りを行っておりますが、具体的な内容についてはお答えを差し控えさせていただきます。

Q:大臣、今期中にかなりの医官が辞任をしたい、自衛隊を辞めたいというふうに言ってるのご存じでしょうか。私、個人的にも4、5人は知っているんですけども、その最大の原因はですね、大規模ワクチン接種会場の扱いというふうに聞いています。というのは、民間のお医者さんだと時給1万円~3万円なのに、医官は3千円。そして1泊3千円というような安いホテルに詰め込まれて、まずい弁当食わされて、外出もするなと。しかも、3か月という約束のはずが、もうなし崩しに延びていると。それで、いろいろと前から思っていたこともあったという先生方多いと思うんですけども、それでもう辞めたいという方が非常に増えてらっしゃる。こういう動きというのは、大臣ご存じでしょうか。

A:大規模接種センターは、今年初めて行ったプロジェクトであります。その中で、センターの業務が依然続いている状況にございます。医官の方々の御意見等についてはですね、今後いろいろ、集約していかねばならないというふうに考えております。

Q:そもそもこの大規模接種センターに、自衛官がやる必要があるのかというふうに、やっぱり現場で、こう不満があるというふうに聞いてます。というのも、結局、部隊での医官の充足率は2割しかいないですよね。護衛艦に1人も医官が乗っていない、海外派遣を除き1人も乗っていない。そういう状態で果たしてそういう余力があるのか。自衛隊の病院の方でも、夜勤を看護師の方が組むのは非常に苦労しているという現状があって、何でもかんでも自衛隊に丸投げみたいな政府の対応というのはどうなのという声もあると聞いてます。その辺、大臣いかがですか。

A:わが国の置かれた状況、コロナウイルスの感染状況に鑑みてこのような大規模接種センターを運営するということに決まったわけでございますが、その中で、様々な問題も生じているかもしれません。そういったことについても、しっかり検証します。

Q:現在、議論が進められている経済対策についてお伺いいたします。先日の会見で、「令和3年度から防衛力を強化できるように、令和4年度予算とともにパッケージとして、現下の安全保障環境に対応するために必要な事業を確保すべく努力する」と述べられました。今後の補正予算等を見据えてですね、具体的にどのような事業の必要性を訴えていくお考えでしょうか。

A:周辺各国の防衛費が大幅に増額されております。また、軍事力の強化を図るということを含めて、わが国周辺の安全保障環境がこれまでになく厳しさを増している。そういう中でですね、現中期防に定める各種事業の実施をより一層加速して、防衛力を大幅に強化していく必要があります。こうした中で、先月8日の総理御指示においては「変化する国際情勢に的確に対応した国家の安全保障をしっかりと確保する」とされました。経済対策の内容等については現在政府内で調整中でありますけれども、これらのことを踏まえ、厳しさを増す安全保障環境への対応に必要な防衛力を大幅に強化するための事業をしっかりと確保できるように、鋭意調整してまいりたいと考えております。

Q:昨日行われた財政制度等審議会についてお伺いいたします。審議会の中でですね、財務省は、防衛省保有の航空機やヘリコプターなどの部品の調達価格を調べたところ、年々上昇して1.5~2.4倍になっていて、中には10倍に跳ね上がったものもあるという指摘をしておりました。固有の部品であまり替えがきかないといった構造的な問題もあると思うんですけれども、大臣としてどういうふうに受け止めて、今後どういった対策をしていきたいか、お考えをお願いいたします。

A:財政審の審議の内容についてはですね、この段階においては防衛省としてその内容に逐一コメントすることは差し控えさせていただきたいと思いますけれども。その上で申し上げますと、最適な調達を行う上で有用な部品、コストに関する情報を収集するコストデータベースについては、平成28年度から試行的な運用を実施をしており、令和5年中に本格運用を開始する予定であります。また、プロジェクト管理制度のもと、PM(プロジェクト・マネージャー)や調達に係る権限と責任を有する部署を含めた省内横断的な会議等を置いて、省内の関係部署と総合調整を行うことによって、装備品のライフサイクルコストやスケジュール等を一貫して管理しているところでございます。財政制度等審議会での指摘事項につきましては、今後、精査をしてまいりたいと思いますが、いずれにしても、コストデータベースの運用やプロジェクト管理の強化等を通じて、引き続き調達改革を、しっかりと行ってまいりたいと考えております。

Q:冒頭の発言のあった日豪の武器等防護に関してなんですけれども、今、日豪ではRAAの議論も進んでいると思いますが、そちらの議論の進み具合と、正式な妥結の見通しについてはいかがでしょうか。

A:RAAについては、引き続き今、交渉中でございます。できるだけ早くまとめるように指示を出しているところであります。

Q:それは例えば年内とか、時期的な目途というのはあるんでしょうか。

A:予断をもって、今お話しをすることは差し控えさせていただきますけれども、できるだけ早くまとめられるように進めておるとことでございます。

Q:大臣、冒頭御発言ありました海賊対処行動の1年延長に関してなんですけれども、延長の意義についてお伺いします。また、新型コロナの影響による増員についても言及がありましたけれども、ここ1年と比べた場合の派遣される隊員数の変化についてもお聞かせください。

A:海賊対処事案の発生件数につきましては、平成21年から23年が年間200件以上となっていました。自衛隊を含む各国部隊による海賊対処行動活動をはじめとした国際社会の継続的な取り組みによってですね、現在は、低い水準で推移をしてます。しかし、海賊を生み出すような根本的な原因でありますソマリア国内の貧困の状態については、未だ解決しておりません。海賊行為に対処しなければならないという状況には、依然として変化が見られないという中でですね、各国部隊も引き続き、ソマリア沖・アデン湾における海賊対処活動を実施をしているところであります。このような状況を踏まえれば、防衛省・自衛隊として、極めて重要な海上交通路における航行の安全確保に万全を期するとともに、国際社会の平和と安定に貢献するため、引き続き諸外国の部隊を含む国際社会と連携してソマリア沖・アデン湾における海賊対処行動を確実に実施していきたいと、このように考えております。それから、ジブチで活動する支援隊においては、新型コロナウイルス感染拡大以降、ジブチ側との出入国に関する調整や、拠点内の感染対策など新型コロナウイルスに関連した業務が生起する等、これまでと比べて部内外との調整業務の負担が増大をしております。このような業務量の実情に鑑みまして、必要な幕僚を若干名増員することといたしたところであります。対処要項に記載している支援隊の人員数については、具体的な部隊の規模をお示しするという観点から、実際の定員数を四捨五入した数値を概数として記載をしております。また、人員の交代時には、業務の引き継ぎ等のため、一時的に定員数の2倍の人員が任務に従事することとなります。そのようなことから、交代時の人員数について、人員数として実際の定員数を2倍にし、四捨五入した数値を概数として記載しているところであります。その上で、今般の交代時の人員数の規定ぶりの修正については、幕僚の増員により実際に定員数が増えたことに伴って、定員数を2倍し四捨五入した結果、交代時の人員数を約230名から約240名に修正をしたということであります。

Q:先週設立された防衛力強化加速会議についてお尋ねします。国家安全保障戦略など議論していく防衛省内の会議ということで説明がありましたけれども、議論を進めるにあたって、他省庁とどう連携を図っていくのか、具体的には外務省が関わってくる部分とか、NSCとはですね、どのように連携して戦略に反映させていくかというお考えをお聞かせください。

A:この会議は、先週金曜日に立ち上げたばかりではありますが、まずは、防衛省の省内での議論を加速してまいりたいと思います。その上で、他省庁、NSC等、外務省等とですね、こうしたところの連携も必要になってくるというふうには考えております。まず、省内での議論をしっかり進めた上で、そうした今後の国家安保戦略等々の文書に資するものにしていきたいというふうに考えております。

Q:とすると、防衛省は議論のたたき台を作るという認識でよろしいんでしょうか。

A:たたき台というふうに言うのがいいのかどうか、良くないと思うんですけども、しっかり防衛省としての、防衛省内の考え方をですね、しっかり取りまとめていきたいというふうに考えております。

Q:今日、米中首脳会談が午前中に行われています。バイデン大統領は、両首脳は偶発的な米中衝突を避ける責任があるという発言をしましたけども、首脳対談に期待すること、どう分析されますでしょうか。

A:首脳会談の中身は、まだ判明しておりません。中身については、まだコメントを差し控えさせていただきたいと思いますが、いずれにいたしましても、米中間の緊張状態に対してですね、両首脳がどのように対応していくか、しっかり関心を持ってまいりたいというふうに考えております。

Q:経済安保についてお伺いします。来年度から防衛省に経済安保の情報収集を行う専従職員を新たに設置するとの報道もありますが、事実関係と、今後どのように防衛省が経済安保に関わっていくかお教えください。

A:近年、国際社会においては、経済分野における競争が安全保障環境にも大きな影響を与えております。主要国による先進技術の獲得動向を含む経済安保に係る情報の収集・分析能力の強化が必要となってまいります。これを踏まえて、防衛省では、経済安保に関する情報収集・分析等を担当する「経済安全保障情報企画官」を令和3年度に新設をし、態勢強化のための措置を講じたほか、令和4年度概算要求においては、情報収集・分析を担当する要員を増員を要求しております。防衛省としては、引き続き関係省庁と緊密に連携をし、経済安全保障に係る政府全体の取組に貢献をしていきたいと考えております。

以上