防衛大臣記者会見

日時
令和3年11月12日(金)15:12~15:36
場所
防衛省A棟11階第1省議室
備考
岸防衛大臣閣議後会見

1 発表事項

 冒頭5件ございます。まず、わが国を取り巻く安全保障環境が厳しさを増す中で、引き続き防衛大臣を拝命をいたしました。改めて職責の重みを痛感しております。今般の就任に当たり、岸田総理からは、国家安全保障戦略、防衛大綱、中期防の改定に取り組み、その際、いわゆる「敵基地攻撃能力」の保有も含め、あらゆる選択肢を検討すること。わが国の領土、領海、領空、そして、国民の生命と財産を断固として守り抜くため、防衛力の強化に取り組むこと。日米ガイドラインの下、自衛隊の役割を強化し、抑止力を高めること。インド太平洋地域の安定化に寄与すること。沖縄をはじめとする地元の負担軽減を実現することなどの御指示を頂きました。総理からの御指示を踏まえ、様々な課題に対して積極的に取り組んでまいります。特に、厳しさを増す安全保障環境の中、国民の生命と平和な暮らしを断固として守り抜くため、防衛力の強化には一刻の猶予も許されません。国家安保戦略等の改定といった政府の取組みを見据え、防衛省としても、ただちに防衛力強化を加速していく必要があります。このため、本日、私を議長とする「防衛力強化加速会議」を立ち上げ、第1回の会議を開催いたします。安全保障の現実を直視し、わが国の防衛を全うするため真に必要なものは何なのか、いわゆる「敵基地攻撃能力」の保有も含め、あらゆる選択肢について私の下で議論してまいります。さらに、令和3年度から防衛力を強化できるように、現在議論されている経済対策においても、令和4年度予算とともに、いわばパッケージとして、現下の安全保障環境に対応するために必要な事業をしっかりと確保すべく、防衛省として努力してまいります。新型コロナウイルス関連です。前回以降、3名の隊員が新たに感染していることが確認されました。累計は4,875名になります。自衛隊は、11月19日から30日にかけて、防衛及び警備に係る自衛隊の統合運用について演練し、領域横断作戦を含む自衛隊の統合運用能力の維持・向上を図ることを目的として、「令和3年度自衛隊統合演習(実動演習)」、これを実施をいたします。安全保障環境が厳しさと不確実性を増す中で、防衛省・自衛隊は、宇宙・サイバー・電磁波を含む全ての領域における能力を有機的に融合し、真に実効的な防衛力として、多次元統合防衛力の構築に取り組んでおります。本演習では、宇宙状況監視に係る連携、サイバー攻撃等対処、統合電子戦といった新たな領域に係る訓練を行うとともに、総合ミサイル防空などの訓練も行うことで、領域横断作戦を含む自衛隊の統合運用能力の維持・向上を図り、防衛力の持続性・強靭性の強化に寄与します。また、今回の演習には、陸海空の自衛隊から人員約3万人、車両1,900両、艦艇約10隻、航空機約140機が参加するほか、自衛隊統合演習として初めて一部の訓練に米軍が参加し、日米の連携要領の維持・強化も図ります。わが国を取り巻く安全保障環境が厳しさを増す中で、このような演習を通じ、地域の平和と安定に積極的に貢献するための態勢と能力を維持・強化していくとともに、わが国の防衛に係る堅固な意思を示していきたいと考えております。昨日、自衛隊の派遣海賊対処行動水上部隊は、アデン湾において、英空母打撃群(CSG21)と共同訓練を実施しました。振り返れば、自衛隊とCSG21との最初の共同訓練も、7月にアデン湾で行われました。CSG21がインド洋、南シナ海、東シナ海を航海した約4ヵ月の間、自衛隊とCSG21は、9月の日英米蘭加共同訓練である「パシフィック・クラウン21」や、10月の米空母「カール・ヴィンソン」、また豪州の海軍等との日米豪共同訓練を始め、同志国と数多くの共同訓練を実施をしてきました。 英国がCSG21をインド太平洋地域に派遣し、これらの一連の訓練を実施したことは、英国がこの地域の平和と安定に積極的に関与するとの姿勢を国際社会に対し明確に示したものであり、わが国として最大限評価したいと思います。また、本年は、2月の日英「2+2」、7月のウォレス国防大臣の訪日、そしてこのCSGの派遣等、基本的価値と戦略的利益を共有する日英の防衛協力が大きく深化をした年でもありました。CSG21と一連の共同訓練は昨日をもって終了しましたが、防衛省・自衛隊は、引き続きFOIPの実現のために強固かつ不可逆的な関与を行うとする英国と、「新たな段階」に入った防衛協力を一層強化してまいります。防衛省・自衛隊は、今月15日から19日までの間、フィリピン・マニラ近郊において、フィリピン陸軍に対し人道支援・災害救援分野の能力構築支援事業を実施をいたします。本事業では、フィリピン側からの要望を踏まえ、フィリピン陸軍の災害対処能力の向上に寄与すべく、日本側から要員を現地に派遣して、主として、倒壊家屋からの被災者救助のための油圧救命機器・チェーンソー、水害対応のための救命ボート・救命ジャケットといった人命救助機材の取扱い要領、人命救助機材を活用した捜索救助訓練の実施要領の知見の共有を実施する予定であり、その際、日本政府がフィリピン政府に政府開発援助(ODA)により供与しました災害時の人命救助に係る機材を活用します。フィリピンは、わが国にとって、自由、民主主義、法の支配といった普遍的価値を共有する戦略的パートナーです。防衛省・自衛隊としては、FOIPの維持・強化に向けて、フィリピンとの防衛協力・交流を引き続き強力に推進し、地域の平和と安定により積極的に貢献してまいります。詳細については、後ほど事務方から説明をさせます。

2 質疑応答

Q:大臣、昨日、アクイリノ米インド太平洋軍司令官と会談をされました。6月の会談時には、台湾海峡の平和と安定を求めるということで一致しておりますが、前回の協議から進んだものがあるのか、どのような協議が行われたのか教えて下さい。

A:昨日、アクイリノ米インド太平洋軍司令官から表敬を受けました。表敬では、同司令官との間で、地域の安全保障環境が一層厳しさを増す中で、日米同盟の抑止力・対処力の更なる強化や、FOIPの維持・強化に向けた、各種共同訓練の実施や多国間協力の推進などの取組について、自衛隊と米軍が引き続き緊密に連携していくことを確認をいたしました。今回の表敬では、中国による一方的な現状変更の試みや北朝鮮によるミサイル発射を含む地域情勢のほか、日米同盟の一層の強化のための取組などについて意見交換を行いましたが、相手との関係もありますので、これ以上のやり取りの詳細については、お答えすることを差し控えさせていただきます。

Q:冒頭で発表がございました、防衛力強化の加速についての会議ですけれども、こちらについて、こちら防衛省の中で「敵基地攻撃能力」も含めたあらゆること、プラス防衛力の強化について議論されるということでしたけれども、どのようなスケジュール感でこの議論、進めていかれるお考えでしょうか。

A:この会議においては、わが国の防衛を全うするため、真に必要なものは何なのか、いわゆる「敵基地攻撃能力」の保有も含めて、防衛力の強化を加速していくためのあらゆる選択肢について議論をいたします。防衛省内の会議であります。本日開催する第1回の会議においては、この会議の進め方について、まず議論をしてまいりたいと思います。厳しさを増す安全保障環境の中で、防衛力の強化には一刻の猶予も許されない。このような認識の下で、スピード感をもって検討を進めてまいります。次回以降のスケジュール等、具体的な日程についてはですね、今後調整してまいりたいと考えております。

Q:今の質問に関連してなんですけれども、会議を受けてですね、それを何か成果物としてとりまとめる予定があるのか、そういうようなことはいかがでしょうか。

A:会議の設置目的はですね、防衛力の強化の加速に速やかに取り組むということ、政府全体の取り組みの糧とすることを第一に考えております。このため、報告書等を作成することは念頭にありません。

Q:そうすると、防衛省で議論した上で、それを政府全体の議論に反映させていきたいという、そういうものという理解でよろしいんでしょうか。特に紙とか報告書を出さずに、ということで。

A:会議の開催状況等についてはですね、適切な形で公表していく考えではあります。具体的な方法は、今後検討してまいります。

Q:関連して伺います。この会議はですね、なぜこのタイミングで設置されることになったのか、その理由を教えてください。

A:総理からですね、一昨日御指示がございましたけれども、その中でですね、しっかり防衛力を強化をしていくこと、このことについて御指示がございました。それを受けて、まずは省内でこの議論を加速させていこうということであります。

Q:安保戦略とかですね、大綱・中期もこれから改定作業に入ると思いますけれども、当然、こういったことも議論されていくという理解をしてよろしいんでしょうか。

A:全体的に、総合的に議論をしてまいりたいと思います。防衛力の強化につながるようなものは何なのか、わが国にとって必要なものは何になるのか、こういうことについてですね、しっかり議論を重ねていきたいと思います。

Q:関連なんですけれども、この会議体のメンバーとかはどういった方を想定しているんでしょうか。

A:後ほど、事務方から御連絡いたします。

Q:関連なんですけれども、この安保戦略の改定を巡っては、政府と与党との協議っていうのも月内でするんではないかという一部報道ありますけれども、月内に与党との調整とかそういったことの御予定はございますでしょうか。

A:この会議と与党との連携ということは、直接的には考えておりません。まずは省内でこれをしっかり議論していきたいというふうに考えております。

Q:先程の質問、安保戦略・大綱・中期と関連するんですけれども、総合的に議論ということで、今回の議論のゴールとしては、戦略・大綱・中期に反映させるという、そういう理解でいいんですかね。

A:そういうことになると思います。そういう形を目指して、しっかり議論を積んでいきたいというふうに思います。

Q:関連で、「敵基地攻撃能力」についても言及されていましたけれども、過去の国会答弁とかでもですね、「敵基地攻撃能力」については相手の基地の把握だとか防空システムの無力化だとか、色んな能力が必要だというふうに言われておりますけれども、大臣として、今現在どういった能力をどこまで保有するということを考えていらっしゃるのか。また、ミサイルになると思いますけれども、具体的な能力、打撃力について、どういったものを考えているのか、お考えがありましたらお願いします。

A:今回、いわゆる「敵基地攻撃能力」を含めたあらゆる選択肢を検討していくということであります。だから、「敵基地攻撃能力」だけを抜き出してというような議論ではございませんけれども、さきほど申しましたけれども、わが国の防衛力を高めていくために何が必要かということを、しっかり議論していきたいというふうに思っております。

Q:馬毛島についてちょっとお伺いします。防衛省は先日、仮設プラントの入札を公告いたしました。それについて、今まで反対を表明されてた西之表市長に加えて、鹿児島県知事の方も、環境アセスの段階でそういったものをするべきではないんじゃないかっていうことで、かなり強い不快感を示されています。「地元の理解を」というふうに繰り返し述べていらっしゃる防衛省のそういう立場とはちょっと矛盾するんではないかという声もありますけれども、大臣のお考えをお聞かせください。

A:まず、馬毛島のこの施設につきましては、非常に厳しさを増しているこの安全保障環境を踏まえれば、できる限り速くですね、この施設の整備を進めていかねばなりません。このため、昨日11日に、この馬毛島における施設整備に必要なコンクリートを製造するための設備の入札公告を実施をいたしたところであります。これに対して、鹿児島県や西之表市からは、「了承しかねる」といったコメントがあったとの報告を受けております。防衛省としては、これまでも、住民説明会を実施するとともに、地元の方々の要望も踏まえて、音の状況について体感いただくためのデモフライトの実施、音の測定結果を公表しました。また、地元の皆様に、防衛省の取組みに対する御理解を深めていただくため、港湾施設の配置案や漁業補償にかかる考え方などを公表し、様々な取組状況等を御説明してまいったところであります。更に、環境アセスメント方法書に対して県知事からいただいた御意見等を踏まえて、環境影響評価法の規定に基づき、適切に手続を進め、地元の皆様に御説明をしていく考えであります。その上で、馬毛島は離島であり、かつ各種のインフラが整っていない特殊な立地であります。自衛隊施設を早期に整備するために、必要な環境アセスメントの手続きを経た後、円滑かつ速やかに馬毛島内での施設整備に着手できるよう準備を進めていく必要があります。防衛省として、自衛隊施設の整備に当たって、地元の御理解と御協力が重要であると考えています。作業の進捗に応じて、一つ一つの説明を積み重ね、地元の理解が広がり、より多くの協力を得られるように、最大限努めてまいりたいと考えております。

Q:本来、こういった基地整備って問題は、安全保障環境とか環境アセスメントなどの科学的根拠に基づいて議論されていくべきものだと思うんですけれども、こういった防衛省の姿勢がですね、感情論を逆なでするような対応ってなってしまうと、そういった地元との溝を深めて行くというふうな懸念もあると思います。大臣、そこの感情論が入ってしまうことの懸念とか、そういった部分についての防衛省としてのお考えをお聞かせください。

A:いずれにしましても、施設整備を進めるにあたってはですね、地元の御理解と御協力を頂いていくことというのが大変重要であると考えております。今回のコンクリートの施設の整備につきましても、この環境アセスが終わる前に、何かを持ち込むというものでは、直接的にはございません。まずはしっかり説明をして、御理解を得ていきたいと考えております。

Q:自衛隊員へのワクチン接種の関係でお尋ねします。10月の下旬で、隊員に対する1回目及び2回目のワクチン接種が95%を超えたというふうに伺っております。3月のスタートから8ヵ月掛かってここまで来たわけですけども、これ、スピード感を持って取り組めたというふうに大臣はお考えでしょうか。また、3回目の接種については、防衛省としてはどのように進めていこうとお考えでしょうか。お聞かせください。

A:防衛省・自衛隊における新型コロナウイルスのワクチンの接種対象者は25万9千人。このうち先週金曜日、11月5日までで、約25万人、95%に対して第1回目が終わりました。そして、91%、24万人に対して2回の接種が行われたところであります。防衛省・自衛隊では、この間に大規模接種センターの運営とか、オリンピック・パラリンピックへの支援、また職域接種への対応、こうしたものを並行的に実施しながら、自衛隊の組織力・統率力をいかんなく発揮し、スムーズに接種が進んだものと認識をしております。3回目の接種は、今、政府内の議論を踏まえて、省内でも検討されることとなると思います。

Q:関連で、大規模接種センターの話さっき出たんですけれども、このセンターの運営が2ヵ月、最後延長されましたが、この延長がなければ、もっと隊員への接種というのは早まったと思うんですが、いかがでしょうか。

A:そういう仮定の話に、いずれにしてもなってしまいますので、その結果はなんとも言えないんですけれども、当時の状況からして、しっかり国民に対する接種を後押しするという、大規模接種センターの目的をですね、しっかり遂げていくために、延長がなされたというふうに考えております。

以上