防衛大臣記者会見

日時
令和3年9月17日(金)11:21~11:50
場所
防衛省A棟11階第1省議室
備考
岸防衛大臣閣議後会見

1 発表事項

 新型コロナの関係ですけれども、前回の会見以降、49名の隊員が新たに感染していることが確認をされました。これまでの合計が4,769名という数字になります。以上です。

2 質疑応答

Q:北朝鮮が15日に発射した弾道ミサイルについて、新たに判明した事実関係や現状の分析をお聞かせください。また、北朝鮮メディアが昨日、ミサイルが山岳地帯の列車から発射され、日本海上の目標に命中したと伝えました。北朝鮮の発表への評価も併せてお願いします。

A:北朝鮮は、15日の12時32分及び37分頃、北朝鮮の内陸部から、2発の弾道ミサイルを東方向に発射しました。発射された弾道ミサイルは、従来から北朝鮮が保有しているスカッドの軌道よりも低い高度、最高高度約50km程度ですが、これを変則軌道で約750km程度飛翔し、能登半島沖の舳倉島の北約300km程度のわが国のEEZ内に落下したものと推定されます。これはすでに発表しているとおりです。今回の発射については、北朝鮮メディアの発表において、新編された「鉄道機動ミサイル連隊」の訓練として行われ、機動・展開の後に、日本海上800kmの水域に設定された標的を打撃したものと報じられていると承知いたしております。現時点までに得られた諸情報を総合的に勘案しますと、当該ミサイルは、2019年5月4日などに発射をされた、変則的な軌道を飛翔することが可能とみられる短距離弾道ミサイル、短距離弾道ミサイルAとしておりますが、外形上類似点がある固体燃料推進方式の短距離弾道ミサイルであるとみられますが、これ以上の詳細については分析中であります。

Q:今日ですね、菅総裁の後継を決める自民党の総裁選挙が告示されました。この総裁選を通じてですねどのような論戦が行われていくべきか、大臣のお考えをお聞かせ頂けますでしょうか。

A:コロナ禍が長引いて続いている中ですから、やはりこのコロナ対策という点も含めて、そこに焦点が集中するかもしれませんけども、実際、わが国を取り巻く安全保障環境、非常に厳しさを増しております。わが国をしっかり守っていくための安保政策、防衛政策についても議論がなされていけばというふうに思います。その他、国のあり方、根幹の部分、そうしたことについても様々な議論が深められることが期待をいたしてございます。

Q:もう1点関連しましてですね、4人の候補が立候補をされていると思います。大臣かねてよりしっかりとした国家観をお持ちの方とですね、安全保障についてしっかりとした考えを持っている方を支援していきたいというふうなお考えを示されていたと思いますけれども、改めて4人立候補されている中で、どの方を支持していきたいか、現時点でお考えがあれば教えていただけますでしょうか。

A:今、日本の置かれている状況、非常に長引くコロナ禍、また厳しさを増す国家安全保障環境、こうしたことを考えるとまさにこの国難ともいえるような状況をしっかりと切り拓いていただける方を選ぶ選挙だというふうに思っております。その中で、4人の皆さまから様々なご意見がでているところと思いますけども、私としては、従来からのお話も含めて、この国家観の問題、あるいは安保政策、また例えば皇室の話、そうしたことも踏まえてですね、私は、高市早苗さんを応援しております。

Q:昨日16日で大臣が防衛大臣に就任されてから1年になるかと思いますが、この1年を振り返っての大臣の所感をお願いします。また、併せて菅総理から就任にあたって7項目の指示があったかと思いますが、ご自身がどの程度達成できたと思うか、お願いします。

A:9月の大臣就任以降、「世の中や時代の変化を敏感に感じ取って、常に柔軟な発想で全国25万人の隊員の先頭に立つ」ということを申し上げました。防衛大臣として様々な判断を行う上で、現場の実状をしっかり把握し、隊員の声に耳を傾けいくことが大変重要であると考えます。この1年は、北海道から沖縄まで、可能な限り多くの部隊を訪れて、現場で働く隊員の姿に触れてまいりました。24時間365日、一瞬の隙も無く、厳しい任務・訓練に精励する全国の隊員と共に、わが国の防衛という崇高な使命を担っていることを、私は心から誇りに思っております。また、「FOIP」の維持・強化に向けて、関係国との防衛協力・交流にも尽力してまいりました。新型コロナウイルスが猛威を振るい、直接の往来が難しい中でも、日米の「2+2」や、日英防衛相会談、日越防衛相会談などにおいて対面で実施することができたほか、電話会談などテレビ会談も含めて積極的に活用し、唯一の同盟国である米国はもちろん、オーストラリアや、インド、欧州諸国、ASEANを含む東南アジアなど、価値や利益を共有する国々との連携強化を進めてまいりました。今後も、「自由で開かれたインド太平洋」のビジョンの下で、防衛協力・交流を積極的に戦略的に進めてまいりたいと考えております。さらに、この新型コロナウイルス感染症との闘いにおいても、懸命に力を尽くしてまいりました。市中の感染対応に係る災害派遣に加えて、ワクチン接種を加速するために設置をいたしました、大阪・東京の大規模接種センター、これまでに約170万回の接種をここで実施することができました。防衛省・自衛隊は、引き続き、国民の負託に応え続ける組織として、新型コロナウイルス感染症との闘いに全力で力を尽くしてまいりたいと考えております。今後、こうした課題の一方で、防衛省・自衛隊をより強くするための課題があるということも事実であります。宇宙・サイバー・電磁波といった新領域における能力、多様な経空脅威へ対処するために総合ミサイル防空能力、スタンド・オフ防衛能力、こうした変化への対応に必要な防衛力を大幅に強化し、多次元防衛力を構築する必要があります。また、先端技術の研究開発をはじめ防衛分野での技術的な優越を確保して、防衛産業・技術基盤を強化するとともに、現在、政府として取組を強化・推進している経済安全保障についても、関係省庁と緊密に連携をとってまいりたいと考えております。先日実施いたしました令和4年度概算要求に対しては、こうした諸課題を踏まえてのものであります。現下の安全保障環境は決して予断を許しません。防衛省・自衛隊が、わが国「最後の砦」として、今後、わが国の平和と独立を守り、国民の命と平和な暮らし、安全を守るために、防衛大臣としてその責務をしっかり努めてまいりたいと考えております。

Q:名護市でのこの新基地建設の関連でお伺いします。沖縄防衛局が沖縄県に提出した設計変更の承認申請の判断がですね、10月以降になる見通しとなりました。御所見とですね、是正の指示といった対応策をご検討されているか、お考えを教えてください。

A:報道については承知をしているところであります。変更承認申請書に係る沖縄県の判断の時期については、沖縄県内部の検討に係ることでありますので、防衛省としてコメントすることは差し控えさせていただきたいと思います。その上で、変更承認申請書については、沖縄防衛局において、技術検討会及び環境監視等委員会の有識者の助言等も得つつ、十分な検討を行ってきたものであります。沖縄県において、適切に対応していただけるものと考えております。

Q:話題が変わるんですけれども、有機フッ素化合物の関連なんですけども、沖縄県の金武町が町内の河川で実施した水質調査でですね、有機フッ素化合物PFASの値が165ナノグラムということで、国の指針値を超える値が検出されたことが分かりました。町側はですね米軍キャンプ・ハンセンが発生源という見方を示していますが、大臣の受け止めとですね、政府として確認などの対応をするか、お考えを教えて下さい。

A:まず、指摘の調査については詳細を承知しておりませんので、防衛省としてお答えすることは差し控えたいと思います。政府としては、沖縄県民の皆様がPFOSの検出に対して不安を抱いておられるということを重く受け止めております。不安を払拭できるように沖縄県、米側及び関係省庁と緊密に連携して必要な対応をとってまいりたいと思います。

Q:インド太平洋のですね、安全保障情勢についてお伺いいたします。アメリカ、イギリス、オーストラリア3カ国がですね、同地域の安定を目的とした新たな安保協力の枠組み「AUKUS」の発足を発表いたしました。オーストラリアへの原子力潜水艦技術の提供などですね、具体的な動きもありますが、「AUKUS」の発足が日本や地域の安全保障に与える影響についてどのようにお考えでしょうか。

A:昨日、米国、英国、豪州の首脳が「AUKUS」と呼ばれる三国間の安全保障パートナーシップの創設を発表されたと承知をしております。これは、豪海軍による原子力潜水艦の開発を米英両国が支援することを含めて、米英豪間の安全保障及び防衛能力に関する協力を幅広く深化させるものと承知をしております。米英豪間の安全保障・防衛協力の強化というものは、インド太平洋地域の平和と安定にとって大変重要であります。防衛省・自衛隊としては、「自由で開かれたインド太平洋」の維持・強化に向けて、引き続きこの3国との協力関係、更に進展させていく考えでございます。

Q:話題変わりましてですね、昨晩弊社の報道番組「news23」にですね、航空自衛隊那覇基地でのパワハラ事案の報道を行いました。防衛省としてですね、この事案の把握の有無と、これまでの防衛省としての対応についてのですね御所見をお願いいたします。また、事案がですね事実であれば、防衛省のパワハラの懲戒処分基準などに該当するかということについて、大臣のお考えをお願いします。

A:パワハラについては、部隊行動を基本とする防衛省・自衛隊において、隊員間で決してあってはならないこと、そして組織として「許されない」という強い姿勢をもって、その根絶を図る必要があると考えております。ご指摘の事例については現在調査中であります。事実関係に基づき適正に対処してまいりたいと考えます。

Q:一部のメディアでですね、防衛省は計画段階ではありますが、安全保障を啓蒙するという目的で100人のインフルエンサーや芸能人等に接触して、安全保障に対して広めていくという計画を立てているという報道をしておりますが、事実確認とですね、可能な限り詳細をお願いします。

A:安保環境が厳しさを増す中で、こうした変化への対応に必要な防衛力を大幅に増強し、多次元統合防衛力を構築していくという目標があります。こうした考えに基づいて、令和4年度においては現中期防に定める各種事業の実施をより一層加速し、防衛力を大幅に強化するために、必要な予算を着実に確保していく所存であります。防衛省が実施する対外説明等に対する個別の調整状況についてはお答えを差し控えさせていただきたいと思います。今後とも、防衛予算の内容や防衛省・自衛隊の各種取組について、国民の皆様のご理解を得られるように、十分な説明や分かりやすい情報発信に努めてまいりたいと考えます。

Q:話題変わりまして、平和安全法制がですね成立しまして19日で6年になります。この1年でですね、武器等防護の対象がオーストラリア軍にも拡大されたりですとか、それから台湾を巡る情勢の緊迫化もあると思います。改めてですね、この平和安全法制というものを教えていただけますでしょうか。

A:いかなる事態においても国民の命や平和な暮らしを守り抜くことは、政府において最も重要な責務であります。2015年に成立したこの平和安全法制によって、日米同盟はかつてないほど強固なものとなって、抑止力・対処力も向上しています。このことは、地域の平和と安定にも寄与していると考えますし、また、国際社会の平和と安定により積極的に貢献できるようになりました。法律施行後に、必要な教育訓練を重ねつつ、米軍等の部隊の武器等の警護、米軍に対する物品・役務の提供、いわゆる「駆け付け警護」の任務付与、シナイ半島多国籍部隊・監視団への司令部要員の派遣など、平和安全法制に基づく任務の実績は一つ一つ積み重なっています。政府としては、引き続き、平和安全法制を効果的に運用し、いかなる事態にも、国民の命と平和な暮らしを守り抜くべく、緊張感を持って、対応に万全を期してまいりたいと思います。

Q:冒頭の北朝鮮のミサイルの関係で1点お伺いしたいんですけども、今回落下地点についてですね、当初政府としてはEEZの外側だと推定されるというところから、結果的には内側に推定されるという形で修正した形になるわけですけど、この件について大臣当日のぶら下がり会見で変則的な軌道だったこともおっしゃっていたと思います。改めて今回どういった分析においての難しさというかですね、あったのかということと、政府全体の探知から発表という一連の対応についてですね、どのように振り返って、もし今後の課題とか、お感じなっていることがございましたらお伺いできればと思います。お願いします。

A:航空機や船舶等の安全確保の観点からですね、北朝鮮の弾道ミサイル等の発射に関する情報については、その時点で得られた情報に基づいて、国民に対して、迅速・的確な情報提供を行うということとしています。今般の弾道ミサイルの飛翔距離等については、発射を探知した直後の情報に基づけば、EEZ外に落下したものと推定されたため、その旨を発表いたしました。その後、分析を進める中で、変則軌道で飛翔していたことが判明をし、わが国のEEZ内に落下したものと推定されたということで、その旨発表をいたしました。いずれにいたしましても、北朝鮮の弾道ミサイル等の発射に際しての、国民への迅速・的確な情報提供の在り方については、不断に検討してまいりたいと考えております。

Q:北朝鮮関係で、11、12日に発射されたと北朝鮮が発表している巡航ミサイルに関してお伺いします。一部報道ではですね、日本政府としては飛行が確認されておらず、墜落したんじゃないかという報道もあります。火曜日の閣議後会見で一度お伺いしておりますが、その後何か分析などで新しい情報がありましたらお願いします。

A:13日に北朝鮮メディアが、11日及び12日に新たに開発した新型長距離巡航ミサイルの試験発射を成功裏に行ったと発表していることは承知をしております。いずれにしても、事柄の性質上、個々の具体的な情報の内容についてお答えすることは差し控えさせていただきたいと思います。防衛省として、北朝鮮の軍事動向について、引き続き、米国、韓国と緊密に連携しながら必要な情報の収集・分析及び警戒監視を行ってまいりたいと考えます。

Q:米英豪の協力などについてお伺いします。オーストラリアの、原子力潜水艦などを購入して海軍力を高めることが日米同盟の抑止力にどういう影響力を与えるのかという点と、日本としてこの米英豪の枠組みで何らかの形で参画したり連携したりっていうことが考えられるという点についてお伺いします。

A:この豪州海軍による原子力潜水艦の開発を米英が支援する。こういう枠組みでありますけれども、米英豪間の安全保障及び防衛能力に関する協力が幅広く深化させるというのは大変重要なことだと考えております。また、そのことは、インド太平洋地域の平和と安定にとっても重要です。防衛省・自衛隊としては、この「FOIP」の維持・強化に向けて、引き続き米国英豪との協力関係を進展させていきたいと考えております。現在、防衛省においては、現在の防衛大綱及び中期防に基づいて、通常動力型の潜水艦を1隻ずつ取得し、必要な防衛力を強化しているところであって、原子力潜水艦を保有するという計画は特に持っていない。

Q:昨日、EUの方がインド太平洋戦略を発表されました。インド太平洋地域への諸国と共同訓練など、活性化していくような方針を出されていますが、今後日本として、EU諸国とどのように防衛協力を進めていくか、お考えありましたらお願いします。

A:昨日、EUはインド太平洋への関与を強化するために、インド太平洋における協力のための戦略に関する共同コミュニケーションというものを発出したと承知をしております。今回の共同コミュニケーションは、民主主義や法の支配、ルールに基づく国際秩序、航行の自由に言及しつつ、経済、安全保障・防衛、連結性、気候変動、デジタルといった幅広い分野での協力を含むものであります。その中で安全保障面においては、共同訓練や寄港の拡充、海洋能力構築事業の拡充などに言及されていると承知しております。防衛省としても、自由や民主主義・法の支配といった基本的価値を共有するEUが、インド太平洋に関与していくとの強い意志と共に、今後の具体的な取り組みを表明したことについて歓迎をしたいと考えております。

Q:北朝鮮の弾道ミサイルに戻ってしまうんですけれども、鉄道から発射された映像をですね北朝鮮メディアの方で公開されていて、非常にこれ珍しいようなタイプなのかなと思うんですけれども、鉄道から発射されたミサイルということについて分析、秘匿性、機動性を高めるという狙いもあると思うんですけれども、鉄道の発射型ミサイルについて分析というのはどのようになっておりますでしょうか。

A:現在分析中でありますけれども、北朝鮮メディアによりますと、1月の朝鮮労働党大会において、「同時多発的な集中打撃能力」等を向上させるために組織されたものと述べられております。この鉄道機動ミサイル連隊についてですね、これ以上の詳細についてはお答えを差し控えさせていただきたいと思います。これまで北朝鮮による発表で、鉄道の貨車から発射されたとされる事例は無いものと承知をしています。

Q:北朝鮮の弾道ミサイルについて伺いたいんですが、最初にEEZの外と発表されて、その後でEEZ内であると発表された。ということは、イージス艦とかFPSなどの地上レーダーで捕捉・追尾ができていなかったということで解釈してよろしいでしょうか。

A:最初の発表時点でEEZ外と推定されるということで発表いたしました。その時点での情報に基づけば、そのように発表したということです。先ほども申しましたけれども、わが国の航空機や艦艇に対する安全の確保という面からも適切に発表しているところですが、その後の更に分析をしたところで、変則軌道を描いてEEZ内に落下したことが推定をされるということで、修正をしたものです。

Q:そうしますと、北朝鮮の弾道ミサイルを補足して落下地点まで追尾することはできていたんでしょうか。

A:これは、情報収集能力の問題ですから、私の方からはお答えすることは差し控えさせていただきます。

Q:落下地点を修正した、EEZ外から内に修正したということは落下地点まで追尾できていなかったというふうに考えるのが自然だと思うんですが。

A:お答えを差し控えさせていただきたいと思います。

以上