防衛大臣臨時記者会見

日時
令和3年9月11日(土)18:51~19:05
場所
在ベトナム日本大使館
備考
岸大臣ベトナム訪問(日越防衛相会談後臨時会見)

1 発表事項

 本日、日越防衛相会談を実施し、続いて「日越防衛装備品・技術移転協定」の署名式に立ち会いました。まず、防衛相会談については、冒頭私から、今般の防衛相会談を契機に、日越防衛協力は、日越二国間だけではなく、地域や国際社会の平和と安定に、より積極的に貢献するための協力であることを再定義し、「新たな段階」に入ったことを明確に打ち出したいと旨述べ、ザン大臣からも賛同をいただきました。その上で、最近の東シナ海・南シナ海を含む地域情勢について議論し、私から、既存の国際秩序と合致しない、力を背景とした一方的な現状変更の試みや緊張を高めるいかなる行為にも強く反対するとのメッセージを、国際社会に向けて発信していきたい旨述べました。この文脈で、私から、中国海警法に関して深刻な懸念を申し上げました。また、北朝鮮及びミャンマー情勢についても意見交換を行い、北朝鮮については、北朝鮮のCVIDの実現に向けて日越で連携していく意思を表明しました。さらに、ミャンマー情勢については、私から「5つのコンセンサス」を具体的な成果につなげていくことが重要である旨述べ、両国で引き続き緊密に連携していくことで一致をいたしました。こうした地域情勢を踏まえ、ザン大臣との間で、今般再定義された「新たな段階」における日越防衛協力の具体的な方向性について率直な議論を行いました。特に本日、両国が「日越防衛装備品・技術移転協定」の署名に至ったことを歓迎し、今後は艦艇分野を含め、具体的な装備移転の実現に向けて協議を加速化していくことで一致しました。このほか、ハイレベルでの交流やサイバーセキュリティ、衛生、PKOといった様々な分野での協力を力強く推進することで一致したところであります。防衛省・自衛隊としては、今回の成果を踏まえ、「自由で開かれたインド太平洋」を維持・強化する上での重要なパートナーであるベトナムと「新たな段階」における日越防衛協力を更に発展させるとともに、地域や国際社会の平和と安定に向け、より積極的に貢献していきます。以上です。

2 質疑応答

Q:今回のですね、ベトナム訪問の「防衛装備品・技術移転協定」の署名などのですね、成果を受けて両国の防衛協力を具体的に今後どのように発展させていかれるお考えかお聞かせください。

A:ベトナムは、わが国にとって「広範な戦略的パートナー」であり、「自由で開かれたインド太平洋」を維持・強化する上で重要な国です。冒頭申し上げましたとおり、ザン大臣との会談では、日越防衛協力が、二国間ものだけではなくて、地域や国際社会の平和と安定に、より積極的に貢献するための協力であるとの再定義をし、そして、日越防衛協力が「新たな段階」に入ったことを明確に打ち出すことについて認識が一致したところです。その上で、ザン大臣と地域情勢についても議論しましたが、これを踏まえ、「新たな段階」における日越防衛協力を更に発展させ、地域や国際社会の平和と安定に向けて、より積極的に貢献していきたいと考えております。特に、「日越防衛装備品・技術移転協定」が署名に至ったことを受け、今後は艦艇分野を含めて、具体的な装備移転の実現に向けて協議を加速化させていくとともに、ハイレベルでの交流やサイバーセキュリティ、衛生、PKOといった様々な分野での協力を力強く推進してまいります。

Q:装備品移転協定に関してお聞きしたいですけれども、艦艇分野を含めてということですけれども、大臣として具体的に護衛艦ですとか、より何か具体的な考えがあるのかどうか、また、会談の中でザン国防大臣との間でですね、こういったものが何か協力できばといったやりとりがあったのかどうか教えてください。またですね、今回、フィリピンやミャンマーなど、東南アジアとしては4カ国目になるかと思うんですけれども、こうした東南アジアの国々とのこうした協定を結ぶことの意義について改めてお願いいたします。

A:今般、ベトナムとの間で「防衛装備品・技術移転協定」が署名されたところですが、これによって、日ベトナム間で移転される防衛装備品及び技術の適正な管理が確保されるとともに、日ベトナム間のより緊密な防衛装備・技術協力及びわが国の防衛産業基盤の維持・強化、ひいてはわが国の安全保障に資することが期待されているため、今回の署名は大変意義深いものがあったと考えております。艦艇分野を含め、様々な可能性について協議をしているところでございます。現時点において、具体的な防衛装備品を申し上げられる段階にはありませんが、今般の会談を踏まえて、艦艇分野も含めた具体的な装備移転の実現に向けて、ベトナムとの協議を加速してまいりたいと思います。艦艇分野とあえて申しましたのは、平素から防衛当局間で、常々ベトナム側のニーズについても捉えていたところでございますので、今回具体的な技術移転の実現に向けて協議を加速していくということで、艦艇分野を含めて一致したということであります。他のASEANの国々ともですね、しっかり防衛協力を進めていくということは、これは大切な地域の安定を確保していくということでも大変重要なことだと思います。こうした協定を通じて、それぞれ各国のニーズを踏まえてまいりたいと考えております。

Q:フィリピンやインドネシア等ともですね、防衛装備品の今回の協定の署名を、すでに交わされていると思いますけども、その時と違ってですね、今回あえて大臣がベトナムを訪問をして署名に立ち会われた、こういった理由、意義についてお聞かせいただけますでしょうか。

A:日越の「防衛装備品・技術移転協定」は、昨年10月に菅総理大臣がベトナムを訪問した際に、当時の首相であるフック国家主席との間で実質合意をされたものであります。今般の私の訪越のタイミングで、本協定の署名の具体的な調整が整ったことから、本日の日越防衛相会談後に、山田滝雄駐ベトナム大使とホアン・スアン・チエン・ベトナム国防次官との間で「防衛装備品及び技術移転に関する日本国政府とベトナム社会主義共和国政府との間の協定」の署名が行われ、私とザン国防大臣がこれに立ち会ったものであります。

Q:地域情勢についてお伺いしたいんですけれど、大臣の方からですね、現状変更の試みに反対するというような意思を示されたということなんですが、具体的に海洋進出を強める中国については、どのようなお話をされたということかということと、それからですね、台湾情勢について何か意見を交わしたことがありましたでしょうか。またもう1点、北朝鮮についてなんですけれども、先立って、軍事パレードなどを行われたと思うんですが、こういった北朝鮮の活動に対する懸念ですね、そういったことをお話されたのか教えていただけますでしょうか。

A:まず、今般の会談では中国を含めて、そして、台湾をめぐる情勢についても地域情勢について幅広く議論をしたところであります。その中で、私から、「自由で開かれたインド太平洋」の維持・強化が重要であるという考えを述べました。法の支配に基づく既存の国際秩序を維持するために両国が協働すること、国連海洋法条約を始めとする国際法を遵守していくことで、ザン大臣と一致をいたしました。また、私から中国海警法に関する深刻な懸念を表明をいたしました。その上で、私から、既存の国際秩序と合致しない力を背景とした一方的な現状変更の試みや緊張を高めるいかなる行為に対しても強く反対するというメッセージを、日越が共に国際社会に向けて発信していきたいということを述べました。台湾についても、台湾をめぐる情勢の安定はわが国の安全保障にとってはもとより、国際社会の安定にとっても重要であり、当事者間の間で、直接の対話によって平和的に解決されることを期待をするという、わが国の従来から一貫した立場を申し上げたところであります。北朝鮮の情勢についてですけれども、北朝鮮については、私から、北朝鮮による弾道ミサイルの発射が国連安保理決議違反であって、地域の平和と安全を脅かすものとして強く非難をし、国際社会全体にとっての深刻な課題であるということを述べました。また、北朝鮮の全ての大量破壊兵器、あらゆる射程の弾道ミサイル、このCVIDの実現に向けては、国連安保理決議の完全な履行が不可欠であって、北朝鮮籍船舶による「瀬取り」への対応も含めて引き続き連携していくという意思を述べさせていただいたところであります

Q:本日、中国の王外相がベトナムの副首相に「ベトナムと中国は南シナ海の問題を拡大するべきではない」と伝えたということなんですけれども、この件についてベトナム側から何か説明があったということと、大臣の受け止めをお願いいたします。

A:私どもは、ベトナムとの間で、この「自由で開かれたインド太平洋」、この考え方を踏まえて、国際法に基づいた国際秩序の維持が大変重要であるということを述べさせていただきました。ベトナムと中国との間で、いかなる話が行われたかということについては、特に会談の中ではございませんでした。

以上