防衛大臣記者会見

日時
令和3年9月10日(金)11:05~11:32
場所
防衛省A棟11階第1省議室
備考
岸防衛大臣閣議後会見

1 発表事項

 新型コロナですけれども、前回の会見以降、98名の隊員が感染していることが確認されました。これで累計4,660名となります。令和3年度の陸上自衛隊演習についてでありますが、陸上自衛隊は、各種事態に実効的に対応するための抑止力・対処力を強化すべく、9月15日から11月30日までの間、全国約160か所の駐屯地や演習場において、全国規模の実動演習を実施をいたします。島嶼部への攻撃を始めとする各種事態に実効的に対応するためには、状況に応じて所要の部隊が迅速かつ広範囲に機動展開を行うことが必要不可欠です。このために、対応に当たる部隊や各種装備品の迅速かつ大規模な展開を可能とする輸送力が鍵となります。本訓練では、こうした認識に基づき、約30年振りに陸上自衛隊のほぼ全ての部隊、約10万人が参加をし、陸海空自衛隊の輸送力に加え、米軍や民間の輸送力も活用して、各方面を跨いだ部隊の機動展開や全国規模での装備品・補給品の輸送などに焦点を当てた訓練を実施をいたします。本訓練を通じて、作戦準備における各種部隊等行動を演習することにより、任務遂行能力と即応性・運用の実効性向上を図るとともに、抑止力・対処力の強化を図ってまいります。本日から12日にかけて、防衛大臣として2年ぶりにベトナムを訪問いたします。今回の訪問では、ザン・ベトナム国防大臣との間で、日越防衛相会談を実施するほか、「新たな段階に入った日越防衛協力関係とグローバル・パートナーシップ」と題する基調講演を行うことなど予定しております。ベトナムは、わが国にとって「広範な戦略的パートナー」であって、「自由で開かれたインド太平洋」を維持・強化する上で重要な国であります。私としては、今般のベトナム訪問を通じて、両国関係の更なる強化、地域と国際社会の平和と安定を図る観点から、ザン大臣との間で日ベトナム防衛協力関係を「新たな段階」へと引き上げるべく、率直な意見交換をしてまいりたいと考えております。

2 質疑応答

Q:北朝鮮が9日に軍事パレードを行いました。新たな新兵器みたいなのは登場していないようですが、現状の分析等ありましたらお願いします。

A:北朝鮮は、昨日、「建国」73周年を祝う軍事パレードを実施したものと承知しています。北朝鮮のメディアで放映された内容、また各種報道等によれば、今回の軍事パレードというものは、予備戦力である「労農赤衛軍」などを中心に行われ、多連装ロケット砲などの通常兵器が登場したものの、弾道ミサイルは見られなかったものと承知をしております。今回の軍事パレードの意図・目的やこれ以上の詳細については、予断を持ってお答えすることは差し控えたいと思いますが、いずれにせよ、北朝鮮が核・ミサイル開発を推進し、関連技術や運用能力の向上を図っているという状況に変わりはないと考えます。防衛省としては、このような軍事動向について、米国・韓国等と連携をし、引き続き重大な関心をもって情報収集・分析に努めていきたいと考えております。

Q:アフガニスタンの派遣についてお伺いします。今回の派遣についてですね、日米ガイドラインの5項A-5、非戦闘員を退避させるための活動にあたるのではないかという識者の見解があります。防衛省として今回の派遣というのが日米ガイドラインに沿って行われたものだと認識されてますでしょうか。また、日米ガイドラインに沿って日米間での協調活動ですとか、調整等行われた事実の有無について教えていただけますか。

A:日米ガイドラインというものはですね、日米の防衛協力について一般的な大枠や政策的な方向性を示すものであって、日米両政府の意図を表明する文書であります。今般の輸送については、こうした両政府の意図に則ったものではありますが、同指針にも明記されているとおり、同指針は、日米いずれの政府にも立法上や予算上、行政上またその他の措置を義務付けるものではございません。法的な権利や義務を生じさせるものではなくて、同指針に基づき個別の活動について調整を行うような性格ではないと考えております。あくまで今回のオペレーションについては、自衛隊法の84条の4に基づいて行われたものであります。

Q:ロシアのほうが一昨日の8日、北方領土を含むクリル諸島のほうで演習を開始するというふうに発表しました。これについて、事実関係と何かわかることがあれば、教えていただければと思います。また、受け止めについてお願いいたします。

A:状況については今、分析中でありますので、今、お答えすることは差し控えさせていただきたいと思います。

Q:先ほど大臣冒頭でベトナムの訪問について、発表されましたけれども、就任以来初めての外遊ということで、日越の新たな段階の防衛協力への引き上げといったところで、どういった成果を目指したいかということと、どのような防衛相会談にしていきたいかというところを教えていただけますでしょうか。

A:今回のベトナム訪問は、私が就任して以来、初の外国訪問ということになります。コロナの状況であったので、延び延びになったという部分もあるんですけれども、大臣としては2年ぶりのベトナム訪問という形になります。私としても、大変楽しみにしている訪問でもございます。まず、ベトナムとの間では、今年の6月の防衛相テレビ会談においても両国の防衛協力関係を新たな段階に引き上げるために二国間の協力や交流をさらに進めていくことで一致をしております。今般の訪問ではこの点を踏まえて、ザン大臣と率直な意見交換を行い、そして両国関係のさらなる強化、地域と国際社会の平和と安定を図る観点から、新たな段階における日越防衛協力の方向性を打ち出したいと考えております。ベトナムはASEANの中でも大変、戦略的に重要な国であると考えています。日本との関係強化のためにしっかりした意見交換を行ってこれればと思っております。

Q:関連しましてですね、大臣の訪越の時期にですね、同じような時期に中国の王毅外相もですね、ベトナム等を訪問するということが発表されているんですけれども、こうした中国の動き、牽制するかのような動きだと思うんですけれども、こうした中国の動きについてはどのようにお考えになっていらっしゃるんでしょうか。

A:ベトナムと中国というのは国境もありますし、様々な課題も存在していると思います。その中で、わが国がベトナムとしっかりした関係を作っていくということは、やはり重要なことだと考えております。ちょうど時を同じくして、中国の外務大臣が訪越をされるということで、ベトナムとしては、様々な日程調整等もあったことと思いますけれども、我々としてしっかりやるべきことをやっていきたいというふうに思っております。

Q:話題変わりまして、安倍晋三前首相がですね、ミサイル阻止に関する新たな方針について、2020年末までにあるべき方策を示すとした談話を公表してから明日で1年になります。事実上敵基地攻撃能力保有の検討を促すものだと思いますけども、この昨年末の閣議決定では抑止力の強化について引き続き政府において検討を行うというふうになっていますが、現在の検討状況とですね、大臣のそれに対する評価についてお伺いできますでしょうか。

A:検討状況については、引き続き政府内で鋭意検討を続けている状況であります。わが国を取り巻く安全保障環境というのは、厳しさを増しているところです。そのスピードもですね、非常に速いものになると思いますから、そうしたことに対処していく必要もあると考えています。いわゆる、これまでのようにミサイル阻止に対して、弾道ミサイル防衛という形をとってまいりましたけれども、それで果たしてわが国の平和と安全が守られるのかどうか、こうした問題意識について、さらに議論を重ねて加速させていきたいと考えております。

Q:これに関する関連なんですけども、現在の菅総理、昨日の記者会見でもですね、次期自民党総裁選には立候補する意向はないということで、この検討自体は事実上次の政権に託されるみたいになるのかなというふうに思っております。自民党総裁選これから行われるということになりますけれども、次期自民党、自民党総裁選でのですね、このミサイル阻止に関する議論への期待ですとか、次期総裁への、次期政権へのこの議論への期待というものがあれば教えてください。

A:安全保障という課題については、総裁選の大きな論点の1つだと、私も考えております。非常に厳しい安全保障環境の中で、いかにわが国を守っていくか、国民の平和な生活を維持して、領土・領海・領空を断固守り抜いていくか、こういった意志も含めて、しっかりした考えの持ちの方を持ってもらいたいというふうに思っております。

Q:在沖縄の米海兵隊が普天間飛行場からPFOSを含む水を放出した当日に、地元の宜野湾市が下水から採取した水を検査したところですね、指針を超えるPFOSが検出されたと報道が出ています。正式発表まだだとは思いますが、大臣受け止めお願いします。

A:ご指摘のような事実が公表されたということは承知しておりません。また、宜野湾市が行った調査について防衛省としてお答えをすることは、差し控えさせていただきたいと思います。いずれにしましても、PFOSを含む水の取り扱いについては、適切な処置がなされるように、引き続き日米間でしっかり協議をしてまいりたいと考えます。

Q:関連なんですけども、大臣昨日面会されたラップ在日米軍司令官との間でですね、このPFOSの放出について意見が交換されたように伺ったのですけども、どのようなやりとりがあったのか、可能な範囲で教えていただければと思います。

A:昨日は、新たに着任したラップ在日米軍司令官からの表敬を受けたところであります。今回の表敬では、在日米軍司令官に任命されたことのお祝い、祝意を表するとともに、日米同盟のさらなる強化に向けての忌憚ない意見交換を行いました。その中で、地域社会の理解と協力の重要性を確認する中でですね、先般の普天間におけるPFOSの処理水の放流についても意見交換を行ったところであります。これ以上の詳細については、相手との関係もありますので、差し控えたいと思いますけども、いずれにしてもこのPFOSの処理水の取り扱いについては、適切な措置がなされるように、日米間でしっかりと協議してまいりたいと思います。

Q:アフガンの件で1点確認させてください。JICAの北岡理事長から、確か8月18日に大臣、自衛隊機の派遣について要請を受けたと話があったと思うんですが、改めて事実関係、経緯を可能な範囲で教えてください。

A:8月18日、おっしゃるとおり北岡理事長が訪問されました。これはもうずいぶん前から予定がされていたことでありますけれども、その中では安全保障情勢等のですね、意見交換を実施したわけですけれども、JICAの現地職員はJICAにとって、ファミリーのような存在であって、その安全を確保したいというお話が、その場でございました。防衛省では、その後、アフガニスタンの情勢の分析やカブールからの邦人輸送について、不断に検討を行ってまいりました。私としては、北岡理事長の貴重なご意見もご参考にさせていただいたところであります。私もですね、以前海外で民間企業で働いていた経験があります。その時、現地職員を使っていたこともあるんですけれども、同じ日本のために働いて、我々と同じ志を持って地元のために、今回であればアフガンの発展や復興のためにですね、汗を流してきた同僚でありますから、意識としてはまさにファミリー、同志であるというふうに考えるところでありますから、その彼らに対して、何らかの手を差し伸べたいとおっしゃっておられる北岡理事長のご意見にはですね、私も共感をしたところです。

Q:もう1件は話題変わりまして、菅内閣の発足から1年余りで終わりを迎えることになるわけですけれども、その1年余りを振り返った時の大臣のご所見、ご所感をお伺いできればと思います。

A:まだ菅内閣続いている中で、そして、私も菅内閣の一員として働いているところであります。確かにこの1年間を振り返ってみますと、コロナ感染の拡大防止、これが一番の大きな課題であったんだろうというふうに思います。総理もこの問題に対して真剣に取り組んでおられたと考えております。一方で、安全保障についても様々な課題があって、こうしたことについてもしっかりと取り組んできているところだと考えております。限られた残りの任期ではございますけれども、しっかり内閣の一員としての役割を果たしていきたいと思います。

Q:総裁選の話題に戻るんですが、岸田さん、高市さんが出馬を表明されていて、河野さんも近く発表されるということですけれども、今までの彼らの政策等をお聞きになって、大臣、意中の方、支持をされる考えのある方いらっしゃったら教えてください。

A:まだ、今回の総裁選にですね、出馬される方が出揃っているということではないと思いますので、現段階で私からそういったコメントをすることは差し控えさせていただきたいと思いますけども、常々申し上げているとおり、この安全保障環境は非常に厳しいものがあります。こうした問題に対して、しっかり取り組んでいただくことが、総理大臣として期待したいというふうに考えています。

Q:北朝鮮の軍事パレードことで、もう1点お伺いしたいんですけれども、いつもの軍事パレードだとですね、新型の弾道ミサイル等々が出てくると思うんですけれども、今回はそうしたですね、大型の兵器が確認出来なかったということで、この違いについてですね、大臣としてどのようにお考えになっているのか、もう少しお聞かせいただけたらと思います。

A:今回の軍事パレードの目的等々ですね、予断をもって私からお答えするということは差し控えさせていただきたいと思いますけれども、10年前、63周年のときにやはり建国記念日にもですね、彼らの言う建国記念日にも、当時の金正日国防委員長と金正恩委員長が出席して、この労農赤衛軍による軍事パレードが行われたと承知しております。そういう意味で、その時から10年経っている中で、このいわゆる予備役的な存在である、この労農赤衛軍のパレードが行われたわけであります。いずれにしましても防衛省としては、今般の軍事パレードの内容を含めて、北朝鮮の軍事動向について、米国や韓国等と連携をしながら、しっかり引き続き重大な関心をもって情報分析に努めていきたいと考えております。

Q:大臣冒頭でおっしゃいました、陸上自衛隊の実動演習ですが、これは自衛隊法の76条に基づく防衛出動、これを想定された訓練になるのでしょうか。

A:今回大規模な陸上自衛隊としての訓練を行うわけです。わが国の防衛力全体のですね、練度の向上等々、連携等々を向上を目指すものでありますけども、何か特定の事態を想定してということではありません。

Q:明日9月11日で、米同時多発テロから20年ということで、この20年間、自衛隊の国外での活動というのが広がっているとは思うんですけれども、この役割の拡大、また、その評価について改めてなんですけれどもお願いします。

A:2001年9月11日に発生いたしました9.11のテロについては、米国のみならず人類全体に対しての卑劣かつ許しがたい行為でありました。これに対して、世界の国々が、立場の違いを超えて非人道的なテロリズムを非難し、力を合わせて立ち向かうことを決意しました。わが国として、旧テロ対策特措法を成立させ、それに基づいて、自衛隊は各国への補給支援を行ってまいりました。このテロの発生から今年で20年ということでありますが、防衛省・自衛隊はその間、例えばインド洋での補給支援、イラクにおける人道復興支援、国連PKO、諸外国と協力して行う海賊対処、海外の大規模災害の際の緊急援助、他国軍への能力構築支援などですね、わが国の強みを活かしつつ、様々な形での国際貢献を行ってきたところです。これらの活動については、国際社会からも非常に高い評価を得ているんだろうというふうに思っております。まだまだ世界でも様々な紛争が発生をしております。テロや難民、貧困といった国境を越えた課題も深刻さを増しているところですけども、そんな中で防衛省・自衛隊として、これまでの活動の実績に立って、わが国の強みを生かして、更に国際社会への貢献を進めてまいりたい考えております。

Q:冒頭の陸上自衛隊演習について1件だけお願いします。今回、大規模な移動を伴う訓練になると思うんですが、詳細なスケジュールはちょっとまだ知らないのであれですけれども、9月中ですね、緊急事態宣言が延長されているような状況の中で、この移動というのは適切なんでしょうか。例えば、緊急事態宣言地域は移動を除いたり、演習の必要性はあると思うんですけれども、何かそういう対策等の必要性というのは大臣はどのような認識でしょうか。

A:わが国の防衛を任務とします自衛隊にとっては、部隊の練度向上や即応性の維持ということ、新型コロナウイルスが続く中であっても、必要な訓練というのは実施しておく必要があると思います。この訓練の実施に当たって、防衛大臣から示しております方針によって、必要な感染症対策に十分に講じる、感染症対策を十分に講じていく、具体的には、訓練の実施時はもとより、移動先の部隊等との調整の際にも、マスク着用、手指の消毒、「三つの密」を避ける、こういった恒常的な対策を徹底するほかですね、訓練に参加する部隊の隊員について、訓練開始の14日前から健康観察を行って、感染又は感染の疑いがないことが確認された者のみを訓練に参加させる、こういった措置を講じているところであります。訓練を実施するに当たって、このコロナの感染防止・感染拡大防止に係る対策というものは重要であります。今般の訓練実施に当たっても、感染症対策を十分に講じた上で実施をしてまいりたいと考えております。

以上