防衛大臣記者会見

日時
令和3年7月30日(金)11:31~11:58
場所
防衛省A棟11階第1省議室
備考
岸防衛大臣閣議後会見

1 発表事項

 コロナウイルス関係です。前回の定例会見以降、125名の隊員が新たにに感染していることが確認されました。このうちの2名については、オリパ支援団の隊員になります。これで合計が2,231名ということになります。本日、防衛省ホームページにおいて、防衛省・自衛隊におけるSDGsの取り組みについて公表しました。SDGsについては、政府としてこれを推し進める中で、防衛省においても、国連PKO部隊の派遣国の要員に対する施設・医療分野での能力構築支援の取り組みや、自衛隊施設における再エネ電気の調達促進を図る等、各種の取り組みを積極的に推進しているところであり、今般、これらの取り組みを広く国民の皆様に知っていただけるよう取りまとめ、公表することといたしました。今後も持続可能で多様性と包摂性のある社会の実現のために、SDGsに資する取り組みを積極的に推進していきたいと考えております。昨日、東京オリンピックの女子柔道78kg級の種目において、自衛隊体育学校所属の濵田尚里1等陸尉が金メダルを獲得しました。今大会において、自衛隊所属の選手によるメダル獲得はこれが第1号です。濵田1等陸尉の素晴らしい活躍に心からお祝いを申し上げますとともに、今後試合を控えている他の自衛隊所属の選手の活躍にも大いに期待をしております。以上です。

2 質疑応答

Q:先週の日英防衛相会談についてです。少し時間経ってしまって恐縮ですが、大臣今回の防衛相会談でどのような成果を上げたとお考えでしょうか。また、手応え等ありましたら大臣の方から教えていただけますか。

A:今回の会談では、日本に向けて航海を続けている英空母打撃群との共同訓練や訪日が、長い歴史と伝統を有する日英防衛協力が「新たな段階」に入ったこと、「自由で開かれたインド太平洋」の実現のための英国の関与が強固かつ不可逆的であること、日英防衛協力がわが国の安全保障のみならず、インド太平洋地域と国際社会の平和と安定の確保に資するとともに、グローバルな課題に対処するものであることを示すものであることについて、認識を一致しました。また、空母打撃群の訪日時の寄港先については、英空母「クイーン・エリザベス」については在日米軍横須賀海軍施設に寄港すること、またその他の随伴艦については、海上自衛隊の横須賀、舞鶴、呉の各基地、そして、在日米軍の佐世保海軍施設、在日米軍横須賀海軍施設、及びホワイト・ビーチ地区にそれぞれ寄港することを確認しました。その他にも、次期戦闘機の開発に係るサブシステムレベルでの協力や、インド太平洋における地域情勢、北朝鮮情勢等についても幅広く議論を行いました。防衛省・自衛隊としては、今後とも、英空母打撃群との共同訓練を戦略的に実施していくこととしており、基本的価値と戦略的利益を共有する英国と共に、FOIPの維持・強化、そして、グローバルな安全保障上の課題への対処のために協働し、地域の平和と安定に引き続き積極的に貢献していく考えであります。

Q:先日一部報道で、在日米軍の思いやり予算について、8月初旬から交渉が始まり、かつ、米軍の方から増額要求が来ているというものがありました。事実関係と今後の交渉にどのように臨むか、教えていただけますでしょうか。

A:日米両国政府は、本年2月の合意に基づいて、令和4年4月1日以降の新たな特別協定の合意に向けて交渉を継続してきております。その詳細については、今後の交渉への影響や米側との関係もありますので、お答えを差し控えさせていただきます。いずれにいたしましても、交渉に当たっては、一層厳しさを増す地域の安全保障環境やわが国の厳しい財政状況を踏まえて、引き続き適切に対応してまいります。

Q:中国海警法についてお伺いします。2月1日に施行されてから、まもなく半年となります。その間の尖閣周辺での海警船の動きについて、防衛省としてどのように分析されていますでしょうか。

A:本年2月に中国海警法が施行されましたが、施行の前後にかかわらず、中国は、東シナ海において力を背景とする一方的な現状変更の試みを継続しています。海軍艦艇の恒常的な活動の下で、わが国の抗議にもかかわらず、中国海警局に所属する船舶が尖閣諸島周辺のわが国領海への侵入を繰り返しています。このような現状変更の試みは、断じて容認できません。今年の状況について具体的に申し上げますと、依然として中国海警船による領海侵入が継続しているのみならず、1月から毎月、中国海警船がわが国領海に侵入して、付近を航行していた日本漁船へ接近しようとする事案が継続しています。また、尖閣諸島接続水域内において、海保の巡視船が中国海警船の航行を確認した連続日数は、既に157日と過去最長を更新しました。防衛省・自衛隊としては、尖閣諸島を巡る情勢に関して、冷静な対応を継続しつつ、わが国の領土・領海・領空を断固として守るとの方針の下、引き続き、海上保安庁などの関係省庁と連絡・連携し、警戒監視・情報収集に万全を期していまいりたいと考えております。

Q:大臣、他国の国防大臣などの会談の際にですね、ほぼ毎回、海警法に関する懸念を伝えてきたと思います。その狙いと、これまでの時点の効果については、どのように認識されていますでしょうか。

A:海警法は、国際法との整合性の観点から問題のある規定を含んでおり、これによって、わが国を含む関係国の正当な権益を損なうことがあってはならず、また、東シナ海等の海域において緊張を高めるようになることは全く受け入れられません。私は、各国の国防大臣と意見交換を行う中で、こうした中国海警法に関する懸念を説明し、関係国共通の認識として醸成されるように働きかけを行ってきました。現在では、米国、豪州等の国々が共に中国海警法に対する懸念を表明しています。今後も、様々な機会を捉えて、中国海警法に対する懸念を共有し、「力を背景とした一方的な現状変更の試みや緊張を高めるいかなる行為に対しても強く反対していく」との強いメッセージを、国際社会に向けて発信していくことが重要であると考えております。

Q:話題変わりまして、辺野古移設について伺います。昨日、沖縄防衛局がサンゴの移植を実施しました。沖縄県はサンゴの採捕を許可する際にですね、高水温時期を避けるよう条件を付けていたと思いますが、夏場の移植が適切だというふうに大臣はお考えでしょうか。

A:今回許可されたサンゴ類の移植については、沖縄防衛局において、サンゴ類の専門家を含む環境監視等委員会の指導・助言を受けて、その内容を十分に検討の上、平成31年4月及び令和元年7月に特別採捕許可申請を行い、許可を求めていたものです。沖縄県知事から特別採捕許可が得られ、準備が整ったことから、沖縄防衛局において、昨日より移植作業を開始しているところです。移植にあたっては、専門家の意見を踏まえ、水温を含め、作業当日の現地の状況を確認の上、移植の可否を判断しているところであり、サンゴへの影響に配慮して適切に行っているものと承知をしております。引き続き、環境監視等委員会の委員の指導・助言を踏まえ、サンゴ類への影響に十分配慮しつつ、適切に移植を進めてまいりたいと考えております。

Q:有識者の方はですね、5月から10月の時期は移植を避けるべきだというふうに訴えていますが、こういった主張を受け入れる考えはあるかどうか教えてください。

A:移植作業については、専門家の意見も踏まえて、単純に水温のみで判断するものではなくて、サンゴの光合成の活性度やサンゴの白化状況なども確認した上で、総合的に判断することとしていると承知をしております。

Q:現在改修を進めている護衛艦「いずも」で、米軍岩国基地所属のF-35Bを使った発着訓練を年内に実施する方向で検討していると一部報道がありましたが、こうした訓練の検討状況、また改修の状況についてもお聞かせいただけないでしょうか。

A:「いずも」型護衛艦におけるF-35Bの運用に向けては、F-35Bの運用経験を有する米軍の協力を得て、改修後の「いずも」型護衛艦において実際に検証・試験を実施し、改修に関する技術的な知見や運用に関する知見を得る必要があります。今年度は、1回目改修の後の「いずも」において、F-35Bが支障なく発着艦可能であるかといった点について確認することを想定した検証・試験を実施予定です。今年度に実施予定の検証・試験において、護衛艦「いずも」に米軍のF-35Bが発着艦することは検討していますが、具体的な内容や実施の時期については現在調整中であります。いずれにせよ、米軍から必要な協力を得るべく調整をしてまいります。

Q:オリパラ支援の関係で、今、支援団がオリンピックで国旗掲揚等、サポートしていると思いますが、支援団の今の活躍ぶりについて、大臣一言お願いします。

A:オリンピックが始まりまして、全体で8,000名を超える支援団、各競技会場等においてですね、競技会場の整理とか医療支援、またテロ対策等々に万全を期してやってきているところです。大変、コロナ禍の中でやるという、また非常に熱い最中ではありますけれども、各隊員、高い士気をもって活動していただいていることに頭が下がります。こうした中で、安全な大会運営が行われているわけですけれども、大会の終了までしっかり任務を果たしていただきたいと思います。

Q:サンゴの移植に関して質問に戻るんですけれども、県が許可してですね、翌日に作業を始めているということだと思うんですが、大臣の方として、また防衛省の意図として、やはり移設を急ぎたいとかですね、そういったことが背景にあるのか、そのあたりはいかがでしょうか。

A:沖縄防衛局においてですね、いずれにしましてもサンゴ類の専門家の意見を踏まえて、移植の時期や方法等を判断しているところであります。その中で、移植の承認を得たなかでですね、そうした意見を踏まえて執り行われたものと承知をしております。

Q:関連しましてですね、県に提出しているですね、軟弱地盤の工事の変更申請についてですね、まだ回答がきていないというなかだと思うんですけれども、元々の普天間の危険性の除去というところもあったと思うんですけれども、なかなかまだ回答もきていないというなかで、今後どのように移設を進めていきたいかというお考えをお聞かせいただけますでしょうか。

A:工事の変更申請については、沖縄側からの回答を待っているような状況ではありますけれども、全体の工事について、できるところを進めていくというところでやってまいりたいと思います。

Q:日華議員懇談会のですね、幹事長としてお伺いしたいんですが、昨日、日本とアメリカ、台湾のですね、議員レベルでの初めての戦略対話が実施されました。この件の開催された意義について、幹事長としての受け止めをお願いします。

A:従来から、日米台の戦略対話については、日華懇の中で、古屋会長の下で様々な議論が行われて、準備が進められてきました。国会開会中だったと思いますけれども、一回予定されていたものが延期になっていたと承知をしております。いずれにしましても、これまで日米台の議員間で自由な戦略対話が行われていなかったような状況だったと思いますが、今回、それぞれの国の国会議員の中から、台湾に関する様々な問題意識等が披瀝されたものと承知をしております。今後も続けていくものだというふうに了解をしております。

Q:昨日のフォーラムについてですね、中国の外交部が反応を示しておりまして、趙立堅報道官がですね、「独り言と言ってもいいと、形にせよ何にせよネガティブなものだ、間違ったものだ」と、かなり激しい反発を示しておりますが、この件についてどのように受け止めておられますでしょうか。

A:日米台のそれぞれの議員が、それぞれの議員活動の中で行ってきているものだと承知をしております。

Q:冒頭ございました柔道の濵田さんは、鹿児島の御出身の方でですね、地元も相当盛り上がっているみたいで、一緒にお喜び申し上げたいと思います。鹿児島県の西之表市で整備を進めている馬毛島についてお伺いします。昨日、知事の方が環境アセスメントについての意見を防衛省の方に提出されております。それについての受け止めと、あと、幅広い意見を聞くようにということを求められているんですけれども、それについて具体的に、何か今後されていく方針がありましたら教えてください。

A:本年2月に、馬毛島における自衛隊施設の整備についての環境アセスメント手続を開始し、調査、予測、評価の手法についての計画を示した環境アセスメント方法書の広告等の手続きを進めてまいりました。昨日、方法書に関して、環境保全の見地からの鹿児島県知事意見を受領したところであります。防衛省としては、今回受け取った鹿児島県知事からの意見書等を踏まえて、環境アセスメントとして調査、予測、評価を実施し、環境影響評価法の規定に基づいて、適切に手続を進めてまいりたいと考えております。

Q:具体的にアセスを進める時期等について、防衛省の方で何か具体的な検討等あれば教えていただければと思います。

A:本年2月に、環境アセスメント手続を開始し、調査、予測、評価の手法についての計画を示した環境アセスメント方法書を公告する等してまいりました。防衛省としては、引き続き、環境影響評価法の規定に基づき、適切に手続を進めていきます。いずれにしましても、防衛省として、この施設整備に当たって、地元の理解・協力を得ることは重要と考えております。今後とも、作業の進捗に応じて、一つ一つの説明を積み重ねて、より協力を得られるようにしてまいりたいと考えております。その上で、今回受け取った鹿児島県知事からの意見書等も踏まえて、今後、環境アセスメントとして調査、予測、評価を実施した上ですけれども、準備書の公告・縦覧、住民の方々や県知事の御意見を受けて、評価書の公告・縦覧等の手続を経ていくことになりますけれども、現時点で、準備書手続の開始時期を含めて、今後の具体的なスケジュールについて、予断を持ってお答えすることは差し控えさせていただきたいと思います。

Q:サンゴの移植の関係でお尋ねします。2018年だったと思うんですけれども、夏場にサンゴを移植したものの、大半が死滅していたと記憶しております。その時は確か、死滅の原因ははっきりしていないというような話だったと思うんですが、今回、前回の死滅したケースからどのような教訓を得て、今回また再び夏場の移植に至ったのか教えてください。

A:今回の移植時期については、いずれにいたしましても、専門家の意見を踏まえた上で、単純に水温のみで判断したものではなくて、サンゴの光合成の活性度や、サンゴ類の白化状況等も確認した上で、総合的に判断したものとされております。

Q:これまで死滅したケース、私の記憶では原因がはっきりしていないというふうな防衛局の説明だったと思うんですけれども、そこは何か、より具体的に原因が分かった部分というのはあるんでしょうか。これから移植を進めていく上で非常に大事なことだと思うんですけれども。

A:移植の時期については、いずれにいたしましても専門家の皆さんの意見を踏まえた上で判断をするということになります。

Q:ドイツ・フリゲート艦の件でお伺いいたします。昨日、ドイツの国防省が、海軍フリゲート艦をインド太平洋に向けて派遣すると、南シナ海のお話しになってくると思うんですが、改めて伺わせてください。今回の派遣、日本にとって、あるいはこの地域の平和・安定にとってどのような意義があると大臣としてはお考えかというのと、今回の派遣に際して、共同訓練とかですね、どのような取り組みが想定されているのかという点について一言お願いできればと思います。

A:今般のドイツによるインド太平洋地域へのフリゲート艦の派遣については、この地域の平和と安定に積極的に貢献するというドイツのコミットメントを示す上で重要な意義を有するものと考えております。わが国として歓迎するところであります。現在、派遣されたフリゲートとの共同訓練や、北朝鮮籍船舶による「瀬取り」を含む違法な海上活動に対する警戒監視活動への参加について、ドイツ側と調整を進めています。防衛省・自衛隊としては、FOIPの維持・強化、地域の安定に資するべく、引き続きドイツとの防衛協力・交流を積極的に、活発に進めてまいります。

Q:宮崎県串間市の田んぼに米軍のヘリが不時着、予防着陸しております。まだ現場に留め置かれた状態なんですが、アメリカ軍から撤去の連絡はありますでしょうか。それと、大臣はこの件に関して何か国としてアメリカ軍に何か伝えているとかいうことはありますでしょうか。

A:お尋ねの予防着陸の件についてですけれども、現在、米軍のメンテナンス要員により、機体の確認作業が行われているものと承知をしております。今後の対応については現在確認中であります。新たな情報が得られ次第、地元自治体等の関係者に速やかにお知らせをいたします。本件事案の発生を受けて、米側に対しては、原因究明と再発防止の徹底を申し入れたところであり、防衛省として、引き続き、安全管理に万全を期すよう求めてまいりたいと考えております。

Q:サンゴの話に戻ります。沖縄の玉城デニー知事が先ほど会見で、許可にあたって付けた条件に従っていない行為であるということで、現地の状況を確認した上で行政指導を行いたいというようなコメントをされているようなんですけれども、これについて大臣、御所見あればお願いします。

A:県からの反応を踏まえて、今後対処をしてまいりたいと考えております。

以上