防衛大臣記者会見

日時
令和3年7月13日(火)11:50~12:14
場所
防衛省A棟11階第1省議室
備考
岸防衛大臣閣議後会見

1 発表事項

 まず新型コロナ関連です。前回の定例会見以降、15名の隊員が新たに感染をいたしました。合計で2,049名となります。それから、7月11日から12日にかけて、防衛省・自衛隊は、アデン湾において、護衛艦「せとぎり」と英空母打撃群(「CSG21」)の英空母「クイーン・エリザベス」、米海軍の駆逐艦「ザ・サリヴァンズ」、オランダ海軍フリゲート「エファーツェン」等との間で、日本・イギリス・アメリカ・オランダの4か国による海賊対処の共同訓練を実施を致しました。今般の共同訓練は、本年2月の日英「2+2」での議論を踏まえて調整していたものであります。「CSG21」が本年5月に英国を出港して以来、海上自衛隊との間で実施する初の共同訓練であります。防衛省・自衛隊は、この共同訓練を通じ、イギリス、アメリカ、オランダとともに、戦術技量の向上や連携強化を図るとともに、海賊というグローバルな安全保障上の課題に対処し、世界の繁栄の礎である海上交通の安全を確保していくとの意志と能力を示すことができました。防衛省・自衛隊としては、今後とも、「CSG21」との共同訓練を戦略的に実施することとしており、基本的価値と戦略的利益を共有する英国と共に、「自由で開かれたインド太平洋」の維持・強化、そして、グローバルな安全保障上の課題への対処のために協働し、地域の平和と安定に引き続き積極的に貢献していく考えです。それから防衛白書についてです。本日の閣議において、「令和3年版防衛白書」を説明の上、配布致しました。本年の防衛白書は、バイデン政権発足後の日米の緊密な連携の推進、「FOIP」の維持・強化や、戦略的競争が一層顕在化している米国と中国との関係など、令和2年度の内容を中心に、防衛省・自衛隊の活動や国際情勢について全体像を俯瞰できるよう、多面的に御紹介をしているところです。また、国内外で様々な活動に従事している自衛隊員の声を多数掲載するとともに、本文に関連した即時再生可能な動画などのQRコードを昨年版から倍増させ、英語動画についても充実するなど、より分かりやすく、使いやすい白書を追求いたしました。国の防衛には、国民の皆様の御理解と御支援が不可欠であります。一人でも多くの皆様に白書を御覧いただき、防衛省・自衛隊に対する御理解を深めていただけるように願っておるところであります。

2 質疑応答

Q:令和3年度版防衛白書の巻頭言では大臣の安全保障に対する思いが込められていたように感じられましたが、あらためて防衛白書を通じて国民にどのようなメッセージを伝えたいとお考えでしょうか。

A:2020年は、新型コロナの影響によって世界全体がこれまでに経験したことのない困難に直面を致しました。またそれだけではなくて、様々な安全保障上の課題や不安定要因がより顕在化・先鋭化し、これまで国際社会の平和と繁栄を支えてきた普遍的価値に基づく国際秩序が大きな試練に晒されている一年になりました。特に、インド太平洋地域は世界の活力の中核であると同時に、安全保障面では様々な課題を抱えており、こうした安全保障上の課題に対抗していくためには、わが国自身の防衛力の強化や、自らが果たし得る役割の拡大はもちろんのこと、わが国と基本的価値を共有する国々との緊密な連携が不可欠であります。こうした考えに基づき、白書の巻頭言においては、自由や民主主義、法の支配、基本的人権の尊重といった価値観を共有する国々との協力を推し進めていくとともに、国民の心の奥底まで根付いたこういう価値観まで含めて、日本という国を守っていくという防衛大臣としての決意を示したものであります。防衛省・自衛隊は、いつ如何なるときにも、国の防衛の最前線で真摯に任務に励み、国民の命と平和な暮らし、わが国の領土・領海・領空を守り抜くという責務を果敢に全うするとともに、地域と国際社会の平和と安定、そして繁栄を確固たるにものにするべく全力をあげてまいります。

Q:防衛白書に関連しましてですね、今回、アメリカと中国の関係の節を初めて設けたほか、台湾情勢の安定についても初めて明記されたということなんですけれども、白書、国民の理解をですね、深めていく時に必要なものだと思うんですけれども、こういった初めて設けられた項目についてですね、国民にはですね、どういうふうに安全保障環境をですね、認識してもらいたいかという大臣の考えをですね、あらためて聞かせていただけますでしょうか。

A:米中については、近年、政治、経済、軍事など様々な分野にわたって米中の戦略的競争が一層顕在化していると言えます。この中で、相互にけん制する動きが見られ、特に技術分野における競争は、一層激しさを増す可能性があります。そのような状況において、インド太平洋地域では、中国が経済成長を背景に急速に軍事力を強化する中で、米中の軍事的なパワーバランスの変化が、同地域の平和と安定に影響を与える可能性があります。特に、東シナ海及び南シナ海や台湾周辺において、軍事活動等が活発化しており、わが国として、インド太平洋地域の両国の軍事動向について一層注視していく必要があります。こうしたことを踏まえて、令和3年版防衛白書では、米国と中国の関係について記述すべき内容が大幅に増えました。国民の皆様にとってより読みやすい防衛白書とする観点から、米中の関係を国別の節で記述するのではなくて、両国の具体的な対応やその評価、関連事象を一つの節において一括して記述する趣旨で、第I部第2章に「米国と中国の関係など」という節を新たに設けることとしたものであります。

Q:台湾のですね、情勢の安定についても初めて明記されたということだと思うんですけれども、台湾情勢についてどういうふうに国民の理解をですね、深めていってほしいかというところはありますでしょうか。

A:台湾をめぐる問題についてはですね、わが国として当事者間の直接の対話によって平和的に解決されることを期待するというのが、従来からの一貫した立場であります。その上で、台湾をめぐる情勢の安定は、わが国の安全保障にとってはもとより、国際社会の安定にとっても重要であり、日米首脳共同声明やG7首脳コミュニケにおいても、台湾海峡の平和と安定の重要性や両岸問題の平和的解決を促すことについて確認をしたとおりであります。台湾との関係に関する日本政府の基本的な立場については何も変わるものではないわけであります。

Q:防衛白書についてお伺いします。尖閣周辺の領海侵犯について今回白書として初めて国際法違反だと明記されました。おそらく国際社会に対して日本の主張を理解してもらうように努めてると思いますが、今回の白書を通じて他国との防衛協力にどのように結び付けていきたいか、大臣のお考えを教えていただけますでしょうか。

A:防衛協力というか、今年様々な国とVTCなどの場を使ってですね、交流を進めてまいりました。なかなか、コロナの状況でありましたので、難しい状況ではありますけれども、そうしたことを利用することによって期待した以上に多くの方々と意見交換をすることができたのではないかというふうに思います。その中で、わが国の主張をですね、まず「FOIP」の維持・強化について、これは、インド太平洋の地域のみならず、ヨーロッパの国々の皆様にも御理解を深めていただけたのではないかなと。その上でこのインド太平洋地域に対する関与、プレゼンスですね。そういった過程の中で、地域の平和と安定に繋がってきているというふうに実感をしております。

Q:この防衛白書の記述によってですね、その国際社会の理解を深めていただけるっていうような狙いですとか、そういったお考えっていうのはありますでしょうか。

A:防衛白書については、わが国を取り巻く安全保障の状況、国際情勢、そういったものについて正確に記述をし、そのことを理解しやすいような形で記載したものであります。国際社会の中で理解を深めることによって地域の安定に寄与するというようなことを考えます。

Q:防衛白書に関して、先ほどにもあった台湾関係なんですけれども、白書の中では、その中国が台湾側への侵入など繰り返していることをあげて、中台間の軍事的緊張が高まる可能性も否定できない状況だという防衛省の認識を示しております。あらためて大臣が今、台湾情勢をどういうふうに認識をしていらっしゃるか教えてください。

A:台湾をめぐる情勢に関して、近年、中国が軍事力の強化を急速に進める中で、中台の軍事バランスは全体として中国側に有利な方向に変化をしております。そしてその差は年々大きくなっているという、台湾周辺での軍事活動をさらに活発化する動きがあります。こうした情勢において、米国は、台湾への武器売却、あるいは米軍艦艇による台湾海峡通過といったですね、トランプ政権以降に台湾への関与をより深めていく認識を示し、バイデン政権においても、台湾を支援する姿勢を明確にする中で、中国は米国に対して、反発を示しているところです。こうした具体的な状況を客観的に分析をし、令和3年版の白書において、御指摘のような記述を掲載したところでありますが、いずれにせよ、防衛省としては、台湾をめぐる情勢の安定は、わが国の安全保障にとってはもとより、国際社会の安定にとっても重要であり、わが国としても一層緊張感を持って注視をしていきたいと考えております。

Q:白書について、尖閣諸島周辺での海警船の活動について、こうした活動はそもそも国際法違反だというふうに昨年版より、より踏み込んだ表現を用いていると思いますが、その狙いや意図についてお聞かせください。あとですね、あらためてこのようなその中国艦の活動について、今後どのように対応していきたいかということも併せてお願いします。

A:全般として、中国が軍事力の質・量の強化を中心として急速に作戦遂行能力を向上させていることや、東シナ海を始めとする海空域において引き続き軍事活動を拡大・活発化、そういう状況から、国防政策や軍事に関する不透明性と相まって、わが国を含む地域と国際社会の安全保障上の強い懸念となっている旨記述しているところであります。尖閣については、歴史的にも国際法上も疑いのないわが国固有の領土であります。現にわが国がこれを有効に支配しています。したがって、尖閣諸島をめぐる領有権の問題はそもそも存在をしていないわけでありますが、この尖閣諸島周辺のわが国領域内で中国の海警船が尖閣諸島に関する独自の主張やわが国の視点と相いれない活動をすることについては、国際法上認められた無害通航には当たらないということであります。このため、政府としてはこうした活動を国際法違反であると考えており、この旨を令和3年の白書に明記をしております。

Q:新田原基地にですね、F-35Bの配備が内定したという記事を掲載しているんですが、今後ですね、市町村、関係する基地がある新富町及び関係市町村、宮崎県などについてですね、報告するとかそういう予定はありますでしょうか。

A:F-35Bの配備先については、戦闘機部隊を現在配備している既存の航空自衛隊の基地を中心に検討しております。新田原基地は有力な候補地であると考えています。他方で、防衛省としては、F-35Bの配備に関して必要な調整を現在行っているところであります。配備に関する方針や調整状況についてはお答えを差し控えさせていただきたいと思います。

Q:白書の件に戻るんですけれども、大臣は先ほども防衛力強化への取組みという発言もあったと思うんですけれども、今回、白書で中国の軍事増強とかですね、台湾を巡る米中対立とか日本を取り巻く安全保障環境の厳しさが非常に言及されていると思います。先ほど大臣言及されていた防衛力強化にですね、今後どのように取り組んでいきたいのか、それから政府の骨太の方針ではですね、必要な防衛力を大幅に強化する記載がされていますけれども、自民党からも防衛費の大幅な増額も求められている提言があると思います。来年度概算要求が8月末に締め切られると思うんですけれども、そこに向けてどのように臨んでいきたいか、お考えをお聞かせください。

A:防衛装備品等の強化についてはですね、大綱・中期防に沿った形で、まずは進めていく必要がありますけれども、一方で、この地域でわが国を取り巻く安全保障環境は非常に厳しいものがある。これまでとは抜本的にですね、発想を変えた形でも必要になってくるのではないか、まず、意識を変えていくことが必要であると思います。党とも議論をしながら、そういった概算に向けてのですね、考え方をまとめていくことになるのではないかというふうに思います。

Q:先ほどの大臣の発言に関係することなんですが、今まで尖閣の領海内に中国海警船が入った場合、政府・防衛省は、「領海侵入」という表現を使ってきました。ところが、先ほど大臣がおっしゃったように、国際法上認められた無害通航に当たらないということであれば、海警船が尖閣領海内に入ることは無害通航に当たらないということであれば、「領海侵入」じゃなく「領海侵犯」ということになると思うんですが、それについて大臣のお考えをお聞かせください。

A:近年ですね、海警船の活動が活発化をしているところです。その中で、海警船に対する対応というのは、従来より海上保安庁の艦艇が、海警船より多い隻数をもって対応してきております。いずれにいたしましても、中国のそうした意図にですね、しっかり対応する形で我々は進めていかなくてはならないと考えているところであります。

Q:大臣の先ほどの発言から、今後も尖閣の領海内に侵入した海警船については、「領海侵入」ではなくて「領海侵犯」という表現に改められるおつもりですか。

A:「領海侵犯」と「領海侵入」、この言葉についてはですね、大きな違いはないということで我々は「領海侵入」という言葉を使っているわけですけれども、いずれにしてもその国際法で相いれないこうした海警船の動きに対しては、しっかりした対応を取っていかなければならないと考えております。

Q:「領海侵入」と「領海侵犯」と大きな言葉の、言葉上の意味の違いがあると思います。それは、国際法上の無害通航に該当するのかしないのか大きな違いがあるという理解をしておりますが、大臣はその点についてどうお考えでしょうか。

A:無害通航と認められる場合は、侵入であるということですか。

Q:無害通航と認められるか、あるいはわからない、判断ができない場合は「領海侵入」という表現を今まで政府、防衛省は取っていた。ところが、先ほど大臣の発言されたように、海警が尖閣の領海内に入ることが、国際法上認められた無害通航に該当しないということであれば、「領海侵犯」という言葉が使え得ると私は思いますが、大臣はその点についてどう考えますか。

A:まずは、無害通航と認められないケースにおいて、我々は「領海侵入」という言葉を使っております。無害通航権が成り立たない場合でも、「領海侵入」という言葉を使っております。

Q:大臣の中では、「領海侵入」という言葉と「領海侵犯」という言葉は同じというふうな使い方をしているということですか。

A:今の状況では、同じことで使っているということです。

以上