防衛大臣臨時記者会見

日時
令和3年6月30日(水)12:19~12:33
場所
陸上自衛隊東千歳駐屯地司令部庁舎2Fホール
備考
陸上自衛隊東千歳駐屯地視察後の岸防衛大臣臨時会見

1 発表事項

 なし

2 質疑応答

Q:昨日から北方防衛の最前線である空自・陸自の拠点を視察されて感じられたこと、北方防衛の重要性や活発化するロシア軍への対応についてお考えをお聞かせください。

A:まずは、航空自衛隊千歳基地でありますけれども、これは北の守りの要として、対領空侵犯措置、弾道ミサイル防衛、災害派遣、急患空輸など、多岐にわたる重要な任務を担っています。また、陸上自衛隊東千歳駐屯地は、わが国唯一の機甲師団である第7師団をはじめ、高射部隊や教育部隊などが所在する、陸上自衛隊最大の駐屯地です。この北海道の地で、24時間365日、一瞬の隙もなく、常に緊張を強いられながら、また、コロナ禍の大変厳しい環境の中でも、わが国の平和と独立を守り、国の安全を守るという崇高な任務を取り組んでいる隊員を激励できたことは、大変意義のあるものと考えております。

Q:中山副大臣の発言についてお伺いいたします。アメリカのシンクタンクの講演で、1つの中国や台湾防衛に関する発言をされました。この発言に対し、中国の外務省が副大臣が台湾を国と表現したことは誤りであるなどと指摘をし、日本政府に厳重に抗議したことを明らかにしました。中国政府の反応についてのお考えと、改めて中山副大臣の発言について大臣はどのように捉えられておられますか。

A:まずは、中山副大臣のハドソン研究所での発言につきましては、台湾はわが国にとって、自由や民主主義、基本的人権、法の支配といった基本的な価値観を共有をし、緊密な経済関係と人的往来を有する極めて重要なパートナーであって、大切な友人であること。台湾をめぐる情勢の安定は、南西地域を含むわが国の安全保障にとって重要であり、近年、中国が軍事力の強化を急速に進める中で、中台の軍事バランスは全体として中国側に有利に動いていて、その差は年々拡大する傾向にあります。防衛省としても、引き続き台湾をめぐる関連動向を注視する必要があると思います。こうした立場を前提として、中山副大臣の個人的な考えを述べたものと承知しておるところであります。いずれにいたしましても、台湾をめぐる問題が、当事者間の直接の対話によって平和的に解決されることを期待するというのが従来から一貫したわが国の立場であります。この立場に変わるものではありません。

Q:中国外務省の汪文斌はですね、今回の発言に関連して、「中国は必ず台湾を統一しなければならない、阻止できないプロセスだ」と述べており、台湾情勢の更なる緊迫感を招くとの懸念もありますが、この点についてはいかがでしょうか。

A:中国の外交部の報道官の発言、このことについては承知をしているところでございますが、いずれにいたしましても、台湾をめぐる問題が、当事者間の直接の対話によって平和的に解決されることを期待するという、わが国の従来から一貫した立場に変わるものではありません。また、台湾との関係に関するわが国の基本的な立場というものは、1972年の日中共同声明にあるとおりであって、これも何も変わるものではないということであります。

Q:周辺情勢なんですけれども、大臣訓示でロシアの動向について言及されましたけれども、中国とロシアがですね、核兵器の共同飛行するなど、連携を強めている動きがあると思います。この辺りの状況の認識について、お伺いしたいのと、訓示の中でですね、領域横断作戦の重要性についても言及されましたけれども、領域横断の能力ですね、これをどのように高めていくか、この2点についてお伺いできますでしょうか。

A:ロシアについてですけれども、ロシアは23日から28日までの5日間、北方領土の択捉・国後を含む地域において、対着上陸訓練演習などを実施したと発表しております。このようにロシアの軍事的な活動が活発化を見せている中でですね、中国とロシアとの連携、共同訓練、共同飛行等々といった事案が見られております。こうしたことに対して、しっかり関心を持って注視をしてまいりたいというふうに考えております。

Q:領域横断作戦について訓示でも言及されましたけれども、その能力についてどのように高めていくか大臣のお考えを教えてください。

A:これまでの陸・海・空に加えて、新たな領域においても優位性をしっかり確保していくということは大切なことだと考えております。こちらにおいては、北の守りという大きな任務がございますけれども、その中でも戦い方についてはどんどん変化を遂げているわけであります。そうしたものにおいて、しっかり新たな領域においてもですね、優位性を確保していくこと、これは大変必要なことではないかと、こういうふうに思っております。現中期防においては、新たな領域における作戦能力を強化するために、陸自の陸上総隊隷下部隊に電子戦部隊を新編することにしています。この方針に基づいて、令和3年度においては、朝霞駐屯地に電子作戦隊を新編する予定ですが、この隷下部隊の一部については、北海道留萌の駐屯地に配置をする計画であります。新編する電子戦部隊は、ネットワーク戦闘戦システムを装備し、平素から電波収集・分析を行うとともに、有事において相手の電波利用を無力化することで各種の戦闘を有利に進めることに寄与しています。防衛省・自衛隊としては、電磁波領域における能力の強化のために、引き続き地元の皆様の御理解をいただいて、電子戦部隊の整備を行ってまいりたいと考えております。

Q:今お話しありました留萌の電子戦部隊についてお伺いします。今、南西防衛、特に言われている中で、北方にですね、電子戦部隊を置く意義をあらためて教えていただければと思います。

A:どうしても昨今ですね、南西防衛に目が向いてしまいますけれども、従来からその北方に対する守りをしっかり固めていかなければならないという状況に変わりはないと思います。その中で先ほども申しましたけれども、戦い方というものも進化をしております。そうしたものにしっかり対応し、優位性というものを確保していかなければいけない。それはこちら北海道においても状況は変わらないんだと思います。その上で、北海道だけでということではもちろんありませんけれども、しっかり対応してまいりたいと考えております。

Q:特にロシアの場合ですと、クリミア半島の際に電子戦が使われたと言われていますけれども、そういった意味での警戒感が強いものなのでしょうか。

A:戦い方自体はですね、それぞれの地域によって事情が違うかもしれませんが、我々としてはですね、領域横断作戦においてしっかり能力が発揮できるような体制を作っていくということは重要だと思います。

Q:北海道関連でもう1問お願いします。北海道の場合、火砲の削減がですね、以前から言われている中で、北海道で火砲が削減されるとどうしても陸上自衛隊の定員が非常に減ってしまうのではないかという懸念が常にあります。今回、御視察の中でロシアの対しての脅威、ロシアに対しての懸念を常に示されながら訓示をされてましたけれど、北海道の陸上自衛隊が持つ意味合い、特に定員含めてですね、今後の方針等ありましたら教えていただけますでしょうか。

A:北海道には自衛隊が保有する演習場等の約半分が存在しております。総合的な戦闘力の向上を目指す大規模演習等の実施が可能です。このため、陸自がより実践的な訓練を行い、練度を維持・向上させるためには、北海道の良好な訓練環境が不可欠であると考えています。その中で、現防衛大綱においては、海上輸送力を含む統合輸送能力の一層の強化ということを踏まえてですね、引き続き機動運用を基本とします作戦基本部隊の約半数は北海道の良好な訓練環境で高い練度を維持させることとしています。ただし、戦車・火砲については、効率化・合理化を徹底する観点から、北海道に配備されているものも含めて、令和5年度末までに計300両、約300門まで削減させることとしております。これらの事業は、着実に実施をしていく必要があると考えます。その一方で、現防衛大綱においては、地域によっては自衛隊の部隊に存在が地域のコミュニティー活性化に大きく貢献していることを踏まえまして、部隊の改編や駐屯地・基地の配置にあたっては、地方公共団体や地元住民の理解が得られるように、地域の特性に十分配慮していかなければなりません。こうした方針も踏まえつつ、各年度における部隊編成というものを検討してまいりたいと思います。

Q:昨日視察された、空自の千歳基地では、5Gを活用したスマート基地化の実証実験を今年度から行われるということでした。この事業について期待することや意義について教えてください。

A:5Gはですね、各種のセンサーやAIなどと組み合わせることによって、部隊による周囲の状況認識能力や、指揮官の意思決定のための部隊現況把握といった効果がもたらされることが期待されています。その導入にあたっては、自衛隊の他の通信への干渉回避やセキュリティの確保など、防衛上の独自のニーズを踏まえていくことが不可欠であります。こうしたことから、5Gの自衛隊への導入加速化に資するように空自千歳基地に5Gネットワークを仮設するなど、利用環境を整備し、基地のスマート化等に向けた実証実験を今年度から実施することとしています。 本実証実験の詳細については、企業から情報収集を行いつつ、引き続き検討を行っているところであります。現時点では決まってはおりませんが、可搬性の5Gアンテナ、ドローン、無人輸送車両などを用いて行うことを想定しております。いずれにいたしましても、しっかりとした内容のものをなるべく早く実施できるように引き続き準備を進めてまいりたいと考えます。

Q:中山副大臣の発言なのですが、中国は今の政府見解と異なって台湾を民主主義国家と発言したことへの反発しておりますが、この点について中山副大臣に確認される御予定はありますでしょうか。

A:先ほど中山副大臣の発言についてはですね、私も先ほど述べたとおりでございます。

以上