防衛大臣記者会見

日時
令和3年6月18日(金)11:19~11:44
場所
防衛省A棟11階第1省議室
備考
岸防衛大臣閣議後会見

1 発表事項

 新型コロナですけれども、前回の定例会見以降、新たに9名の隊員が感染していることが確認されました。累計で1,945名となります。センターの接種予約についてでありますけれども、防衛省では、自衛隊大規模接種センターが有するワクチン接種能力を最大限国民の皆様に提供させていただくために、既に接種券の発行を受けている18歳以上の方々を対象として一昨日からワクチン接種の予約の受付を開始したところですが、東京の大規模接種センターについて、今月27日(日)までの予約枠は、昨日の段階で一旦満了いたしました。また、大阪の接種センターにおける予約については、21日までの予約枠は一旦満了しております。22日(火)から27日(日)までの間は、約3万人分の予約枠に対して約1万3千人分の予約枠が残っています。防衛省・自衛隊は、政府全体におけるワクチン接種の加速化との方針に基づき、一人でも多くの方々に一日でも早く円滑にワクチンを接種していただくために、引き続き全力を挙げて取り組んでまいりたいと思います。欧州議会の件でありますけれども、昨日、私は、欧州議会の「安全保障・防衛小委員会」の公開セッションにオンライン形式で参加をいたしました。今回のセッションでは、東シナ海や南シナ海をはじめとする安全保障環境の現実を踏まえ、民主主義や法の支配といった普遍的価値を共有する日本とEUが結束して対応することが重要であるということを説明するとともに、「自由で開かれたインド太平洋」の維持・強化に向けて、EUをはじめとする欧州によるこの地域に対するコミットメントが不可逆的なものとなるように強く訴えかけをいたしました。この機会を通じ、ロワゾー委員長をはじめとする多くの議員に地域の現実やFOIPの理念、日EUの協力の重要性を強く認識いただけたのではないかと手ごたえを感じているところであります。私としては、本年9月にEUが策定するインド太平洋地域に関する「共同コミュニケーション」に、この日本側の問題意識をしっかり反映されることを強く期待するとともに、EUや欧州諸国によるインド太平洋地域へのコミットメントが一層強固なものに、そして不可逆的なものとなるように、引き続き働きかけをして、地域の平和と安定に積極的に貢献してまいりたいと考えます。ADMMプラスへの出席についてですけれども、16日(水)にテレビ会議方式で実施をされました拡大ASEAN国防相会議に出席をいたしました。同会議において、私は、インド太平洋地域における安全保障課題について各国と率直な意見交換を行い、中国海警法の施行を含め、最近の南シナ海・東シナ海を含む地域情勢への懸念を表明するとともに、台湾海峡の平和と安定やFOIPのもと法の支配に基づく国際秩序の実現の重要性についてもわが国の立場を述べました。また、ADMMプラスでは、ASEANが提唱する「インド太平洋に関するASEANアウトルック」のもとで、ASEANの主導的役割を確認する内容などが盛り込まれた「特別宣言」が採択をされ、インド太平洋地域における関係国間の結束を確認することができました。

2 質疑応答

Q:初めに御説明がございました大規模接種センターについてなんですが、御説明にありましたように64歳以下に接種対象を拡大して、東京会場では27日までの予約が定員に達したということですが、一方で大阪会場では、1万3千件がまだ残っていると。現在のセンターのですね、運営状況についてのお考えと、大阪会場の予約を促進するための対策をどのようにお考えでしょうか。よろしくお願いいたします。

A:まず、昨日の接種分からですね、予約対象を、既に接種券の発行を受けている18歳以上の方々へ拡大をしたところです。その結果として、東京センターにおける21日から27日の予約については、昨日の午後2時の段階で一旦満了をしております。また、これまで大規模センターで様々な自治体等にも視察をしていただいておりますけれども、多くの自治体においてワクチンの大規模接種が進む中で、自衛隊のセンターのこれまでの運営実績というものは、ワクチン大規模接種のモデルケースとしてわが国におけるワクチン接種の向上に貢献するものであったと自負しておるところでございます。他方、大阪のセンターについてですけれども、本日朝9時の時点において22日から27日分の予約分については、3万人分に対して約1万3千人分の予約枠が残っているところですけれども、これも逐次予約が埋まりつつあるという状況であります。大阪センターの予約状況については、自治体の接種券の配付状況をはじめですね、様々な要因が考えられるところでありますけれども、一概には申し上げることは難しいかなというふうに思ってますが、いずれにいたしましてもこの予約が逐次進んでいるところでございますので、そういう状況を見ながら考えていきたいと考えております。

Q:昨日のEU議会での演説についてなんですけれども、大臣スピーチの後にですね、各議員さんからいろんな質問も出たところだと思うんですが、EUがですね、インド太平洋地域に関心を持っているということについてどのようにお感じになったかということと、日EUの連携を今後進めていかれると思うんですけれども、EUに対する働きかけですね、今後どのようなことをされていくか。教えていただけますでしょうか。

A:ヨーロッパでは、近年ですね、英独仏蘭といった主要国に加えまして、EU自身も4月には「インド太平洋における協力のためのEU戦略」を発表いたしました。9月には「共同コミュニケーション」を策定予定ということであります。昨日のスピーチというのは、これに対する「インプット」ということでありますけれども、欧州との連携について申し上げますと、先月の5日には、日仏米豪の共同訓練であるARC21が実施をされました。それに加えて現在、オランダ海軍のフリゲートを含む英空母打撃群が日本を含むインド太平洋地域に向けて航行中であります。ドイツも本年中のフリゲートの派遣を発表しています。EUとの間でも、海自の海賊対処部隊と、EUの海上部隊が、ソマリア・アタランタ作戦としてですね、これまで24回の海賊対処共同訓練を実施をしています。このように、欧州の主要国は、軍事的なプレゼンスも伴う形でインド太平洋地域に一層関与を強めてきていると、こういうふうに考えております。引き続き、FOIPの維持・強化に向けてEUや欧州諸国とですね、関係を協力していきたいと思います。欧州のこの地域に対するコミットメントを一層強固かつ不可逆的なものとなるようにですね、積極的・主体的に働きかけをしていきたいと考えております。昨日もスピーチの後ですね、思った以上の質問がきまして、なかなか全部にお答えすることができなかったと思いますけれども、一つはインド太平洋地域に対する関心が高まっている、その中で日本と欧州との連携・関係を強化するために、どういうことが考えられるか、そういうことについてですね、関心が高まっていることを感じました。

Q:札幌の熊について伺いします。既に猟友会が熊を仕留めたとの情報もありますが、一時駐屯地に熊が入り、隊員の方が怪我をされたとの話もあります。大臣が現状把握されている情報を教えてください。

A:熊については、熊が侵入をして、ゲートのところの隊員が一人怪我をされたと、こういうふうに伺っておりますが、命に別状はなかったというふうに承知をしております。熊はその後、自衛隊敷地からは出て行ったということでありますが、その後のことについては、まだ報告を受けておりません。

Q:ワクチン接種の関連なんですけれども、職域接種が21日に始まりまして、霞が関全体でも検討されているかと思うんですけれども、防衛省としては、申請しているのかも含めて検討状況を教えていただけますか。

A:今、自衛隊員、危機管理の職員であって、災害派遣等に従事する可能性がある、こういう自衛隊員への速やかなワクチン接種というのが重要であると考えております。防衛省・自衛隊としては、3月上旬から医療従事者等約1万4千名のワクチン接種を開始しました。現時点では、これはほぼ終了いたしております。5月下旬からモデルナワクチンの早期健康調査の枠組みを活用した、先行接種を一部の海外派遣隊員や緊急事態対処職員について実施をしているところであります。今後は、先行接種に引き続き、順次「職域接種」に移行することを検討しておって、全国の自衛隊病院や規模の大きな基地・駐屯地医務室を中核としたワクチン接種体制を早期に構築し、展開していく予定であります。防衛省・自衛隊は、引き続き任務に支障が生じないように、隊員へのワクチン接種を進めてまいりたいと考えております。

Q:職域接種をいつ頃から始まる予定でしょうか。

A:まだ現時点で時期については申し上げることができませんけれども、できるだけ早期に始めたいと考えております。

Q:先日可決された重要土地利用規制法案で質問いたします。米国のインド太平洋軍のフィリップ・デイビットソン司令官が、中国が6年以内に台湾侵攻する恐れがあると3月9日の米上院軍事委員会の公聴会で述べられております。米軍のインド太平洋における海洋圧力戦略は、中国を日本列島含む第1列島線の内部に封じ込めようとするもので、中国軍がターゲットを絞り込めないように、日本列島を全体に軍事標的を多数分散配置するとしています。先の国会では、26時間というスピード審議で重要土地利用規制法案が可決されました。こんなに急いだ理由は、米国のために台湾有事における分散配置される軍事標的の準備のためなのでしょうか。一度台湾有事が起これば、米軍は第2列島線まで引き、そこから戦闘機を第1列島線上まで低空飛行で飛ばして、ミサイル発射装置を下してミサイルを撃ってすぐ飛び去るということです。自衛隊も、米軍とともに中国艦隊または中国本土におけるミサイル攻撃をかけるのでしょうか。その場合の報復は多大なものであると思いますが、いかがでしょうか。よろしくお願いします。

A:まず、国会に審議については十分な審議時間がとられて、十分な審議が行われたものと承知をしております。本法案は、土地等の利用によって安全保障上の重要な施設に対する機能阻害行為が行われるというリスクに対応することを目的としています。わが国の安全保障環境が厳しさを増す中において、各種措置において安全保障上のリスクとなる機能阻害行為を未然に防止するという本法律の目的は明確であって、防衛関係施設の機能発揮を万全にする観点から意義あるものと考えているところであります。本法律に基づく措置については、土地等の利用状況を調査し、必要に応じ利用規制を行う一方で、経済活動への影響を最小限にするため、取得規制といった私権制限の程度が大きい措置は導入をしていません。このため、通常の国民生活や経済活動への負担や影響は、限定的であると承知をしております。安全保障の確保と自由な経済活動の両立に留意されているものと認識をしているところであります。

Q:台湾有事における戦闘となった場合に、自衛隊と日本国民は最前線に留まらされ、ひたすら中国艦隊、または中国本土のミサイル攻撃に耐えることになります。耐え切れずに、早々に殲滅されるかもしれませんが、自衛隊に被害、及び近隣住民等の非戦闘員の被害をどのように見積もっていらっしゃるでしょうか。米軍は持久戦を想定しているようですが、その場合、日本列島は孤立する可能性があります。石油も物資も食料も入ってこなくなった場合に日本社会はどうなるか想定されているでしょうか。また、米軍の好き勝手に作られた戦略ではなく、本当に日本を守るための防衛省・自衛隊独自の戦略はないのでしょうか。よろしくお願いします。

A:まず、台湾有事といった仮定の御質問にはお答えを差し控えさせていただきたいと思います。台湾海峡の平和と安定は大変重要であると考えておりますし、海峡問題については、当事者間の直接対話によって平和的に解決されるべき問題である、そのことを期待しているというわが国の立場に変わりはございません。その上で、台湾情勢については、南西地域を含むわが国の安全保障のもとより、国際社会の安定にとっても重要であるという観点から、引き続き、動向に注視してまいりたいと考えております。

Q:昨日の欧州議会の小委員会についてお伺いします。大臣スピーチの中でも欧州諸国に対して軍事的なプレゼンスの発揮を求めていました。抑止力を評価するという観点で理解できるんですけれども、一方で、どうしても軍事的な緊張を高める可能性があると思います。昨日の小委員会の委員からの質問でも中国との国際的な武器管理などを求めるような声も上がっていましたけれど、緊張を抑えるための方策、なにか青写真、大臣の中で描かれているものはありますでしょうか。

A:昨日はですね、わが国の提唱する「FOIP」の維持・強化というものがいかに大切かということを強調したかったんですけれども、この「FOIP」自体はですね、特定の国を排除するとか、そういったことを念頭においているものではありません。非常に公設的な考え方に基づいて、自由で開かれたこの海洋というものが、いかにその地域の平和と安定、また繁栄にとって重要であるかと、こういうことを分かっていただけるようにと考えてました。そういう意味から、できるだけ多くの国に賛同をしていただいて、同じ考え方にですね、賛同をしていただいた上で、参加をしていただく、また、そこでプレゼンスを発揮していただく、そのこと自体が安定に対する強いメッセージに繋がっていくと、こういうふうに考えていたところであります。どうしても関心事項が中国ということになってくると思うんですね、逆に欧州の各国においては、中国に対する意識というものがこれまでは、それほどなかったかもしれないわけですけれども、一方で今、インド太平洋地域、あるいは東シナ海・南シナ海で起こっているようなことというのは、地域だけの問題ではなくて欧州の海においても同じような状況というものは起こりうると、こういうこともですね、訴えさせていただいて共感を得られたなというふうに思っています。

Q:ただ一方で、実際にこちらの南シナ海・東シナ海への軍事展開というのを例として、共同訓練などを例として挙げられましたけれども、それによる抑止力の強化の一方で、軍事的緊張の高まりの方に配慮するというところの点については、どのようにお考えでしょうか。

A:いろいろな考え方があるというふうに思います。軍事への共同訓練を行う際にはですね、特定の国を念頭においたものではなくて、地域の安定のため、それから練度の向上のため、また、この多国間の協力をさらに強めていく、そうした目的をはっきりさせた上で、やっていくことで安定を強化するとともに平和に向けてのメッセージに繋がってくるものと思います。

Q:大臣先ほど、両岸の問題については当事者間の話し合いで平和的に解決するべきだというふうにおっしゃられましたけれども、その点に関連してなんですが、中国がですね、15日に戦闘機など28機を台湾の防空識別圏に侵入させました。今台湾外交部が中国に対して軍事的手段を通じた台湾への威嚇と恐喝をやめるように要求したというふうにされてますけれども、この点については大臣としての受け止め、お願いできますでしょうか。

A:台湾当局の発表については承知をしているところでございますが、台湾当局のこの発表一つ一つにコメントすることは控えさせていただきたいと思います。いずれにいたしましても、わが国としてですね、直接の対話によって平和的に解決されることを期待する、こういう立場から、台湾については、従来から一貫をしているというところでございますが、一方で中台の軍事バランスについては、中国側に有利な方向に変化をしておって、その差が年々拡大をしている、そういった状況が見られますので、引き続き関連動向を注視してまいりたいと考えます。

Q:大規模接種センターの話に戻るんですけれども、大臣おっしゃったようにですね、能力を最大限活用するという意味では、今回のように年齢を拡大してそれで予約が東京の予約は埋まったというのは、すごい良いことだと思うんですけれども、一方で接種券の問題で、昨日現地とかで聞いててもやっぱり偏った区の人が集まってきているような印象もあって、その中で、例えば60から64歳の人とか、接種可の人とかもうちょっと対象を絞ってもらってもよかったんじゃないかみたいな声も聞こえてきているんですけれども。あらためて今回の18から60まで一気に広げた狙いというか考え方をお願いいたします。

A:いろいろな御意見をいただいておるところでございます。一方で、予約枠が余っていた状況をしっかり活用して、その上で接種券の配付状況というのは各自治体によって様々であります。進んでいるところもあれば、まだ配られていないところもある、また、その中で年齢的に限定して配られているところもあるというふうに承知をしておりますが、そうした中で、できるだけ門戸を広げて接種できる方にいらしていただこうと、こういう趣旨から、18歳からということで全体に広げさせていただきました。

以上