防衛大臣記者会見

日時
令和3年5月11日(火)09:32~10:01
場所
防衛省A棟11階第1省議室
備考
岸防衛大臣閣議後会見

1 発表事項

 まず新型コロナ関係であります。前回の会見以降、112名の隊員が感染いたしました。合計で1,518名となります。なお、112名のうち、2名は海賊対処行動のためジブチに派遣された隊員、4名はジブチから本邦への帰国予定だった隊員です。現在、この間に陽性が確認されました6名の隊員及び新たに要健康監視隊員として指定されました9名については、拠点内において隔離療養中であります。いずれにいたしましても、防衛省・自衛隊として更なる感染拡大を防止し、隊員の安全確保に万全を期してまいりたいと考えております。日米豪仏の共同訓練についてであります。4月23日に私からお知らせをいたしました、フランス軍の練習艦隊「ジャンヌ・ダルク」との共同訓練について、海軍種間の訓練の調整が終わりましたので、改めてお知らせいたします。海上自衛隊においては、5月11日から17日までの間、東シナ海において、フランス海軍及び米海軍、豪州海軍も加えた4カ国の艦艇・航空機による対潜戦訓練のほか、航空自衛隊のF-2戦闘機の支援を得て防空訓練を実施をいたします。また、陸軍種と海軍種の協同による着上陸訓練として、地上部隊がヘリコプターで洋上の艦艇から霧島演習場に展開するという一連の訓練も行います。日米豪仏の4カ国は、今般の陸上・海上での共同訓練を「ARC21」(アーク21)と称することとしております。防衛省・自衛隊としては、この「ARC21」を通じて、「自由で開かれたインド太平洋」のビジョンを共有する日米豪仏4カ国の協力関係を一層深化させるとともに、島嶼防衛に係る自衛隊の戦術技量や4カ国との連携を更に強化してまいりたいと考えております。

2 質疑応答

Q:コロナワクチンの大規模接種センターの関係です。これまでも検討が進んでいるかと思いますが、1日の接種回数や予約方法等を含め、現在までの検討状況とですね、特に自治体で既に高齢者の接種が始まっておりますが、この大規模センターとの住み分けという点でやや分かりにくい部分もあるかと思いますので、この点について分かりやすく説明をお願いできますでしょうか。

A:今般、総理からの指示を受けまして、今月24日を目標に、東京において大手町合同庁舎第3号館、大阪においては大阪府立国際会議場グランキューブ大阪にそれぞれ大規模接種センターを設置し、3カ月間運営することといたしております。4月27日以降、大規模接種センターへ派遣可能な医官・看護官の精査を各部隊において実施中です。現在、ここ本省において、部隊からの報告を踏まえ、精査をしているところであります。また、接種の方法としては、インターネット予約システムを中心として検討を進めております。新型コロナウイルス感染症対策は、まさに国家の危機管理上の重大な課題であります。防衛省・自衛隊として、国民の命と平和な暮らしを守るという観点から、引き続き大規模接種センターの設置・運営に向けて、全力を挙げてまいる所存であります。

Q:高齢者の一般接種との住み分けの観点で、もし分かりやすく説明をいただけるのであれはお願いしたいのですが。

A:この大規模接種センターはですね、市区町村におけるワクチン接種を強力に後押しすることを目的として、住民票を有する市区町村以外に接種場所を提供することによって、選択肢として自衛隊が設置する大規模接種センターでの接種が可能となります。結果として、国が確保したワクチンが可及的速やかに接種されることとなります。いずれにいたしましても、市区町村におけるワクチン接種の取り組みと連携するとともに、住民の皆様との間で混乱を招くことがないよう、準備を進めてまいります。

Q:少し前の話になりますが、今月1日にですね、中国海軍のフリゲート艦が与那国と台湾の間を通過したという発表がありました。この発表が初めてになるということだと思うんですが、この発表至った経緯とか、意図につきまして説明できるものがあればお願いします。

A:防衛省・自衛隊として、わが国周辺の海空域における警戒監視・対領空侵犯措置において得られた情報のうち、注視すべきものや特異なものについて、わが方の情報収集・警戒監視の能力・態様を明らかにしない範囲において、様々な要素を総合的に勘案しまして、公表を行ったものでございます。

Q:ワクチンの大規模接種についてお伺いします。24日から目標として開始するということで、いろいろと期限も迫ってきているところだと思うんですけれども、市区町村が今、高齢者接種をしている中でですね、例えば東京の大手町の会場にどれくらいの人数の高齢者の方がいらっしゃるのか、その辺りの予測というかですね、どれくらい来るかということについて何か試算めいたものがあるのかということと、やはり高齢者の方が集まるということで感染のリスクがあったりとかですね、移動のリスクというのもあると思うんですけれども、その辺りの感染防止対策をどのように考えていらっしゃるか、この2点をお伺いできますでしょうか。

A:ワクチン接種はですね、基本的に市区町村が主体となって行っております。自衛隊としては、この大規模接種センターの設置によって、このワクチン接種を強力に後押しする、そういう位置付けであると考えております。その中で、自衛隊としてですね、どれだけの規模で行えるか、今、精査をして、より多くの方にワクチンを接種していただけるような体制作りのために、今、準備を進めているということでございます。その中で、感染防止対策等々ですね、しっかりとっていかなければいけないと思います。自衛隊としても、これまで様々な場で感染拡大防止に当たってきました。そうした経験知見を活かして、感染防止にもしっかり努めてまいりたいと考えております。

Q:大規模接種センターに関連してなんですけれども、民間の看護師さんを派遣してもらう契約が9日に行われたと思いますが、どういう会社が受託したのかということと、業務の一部を民間に委託する理由をあらためて教えていただけますでしょうか。

A:今お話の件でございますけれども、看護師の派遣については、契約業者「キャリア」というところであります。ここと契約をしたということでございます。国として、新型コロナウイルスワクチンの国民の皆様への接種を速やかに進めるという観点からですね、この自衛隊自身はワクチン接種に専念をして、ワクチンの接種を支えるような業務、すなわち受付とか案内とか予約、接種記録の管理といった周辺業務については、できるだけ民間に、民間役務を活用することが効率的であると、このように考えたところであります。センターの運営に当たって、自衛隊の能力が可能な限り活用できるようにするともに、民間に委託することができる業務については、民間の力を積極的に活用してより早期にワクチンの接種が行なえるように取り組んでいるところであります。

Q:関連ですみません。受注業務全体の概算でも結構ですので、契約額等分かればお願いします。

A:契約額。看護師の派遣について。全体の。

Q:全体での。

A:今の看護師派遣業務については、7億6,377万4千円であります。なお、東京の接種センターの委託契約でありますけれども、これは日本旅行と行いました。金額が19億4,899万9,999円ということであります。大阪については、東武トップツアーズ。こことですね、9億6,654万586円になります。

Q:ちょっと長くなりますけれども、1点お伺いします。昨年12月18日の閣議決定で、新たなミサイル防衛システムの整備等及びスタンド・オフ防衛能力の強化によって、敵基地攻撃を容易になし、北朝鮮領域まで直接到達する国産長距離射程ミサイルを日本独自に開発中であると、米国ウォール・ストリート・ジャーナルが報じています。小野寺元防衛大臣は、「スタンド・オフ防衛能力とは敵の射程圏外から攻撃できる能力であり、この新型ミサイルには、中国との領土問題を抱える日本の南端にある島々の防衛にも使用できる」の旨を述べておられます。しかし本当にそうでしょうか。当然ミサイルを撃ち込まれた敵国は日本全土に照準を合わせ、特に海岸線にある原発を目がけてミサイルを撃ち込んでくるのではないでしょうか。日本の海岸線は54基の原発を抱えており、原発にミサイルを撃ち込まれてはひとたまりもありません。自らの急所、つまり原発をさらけ出し、敵国の射程圏外から攻撃ができるといっても、全く意味をなさないと思われます。現実的に、日本列島全体が中国の準長距離弾道ミサイルの射程の中にすっぽりと入っていることは事実です。その中国の準長距離弾道ミサイルは、150から450発と推定されています。そもそも、スタンド・オフ防衛能力が敵の射程圏内とか、脅威圏の外などという明言自体が懸念です。これは、まさに差し違いの覚悟の戦争であることは自明です。スタンド・オフ防衛能力という言葉で本心を隠し、国民をあざむき、わが国を焦土と化しても米国を守るというお考えなのでしょうか。大臣のお考えをお聞かせください。よろしくお願いします。

A:差し違い覚悟の戦争というものをしたいと思うところがあるのでしょうか。基本的にこのスタンド・オフ・ミサイルというのは、先ほどからもお話があったととおり、敵の圏外からですね、攻撃をできる能力を有するというものでありますが、全て我々の抑止力を高めるためのものでございます。あくまでも自衛隊員の安全を図るための技能、射程外から発射するミサイルがこのスタンド・オフ・ミサイルであるということでございますが、いずれにしましても、御指摘の沿岸の防空、対空の防衛についてもですね、総合ミサイル防空も進めながら、わが国の防衛能力を高めてまいるところであります。

Q:ワクチンと「ARC21」についてそれぞれお聞かせください。ワクチンの大規模接種についてまずお伺いしますが、先ほど「キャリア」についてですね、自衛隊は接種に専念して、受付等の周辺業務を民間に委託というふうにおっしゃいましたが、「キャリア」と契約した内容については看護師の派遣だと思いますけれども、看護師を派遣する意義について教えていただけますか。

A:看護師の派遣については、自衛隊から集めることができる看護官の人数がまだ決定をしておりません。そういった状況の中で、東京・大阪の接種会場の施設の規模、収容能力等勘案して、可能な限り多くの接種が実施できるように、効率的な体制構築を追及して民間の看護師の協力を得ることが必要と考えられることから、契約を結ぶこととしたものであります。これは、一般競争入札の結果ですね、落札した業者と契約をしたということろでございます。

Q:アークについてお伺いできればと思います。今回、フランスが参加するということが新しい面だと思いますけれども、欧州各国と共同訓練をすることの意義について、大臣どういうふうにお考えか教えていただけますでしょうか。

A:この度、フランス軍との共同訓練ということを先ほど申し上げたところでございます。このフランスについては、インド太平洋地域に常続的な軍事プレゼンスを有する欧州唯一の国でございます。わが国と「自由で開かれたインド太平洋」というビジョンを共有する同志国でもあるということでもあります。今回の機会を捉えて、この「自由で開かれたインド太平洋」のビジョンを共有する国々、フランスに加えて米国、豪州、こういった国との協力関係を一層進化させるということは、大変意義があることだというふうに考えているところであります。引き続き、それ以外の欧州各国もですね、艦艇を派遣してくれる国もあります。そういった国ともこのFOIPのビジョンを共有し、そして協力関係を深めていくということを進めていきたいと考えております。

Q:欧州のですね、各国と同盟国ではありませんので、実際に何かが起きた時に助けてもらえるという保証はないと思うのですけれども、そういった中でどういった協力関係を結びたいかという点と、この東シナ海地域にですね、各国軍が集まることによって、中国を刺激し、軍事的な、偶発的な衝突に繋がりやすいという懸念もあると思うのですけれども、そういった点について大臣はどのようにお考えでしょうか。

A:ヨーロッパの各国が、インド太平洋地域に高い関心をもってきていると、そしてプレゼンスをそれぞれ示す、こういうことについてですね、そのことが地域の平和と安定に繋がるものだというふうに考えておるところです。そのことが中国との関係にどうなるのか、こういうことですけれども、その一つFOIPにしてもですね、特定の国を念頭に置いたものではございません。非常にインクルーシブな体制だと考えているところですけれども、その中で協力できるところ、ビジョンを共有できる国々とですね、しっかり体制を広げていくということが何より地域の平和と安定に繋がると、こういうふうに考えております。

Q:3月にあった北朝鮮の弾道ミサイルの発射の件でお伺いします。韓国のですね、徐旭国防大臣が4月28日の国会答弁でですね、北朝鮮の弾道ミサイルの飛行距離について、当初日韓が推定していた450kmではなく600km程度だと判断していると明らかにしました。防衛省、日本政府の分析状況というのはいかがでしょうか。

A:今、御指摘の韓国の国防部長官の発言は承知をしているところでございますが、北朝鮮メディアの発表等も踏まえて、現在分析中であります。引き続き、米国・韓国等と緊密に連携しながら、必要な情報の収集・分析に努めてまいりたいと考えています。

Q:関連でお伺いしたいのですけれども、今回のミサイル、高度をいったん下げた後、再び急上昇するという変則軌道、終末段階が正確に捕捉できなかったということだそうです。低高度はレーダーの死角となりやすく、変則軌道への対応がミサイル防衛における対応については脅威になるかなと思いますが、大臣、そこら辺のお考えというのはいかがでしょうか。

A:今、先ほど申し上げましたように、米国・韓国等とですね、緊密に連携をとって、必要な情報の収集・分析に努めているというところでございます。個別の事案における具体的な対応については、わが国のインテリジェンスの内容について推察される可能性もございます。我々の手の内を明かすことにもなりますので、お答えを差し控えさせていただきたいと思います。

Q:今回の共同訓練でですね、霧島演習場が使われると思うのですけれども、今後、霧島演習場を使っての外国の軍隊との演習が増えるというような見通しはありますでしょうか。

A:今後の件については、引き続き検討を進めてまいりたいと考えております。

Q:大規模センターの関係で2点お尋ねします。現在、インターネットを中心に予約を受け付ける方向で検討されていると伺いました。現場の自治体等を取材していると、ネットの予約システムがダウンしたりですとか、インターネットの予約に慣れていないお年寄りのところを自治体職員が回って手ほどきをして予約を手伝っていったりとか、非常に各自治体とも苦労されています。防衛省がこれからインターネットで予約を受け付けるということなんですけれども、その使い勝手、あるいはトラブルが発生した時のバックアップの在り方、この辺りどのようにお考えなのか教えて下さい。また、電話予約という話も当初あったのですが、こちらの方は結局行わないという理解でいいんでしょうか。

A:まず、今回大規模接種センターの予約については、インターネット予約システムを中心に検討を進めている、いうところでございます。更に検討を進めた上で決めていくということになると思います。その中で、お年寄りがそうしたシステムを使えるかどうか、こうしたこともあります。できるだけ使い勝手の良い形というのは作っていかなければいけないなというふうに考えております。

Q:システムトラブルの関係は、何か対策は考えていらっしゃるんですか。

A:そういうことに対してもしっかり対応できるように、今準備をしているところです。

Q:もう1点、関連してお尋ねします。同じように医療現場を回って取材をしていると、お医者さんなんかは、自分がワクチン接種を終わらないうちに、高齢者の方に、なかなかワクチンを打つのは気が引ける面があるということを言うお医者さんですとか、看護師さん、中にはいらっしゃるんですけれども、今回自衛隊から派遣される方々は、恐らくワクチン1回は、あるいは2回打った方々多いかと思うんですが、これ、「キャリア」から派遣される看護師さんというのは、そのあたりどのように対応されるんでしょうか。

A:これも、さらに「キャリア」と話を詰めなければいけませんけれども、基本的には、まず医療従事者については、そういう安全が確保されていること、これが大規模接種センターにおいても、そのことは重要だというふうに考えております。

Q:防衛省として、「キャリア」から派遣される看護師についてもワクチン接種をお願いしていくということなんですかね。

A:これは確認いたします。

Q:分かりました、お願いします。

Q:中国が打ち上げた大型ロケットの残骸が、9日にインド洋に落下したということですが、防衛省・自衛隊として、今回の事案について何か対処されたかということと、今後こういうような、中国による大型ロケットの打ち上げみたいな事例が増えてきた場合に、アメリカと連携してどのような対処を取るかということについてお願いします。

A:この度の中国のロケット「長征5号B」の再突入につきましては、防衛省としても、米国提供の情報も踏まえて、関係省庁と連携をして、その軌道に係る状況について注視をしていたところでございます。その上で、防衛省として、宇宙状況監視の能力を高めていく必要があるというふうに認識をしております。令和5年度までのSSAシステムの整備、令和8年度までのSSA衛星の打ち上げ等、宇宙空間の状況を地上及び宇宙空間から常時継続的に監視する体制を構築するところとしています。その際、JAXAに加えて、グローバルな宇宙状況監視ネットワークを運用する米軍のシステムとも連携をし、宇宙空間の状況に関する情報について、米国等とのリアルライムで共有できるようにするなど、相互補完的な運用体制を構築することによって、実効的な監視ができるようにしていきたいと、こういうふうに考えております、

Q:大規模接種センターについてお伺いするんですけれども、昨日の自民党の部会で、運営する自衛隊の防衛任務に支障が出るんじゃないかという懸念が出されたんですけれども、こういった懸念は発表当初から出ていると思うんですが、あらためてこういった懸念についてどう考えるかというところと、問題ないと考えるのであれば、その理由についても教えていただければと思います。

A:御存じのとおり、自衛隊も中央病院や、また防衛医大病院等々でコロナを有する患者を受け入れておりますし、それから地域医療も行っているところであります。そうした任務に対してですね、支障がでないような範囲において、今回医官、看護官を派遣するということを集計をしているというところであります。あくまでも、そういう作業に支障が出ないような形をとりつつ、この大規模接種センターでの、一人でも多くの方に早急に接種ができるような体制を構築していくように、準備を進めていくということでございます。

以上