防衛大臣記者会見

日時
令和2年12月25日(金)10:10~10:34
場所
防衛省A棟11階第1省議室
備考
岸防衛大臣閣議後会見

1 発表事項

 新型コロナウイルスでございますが、前回の会見以降26名の隊員が新たに感染していることが確認されました。これまでに合計で452名の隊員が感染したことが確認されております。2点目、海幕長等の新型コロナウイルス感染状況であります。海上幕僚長及び海上幕僚副長を含む海上幕僚監部勤務の隊員の新型コロナウイルス感染については、公表済みの8名以外には新たな感染は確認されておりません。感染原因等については現在、自治体等で調査中でありますが、防衛省としては、医療機関や保健所等の関係機関と協力し、感染者の早期発見と接触者の特定に努めるとともに、接触が疑われる隊員は先行的に隔離し、健康観察を実施してまいります。これに関して、12月16日に海上幕僚長や幕僚副長が海上幕僚監部勤務の隊員と合わせて14名で会食を行っていたことが分かっています。この会食は、参加者の一人が異動するため送別会を目的として開催されたものと報告を受けております。会食は飲酒を伴う食事ではありましたが、飲酒量は乾杯程度であります。また、喧噪を伴うようなものとはなっていなかったとの報告を受けております。空調設備の整った大型の会場、100人程度が収容できる会場を利用し、席と席との間隔も十分に確保しております。密とならないように配慮するほか、手指の消毒、アクリル板の設置等、基本的な感染症対策を徹底していたと聞いております。他方で、感染症対策は徹底されていたにせよ、防衛大臣を補佐すべき海幕長とその代理者たる副長が、同一の会場の会食の場に参加したことについては、防衛省・自衛隊がわが国の安全保障を担う組織であることを考えれば、配慮が足りない面があったのではないかと考えております。このような観点から、私から海上幕僚長に対して、待機期間終了後に指導を行いたいと考えております。日印防衛相電話会談についてであります。12月22日、インドのラージナート・シン国防大臣との間で日印電話会談を実施いたしました。今般の会談では、東シナ海・南シナ海を含む地域情勢について意見交換を実施し、力を背景とした一方的な現状変更の試み、また、緊張を高めるようないかなる行為にも強く反対すること等で一致いたしました。また、感染症対策分野における協力について、シン大臣から賛同を得たほか、日印米豪4か国の防衛当局間での連携の重要性についても改めて申し上げました。防衛省・自衛隊としては、「自由で開かれたインド太平洋」の維持・強化に向けて、わが国と「特別な戦略的グローバル・パートナーシップ」を構成(※1)しているインドとの防衛協力・交流を、引き続き活発に進めてまいりたいと思います。千葉県いすみ市における鳥インフルエンザに係る災害派遣についてです。昨日陸上自衛隊は、千葉県知事からの災害派遣要請を受けまして、千葉県いすみ市において発生いたしました、高病原性鳥インフルエンザの防疫措置を支援するため、災害派遣活動を実施しております。具体的には、第1空挺団習志野及び高射学校高射教導隊下志津の計約440名の隊員がローテーションを組み、発生養鶏場において24時間体制により鶏の殺処分の支援に当たっております。鳥インフルエンザに係る災害派遣は、本年11月5日以降、今回で18回目となります。防衛省・自衛隊は引き続き、農水省を始めとする関係省庁、また、関係自治体と緊密に連携をし、災害派遣活動を迅速かつ適切に実施してまいりたいと考えております。次は、今年の一字です。「異」という字です。今年振り返ってみますと、何といっても、新型コロナウイルスの前に世界はまるで、昨年までとは全く異なる様相を呈した。ニュー・ノーマルというような新しい生活様式が求められると。街行く人々を見ますと皆マスクをしている。これは、去年は見られなかったような、全く新しい異様な風景が普通になってきたと思います。この「異」ということを受け入れることが、今を生き抜いていく上で求められるのだと思います。防衛分野では、今年はイージス・アショアを断念する中で、異なるプラットフォームでの運用に道を求めました。わが国を取り巻く安全保障環境もこれまでにない速さで、厳しさと不確実性を増しております。革新的な先端技術の発展とともに、従来とは異なる新たな領域を制する、異次元の戦い方というのが求められています。そういう意味で、この字を選んだわけでございます。来年は、また今年と異なる良い年になることを期待しております。

2 質疑応答

Q:先日、中国の爆撃機が、東シナ海と日本海上空で監視活動を行ったということですけれども、中国はロシアと共同で活動することで、更に緊張が高まる可能性があるが、これをどう受け止めているのか。それと、一年を振り返ってということですけれども、南シナ海近辺ですとか、そこら辺で緊張が高まった一年であるかなと思っておりますけれども、防衛省としては、緊張を緩和するためにどういったことが必要だと考えておられますでしょうか。

A:まず、12月22日午前から午後にかけて、中国の爆撃機4機及びロシアの爆撃機2機が、日本海から東シナ海までの長距離にわたって共同飛行を実施したことが確認されております。これに対しては、空自の中部航空方面隊、西部航空方面隊、また、南西航空方面隊が、戦闘機を緊急発進させて対応しております。中国とロシアの爆撃機によるわが国周辺における長距離での共同飛行について公表したのは、2019年7月23日以来、2度目ということになります。今後について、予断をもってお答えすることは差し控えたいと思いますけれども、自衛隊として中国とロシアがわが国周辺での長距離にわたる共同飛行を実施したことに、高い関心をもって注視をしています。また、引き続き、わが国領土・領海・領空を断固として守るため、警戒監視活動に万全を期すとともに、国際法、自衛隊法に従いまして、対領空侵犯措置に万全を期してまいりたいと思います。また、本件について、中国側ロシア側に対しても、それぞれ外交ルートを通じて、わが国としての関心表明を行ったものと承知しているところでございます。東シナ海を始めとする海空域において、中国は非常に軍事活動を活発化させてきております。既存の国際秩序とは相いれないような独自の主張に基づいて、力を背景とした一方的な現状変更の試みを継続しているところです。海軍の艦艇の恒常的な活動の下で、わが国の抗議にも関わらず、中国公船が尖閣諸島周辺のわが国領土(※2)への侵入を繰り返しているということについて、こういった行為は我々として断じて容認できるものではございません。また、6月には中国のものと推定されます潜没潜水艦が、奄美大島付近の接続水域を航海していることが確認をされたというような状況であります。南シナ海においても、地形の一方的な現状変更、既成事実化を推し進めていて、こういったことは非常に大きな懸念材料となっていると思います。中国との間には様々な懸念が存在をしております。今月、日中防衛相テレビ会談を実施いたしましたが、我々の率直な意見、懸念をしっかり伝えました。こうした形で先方に主張すべきはしっかり主張し、懸案を一つ一つ解決し、また、中国側の前向きな対応を強く求めていくことが重要である、このように考えております。

Q:桜を見る会の前夜祭を巡って、安倍前総理が昨日記者会見を開きまして、今日にも国会で説明することとなっています。この事件を巡ってはですね、秘書の略式命令が決まって、安倍前総理自身は不起訴ということなのですけれども、国会では間違った答弁を繰り返していたということもあります。こういった安部前総理の政治的責任、道義的責任についてはどのようにお考えでしょうか。

A:昨日、記者会見が1時間ぐらいにわたって行われました。そこでも誠意をもって丁寧に説明を尽くしたのではないかなというふうには感じております。今日衆参院で、議院運営委員会だったか、そこでもほぼ約1時間ずつの質疑と言いますか、あれは発言ということなんですけれども、予定されていると伺っております。そうした形できっちり国会の場でも説明が行われるものというふうに思っております。これ以上のコメントは差し控えさせていただきたいと思います。

Q:関連しまして、自民党では吉川前農林水産大臣が現金を受け取った問題であるとか、広島の選挙区の問題もあって、政治とカネの問題がやはり大きくなっておりますけれども、政治とカネの問題についてはどのようにお考えでしょうか。

A:個別の問題についてコメントすることは差し控えさせていただきたいと思いますけれども、いずれにしても、いろんな形で国民の皆さんから疑問を持たれているのは良い状況ではないと思います。きちんとした説明がされるべきであると、こういうふうに思っています。

Q:中露の関係で、補足で伺いたいのですけれども、関心表明に止まった理由を教えてください。

A:今回、領空侵犯とか、そういった形の危険な行為は行われていなかったと承知しております。そういう意味で、わが方としてきちんとした対応は行ったところですけれども、今回は我々としては、関心表明を行ったということです。外交的な対応については、外務省の方にお問い合わせいただきたいと思います。

Q:本日、普天間飛行場周辺の住民が、夜間早朝等の航空機騒音の差し止めや損害賠償を国に求める第3次普天間爆音訴訟を起こす予定です。これに対して大臣の受け止めをお願いいたします。

A:報道は承知いたしておりますけれども、訴状がまだ送達をされていないことからコメントは差し控えさせていただきたいと思いますが、訴状が届いた時点で、内容について関係機関と検討の上、適切に対応してまいりたいと思います。いずれにいたしましても、防衛省としては、普天間飛行場の1日も早い返還を実現するために、引き続き、辺野古への移設に向けた工事を適切に、着実に進めるとともに、引き続き、航空機騒音による地元への影響をできる限り低減するように、全力で取り組んでまいりたいと思います。

Q:関連で、同様の訴訟が過去に2回行われておりまして、国の爆音対策は不十分だということで賠償金が払われております。この違法な環境が中々改善していないという現実についてですね、先ほど、できる限りのことをやるとお話もありましたけれども、新たな対応の必要性等についてどう考えているかお願いします。

A:過去の判決においては、いずれも国に損害賠償が命じられております。防衛省としては、これまで以上に裁判において国の主張を充分に尽くしていく考えであります。また同時に、米側に対しまして、騒音規制措置の遵守、地元の重要な行事に配慮するよう、引き続き、申入れるとともに、住宅防音工事等の各種の施策を総合的に推進していきます。周辺住民の皆様の御負担を可能な限り低減できるように、しっかり全力を尽くしてまいりたいと思います。

Q:中国が、国防法を早ければ年内に改正案を可決するという報道があります。10月に草案を発表しておりまして、海外の自国利益を軍事力で守る方針を明記したり、宇宙やサイバーを重要な安全領域に位置付けるということなんですが、こうした中国の軍事政策が日本の安全保障に与える影響をどのようにお考えかお願いします。

A:御指摘の中国国防法改正案がわが国に与える影響ということについて、予断をもってコメントすることは差し控えさせていただきたいと思いますけれども、10月に草案を公表したと承知しております。その動向を注視しているところであります。

Q:馬毛島への基地整備計画について伺います。防衛省が近く、飛行場や港湾施設の設計入札を行うということで、先週、鹿児島県知事が、地元への説明が不十分だということで、抗議をしたということを表明しました。住民説明会を終えてすぐに、当初予算の20倍以上の114億円の事業をするというような経緯になっておりまして、地元では不信が少し広がっております。推進派の方からも、対立や不信を深めるようなやり方で、もう少し情報を開示して欲しいというような声も上がっているのですけれども、この情報提供をより広げていくというようなお考えはないかどうかお聞かせください。受け止めとですね。

A:馬毛島におけます自衛隊施設の整備につきましては、地元からの様々な御質問、御要望が寄せられているところでございます。地元の皆様の疑問に十分お答えするためにも、検討を深めていく必要があると考えております。馬毛島における施設の詳細、種子島における宿舎等の関連施設についての調査・検討を内容とします「詳細検討」を開始することを考えているところでございますが、11月9日の西之表市長来訪時などの累次の機会に御説明を申し上げてまいりました。また、17日に鹿児島県知事から、今月8日に防衛省が、近々「詳細検討」を開始する旨の連絡があったが、事前に説明がない中の唐突な連絡があって、丁寧な対応をすべきではないかとの事務レベルでの抗議がありました。他方、住民に詳細な説明をするとの観点から、その必要性は一定程度理解ができるとの趣旨の発言もあったと承知をしております。これまで、県に御説明を行うとともに、御意見も踏まえて対応してきております。現時点で「詳細検討」の入札公告等、手続きは開始しておりません。準備が整い次第開始する考えでありますが、具体的な時期等についてお答えできる段階ではないということであります。いずれにいたしまして、今後とも、地元の皆様の声を受けながら丁寧な対応を進めてまいりたいと思います。

Q:宇宙領域のことについてお伺いいたします。令和3年度予算案で宇宙関連経費が、約659億円と前年度と比べて増えているかと思うんですが、トータルとするとまだ少し少ないのかなという気もしますが、この宇宙について予算も含めて今後どう強化していくのか、お願いします。

A:令和3年度予算案における宇宙関連施策の総額は、約659億円であります。具体的には、SSAの強化、ミサイル防衛のための衛星コンステレーションの活用の検討、宇宙利用における抗たん性の強化、宇宙を利用した情報収集能力の強化、といったことに所要の経費を計上いたしておるところであります。このほか、宇宙作戦群を含めた組織体制の強化を予定しております。防衛省として、今後も多様な任務を効果的かつ効率的に遂行していくためにも、宇宙空間の利用の推進を引き続き図るとともに、宇宙空間の安定的な利用の確保が極めて重要であると認識しております。このような観点から宇宙関連施策を進めてまいりたいと考えております。

Q:冒頭にもお話しがありました海幕長の会食なんですけれども、14人という人数の規模については、大臣はどのようにお考えでしょうか。それともう1点、この会食の場が、この感染を広げた要因というふうに既に断定と言いますか、確定しているのでしょうか。2点お願いします。

A:まず、14名という人数、これについては、単純にその人数だけで判断するわけにはいかないと思います。大臣通達にも直接的に反するものではないわけです。密の状態を作らないということが大事であって、ということでございます。ただ一方で、結果として、海幕長、副長を含めて複数の感染者がいるということ、この関連性についてはまだ調査中だと思います。しかしながら、そういった状況も否定できないような状況だというふうには考えております。

以上

○ 下線部(※1):修正事項(構成→構築)

○ 下線部(※2):修正事項(領土→領海)