防衛大臣記者会見

日時
令和2年12月11日(金)10:50~11:12
場所
防衛省A棟11階第1省議室
備考
岸防衛大臣閣議後会見

1 発表事項

 大阪府における新型コロナウイルスの件であります。大阪府において新型コロナウイルスの感染拡大が続き、医療体制がひっ迫している状況を受け、先程、午前9時に、大阪府知事から陸上自衛隊中部方面総監に対して、新型コロナウイルスの市中感染拡大防止のための災害派遣要請があり、これを受理したとの報告を受けたところであります。防衛省・自衛隊では、これまで延べ1,000人以上の新型コロナウイルス陽性患者を受け入れる等、地域医療も支える自衛隊病院や防衛医大病院の機能、さらに、各種事態への即応性を維持する必要がございます。そのうえで、府内の医療の状況や全国各自治体の医療情報を幅広く集めている厚生労働省をはじめとする関係省庁との調整に加え、大阪府出身の中山副大臣、大西政務官、松川政務官からもたらされます詳細な大阪府の実情報告も勘案しまして、大阪府に対する応急的な医療支援が必要との判断に至ったところです。具体的には、重症者医療用施設の「大阪コロナ重症センター」に対して、ICU勤務経験を有する看護官1名及び准看護師資格を有する隊員2名から成る医療支援チーム、もうひとつは、府立中河内救急救命センターに対して、看護官1名及び准看護師資格を有する隊員3名から成る医療支援チームをそれぞれ派遣することといたします。医療支援チームの隊員は、じ後、現地における情報収集や慣熟訓練を実施し、来週開設を予定している「大阪コロナ重症センター」等での医療支援を実施してまいります。防衛省・自衛隊としては、重症者や死亡者の発生を可能な限り食い止めるという政府全体としての方針に、自衛隊の能力を最大限・効果的な形で活用して貢献してまいりたいと思います。2つ目でございます。前回の会見以降、21名の隊員が新たに新型コロナウイルスに感染していることが確認されました。これで、本日までに合計367名の隊員が新型コロナウイルスに感染したことが確認をされております。それから、中東地域における日本関係船舶の安全確保のための自衛隊による情報活動・情報収集活動の延長についてであります。本日、国家安全保障会議の九大臣会合及び閣議において、「中東地域における日本関係船舶の安全確保に関する政府の取組に関する閣議決定の変更」が決定され、中東地域における自衛隊の情報収集活動の期間が来年の12月26日まで1年間延長されます。中東地域においては、日本関係船舶の防護が直ちに要する状況にはないものの、高い緊張状態が継続していることから、引き続き、日本関係船舶の安全確保のための取組が必要とされています。また、情報収集活動によって得られた情報は、関係省庁、関係業界にタイムリーに共有することによって、日本関係船舶の航行安全に役立てられております。業界団体からは累次、自衛隊の活動に対する期待や感謝が表明されているところであります。防衛省・自衛隊としては、新型コロナウイルスの世界的な感染が継続する中で、任務に従事する隊員の健康管理に最大限留意しつつ、日本関係船舶の安全確保に必要な情報収集活動を引き続き万全を期してまいります。次は、12月22日付の将官人事についてであります。本日の閣議において、令和2年12月22日付の将官人事3件について、内閣の承認がなされました。このほか、同日付で、将については12件、将補については38件の異動等を行います。自衛官の定年引上げについてです。本日の閣議におきまして、「自衛隊法施行令の一部を改正する政令」が閣議決定されました。人材の有効活用を図るため、令和3年1月に1佐の自衛官の定年を「56歳」から「57歳」に、2佐及び3佐の定年を「55歳」から「56歳」に、それぞれ1歳引き上げることとなりました。このような定年引上げ等の人的基盤の強化に資する施策について、自衛隊に求められる多様な活動を適時適切に行っていくために非常に極めて重要でありますことから、今後も一層の推進を図ってまいりたいと考えております。

2 質疑応答

Q:今週9日に開催されました自民党の関係部会で、陸上自衛隊の12式地対艦誘導艦を長射程化して、敵の射程圏外から攻撃できる「スタンド・オフ・ミサイル」として開発するという案を示されて、了承を得たということですが、一方でそれは、日本領域の中から他国を攻撃できるため、敵基地攻撃にも利用される可能性があるという指摘があります。大臣の御見解、防衛省としての今後どのように進めていくかお聞かせください。

A:防衛省におきましては、国産開発中の「12式の地対艦誘導弾(改)」を更に長射程化し、スタンド・オフ・ミサイルとして開発すべく、令和3年度予算への計上に向けて、今、調整をしているところでございます。これは、各国の早期警戒管制能力や各種のミサイル性能が著しく向上をしていく中で、現行の防衛大綱、中期防に基づいて、自衛隊の安全を確保しつつ、相手の脅威圏の外から対処を行う、わが国のスタンド・オフ防衛能力を強化するためのものであります。いわゆる「敵基地攻撃」を目的としたものではありません。

Q:アショア代替策として、イージス・システム搭載艦が提示されましたけれども、検討の期限、具体的な期限は区切られていないということで、建艦、完成するまで相当な期間を要するのではないかという懸念もありますけれども、これについては、どのようにお考えでしょうか。急ぎたいというお考えでしょうか。

A:これまでですね、私が大臣に就任した直後、代替案の検討についてイージス・アショアの構成品の洋上プラットフォームへの搭載という方向で大きな方針がございました。十分な報告と説明を受けて進めてきたわけでございます。今回、11月に中間報告、ここから得られた情報を踏まえて、イージス・アショアの構成品を洋上プラットフォームに搭載するということに対する技術的な実現性、導入コストの規模感等を中間報告で確認することができたということでございますが、今、こういう検討を着実に進めてきて、あるべき方策としては、情勢に応じ、常時持続的にわが国全域を防護し得る態勢の構築を目指し、海上自衛隊が保持するイージス・システム搭載艦2隻を配備する方向で防衛省においても、更に検討を進めるということでございます。これからですね、この方向性に基づいて、搭載艦に係る運用構想の詳細、搭載機能、艦の設計、要員確保、こういったことについてですね、引き続き米国政府と、あるいは日米の民間事業者等々と鋭意検討を進めてまいりたいと考えておるところです。

Q:期限を区切らなかったことによって、建艦、完成するまでの期間が長期化すると。刻々と安保環境は変わっていく中で、長期化が及ぼす悪影響というかですね、そういったことへの認識というのはどうなのかということを。

A:スケジュール等ですね、あるべき方策としては、調整に応じて先ほどと繰り返しになりますけれども、常時持続的にわが国全域を防護し得る態勢の構築を目指すということで、この情勢の変化に応じて運用上最適な海域へ柔軟に展開することが可能で、自己防護能力を確保したイージス・システム搭載艦、これを2隻整備するという方向であります。その上で、運用構想等々ですね、こうした要求性能等の検討を通じて精緻化していくものであって、厳しい財政事情や厳しさを増す自衛官の人材確保を巡る環境を踏まえ、しっかり精査をしていくという必要があるというふうに思います。洋上プラットフォームの建造は、いずれも契約から5年以内の見積もりでございました。建造前は、基本検討、設計等の期間が必要であること、個別装備品の調達スケジュール整備や装備品のインテグレーション、各種試験を考慮をする必要があること、これを踏まえまして全体のスケジュールを精査する必要があることを受理したところでございます。イージス・システム搭載艦に搭載するために必要な仕様変更につきましては、イージス・システム搭載艦の建造と同時並行的に実施することが可能であると考えておりますので、全体のスケジュールには、遅らせる要素とはならないと考えております。

Q:米軍普天間飛行場の辺野古移設に関してお伺いします。一昨年12月から土砂の投入が始まっておりますが、埋立区域②-1と②の現在の進捗状況を教えていただけますでしょうか。

A:現在行っております、キャンプ・シュワブ南側の海域の埋立工事につきましては、平成30年12月より開始しているところです。所定の高さまでの埋立を行うのに必要な土量として、今年11月末までの進捗状況は、埋立地域②については約6割、埋立区域②-1については既に完了しているところでございます。その上で、普天間飛行場を巡る問題の面で、固定化は絶対に避けなければいけない。これは政府と地元の皆様との共通認識でもございます。日米同盟の抑止力を維持し、普天間飛行場の危険性の除去、こうしたことを考え合わせたときに、辺野古移設が唯一の解決策、この方針に基づいて着実に工事を進めていくことこそが、普天間飛行場の1日も早い全面返還を実現していくことにつながる、こういうふうに考えているところでございます。

Q:埋め立てに関する土砂に関してお伺いするんですが、沖縄防衛局の設計変更申請によると、糸満市とか八重洲町等、県の南部から土砂を採用することになっておりますが、南部では遺骨がたくさんまだ埋まっておりまして、土砂と遺骨が混在するのではないかという専門家等の懸念が上がっております。なぜこうした地域を土砂の採取地域に選んだのかということと、土砂の埋立てにこうした地域の土砂を使用することは適切なのかどうか、遺骨と土砂が混在しないように採取することは可能かどうか、この3件をお伺いできますでしょうか。

A:土砂の調達先につきましては、工事の実施段階で決まることでございます。現時点では確定はされておりませんが、関係法令で認められた鉱山から調達されると承知をしているところです。その上で、沖縄の状況、先の大戦において凄惨な地上戦を経験した沖縄では、今もなお、厚労省、沖縄で連携をして、戦没者の御遺骨の収集が進められております。沖縄本島の南部の鉱山においても、関係機関の連携の下に、御遺骨に配慮した上で事業が営まれているものと、このように考えているところでございます。

Q:冒頭ありました大阪のコロナ関連の派遣についてなんですけれども、9時に受理をしたということで、これはもう既に命令は出されているのかということと、活動はいつから始まっていつぐらいの期間を考えていらっしゃるのか教えていただけますでしょうか。

A:要請は、今朝9時に受理をしたところであります。命令は、今この時点では発出されていませんが、その方向で進めているところであります。

Q:命令はいつ頃出すかというのは。例えば夕方とか、午後とか、その辺の目途というのは立っているのでしょうか。また、活動期間はどれぐらいかも教えていただけますか。

A:命令はですね、これから14日に中部方面総監より災害派遣命令が発出された後に、派遣チーム全体で各種訓練を実施し、15日から医療支援を開始すると。命令は14日の予定です。

Q:7人の内訳を教えてほしいんですけれども、防衛医大のICU経験者がお一人ということでよろしいのでしょうか。

A:ICUの経験者は一人ですね。

Q:その他の6人は阪神の自衛隊病院とかですかね。

A:詳細はですね、事務方に問い合わせてください。

Q:こうやって感染症が増えているという状況の中、要請も今後も増えていく見通しあると思うのですけれども、大臣は今後もどのように対応していくお考えでしょうか。

A:まず、状況の把握、各地と連絡を密にとって、厚労省が中心になるかもしれませんけれども、その上で自衛隊としてできることをしっかりやっていきたいと思います。

Q:在日米軍の駐留経費の関係でお伺いします。交渉の現状の状況とですね、年内合意は厳しいのではないかという報道も出ております。また、来年度予算にも影響する話だと思いますけれども、来年度予算をどのようにするのか現状を教えて下さい。

A:まず、このHNSについては、11月から交渉を続けておりますが、まだ交渉は続いているところでございますので、その状況については差し控えさせていただきたいと思います。令和3年度予算についてはですね、現在、政府内で調整中でございます。内容や規模については、何ら決定されているところではないということでございます。いずれにしても、一層厳しさを増すこの安全保障環境の中で、また、わが国の厳しい財政状況を踏まえて、適切に対応してまいりたいと考えております。

Q:アショアの関連で、先ほどと被るところがあるんですけれども、6月に配備計画が撤回されてから約半年で、今回、一定の結論が出た形になったかと思うんですが、当初ブースターの回収に2,000億円以上かかるというような見込みがあって撤回に至ったということだと思うのですが、今回、民間事業者の中間報告なんかでは、フルフルのイージス艦を作った場合には2隻で5,000億円以上かかるという試算もあります。当初の撤回の判断についてですとか、この間の議論の経緯について、改めて御所感をお伺いできますでしょうか。

A:まだイージス・システム搭載艦の詳細について決まったものではありません。どういったものを装備していくか、また、運用等ですね、こうしたことはこれから更に検討を重ねていかなければならない、こういうふうに思っております。いずれにしましても、イージス・アショアの配備を撤回した、配備のプロセスを停止した後にですね、全省を挙げて検討を進めてきた結果でございます。それなりの時間も要したわけですけれども、わが国の厳しい安全保障環境、特に弾道ミサイルに対する守りをしっかりと固めていくという観点から、今後更に代替案について検討を進めていきたいと考えております。

以上