防衛大臣記者会見

日時
令和2年10月27日(火)11:00~11:22
場所
防衛省A棟11階第1省議室
備考
岸防衛大臣閣議後会見

1 発表事項

 新型コロナウイルス関連についてであります。前回の会見以降、6名の隊員が新たに新型コロナウイルスに感染していることが確認されました。これで、本日までに合計198名の自衛隊員が新型コロナウイルスに感染したことが確認されております。今後とも、防衛省・自衛隊として、医療機関や保健所等の関係機関と連携して、感染拡大の防止に向けた方策を適宜適切に講じてまいりたいと思います。2点目でありますが、日フィリピン防衛相テレビ会談についてであります。先週の金曜日23日、私からの提案により、フィリピンのロレンザーナ国防大臣とテレビ会談を実施いたしました。今般の会談では、東シナ海・南シナ海を含む地域情勢について意見交換を実施し、最近の東シナ海、南シナ海において生じている事象も踏まえ、力を背景とした一方的な現状変更の試み、また、緊張を高めるいかなる行為に対しても強く反対することを共有し、法の支配に基づく自由で開かれた海洋秩序が重要であるという考え方を再確認いたしました。また、二国間の防衛協力・交流等についても意見交換を行いました。私から警戒管制レーダーの移転に関する契約が成立したことを歓迎する旨を申し上げました。新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえ、災害派遣活動における感染予防策に関する知見や教訓の共有をはじめとする感染症対策分野においても防衛協力を推進したい、こういうことを述べさせていただきました。会談において、ロレンザーナ国防大臣から、近く私をフィリピンへ招待したい旨の提案がありました。私から、状況を踏まえ適切な時期に実現したい旨述べました。日フィリピン防衛当局間では、今後も緊密なコミュニケーションを継続するとともに、「自由で開かれたインド太平洋」の維持・強化に向けて、防衛協力・交流を引き続き強化してまいりたいと考えております。

2 質疑応答

Q:昨日から臨時国会が始まりました。岸大臣の意気込み、また、どのような議論を期待されるか等をお聞かせください。

A:昨日203回国会が開会され、召集されたところであります。今国会については、いずれも喫緊の課題に対応するための法律案等が提出、議論される予定でございます。菅内閣の一員として、丁寧な答弁に努めてまいりたいと思っております。

Q:菅総理の所信表明演説の中で、安全保障のところがあったと思うのですけれども、アショアの代替と抑止力の強化について、あるべき方策を取りまとめていくということでおっしゃられたと思うのですが、今年末までにという表現がないのですけれども、これは何かスケジュール感に変更があったということでしょうか。

A:このイージス・アショア代替策と抑止力強化については、菅総理が昨日の所信表明演説で述べられたとおり、9月11日の「内閣総理大臣の談話」を踏まえて、しっかりと議論を進め、あるべき方策を取りまとめていくということを示されました。この考えに変わりはないということです。

Q:そうすると今年末までにという方針に変わりはないということでよろしいでしょうか。また、今の検討状況はその後どうなっているでしょうか。

A:繰り返しになりますけれども、昨日、所信表明演説で総理が述べられたことは9月11日の談話を踏まえて、議論を進め、あるべき方策をということでございましたので、変わりはない、変更はないというふうに考えております。スケジュール感については、予断を持ってお話をすることはお控えをしたい、こういうふうに思っておりますが、引き続き、まず政府内でしっかりと議論を行ってまいりたいと思います。

Q:昨日、山崎統幕長が記者会見の中で、将来的には自衛隊のオスプレイが米軍艦艇に着艦することも考えられると述べられました。陸自オスプレイの米艦への着艦について、大臣としてどうお考えになられているのかということと、その米軍艦艇の着艦について、現在防衛省内でどの程度検討が進んでいる状況なのか、お願いします。

A:これまでもヘリの運用等行われているところでございますから、これは引き続き検討していきたいと思っているところでございます。

Q:将来的にはそういうことも当然あり得るというお考えでいらっしゃるということでよろしいでしょうか。

A:検討していくということです。

Q:防衛装備庁が15年度に設けた安全保障技術研究推進制度について伺います。この制度、民間の先進技術に関して基礎研究を助成するものですが、今年度から制度に採択された研究も含む基礎研究の成果を防衛装備品の開発等に繋げる橋渡し研究制度も始めています。民間技術を導入することの意義や制度の現状、課題について大臣の御見解を教えて下さい。

A:まず、わが国の高い技術、民間の保有している技術も含めて、この技術力というのはまさに防衛力の基盤である。安全保障環境が一層厳しさを増す中で、安全保障に係る技術の優位性を維持する、また向上していくということは、将来にわたって国民の命、あるいは平和な暮らしを守るために不可欠であると考えております。こうした状況を踏まえて、防衛の分野で将来における研究開発に資することを期待して先進的な民生技術についての基礎研究を公募・募集している、そして委託をするものであります。防衛省しては、当該制度の積極的な活用を今後も図っていく必要があると考えております。

Q:制度を巡って、大学の研究者から装備庁の関与に対する慎重論が上がっています。また、制度への応募件数は、導入時の15年度と19年度を比べると半分程に減っているようです。こうした現状にどう対応していくべきだとお考えですか。

A:まず、介入についてですけれども、研究テーマに沿った先進的な民生技術についての基礎研究を公募するのが趣旨であります。したがって当然のことながら、一つ一つの応募や研究計画は応募者の自由な発想、意思により行うものであると考えております。予算の執行という観点もありますから、研究の進捗管理は必要というふうに考えておりますので、防衛省職員によります運営に関するサポート等については、同様の取り組みをしているわけでございますが、研究の内容について介入するということではありませんので、その防衛省が関与するとか、そういうことには当たらないというふうに思っております。

Q:件数が減っていることについては、大臣はどのようにお考えですか。

A:過去、応募件数が減ってきているということですけれども、全体で言いますと令和2年における公募への応募件数は、120件でございます。外部の専門家により、採択審査を経て21件を採用したというところでございます。この数自体が少ないかどうかというのは、色々判断があるかとは思いますけれども、一応、そういうような数字が出ているということであります。

Q:自衛隊の採用活動についてお伺いします。採用環境ですね、ここ近年の現状を大臣、どのようにご認識されているのかと、必要な人材をちゃんと確保出来ているのかと。もし不足しているというようなことがあるなら、どういう分野で不足しているのか、というところの現状認識をお聞かせいただけますでしょうか。

A:自衛官の充足率については、令和元年度末の時点で92パーセントということであります。定員を満たせていない状況が続いている、こういうことでございます。この状況は、近年わが国の社会において進行している少子化、採用対象の人口がまず減ってしまっているということですね。このことで、人材確保の環境は一層厳しさを増している、こういうふうに思います。これまで以上に、人材確保、人材の流出、それから有効活用に関する総合的な取り組みを積極的に推進していく、この必要があると考えております。まず、隊員の環境ですね、生活や勤務環境の改善、女性自衛官の活躍の推進、ワークライフバランスの推進、処遇の改善、ハラスメント防止、メンタルヘルスの推進、こういったことを進めていくことによって人材の流出の防止を図りつつ、自衛隊の魅力を向上させていく、こういうことに繋げていきたい、こういうふうに考えております。自衛隊、正に隊員自体が自衛隊の中核をなしているわけですから、自衛隊員の士気向上ということも含めてですね、人的基盤の強化をより一層進めてまいりたいと思っております。

Q:冒頭の質問に関連するのですけれども、アショアの代替と、相手領域内のミサイル防衛に関してなのですが、スケジュール感は予断を持って話すのは控えたいとおっしゃいましたが、これまでは、年末に示すと強調されていたように記憶しているのですが、スケジュール感について、何らか、少し後退するような要素が出てきたという理解でしょうか。

A:これまでも年末までにあるべき方策をお示しするということは申し上げてきたところであります。その上で、昨日の菅総理からの所信表明演説によって、総理の談話を踏まえてイージス・アショアの代替、それからミサイル阻止の方策について、検討していくというようなお話があったと思います。そういう意味では、これまでの方針に変更があるものではないというふうに思っております。

Q:土曜日の富士山会合に寄せられたビデオメッセージで、中国に言及されまして、その中で事態を一段とエスカレートさせていると、ややちょっと批判的な発言をされていますが、この発言の狙いと、こういう現状変更の試みを続ける中国にどう対処していくかお考えをお聞かせください。

A:まず、ビデオメッセージについては、現状何よりも理解をしていただきたいと思って作ったものでございます。私は直接出席することができなかったので、防衛大臣として取り組んでいきたい重要施策等々について、課題について発信をすることができた、ビデオを通じてでも発信することができたということは、これはこれで有意義だったのではないかなというふうに思います。中国については、話した内容がちょっと、かなりボリュームがあったということは確かだというふうに思います。透明性を欠いたまま継続的に高い水準で国防費を増加させていること、軍事力を広範かつ急速に強化していること、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大という状況、国際的な協調・連携が必要な中においても、力を背景として一方的な現状変更を試みる動きを継続しているということ、そういった最近の動向について、まとめてお話をさせていただいたということです。参加者の方にそういった状況について御理解をいただくためのお話をさせていただきました。

Q:イージス・アショアの代替案の関連でお伺いします。地上配備から洋上配備へと方向性が大きく転換するわけですが、改めてSPY-7とSPY-6のレーダーを比較・評価するお考えはおありでしょうか。

A:2018年7月に実施いたしましたイージス・アショアのレーダー等の構成品の選定、これにおいて、SPY-6と7のレーダー性能の比較を行いました。より広いエリア、高い高度において探知が可能であること、同時に多くの目標を追尾できるといった基礎的な性能に加え、後方支援、経費についてもSPY-7の方が優れていた、このためSPY-7を選定したということであります。納期についてもほぼ同等との評価を得ているところでございます。この時点で詳細の比較をしている、その評価を得ているということから、いずれにいたしましても、米政府と日米の民間事業者を交えて確認・検討を行った上で適切なプラットフォームの形態を決定してまいるところでございます。ですから、特にこの時の評価を尊重していきたい、こういうふうに思います。

Q:確認ですが、陸上配備と洋上配備では前提が大きく変わったわけですけれども、アショア選定時の評価と異なる可能性も指摘されていますが、それはいかがでしょうか。

A:SPY-7については、もともと洋上での使用ということも前提とされているレーダーであります。ですから、そういうことを踏まえますと、洋上のプラットフォームに適さないというものではございませんし、そういう意味から、改めて採用を開始しようということでもないのかなというふうに思います。

Q:以前にもお伺いした航空自衛隊新田原基地の関連でお伺いしたいのですが、昨日から日米共同訓練が始まりました。地元自治体はこれまで求めていた基地内の宿泊や外出制限等が受け入れられないままで、基地到着後のPCR検査の実施等も米軍は拒否しているということで、国として地元の不安解消に努めるというふうにおっしゃっていましたけれども、結果的に地元の意向が踏まえられないまま、訓練が実施されている状況になっています。今後、地元の信頼回復のために、国としてどういうふうに対応されていくか、お考えをお聞かせください。

A:航空機の移転訓練につきましては、26日に開始され、訓練自体は来月5日まで実施する予定となっています。今回、市内のホテルを利用することにつきましては、宮崎県知事や宮崎市長をはじめとした関係自治体の皆様から累次の要請を頂いているところでございますが、現状としては、ホテルを利用せざるを得なかったと、こういうことであります。一方、防衛省として、地元の御要望については真摯に受け止めて、コロナウイルス感染予防・阻止を徹底すること、米軍人の外出等、部外との接触を最小限にすること、迅速な情報提供等、九州防衛局と関係機関等の連携を強化すること等、米軍とも調整し、とり得る措置を最大限実施していきたいと、こう考えております。この訓練自体は、日米の相互運用性の向上、また、沖縄県における地元負担の軽減、こういった取り組みとして重要な訓練であると考えております。円滑な訓練実施のために、地元の皆様の御理解と御協力をいただくことが重要ですので、引き続き、必要な説明を丁寧に行ってまいりたいと思います。

以上