防衛大臣記者会見

日時
令和2年10月13日(火)11:03~11:30
場所
防衛省A棟11階第1省議室
備考
岸防衛大臣閣議後会見

1 発表事項

 私から3点申し上げます。まず、新型コロナウイルス関連であります。前回会見以降、6名の隊員が新たに新型コロナウイルスに感染していることが確認されました。本日までに、合計188名の自衛隊員が新型コロナウイルスに感染したことが確認されております。なお、新規感染者6名のうち2名は朝霞駐屯地の教育課程履修者、1名は課程終了後に接触した者であります。したがって、本教育課程に関係する新型コロナウイルスの感染者については、履修者が34名、課程終了後に接触した者が9名、合計43名となっております。今後も、防衛省・自衛隊としては、医療機関や保健所等の関係機関と連携し、感染拡大の防止に向けた方策を適宜適切に講じてまいりたいと思います。2点目、レイノルズ・オーストラリア国防大臣との電話会談についてであります。昨日、オーストラリアのレイノルズ国防大臣との間で電話会談をいたしました。今般の電話会談では、北朝鮮、東シナ海・南シナ海を含む地域情勢について意見交換をし、引き続き緊密に連携していくことを再確認をいたしました。その中で、両国間で意思疎通を維持し、力を背景とした一方的な現状変更の試み、また、緊張を高めるいかなる行為にも強く反対すること、それに加え、法の支配に基づく自由で開かれた海洋秩序が重要であるとのメッセージを明確に発信をしていくことで一致をいたしました。私から、新型コロナウイルス感染症への対応に関する日豪防衛協力について議論を深めたい旨述べました。さらに、レイノルズ国防大臣から、早期の来日の希望が示され、私からはその実現に向けて積極的に協力をしていく旨述べさせていただきました。防衛省・自衛隊としては、今後とも、「自由で開かれたインド太平洋」の維持・強化に向けて、日豪間の防衛協力を引き続き深化させていく考えであります。3点目、北朝鮮籍の船舶の「瀬取り」についてであります。国連安保理決議により禁止されている北朝鮮籍船舶の「瀬取り」を含む違法な海上活動に対し、カナダ海軍フリゲート艦「ウィニペグ」が、10月上旬以降、東シナ海を含むわが国周辺海域において、2018年以降4度目となる艦艇での警戒監視活動を開始しました。また、カナダは、11月上旬から12月上旬までの間、在日米軍嘉手納飛行場を使用して、2018年以降5度目となる航空機による警戒監視活動を行う予定です。わが国としては、国際社会が一致団結して国連安保理決議の実効性確保に取り組んでいく観点から、こうした取組を歓迎しており、カナダ政府に感謝申し上げたいと思います。引き続き、関係国と緊密に協力を行ってまいります。

2 質疑応答

Q:北朝鮮について、10日の軍事パレードで新型と見られるICBMが登場しました。防衛省として、北朝鮮のこのような軍事力強化というのをどのように分析していますでしょうか。

A:今、お話のとおり、10日に朝鮮労働党創建75周年に合わせた軍事パレード、各種行事が実施されたと承知をしております。このパレードでは、これまでに発射が確認された弾道ミサイルと同型と思われるものが、少なくも6種類登場したと承知をしています。また、これら以外にも、新型のICBM弾道ミサイルの可能性があるものや、SLBMの可能性のあるものが登場したと承知をしております。軍事パレードに登場した弾道ミサイルと見られるものについての詳細については、現在分析中でありますが、いずれにしても、北朝鮮が極めて速いスピードで弾道ミサイル開発を断続的に進めてきており、わが国を射程に収めるノドンやスカッドERといった弾道ミサイルに核兵器を搭載して、わが国を攻撃する能力を既に保有しているものとみられます。昨年以降、発射を繰り返している新型と推定される短距離弾道ミサイルは、ミサイル防衛網を突破することを企図していると考えられ、このような高度化された技術がより射程の長いミサイルに応用されることも懸念されています。このように、北朝鮮は攻撃対応の複雑化、多様化を執拗に追求しており、攻撃能力の強化・向上を着実に図っています。わが国を含む関係国の情報収集、迎撃態勢への新たな課題となっていると認識しております。

Q:今の冒頭の質問に関連してですが、この課題解決のためにもちろん「瀬取り」等の対策、ミサイル開発の資金源になり得ないことを遮断する取組みというのは求められると思いますが、この課題解決にむけて、日本政府としてできること、外交、安全保障両面でどういうことがあるのか、教えてください。

A:北朝鮮は、今述べましたように、様々な弾道ミサイルの発射を繰り返し、技術の向上が図られています。このことに関しましては、一つは国際社会で連携をしっかり強めていくということであります。安保理決議の重視に向けて、しっかりとした対応が必要であると思っております。

Q:靖国参拝についてうかがいます。今週17日から、靖国神社の秋の例大祭が始まりますが、大臣はこの例大祭中に参拝するお考えはありますでしょうか。

A:私の今後の参拝については、個人として適切に判断してまいりたいと思います。国の内外を問わず、国のために貴い命を犠牲にされた皆様に対して、ご冥福をお祈りして、尊崇の念を表すことは当然のことだと、このように考えております。

Q:仮に参拝しない場合、供え物の真榊を奉納する予定はありますでしょうか。

A:それも含めまして、個人として適切に判断をさせていただきたいと思います。

Q:北朝鮮のパレードの話に戻ってしますのですけれども、今回新型のICBMの可能性もあるということなのですけれども、非常に大きなものでですね、多弾頭化も進んでいるのではないかという報道も分析されいるのですけれども、今回の新型ICBMと見られる物が、どのような能力を持っているのかということと、昨年から発射実験を非常に活発にやってきたところだと思いますけれども、今後の北朝鮮のですね、弾道ミサイルの発射実験について、どのように分析されているか、この2点を教えていだだけますでしょうか。

A:ICBMを含めて、北朝鮮による弾道ミサイルの開発動向としましては、まず1つ目は、長射程化が図られている。飽和攻撃のために必要な正確性、連続射撃の運用能力向上を企図している可能性がある。いわゆるTELや潜水艦の使用、固体燃料化等によりまして、発射の兆候把握が困難にするための秘匿性、即時性を高め、奇襲的な攻撃能力の向上を図っているとみられる。それから、ミサイル防衛網を突破することを企図し、低高度を変則的な軌道で飛翔する弾道ミサイルを開発している可能性がある。また、ロフテッド軌道での発射等、発射形態の多様化を図っている可能性があります。

Q:発射実験は、今後どのように行われるように見ているのか、その点はどうでしょうか。

A:今後の動向については、予断を持ってお答えすることはできないと考えます。

Q:ここ最近、尖閣諸島界隈で再び中国の公船が活動を活発化させています。こうした時に日本政府の反応ですと、常に強く抗議するという話なんですけれども、まあ率直に言いまして強く抗議しても相手が相手なので結果は何も変わらないという現実があると思います。中国の公船、ないし他の隻数においても保安庁の巡視船を圧倒的に上回っている。それから、なおかつ武装化や大型化も進めているというのは良く知られている通りだと思います。この一向に変わらない状況に関して、大臣はどのように見てらっしゃいますでしょうか。あるいは防衛省ないし自衛隊としてですね、その強く抗議するということ以外にですね、どういう方策というか、解決策とまで言いませんが方策はどのようにお考えでしょうか。

A:まず、現状についてはですね、今月11日から中国公船が2隻、尖閣諸島周辺にわが国の領海に侵入をしている。当該海域における航行中であったり日本漁船1隻に接近しようする動きを見せたというふうに承知をしております。この2隻は、午前10時現在も領海内にとどまっております。領海侵入時間が過去最長を更新している状況と承知をしております。現状の中身については、海保にお尋ねいただきたいと思いますが、中国はこのような東シナ海における力を背景とした一方的な現状変更の試みを継続しており、海軍艦艇の恒常的な活動の下で、わが国の抗議にもかかわらず領海への侵入を繰り返している。このような現状変更の試みは、容認はできないということでございますが、尖閣諸島をめぐる情勢に関しては、事態をいたずらにエスカレートさせることがないように、冷静な対応を継続しつつ、わが国の領土・領海・領空を断固として守るという観点から、引き続き海上保安庁などの関係省庁と連携し、警戒監視・情報収集に万全を期していくということであります。中国側に対してはですね、緊張を高めるようなあらゆる行動の自制を求めてまいりたいと思います。

Q:今のデュアルユース、つまり同じ技術でも軍事用でも使えるし、民間技術にも使える、どちらにも使えるといわれるデュアルユース化が言われています。防衛省の方は、いわゆる防衛装備品については、当然、該当企業に色んな意味で秘密の保持ですとかチェックですとか監視体制、それなりに敷いていると思いますけれども、逆に直近のサイバーですとか、あるいは自動運転とか、5Gをはじめとする画像通信ですか、そういったものになるとですね、民間企業の購入、あるいは学者のですね日中交流、事実上、ほとんど歯止めが利かないのが実態だと思います。それが逆に言うと、中国から見れば抜け穴になるというか、間接的にですね共同研究とか共同開発を通じて、表向きは民生品ものを開発してそれが容易に軍事に転用できるという可能性は十分あると思いますけれども、これについて規制というのは難しいと思うのですけれども、監視とかあるいは歯止め、何らかの形でチェック、歯止めをかける方策についてどのように大臣はお考えでしょうか。

A:まず、民間企業はですね、高い技術、ノウハウを持っていると思いますから、そういう意味で一般論で申し上げましたら、今後もですね、民間企業との連携、協力というのは欠かすことができないというふうには思っております。その上で、様々なリスクが存在するのであれば、そこに対応できるような監視システムも一方で必要になってくる。そういうことも含めて、防衛省全体で検討を進めていかなければいけない課題だと思います。

Q:防衛省だけでなくて当然民間企業になりますと、現実問題、経済産業省、それから学者の方の話、学者というか科学者ですね、具体的には。それの研究になると文部科学省との連携というか、情報交換、チェックですとか、中国ではやっていると思いますが、一考も必要になってくるかと思いますが、それについてはどのようにお考えでしょうか。

A:今、私は防衛省と申し上げましたが、これは国全体を挙げて、政府全体を挙げて取り組まなければならない課題だと思います。

Q:イージスアショアの代替策について、改めてということでおうかがいしたいのですが、先週、洋上案の調査研究を民間業者へ委託契約しました。調査期間は4月30日までだということですが、改めて方策を示すスケジュール感ですとか、時期、現時点での考えというのを改めてお聞かせいただけますでしょうか。

A:これまでと変わったものではなくて、総理からも御指示のございましたとおり、今年末までにあるべき方策を示していく、こうした目標に向かって防衛省内でも鋭意検討すると、こういうことだと思います。現時点では、代替案の詳細の決定時期について、予断を持ってお答えすることはできませんが、ただいま口頭で言ったような状況からですね、総理の御指示に基づいて鋭意検討を進めてまいりたいと思います。

Q:関連してですが、今おっしゃられた総理からの指示で年末までに一定の方策ということですが、そこに間に合わすためにということで途中経過というのは、どういった形で業者からどういった報告を受けて、それを参考にしたいと思っているのでしょうか。

A:調査報告の納期自体は、来年の4月ということありますが、それぞれのタイミングで必要な調査結果を報告してもらって、我々の判断に反映させるということです。

Q:先程、大臣、1問目の問に答えられたときに、代替案の詳細の決定時期については、予断をもって答えられないというふうにおっしゃられました。裏を返せば、年末までに詳細というのはなかなか簡単には詰められるものではないのかなというふうにも受け止められたんですが、そこについては大臣はどのような御認識でしょうか。

A:総理から御指示のございました年末までのあるべき方策を示すという部分でございます。それ以上のことは今の時点ではお答えすることはできないということです。

Q:新型コロナの話に戻りますが、北海道の東千歳駐屯地で、朝霞の研修に参加した1人に対して4人が感染して、北海道がクラスターだと認定したのですが、そのことについて大臣はどのような対策を考えていらっしゃいいますか。

A:今の御指摘の点です。東千歳駐屯地で5名の感染者が発生し、10月10日にクラスターと認定され、同日17時に、北海道から公表されたと承知しております。東千歳駐屯地では、千歳保健所の指導によりまして、122名の隊員が検査対象として指定され、13日現在で117名が検体採取を終えています。全て陰性と確認されております。残る5名については、日程を調整しているところです。防衛省としては、今般のクラスター認定を受けて、管轄の保健所、医療機関等と連携を強め、感染拡大の防止にむけた方策を継続してまいることに変わりはございません。引き続き保健所の指導に従って、感染者の早期発見と接触者の特定に努めるとともに、濃厚接触が疑われる隊員は先行的に隔離し、健康観察を実施します。さらに、感染拡大防止のため、引き続き、手洗い、マスクの適切な着用、消毒、換気等、感染予防の徹底を図ってまいりたいと思います。

Q:在日アメリカ軍の駐留経費の関係ですが、今週にも協議に入るというお話ですとか、現行の特別協定を1年延長する提案をするという話もでているのですが、現在の交渉の準備状況について教えてください。

A:報道では、様々な報道がなされていることは承知しております。在日米軍駐留経費については、現在日米において、いつからいかなる形で交渉を開始すべきか等について、調整しているところでございますが、現時点では確定はしていないところです。

Q:このところ、日米豪印、それから日豪の関係強化が図られていますけれども、日本にとってオーストラリアは、既に準同盟国なのか、或いは、準同盟国化を目指すのか、どちらなのでしょうか。

A:オーストラリアについては、先般もレイノルズ国防大臣とも直接会談を行いまして、様々な防衛協力について確認したところです。お互いに米国との同盟関係にあるという状況、それから、自由で開かれたインド太平洋という構想の下で、今後とも協力、意見交換を進めていく相手だというふうに思っております。

Q:防衛省・自衛隊の幹部の中にも、もうオーストラリアは準同盟国であると言い切る人もいらっしゃいますが、大臣は既に準同盟国だと思われますか。それともこれから準同盟国関係を目指すというお考えでしょうか。

A:先ほどもお話しがございました、日豪、日米豪、あるいは日米豪印という枠組みを想定されるわけでございます。そうした中で、オーストラリアとの関係を更に進めていきたい、こういうふうに考えておるところです。

Q:既に準同盟国になっていると思いますか、それともこれから準同盟国関係を目指すのでしょうか。どちらでしょうか。

A:準同盟国という定義が中々難しいと言いますか、確定されていないと思います。先ほども申し上げましたけれども、米国とはそれぞれが同盟国の関係にあるそういう間柄だというふうに理解をしております。

Q:今月末に、宮崎県の航空自衛隊新田原基地で行われる日米共同訓練について、米兵の宿泊先として、宮崎市内のホテルが検討されているということに対して、昨日、宮崎県知事と地元の宮崎市長が基地内での宿泊をお願いしたいという旨の要望に来られたと思います。地元の方でも、やはり宮崎市内のホテルということになりますと、繁華街が近く、住民の方にも事件、事故、新型コロナの感染拡大等の不安が広まっているようなのですけれども、大臣の受け止めと国としてどのように対応されるかおうかがいします。

A:宮崎県知事、市長から御要請があったということでございます。新田原基地におけるこれまでの同じ訓練は、基地内の宿泊施設を利用することとしてきたものであります。しかし、今年は新型コロナウイルスの感染防止のため、ソーシャルディスタンスの確保をする必要があって、来訪する米軍人の一部が4人部屋にならなければならない。基地の中ではそういう状況が出てしまうということです。このため、市内のホテルの利用を検討しているところです。米軍人の基地外のホテル宿泊は、今年8月に千歳基地における航空機の移転訓練においても、同様の処置がとられました。参加する米軍人は、従来から日本国内に居住し、訓練実施前にPCRで陰性を確認した者のみとなります。訓練中はその他の感染防止措置をとることも徹底してまいります。この他、地域の皆様の不安の払しょくのためにですね、滞在中の不用不急の外出は控えるように米軍に要請するとともに、防衛省の職員を現地に派遣し、関係機関と緊密な連絡態勢をとる等、必要な対応をとってまいりたいと思います。いずれにしましても、現地の地元の皆様の御理解と御協力をいただくことが重要ですので、引き続き丁寧な説明に努めてまいりたいと思います。

以上

下線部:修正事項(断続的→継続的)