防衛大臣記者会見

日時
令和2年10月9日(金)11:21~11:51
場所
防衛省A棟11階第1省議室
備考
岸防衛大臣閣議後会見

1 発表事項

 3点ほど申し上げます。新型コロナウイルス関連についてです。朝霞駐屯地の教育課程に係る新型コロナウイルスの感染者については、昨日の会見時と変わらず、本教育課程の履修者32名、課程終了後に接触した者が、8名で計40名となります。この他に、前回の定例会見以降、4名の隊員が新たに新型コロナウイルスに感染していることが確認されました。これで、本日までに合計182名の自衛隊員が新型コロナウイルスに感染したことが確認されています。今後も、防衛省・自衛隊としては医療機関や保健所等の関連機関と連携し、感染拡大の防止に向けた方策を適時適切に行ってまいります。次は、自衛隊員倫理法に基づく、国会報告についてであります。本日、自衛隊員倫理法に基づく、令和元年度の国会報告が閣議決定され、国会に提出されました。この報告は、毎年、自衛隊員の職務に係る倫理の保持に関する状況及び自衛隊員の職務に係る倫理の保持に関して講じた施策について、国会に報告することになっています。なお、国会報告の資料については、担当部局から皆様へ配付させていただきます。3点目、本年度の上半期緊急発進回数についてであります。今年度2020年度上半期の航空自衛隊によるスクランブルの回数は、前年度比99回減少となる371回でした。このうち中国機に対する緊急発進が、前年度同時期に比べ98回の減少となる234回であり、ロシア機に対するスクランブルは前年度比1回減少の134回でした。わが国周辺空域における中国軍及びロシア軍の活発な活動は、継続をしております。その動向について、引き続き注目していく必要があると考えております。防衛省・自衛隊として、わが国の領土・領海・領空を断固として守り抜くという観点から、国際法及び自衛隊法に従い、対領空侵犯措置に万全を期してまいる所存でございます。

2 質疑応答

Q:イージス・アショアの代替策に関して、大臣は昨日、調査研究を委託する契約を民間業者2社と締結したと述べられました。改めてその詳細と代替策の決定時期といった今後のスケジュール感について教えてください。

A:イージス・アショア代替案については、洋上プラットフォーム案の方向で引き続き詳細な検討を進めているところであります。今回契約した調査研究役務は、この詳細検討等について、民間業者から必要な専門的技術的事項の支援を得るため行うものです。具体的にはイージス・アショアの構成品の移動式の洋上プラットフォーム案に搭載する場合に、搭載自体に技術的問題が生じないことの確認、耐衝撃性能、動揺対策、塩害対策など、海水が必要となる事項の有無及び内容の確認、電力システムを含め、搭載するシステム全体を艦体内部に収容できることの確認、こういったことなどを行って、さらに弾道ミサイル防衛以外の自己防護兵装の付加や、コストの算出等について、専門的・技術的な支援を得るということになっております。今後は、米政府や日米の民間事業者を交えて確認・検討を行って上で、適切なプラットフォームを決定していくこととしております。

Q:先日7日に海上自衛隊の調達に関する文書について、偽造された疑いがあると発表されました。この件に対する大臣の受け止めと、再発防止策についてお願いします。

A:今般、平成29年度の海上自衛隊の地方調達における随意契約の防衛大臣承認手続きについて、防衛大臣名義の海上幕僚長宛ての一部の公文書が、決裁権者の決裁を得ずに発簡されたという事案が確認をされたところでございます。これらは、大臣承認が本来必要のないもの、あるいは適切な、適正な手続きが行われていれば、大臣承認を得ることができたもの等ではありますが、その手続きに関する公文書に不適切なものが確認されたことは、あってはならない事案であります。深刻に受け止めるとともに、深くお詫びをいたしたいと思います。本件について、事実関係のさらなる調査を行う必要がありますから、第三者的立場の防衛監察本部による厳正な調査を行うとともに、刑法155条に規定された公文書偽造が疑われることから、7日に、防衛装備庁から司法警察職務を行う警務隊に告発をいたしたところでございます。

Q:アショアの代替の調査研究なんですけれども、これは調査研究を委託する契約額みたいなのはいくらぐらいになっているのか、ちょっと細かいですけれども教えていただけますでしょうか。

A:契約額はですね、2つありますけれども、1つは三菱重工が約1.1億円、それからもう一つは、ジャパンマリンユナイテッドですけれども、これが1.3億円となっています。

Q:調べることが、イージス・アショアの構成品が移動式のものに搭載可能かとかですね、ちょっと、かなり根本的なところを調査研究するということで、若干その、年末までにというあるべき方策を示す中で、調査研究を委託するのが遅かったのではないかとかですね、結局、調査研究した結果、できませんでした、ということにならないのか、やはり若干時間が区切られている中で色んな懸念があると思うんですけれども、その辺り、大臣、どのようにお考えでしょうか。

A:スケジュール的なものにつきましてはですね、総理からも、あるべき方策を年末までに示すということを御指示を頂いているところでございます。この調査研究については、方策を示すに資する報告を、年末までの報告のための調査をですね、報告をしてもらうということが含まれます。

Q:改めてなんですが、調査自体は来年の4月30日までの契約ということだったと思います。そうすると、最終的な調査結果を出す前に方向性を出すということになると思うんですけれども、改めて年末というところの大臣の意気込み、それから、年末、最終的な調査結果が出る前に方向性を出すということについては、大臣はどのようにお考えになっているかということを教えてください。

A:今年末までに、ということは総理からも御指示があるとおりであります。そういうことで、今その御指示に従いまして、方策を示すために必要な手続きを進めているところでございます。この調査についてもですね、先ほどと繰り返しになりますけれども、年末に方策を示すために資する調査について、間に合うタイミングで出してもらうと。ただ、おっしゃるとおり契約自体は4月30日が納期になっています。納期というのは、全体の納期という意味でありますけれども、必ずしも、最後の最後までに間に合わせればいいということではないというふうな観点もございます。それぞれの段階で必要なレポートを出してもらう、こういうことであります。

Q:そもそも論になってしまうかもしれないんですけれども、年末に一定の方策を示すということなんですが、大臣の中で一定の方策というのは、今どういうものを念頭に置いてらっしゃるのでしょうか。例えば、自民党の方には防衛省からの説明ですと、洋上リグ案、洋上案について3案程度説明をされていると思うのですけれども、例えばその中からどれか一つに絞るとか、そういうことを置いているのか、一定の方策というのはどういったものを念頭に置いているのでしょうか。

A:今の時点では、以前からお話しをしている洋上プラットフォーム案を中心にということでお示しをしたわけであります。その中から更に最も適切な案をですね、取り組みをしていくことになりますけれども、年末までにお示しをする案というのがどういった形になるのかということについても、今後検討していかなければいけない事項だと思っております。

Q:先ほど調査は、最終結果は、4月30日までの契約ということに関連してなんですけれども、イージス・アショアの配備そのものを巡ってはですね、秋田県の新屋演習場に関する調査報告書で誤りが見つかった経緯も過去にあったかと思います。来年4月30日までの契約期間というのであれば、途中経過でですね、年末において方策を判断するというのではなく、やはり慎重に判断するべきではないか、というふうにも思うのですけれども、そこについて大臣はどのようにお考えでしょうか。

A:それぞれの場面場面において、かなり慎重にしっかり判断していくということが必要になってくると思いますが、年末というのが一つのスケジュールであります。その時点までにあるべき方策を示していくということは、総理大臣の指示でもありますので、それに従って必要なプロセスをとっていくということでございます。

Q:総理からの指示ということなんですけれども、多額の税金がかかる安全保障政策を年末までに区切る理由というのはなぜなのかというのをちょっと教えていただけますでしょうか。

A:これはいつまでかということは、色々なご意見もあろうかと思いますけれども、わが国のミサイル防衛に穴が空くことはいけませんので、そういう意味では期間を設けないわけではなくて、一定の期間を設けた上で話を進めていくということだと思います。そういったことから、一つの区切りとして年末というのが出てきていると思います。

Q:安全保障面でのゲームチェンジャーになり得る先端技術について、各国がしのぎを削っています。先端技術の情報収集や保全の重要性が高まっていると思うのですが、経済安全保障にどのように取り組んでいくのか意気込みを教えて下さい。

A:近年、国際社会においてはですね、主要国家は経済分野の競争が安全保障分野にも大きな影響を与えてきていることが言えると思います。昨今の民生分野における先端技術の著しい進歩、将来の戦い方を一変させるようなゲームチェンジャーとなり得る最先端の技術に積極的に各国投資をしているところでございます。一部の国家においてはですね、投資や科学技術研究、サイバー空間の問題等で工作員等を利用して他国からの先進技術等の獲得を試みているようなことも言われているところでございます。わが国としても、安全保障上、いかなる技術が重要であるかということをしっかり把握し、そのような技術をいかに育てて、あるいは守っていくかという課題に取り組んでいくことが不可欠であるというふうに考えております。このような中で、先進技術を含む安全保障、経済安全保障全般に関する各種情報の収集、分析、防衛省・自衛隊の保全が重要である。それ双方を所掌する職として、令和3年度概算要求においてはですね、防衛政策局調査課に経済安全保障情報企画官(仮称)を新設することにしておるところでございます。しっかり政府全体ともですね、各省庁とも協力しながらしっかり取り組んでまいりたいと思います。

Q:敵基地攻撃能力について伺います。6日に大臣テレビに出られた際に、国際法を遵守するというふうに述べておられました。自衛権の発動には窮迫性・侵害・必要性・均衡性の要件を当然満たす必要がありますけれども、イラクの大量破壊兵器の例もありますが、どのようにして自衛権行使の正当な根拠が担保されると証明し得るのか、また根拠が覆った場合、その責任はどのように取られるとお考えですか。

A:ミサイル阻止の方策については、確か番組の中でもわが国の憲法の範囲内ということ、それと国際法の遵守ということ、専守防衛ということ、こういったことを述べさせていただいたものというふうに思っています。いずれにしても国際的な状況が今非常に大きく変化している中でありますけれども、先ほどの繰り返しになりますけれども、国際法の遵守ということが求められているかというふうに考えております。しっかりそういったことを守りながら、わが国の防衛を固めていくということだと思います。

Q:ミサイル攻撃の着手段階で攻撃した場合に、受けた攻撃と釣り合う均衡性が確保されているのか、この確認というのはどのように取るお考えですか。

A:わが国に対する武力攻撃が発生した場合とは、他国がわが国に対して武力攻撃に着手した時であるというふうに解しているわけでございますが、どの時点で武力攻撃の着手があったかを見るかについては、その時点の国際情勢、それから相手方の明示された意図、攻撃の手段、対応によるものであって、個別具体的な状況に即して判断すべきものと、このように考えているところでございます。いわゆる敵基地攻撃が法理上あり得ることについては、武力攻撃発生時点だけではなくて、武力攻撃が発生した後についても論じられてきた経緯もあるわけでございます。

Q:国際人道法上、軍民の区分原則があるわけですけれども、本当に実践することは可能だというふうに大臣は考えておられるのですか。

A:状況をしっかり把握することが何より大切なのだろうと思います。その上で、国際法の遵守、憲法の遵守、それから専守防衛、こういう考え方の下でわが国をしっかりミサイルから守っていくということだと思います。

Q:冒頭発言のありましたスクランブルの数についてなのですけれども、前年同期と比べて中国機に対するものが大きく減っているかと思いますが、防衛省としてはその背景・要因についてはどのように分析されているのでしょうか。

A:数は確かに前年同期比で言いますと減少しておりますけれども、まずは絶対数においても少ないとは言えません。中国軍の活動が活発に行われている、継続していることは申し上げることができるのだと思います。その上でどのような意図かということについてこの場で私が申しあげるのは控えさせていただきたいと思います。

Q:馬毛島へのFCLP移転計画について伺います。先日、地元の西之表市長が反対を表明をして、昨日、大臣の方から地元説明会を開きたいという意向が示されましたけれども、地元の方では、同意なしでも計画が進んでしまうのではないかといった不安の声も上がっています。この地元の同意の必要性や重要性について、どのようにお考えでしょうかということと、説明会で住民の方々に特に理解してほしいことがどういったことか、お考えをお聞かせください。

A:まず、昨日もお答えしたことではありますけれども、市長からのコメントがございましたことは承知をしております。その中で市長から様々な観点があったとは思いますけれども、市長のそれぞれの御指摘については、真摯に受け止めてまいりたいと考えております。その上で、馬毛島における自衛隊施設の果たす役割、これについては大きなものがあると思います。わが国の南西防衛に対して、また、FCLPを実施することになれば日米同盟という観点からも大きく貢献する重要なものと思います。そういったご意見、観点から、今後、住民の皆様中にも様々なご意見をお持ちの方がおられると思います。そういった方々の意見を聞き、また、こちらからも更に内容について御理解を求めるためにも説明会を実施させていただきたい、というふうに述べたところでございます。

Q:様々の意見があるということだったんですけれども、もちろん賛成する人もいまして、周辺自治体と賛否の溝が深まっている現状もありまして、大臣の地元には岩国基地もあって、こういった基地を巡る賛否の分断とかというのはよくわかるところがあると思うのですけれども、こういう分断の解消だとか緩和にどういった取り組みが必要だとお考えでしょうか。

A:やはり自衛隊の活動に対するきちんとした御理解をいただくということ、ご理解を得るために必要な説明をしっかりを行うということです。その上で、地元の皆様と自衛隊側との相互理解を深めるということ、そのことによってですね、分断というものを融和させていくという努力というのは常に行っていかなければいけないと思います。

Q:今日は敵基地攻撃論について確認したいと思います。よろしくお願いします。先日、ポンペオ国務長官が来日され、対中国を意識した同盟国に対する防衛費の増大とか、同盟を強化するということを求められたようです。いわば東アジア版NATOと言いますか、かなり強力なメッセージを感じました。その中で、敵基地攻撃能力の保有、日本で報じられているというのも位置付けられているのかなと思います。今日は、倫理的な問題とか、政治的な問題というより、実践的な問題として、いくつか御教示いただきたいと思います。よろしくお願いします。まず、攻撃すべき対象となる敵国のミサイル基地の数というのはどのくらいになるのでしょうか。陸上、海上、水中、総合的に御教示ください。それから、それに対して日本側のミサイル拠点はいくつ、今と今後。それから、一度に何発のミサイルを撃って攻撃ができるのかということ。それの実現に有する保有ミサイルの数であるとかこれから見込まれている予算といったこと。それから、もちろん一撃した後、ミサイルを撃った後、当然報復攻撃があります。最初の攻撃で敵国の基地を殲滅するということは可能なのでしょうか。あるいは、不可能な場合、その残存戦力というのはどのように見積もっていらっしゃるのかということ。それから最終的にそういう攻撃の応酬があった後ですね、日本にとっての勝算というのはどのように見積もればいいのかということ、以上よろしくお願いします。

A:まずですね、数等の情報についてはですね、詳細についてはお答えしかねるところでございます。防衛省の事務方にお問い合わせをいただきますとともに、お答えできることは限られていると思います。そもそも相手方のミサイルを抑止をする方策というものを考えておりますが、これはあくまでもミサイル撃ち合いだとか、報復合戦の段階ではなくて、相手からミサイル攻撃の意思をなくさせるような我々の防衛というものをしっかりとっていくことが重要なんだと思います。

Q:ミサイルの阻止というような言い方をされるのですが、敵基地攻撃能力というのは、ほぼ同等と考えてよろしいでしょうか。

A:ミサイル阻止といった場合は、色々な方策がその中に含まれてくると思っております。そういった中で、わが国としてですね、日本国憲法の範疇で国際法を遵守していく。そして専守防衛という根本的な考え方の下で、どういったことが取れるか、こういったことをしっかり考えていかなければならないと思っております。

Q:つまりミサイル阻止というのは、敵基地攻撃能力の保有を包括したものであるということになりますか。

A:それはちょっと違うと思うのですけれども、ミサイル阻止という広くミサイルを撃たせない方策ということであります。

Q:具体的にはどのような方策を。

A:これは色々な形があると思いますけれども、一つ一つお答えするのは差し控えさせていただきます。

Q:ポンペオ長官が来日されたということで、やはりどうしても対中国ということが意識されてくるわけでございますけれども、敵国、仮想敵国というのは中国と考えてもよろしいのでしょうか。

A:我々はそういう立場をとっておりません。ポンペオ長官の御発言についてはもちろん承知しているところでございますけれども、アメリカがどのように考えているか、これはアメリカの考え方であると思います。我々は我々の対中国政策というのもございます。安全保障面で、日米で連携を取っていかなければいけない部分はしっかり連携を強めていかなければいけないという観点からも、米国との関係強化を図っていかなければいけないというふうに思います。

Q:日本の数的なことは申し上げられないということだったのですけれども、日本がこれから保有していくミサイルの数とその見込まれる予算というのはどうしても出てくるものでございます。それだけでも教えていただけないでしょうか。

A:予算は先般概算要求でもお示ししたところでございますけれども、わが国の防衛に必要な予算を、金額を要求してまいりたいと思います。

以上