防衛大臣記者会見

日時
令和2年9月25日(金)11:33~11:53
場所
防衛省A棟11階第1省議室
備考
岸防衛大臣閣議後会見

1 発表事項

 新型コロナウイルス関連についてでありますけれども、前回の会見以降、2名の隊員が新たに新型コロナウイルスに感染していることが確認されました。これで本日までに、合計131名の自衛隊員が新型コロナウイルスに感染したことが確認されております。なお、新たに感染が確認された2名の隊員は、先般の台風10号に係る災害派遣には従事しておりません。今後も防衛省・自衛隊は、医療関係や医療機関や保健所等の関係機関と連携し、感染拡大防止に向けた方策を適切に講じてまいります。

2 質疑応答

Q:イージス・アショアの代替案について伺います。岸大臣を含め、防衛省は昨日、自民党、公明党に洋上案で進めていくという説明をされました。自民党の部会では、慎重意見、反発意見、様々出ました。こうした意見を踏まえて、今後方針を変更する可能性があるのか、それとも、洋上案のまま年内にこのまままとめる方向なのか、その点伺えればと思います。

A:イージス・アショアの代替案については、今お話しがありましたとおり、自民党の部会でもお話をさせていただいたところであります。現時点では今後のスケジュール等、代替案の詳細、決定事項等について予断をもってお答えすることはできませんが、菅総理から私に対しましても、本年末までにあるべき方策を示し、速やかに実行に移すよう御指示をいただいたところでありますので、鋭意検討を進めていきたいと思います。具体的には、今お話しがありましたとおり、イージス・アショアの構成品を洋上のプラットフォームに搭載する方式で、引き続き、米政府や日米の民間事業者も交えて、技術的実現性、搭載機能及びコスト等について詳細に検討を進めてまいりたいと思いますが、まだ最終的に決定をしたということではありません。鋭意検討を進めていくということです。

Q:アショア関連で、もう一点伺います。一部報道で、米国から洋上案について合理的でないという指摘があったと報道されていますが、これに関して、事実関係を岸大臣から伺えればと思います。

A:配備停止を発表して以来、現在までの間、米国防省との間では毎週1回程度の協議を重ねております。米側には、日本が現在検討している代替案の状況について、逐次共有を図っているところでありますが、その際、米国側から洋上案について、合理的でないといった趣旨の指摘があったとの事実はありません。現在も、日米間で一致協力して洋上案の調整・検討を実施しているところであります。引き続き米国とは緊密に連携してまいりたいと思います。

Q:話題変わりまして、安倍前総理が先日19日、靖国神社を7年ぶりに参拝されました。岸大臣の実のお兄さんになりますけれども、この安倍総理の参拝に関して、加藤官房長官は私人である個人的な参拝であると、政府として言及すべきものではないということを会見でおっしゃいました。岸大臣の受け止めと在任中に岸大臣が靖国神社を参拝される可能性があるかについて、お考えをお聞かせください。

A:安倍前総理が参拝されたことは、私も存じ上げておりますが、あくまでも私人である前総理の個人的な参拝であると承知しております。これに関しましては、個人の信条の自由に関する問題でもあります。防衛大臣として言及すべきものではないと考えております。また、私自身も靖国参拝につきましては、国内外を問わず、国のために尊い命を犠牲にされた方々に対して、ご冥福をお祈りするということは当然のことだろうというふうに考えておりますが、今後の参拝につきましては、適切に個人として判断していきたいと思います。

Q:アショアの代替案に関連してお伺いさせていただきます。昨日示された海上案の中には、明確にイージス艦を増勢するというような形ではなかったと思うのですけれども、自民党部会等々ではですね、イージス艦を増勢したら良いのではないかという意見もあったと思うのですが、大臣御自身、新型のイージス艦の増勢についてどのようにお考えになっているかということと、後、アショアで使う予定であったSPY-7を、イージス艦を増勢する場合はこのSPY-7を使うことになるのかという点を伺えますでしょうか。

A:まず洋上案につきましては、こちらからも、様々な案があるということをお示しさせていただいた上で、部会の中からも様々な議論がございました。その中で、イージス艦ということについて、御意見が分かれたということも承知をしております。そういったご意見を踏まえて、今後、検討を進めていきたいと考えております。SPY-7につきまして、既に米国等と契約済みの構成品ということでございますが、そうしたことも、代替案の決定後に、可能な限り速やかに早期に運用を開始するという必要性を踏まえまして、この契約済みの構成品について利活用していくということで、合理的ではないかと思っております。契約を維持していく考えです。

Q:それにつきまして、洋上案ですと、元々陸上のイージス・アショアが常時24時間365日常時監視するということで地上に決まったと思うのですが、洋上案ですと、やはり常時監視というのは気象条件等々で難しくなると思うのですが、陸上に戻すという選択肢、洋上を中心に検討していくということだと思うのですが、陸上に戻すという選択肢は、もうないということなのでしょうか。

A:洋上案を中心に検討を進めていくということでございます。隊員に対する負担ということでございましたけれども、これまでありましたイージス艦8隻体制との組み合わせ、こういった形で対応することによって、イージス艦の任務所要も相当減少できるのではないか、負担を減少させることができるのではないかと考えております。

Q:ハンコの件で伺います。河野行革担当大臣が全府省にハンコの廃止を要請しましたが、この受け止めと、防衛省等所管されている省庁ではどのような対応をお考えになっているでしょうか。

A:報道については承知をしております。この見直しにつきましては、本年4月以降、政府の方針の下で、防衛省においても各種の見直しを進めてきているところでございます。真に必要な場合を除き押印を廃止するとの方針の下、順次進めていきたいと思います。具体的には、緊急な対応として、本年5月以降、経済団体から要望のあった押印の省略については、原則省略として対応しており、それから制度的な対応についても、原則、本年秋に方向性を取りまとめるとの方針で作業を進めていました。今般、河野大臣から改めて方向性が示されましたので、防衛省としても鋭意検討、対応を進めていきたいと思います。

Q:小野寺元防衛大臣をはじめとする自由民主党安全保障調査会ミサイル防衛に関する検討チームが、国民を守るための抑止力向上に関する提言を、今年8月4日に安倍前総理に提出されております。その中で、相手領域内でも弾道ミサイル等を阻止する能力の保有等を含めて、新たな取り組みを求めていくとしています。小野寺元防衛大臣は3年前、2017年の防衛大臣就任会見で、わが国独自の敵基地反撃能力の保有の検討を進めたいと述べたことがあります。一方で、その次の岩屋元防衛大臣は、今年8月20日に公開されたインタビューで、敵基地攻撃能力の保有に一足飛びに進むことは拙速だと述べていらっしゃいます。こうしたいろんな発言があるわけなのですけれども、河野太郎前防衛大臣は、9月4日の定例記者会見で、敵基地攻撃能力の議論等はどこでもしていないとおっしゃっております。この返答は明らかに事実に反しているのではないかと私は思うのですけれども、岸防衛大臣は、河野前防衛大臣の発言を事実だと認識していらっしゃいますか。それをまず1つ、御認識をお伺いしたいということです。そしてもう1つ、岸防衛大臣は敵基地攻撃能力の保有について、小野寺元防衛大臣のように積極的に推進を検討していきたいというお立場でしょうか。それとも、岩屋元防衛大臣のように、もう少し慎重であるべきだというようなお考えをお持ちでしょうか。どちらの認識をお持ちかお聞かせください。

A:いわゆるミサイル阻止能力については、与党の中でも様々な議論が行われているのは承知をしているところです。いずれにいたしましても、防衛省として9月11日に内閣総理大臣談話及び今般の菅総理のご指示を踏まえまして、憲法の範囲内、そして国際法を遵守しつつ、専守防衛の考え方の下で、厳しい安全保障環境においてわが国の平和と安全を守り抜く方策について検討を進めているところです。これまでの前防衛大臣の御発言について逐一コメントすることは差し控えさせていただきたいと思いますが、大臣の発言につきましては、一貫して従前の政府答弁を踏まえたものと考えているところです。

Q:ただ、今年の場合は防衛大綱の改定という問題が差し迫っております。5年毎の防衛大綱の改定です。これに敵基地攻撃能力の問題は反映されていくのでしょうか。

A:安全保障環境は非常に速いスピードで変化している状況であります。その中でわが国と国民をしっかり守っていくために、わが国の防衛力はどうあるべきか、ミサイル阻止能力を含めて、しっかり検討していかなければいけないと思います。

Q:反映するかどうかはまだわからない。

A:これはまた、これからのことでございます。

Q:米軍の作戦との関係も出てくると思うのですが、そのあたりの調整はどのようになっているのでしょうか。

A:日米間は、随時情報共有しながら、日米同盟に基づいて進めていきたいと思っています。

Q:東アジアの安全保障環境の変化を受けて米軍の戦略も変化していると聞きます。内容もスタンド・アウト構想からスタンド・イン構想へ変わってきていると思われますが、このスタンド・イン構想とわが国の自民党部会の中で出てきている敵基地攻撃能力との関連はあるのでしょうか。ないのでしょうか。

A:詳細なことにつきましては、ここでお答えすることは差し控えさせていただきたいと思います。

Q:先ほどのハンコの問題に関連して、昨日、河野行革担当大臣が、将来的には書類とかFAXでのやりとりも、原則廃止していきたいと言っていて、各省庁連携しながら、これから行っていくと思うのですけれども、今、大臣、職員の方を見てもかなり紙文化は残っているなというふうに防衛省では感じるのですけれども、これについて大臣ご自身、どうやったら紙文化が減っていくというふうにお考えでしょうか。

A:これまでも随分、このペーパーレス化についてはですね、長年議論をされてきているところでございます。国会の方でも様々な議論をされてきました。今回のハンコ廃止については、特に行政文書の中で、例えばハンコを押すためだけに職員が登庁することも見られているというお話しであります。そういう無駄と排除していきたい、こういうことでありますから、そういうことが重なっていけば、ペーパーレスということも進めやすくなると思います。

Q:関連で、例えばタブレットを使って、答弁なりを整備するというやり方もあると思うのですけれども、大臣自身は、それを推進していくというお考えはあるのでしょうか。

A:出来る限り、それは進めていきたいと思います。どうしても紙で残していかなければいけないものもございます。そういったものと、きっちり検討しながら、出来るところまでということでございます。

Q:靖国神社の参拝で関連してお伺いしたいのですが、先の日中戦争は、日本の侵略戦争だと大臣はお考えでしょうか。

A:これは、これまでの政府としての対応もございます。いずれにしても、歴史を真摯に考えていかなければいけないということはあると思います。靖国神社の参拝については先ほども申しましたとおり、私としても、適切に判断をしていきたいと思います。

Q:繰り返して聞きますが、日中戦争は日本の侵略戦争だと大臣はお考えでしょうか。ショート・アンサーでお答えください。

A:これはなかなか、簡単にはお答えしにくい問題だと思いますので、ここでは差し控えさせていただきたいと思います。

Q:なぜ差し控えなければいけないのですか。重要な問題だと思うのですが。

A:重要な問題だからこそ、差し控えさせていただきたいと思います。

Q:防衛大臣として、はっきりお答えになる必要があるのではないでしょうか。

A:過去の歴史をしっかりわが国として振り返ることは、やはり必要だと思います。

Q:日中戦争は日本の侵略戦争だとお考えでしょうか。

A:政府の方針を踏まえているところでございますので、今回この場でお答えすることは、繰り返しになりますけれども、差し控えさせていただきたいと思います。

Q:差し控える理由を教えてください。

A:非常にデリケートな問題でもありますし、このようなところでお話しすることが適切ではないと考えております。

Q:親台湾、親台派といわれている防衛大臣が、日中戦争が侵略戦争かどうかということを答えないというのは、結構影響が大きいと思うのですが、いかがでしょうか。

A:台湾との関係と質問の趣旨とは、直接関係ないと思います。

Q:でも、おじいさんの岸信介さんと、蒋介石さんとの関係からさかのぼって、大臣はおじいさんのことを一番尊敬する政治家として挙げているわけですよね。

A:そうです。

以上

下線部:修正事項(米国→米国等)