防衛大臣記者会見

日時
令和2年6月26日(金)11:01~11:29
場所
防衛省A棟11階第1省議室
備考
河野防衛大臣閣議後会見

1 発表事項

 なし。

2 質疑応答

Q:イージス・アショアの配備プロセスの停止に関して伺います。今後、新たな安全保障戦略の議論の中で、敵基地攻撃能力についても議論がなされるとのことですが、一方で、北朝鮮は近年、弾道ミサイルの発射能力の向上を図り、特に発射台付きの車両等からミサイルを発射するなど、隠密性を高めてきています。こうした北朝鮮がミサイル発射能力を向上させる中で、今回、敵基地攻撃能力を議論する意義について、大臣がどのようにお考えなのか、お聞かせください。

A:日本の安全保障政策の議論は、当然に憲法あるいは国際法といったものの枠内で行われる。これは当然のことだと思います。その上で、総理、会見の中で、国家安全保障会議で徹底した議論を行います、という趣旨の御発言をされておりますので、徹底した議論をやっていくということになると思います。自民党の方は、小野寺調査会長以下、イージス・アショアの代替についての議論がスタートすると聞いておりますし、公明党の方でも、そうしたイージス・アショア、こうした決断を受けての御議論をしていただけるというふうに思っております。今後、様々な議論が行われていくと思いますが、様々な用語が飛び交っておりますけれども、人によって用語の意味するところが違います。そこはやはり用語の定義を明確にして、何を意味しているのか、そこは共通認識を持った上で、議論をしなければいけないと思っております。防衛省といたしましては、ミサイル防衛、あるいはIAMDに関して、イージス・アショア以外にも様々なオプションがあるわけですから、そうしたオプションをテーブルの上に載せて、一つずつ長所・短所をしっかりみていかないといかんと思っておりますし、防衛省として、議論についてですね、国民の皆様に分かり易く、国民の皆様が議論にしっかりと参加していただくような情報発信をしていかなくてはいけないと思っております。

Q:話変わりまして、24日に、大分県九重町の民家に陸上自衛隊の車両が突っ込むという事故が発生したのですが、この事故についての大臣の受け止めと、今後の対応についてもお聞かせください。

A:24日に、自衛隊のトラックが民家に突っ込むという事故が起きました。大変申し訳なく思っております。先方にお怪我はありませんでしたけれども、かなり家屋へのダメージは大きいと聞いております。その晩、8時過ぎになってしまいましたが、岩田政務官に先方に赴いてお詫びをしてもらいました。岩田政務官、その次の日の朝、九重町長にもお目に掛かって、お詫びをいたしました。防衛省・自衛隊として、誠心誠意、償いをしなくてはいかんと思っていますので、先方に御迷惑、これ以上かかることの無いようにしっかり対応していきたいと思います。

Q:冒頭ありました、安全保障の議論について、用語の定義を含めてですね、共通の認識が必要で、そうした共通認識に基づいた議論をしていくと。その上で国民に分かり易く、情報発信をされていくということだっだのですけれども、具体的にですね、どのような情報発信をして、国民の共通認識を醸成というかですね、その議論を進めていくか、今のところのお考えを教えていただけないでしょうか。

A:やはり、議論をする前提となる、どのような脅威に対処しなければいけないのか、それから様々な技術がありますので、この技術のことも分かり易く、御説明をする必要があるのかなと思っております。どういう議論になるか、防衛省、NSC、与党それぞれ色んなところで議論が行われると思いますが、なるべく、国民の皆様に読んでいただいて、基礎的な議論に関する知識がきちんとお伝えできる、基本的な御認識を持っていただけるような情報発信をまずしていかないといけないというふうに、今考えております。まだ、具体的に確固たるものを詰めているわけではありませんが、防衛省として、そうしたことをやっていかなければいけないかなというふうに考えています。

Q:一方ですね、アショアを断念したことで、新たな代替手段としてですね、できるだけ早く見つけていかなければいけないという中で、共通認識の醸成であったりとか、議論にかなり時間がかかるのではないかと思うのですけれども、その辺りどのようにお考えでしょうか。

A:そもそもイージス・アショアの配備は、計画が進んだとしても、しばらく時間がかかるわけで、その間、イージス艦とかPAC-3で対応するという体制がとれているわけでございますから、ミサイル防衛そのものについて、御心配いただく必要はないというふうに思っております。NSCでも議論をしてまいりますので、このNSCの議論のタイミングにあわせてですね、我々もそうした情報発信はしていかなければいかんというふうに思っております。

Q:イージスの代替地の関連でですね、昨日の公明党の会合の冒頭にですね、大臣、山口むつみ演習場、新屋並びに再調査している20カ所、この他に秋田、山口両県に代替地になり得るところがあるかということで、代替地を出すのが困難と判断したと説明されましたが、むつみと東北の20カ所の他にも代替地を調べられたのでしょうか。

A:非常に大雑把ではありますが、なり得るところがあるだろうか、ということで配備先を探す、あるいは見つけるのは非常に困難、そういう認識を持っています。

Q:それは秋田、山口県内の例えば何カ所で、いつから調べられたかというのは。

A:そんな何カ所云々というカチッとしたものではありませんが、当然、20カ所に配備をしませんと言えば、それ以外はという御質問が出てくるのは想定されましたので、それ以外もありません、というか見つけるのは困難、そういうことです。

Q:例えば、山口の見島とかですね、山形県にも飛島とか離島がありますけれども、それも含めて調べられたでしょうか。

A:そうしたところに配備をするのは、極めて困難でございます。

Q:イージス・アショアの断念した理由が、ブースターの落下の危険性についてでしたけれども、PAC-3についていうと、今そこの防衛省のグランドにあるPAC-3を迎撃で撃った場合、射程からいって、破片は東京都内に必ず落ちる訳で、相手のミサイルと自分の破片が、更に同時2発撃つわけですから、外した方の一発というのは、必ずどこかに、日本国内の方向からいって、本土内に落ちると。それについては、どのように整理しますか。

A:PAC-3は移動して展開するものでございますし、最後のターミナルのフェーズでございますから、やはりミサイルの被害と破片の被害、そうしたことを比較してPAC-3の展開をするということでございます。

Q:破片が落下する、あるいは、1発当たらなかった方のミサイルが落ちる被害というのは、やむを得ないものという理解ですか。

A:ターミナルの段階ですので、そういうふうに判断しております。

Q:アショアに関連して、既に大臣、支出済みの金額が196億円というふうに国会等で答弁されているのですが、196億円というのは測量の調査費であったり、アメリカからの情報の取得費、これはFMSでしたが、ということで支出しているので戻ってくる性質の費用とは、私は考えていないのですが、これは返還をされないという認識を大臣は持っていますか。

A:事務的な情報を取得するためのコストとか、そうしたものについては、これは日本側の負担でございます。そうした判断でございます。

Q:契約額全体で言いますと、1,787億円だったと思いますが、このうち、FMSに関する契約というのはいくらになるのでしょうか。

A:今、手元に数字がありませんから、後ほど事務方に答えさせます。

Q:この1,787億円というのは、既に契約を結んでいるということですが、解約に起因する費用というのは購入国側、今回で言えば日本側の責任となるのかという、つまり一般的な普通の契約で考えると、契約する段階で契約書にサインして、また、契約書又は附属書に解約に関する取決めについて明記されていることが一般的かと思いますが、今回解約に関する取決めというのはどうなっているのでしょうか。

A:契約書に書いてあると思いますので、それは調べて正確なところをお答えしたいと思います。

Q:FMSの支出額は、支出が終わった額、125億円ですね。FMSの制度上だと見積額を最初に払って、契約が履行された後に実費精算するということになっていますが、そうすると既に支払っている125億円プラス、また追加で求められれば払わなければいけない、膨らむという理解でよろしいでしょうか。

A:今後、契約したものについてどうしていくか、日米で協議をしていきます。その中で決まっていきます。

Q:話変わりますが、7月1日付で防衛政策局に課長級の参事官を新設されます。この狙いと、今回こういう増設したことについて、どういうことがあるのか教えてください。

A:これまで防衛省は、日米をやる部署とそれ以外の国際関係をやる部署とを大きく分けておりました。防衛省・自衛隊、防衛交流・防衛協力が進んでいく中で、国際政策課の負担がかなり過重になってまいりましたので、やはり分けて人員を増強する必要があるだろうということと、自由で開かれたインド太平洋というところに少し重きを置く、そういうことで太平洋の島嶼国とASEANをとりあえず切り出して、自由で開かれたインド太平洋というビジョンに向けて、少し特化した部署を作ると同時に、全体の負担を軽減する。そういうことでございます。

Q:島嶼国とASEANを主にみるということでよろしいでしょうか。

A:現時点で島嶼国とASEANを想定しております。

Q:先程の離島の配備の件で、極めて困難と。昨日、大臣の特派員協会での会見で落下物のことをすごいおっしゃっており、離島は6,800ぐらいあるんですね。落下物をすごい気にするのであれば、そっちのメリットの方が多いと気がするのですが、先ほど極めて困難な具体的内容が一つ。あと、先ほど大臣、国民に分かりやすく防衛政策の議論を示す重要性をおっしゃっておりましたが、その延長線で世界にも分かりやすく伝えてほしくて、昨日僕、大臣の会見で記事にしたんですが、ジェーンズのミサイル防衛の専門家とかも落下物気にしてミサイル防衛をやるというのはちょっと理由としてどうなのかな、ということをおっしゃっている人が多くて、例えば、第2の広島、第2の長崎みたいな北朝鮮の核兵器で被害を負うかもしれないときに、落下物を気にしているという状況は、やはり二次的な、三次的な感じはしないんじゃないかと。それで、大臣、昨日テレビでもF-35よりもトイレットペーパーどっちにするか、というこれからの防衛政策の予算の話をすごい話されていたので、やはり落下物は表面的な理由で本当はイージス・アショア、コスパを含めて北朝鮮の飽和攻撃とか色んなことを含めて考えて決断して、ただし、落下物で正面突破を図っているんじゃないかという気がしているのですが、そういう疑念があることについてどう思いますか。離島と世界への説明について。

A:最初の質問は、離島について言えば防護範囲、あるいは工期といったことを当然検討する際考えなければなりません。そうした観点で考えて、非常に困難、極めて困難という判断をしました。二つ目の質問は全くそうしたことはございません。

Q:先ほど、大臣は国民にも分かり易く議論に参加したり説明をするということでしたけれど、今まで防衛省、中東派遣ですとか、防衛省・政府は中東派遣であったりアショアの選定であったり配備であったりで、そういう国民が参加するような議論だったりをしてこなかったと思うのですが、そういったやり方とは、今回違う説明の仕方をしていくということでしょうか。

A:中東派遣についても、国民の皆様に御理解がいただけるような説明をしてきたと私は思っております。

Q:内容を閣議決定してからそういった説明はされたということだと思うのですけれども、今回は、決定する次のミサイル防衛であったり安全保障戦略は、決定する前に説明するということですか。

A:決定する前の議論も当然に国民の皆様に御理解をしていただきたいと思っておりますし、決定した後もこの決定がどういう意味を持つのかということは、やはりきちんと説明をする必要があると思います。

Q:オプションを示すというのは、こういったオプションの中からこうなりました、という説明ではなくて、こういったオプションがあります、という段階からある程度示すということですか。

A:ミサイル防衛ということについて、様々選択肢があるのだろうと思います。そういう選択肢についても国民の皆様に理解をしていただく、認識をしていただくというのは重要なことではないかなと思っております。

Q:関連して伺います。国民に分かりやすい議論ということで、一番議論がし易い場というのは国会かなと思うのですけれども、国会での安全保障委員会、あるいは外交防衛委員会でもこの議論を夏にもしたいというようなお考えを示されているのでしょうか。

A:参外防は、予定されていると思いますし、衆安についても国会で御議論をいただいていると思います。

Q:確認なのですが、このオプションを示すというのは、ミサイル防衛に限った話という理解でよろしいですか。

A:オプションと言いますか、世の中で色んなことが議論をされていたり、色んなことが行われているというのもありますので、そのしらみつぶしにそのオプションが1,500あります、といったらそれはさすがに無理だと思いますが、なるべく分かりやすくやっていきたいと思っております。

Q:分かり易く説明するに当たって、例えば、具体的な攻撃の状況であるとか、そういった場面分けみたいなものを想定されているということでしょうか。

A:どうしていくか考えたいと思います。

Q:議論は党の方でもやるし、NSCでも並行してやるわけですから、ここに防衛省として様々な情報をできるだけ出していきたいと繰り返しおっしゃっている。NSCの議論というのは中々今まで開示されることはありませんでしたし、全て結果が出てからということは通例ですから、そこの部分にも大臣として、きちんと途中経過を防衛省の責任の下、明らかにしていくというお考えでしょうか。

A:NSCの議論は、官房長官が一元的に、対外的に発表されることになっております。防衛省としては、そこに従いたいと思いますが、世の中広く一般的にミサイル防衛というものについて、様々な意見があったり、議論があったりということを防衛省として紹介をするということはできるのではないかと思います。

Q:とりもなおさずNSCの議論と直結してくると思うのですけれども、その広報の対応、発表の対応、官房長官が統一的にやることとは抵触しない形でやるということですか。

A:NSCの議論について防衛省から発信することはございません。

Q:そうすると議論というものが国民に開かれて、理解を深めるという形には程遠いような印象も持ちかねないと思いますが。

A:一般的にミサイル防衛の議論というのは行われておりますので、そうした一般的な議論の中身、あるいはそこで議論されている技術、理論、そういうものを紹介することはNSCの議論に抵触しないと思います。

Q:国民に分かりやすくという説明のところで、現在の安全保障環境や選択肢について示す、ということを大臣はおっしゃいましたけれども、一方で、大臣は言葉の使い方が人によって違うという言い方をしていましたが、そこについても防衛省として、こういった言葉はこういう意味をするんですよということを示そうとお考えなのか、あくまでも安全保障環境と政策的なものについて示そうというものなのか、そこはどういう整理をされているかというのをまずお聞かせください。

A:防衛省としてこういう意味で使っています、ということは申し上げる必要はあるかなと思っておりますが、それぞれ色んなところで色んな議論が行われると思いますので、色んな方がどういう意味で使っているのかというのが非常に曖昧に使われているところがある。それを私は危惧しておりますので、議論する際には用語の定義はこういうことだよね、ということを分かりやすく示して議論してほしいなと思っております。

Q:分かり易くということなのですが、先ほど、PAC-3のところです。大臣はターミナル・フェーズなのでやむを得ないという御説明をされましたが、中々ターミナル・フェーズはやむを得ないというのは全然わからないと思うので、もう少しどういう理屈で、なぜアショアはダメだけどPAC-3で都心で発射されても大丈夫なのか、ということを御説明していただけますか。

A:そういうことができるようにしていきたいと思います。

Q:ミサイル防衛というのは、国民の命をミサイルの脅威から守るという趣旨であると思いますが、先ほど質問がありましたように、ターミナル・フェーズだからしょうがないということが防衛大臣として、安全保障を司どる防衛大臣として、そういう説明と前回のアショアのブースターの落下の危険があるからアショアやめるんだという説明とですね、整合性が必ずしも合ってないようにも聞こえるんですが、その点はどのようにお考えでしょうか。

A:イージス・アショアの配備については、これは地元にブースターを演習場内に落下させますという御説明をしてまいりましたので、そこはしっかり守らないと、地元の御理解・御支援をいただけないわけですから、そこについての判断でございます。

Q:つまり、地元に元々そういうふうな説明をしてなければ、ブースターの落下というのは、そもそも問題になっていなかったということでしょうか。

A:防衛省としては、国民の平和な暮らしを守る、そのための防衛省・自衛隊でございますから、そういう説明をしているいないに関わらず、様々な住民の安全性をどう維持するかということは常に頭に置いておく必要があると思います。

Q:落下物の件を非常に心配されていて、防衛省さんの方で、海外で落下物を理由にミサイル配備とか中止になった例とか承知しているのでしょうか。というのも、落下物でいくと世界の軍当局の人は、日本何言ってんだと、ガラパゴス化しているのではないか、と思う人もいると思うんです。そうではなくて、例えばハワイのレーダーとか、地元の反対とかで、しばらく配備が遅れたりしている例は確かにあるじゃないですか。落下物の件で、似たようなこと、こういうのあるじゃないのかって、もし把握していたら教えてください。

A:今は、私、把握していません。

Q:中国の外務省が、敵基地攻撃能力の議論について、安全保障の政策の限界を破ろうと企んでいると批判しています。これについての受け止めはいかがですか。議論だけです。

A:特に一々コメントする程ではないと思います。

Q:専守防衛の約束を真剣に履行するように促す、というふうに牽制をしています。これについて、中国からの潜水艦もですね、太平洋側へ進出してきたり、そういう状況の中、防衛大臣としてどのように感じていますか。

A:一々コメントする必要がないと思います。

Q:再調査なんですけれども、先日は結果の取扱いは考えていないということでしたが、これの公表するお考えはありますでしょうか。

A:すみません、まだ考えていません。

Q:新屋、むつみ含めて、決まった経緯ですね、配備候補地に決まった経緯、導入のプロセス等について、大臣が個人的に検証を行いたいというお考えだったと思いますが、この結果を公表するということはお考えでしょうか。

A:日米の間の協議は極めて技術的なものも含んでおりますので、どのようにするかは検討していかなければいけませんし、アメリカ側の理解も必要になってくると思いますので、まだおしまいをどうするか、そこまでいっておりません。

以上