防衛大臣臨時記者会見

日時
令和2年6月15日(月)17:30~17:52
場所
防衛省A棟1階エントランス
備考
イージス・アショアの配備に関する河野防衛大臣臨時会見

1 発表事項

 山口県と秋田県に配備することで進めてきたイージス・アショアでありますが、コストと期間に鑑みてイージス・アショアの配備のプロセスを停止をいたします。具体的には、山口県のむつみ演習場の地元の皆様に、イージス・アショアのブースターを確実に演習場の中に落下させる、そういう御説明をしてまいりました。これまで米側とソフトウェアの改修で、これを実現すべく色々協議を行ってまいりましたが、今般、ソフトウェアの改修だけでは確実にむつみ演習場内にブースターを落下させるということが言えないと。ソフトウェアの改修に加えてハードウェアの改修が必要になってくる、ということが明確になりました。SM-3ブロックⅡAの開発では、日本側が1,100億円、アメリカもおそらく同額以上を負担する、それで12年の歳月がかかりました。新しいミサイル開発をするとなると、同じような期間、コストがかかるということになろうかと思いますし、ミサイルの形状が変われば当然にVLS垂直発射装置も改修が必要になる可能性がございます。そうしたことを判断し、そのコストと期間に鑑みて、イージス・アショアを配備するプロセスを停止し、これはNSC国家安全保障会議に防衛省として、報告をした上で議論をいただいて、その後の対応を考えていきたいと思っております。

2 質疑応答

Q:配備のプロセスを停止するということなんですが、これは白紙撤回ということなのか、少し違った意味合いなのか、そこを御説明いただけますか。

A:これは国家安全保障会議でも議論をしたことでございますので、今、防衛省としては、配備のプロセスを停止し、国家安全保障会議にその旨報告するということでございます。議論いただいた上で、その後の対応について考えていきたいと思います。

Q:アショアの導入に関しては、イージス艦側の負担を軽減するであるとか、テポドンやノドンへの対応ということで進めてきたと思いますが、今回プロセスを停止する、配備を断念することだと思いますが、今後の対応についてはどのようにお考えでしょうか。

A:当面、イージス艦でこのミサイル防衛については対応するという措置を続けることになります。イージス艦がミサイル防衛でかなり船繰りその他きついということもあり、北朝鮮がノドン、テポドンを相当数持っているということから、このイージス・アショアの導入を決めたわけでございますが、当面、イージス艦で対応をするということを続けていくことになります。その後の対応については、まず、NSCを経た上で対応を検討していきたいと思っております。

Q:今回配備を巡っては、山口県に説明をしてきて、山口県の地元の調査委員会も報告書を出していて、秋田県なんかは、ずさんな調査をしてかなり地元からの反発もあったと思うのですが、地元への説明という観点からはどのように説明していくのでしょうか。

A:両知事には、御報告をさせていただきました。また、お許しがいただければ、山口、秋田、私が赴いてお詫びと御説明をしたいと思っております。コロナの状況もありますので、そこは先方と相談の上になろうかと思います。

Q:山口県のむつみ演習場と秋田県の新屋演習場には、イージス・アショアは配備しないということでよろしいでしょうか。

A:先ほど申し上げましたように、防衛省としては配備のプロセスを停止する。国家安全保障会議にその旨報告をしたいと思っておりますが、コスト、期間を考えれば合理的ではないというふうに判断せざるを得ないと私は思っております。

Q:秋田ですと、今、業者に委託して再調査しているかと思うのですが、これは中止するということでよろしいでしょうか。

A:再調査については、もう最終段階にきておりましたので、これはやっていただくということになると思いますが、秋田も同様に配備のプロセスを停止するということになります。

Q:ブースターのソフトウェアの不具合とおっしゃっていましたが、もう少し具体的にどういう。

A:ソフトウェアで制限をかけて、むつみ演習場にブースターを落とす、ということを目指してまいりましたが、ハードウェアも改修しなければ、確実にむつみ演習場の中に落とせると言えないということになりました。やはり確実にむつみ演習場にブースターを落とすという説明をしてまいりましたので、それを実現するためにハードウェアを改修しなければ、確実に落とすということが言えないということが分かりましたので、その開発の費用あるいは期間を考えれば、残念ながら配備は合理的でないと言わざるを得ないというふうに判断をいたしました。

Q:そのソフトウェアの不具合と。

A:ソフトウェアの不具合ではありません。

Q:確実にむつみに落とせないということと、あと、プロセスを停止すると決められたのは、いつの時点でしょうか。

A:プロセスを停止すると決めたのは金曜日です。

Q:今回の決定について、総理や官房長官にはこれまでに。

A:総理には金曜日の夕方、御報告をいたしました。

Q:総理からは会見を開いても構わないという。

A:一応、こういう会見を開くということまで御了解をいただいております。

Q:確認ですが、計画自体を完全に取り下げるわけではないんですか。

A:NSCでも議論した案件でありますから、まず防衛省として配備のプロセスを停止し、NSCにその旨をしっかり報告をする。その上で今後の対応について、考えていきたいというふうに思っております。

Q:来年度の予算には、関連経費は計上しないということですか。

A:概算要求はあれでございますが、プロセスを停止するということでございますので、このままいけばそういうことになると思いますが。

Q:両県の知事には、どういう形で御説明されたのでしょうか。

A:とりあえず電話で両知事に御報告をいたしました。

Q:いつ頃でしょうか。

A:つい先ほどです。

Q:お二人からは、何という返答があったのでしょうか。

A:お二人のお話については、私から申し上げるのは差し控えたいと思います。

Q:これでイージス・アショアによるミサイル防衛システムというのは、一旦中断されると思うのですが、北朝鮮のミサイルが脅威というものは変わっていないわけで、当面、イージス艦で対応されるということなんですが、新たなミサイル防衛システムの構築ですとか、検討というのは着手されるのでしょうか。

A:当面はイージス艦でミサイル防衛に当たります。その体制は維持いたします。その後について、どうするかというのはしっかり検討しなければならないと思いますので、しっかり検討していきたいと思います。

Q:配備については、これまで調査であったりとか、多額の予算を使ってきていると思いますが、これが停止、撤回となるとそれ自体が無駄になってしまうというところもあると思うのですが、それについてはどのように思われますか。

A:導入を予定しておりましたSPY-7というレーダーは非常に高性能のレーダーですので、これはイージス・アショア以外にも様々使うことができますし、イージス・アショアのイージス・システムについては、これはもしイージス艦を増やすということになればそこに使うこともできますので、全てが無駄になるということではないと思います。また、導入を予定していたSM-3ブロックⅡAについては、これはイージス艦でも使うことができますので、これについては問題ないと思います。

Q:これまで調査費とか実際の物に関する経費を、これまでいくら支払いが済んでいて、実際のSM-3とかの製造の進捗状況はどうなってますでしょうか。

A:金額的には、1,800億ぐらいだと思います。これまで契約した金額で、1,787億円になっております。物の製造状況、その他については確認してみないと分かりません。

Q:この案件は、NSCも踏まえて閣議決定もなされたものですけれども、このような閣議決定に至るプロセスも間違っていたと思われますか。

A:導入するというのは北朝鮮がミサイルを頻繁に発射していた時期でもありますし、現実にノドン、テポドンといったミサイルを相当数北朝鮮が持っております。イージス・アショアを導入するという決定は間違っていたとは思いません。しかし、むつみ演習場内に確実にブースターを落とすということは、周辺に万が一の際に被害を及ぼさないということでございますから、このお約束は当然のことだと思いますし、我々としては、それをしっかり守っていかなければならないと思っております。ソフトウェアの改修でこれを達成できるというふうに認識をしてこれまでやってまいりましたが、ハードウェアの改修を合わせてやらなければ、確実にむつみ演習場に落とせるということにならないというのが判明をいたしまして、そのコスト、期間を考えると、この配備のプロセスを進めるのは合理的ではないと判断をせざるを得ませんでした。

Q:まだ議論をするとおっしゃっておりますけれども、ブースターの問題が解決すればイージス・アショアの配備というのは、まだ実現の可能性があるとお考えでしょうか。

A:このシステムは、イージス艦でも使うことができますから、このイージス・システムを配備するという可能性はあるのだろうと思います。

Q:それは地上にということでしょうか。

A:イージス・アショアの配備のプロセスは、一旦停止をいたします。

Q:実現の可能性は低いということをお考えでしょうか。

A:これはNSCでしっかり議論をして、結論を出さなければいけないものですから、私からこれ以上申し上げるのは、今の段階で差し控えたいと思います。

Q:今回のプロセス停止に至った判断の一つとして、秋田県での配備の実現性と言いますか、地元の理解がなかなか得られないということは判断材料にあったのでしょうか。

A:秋田県は再調査をしてゼロベースで判断をするということで、おそらく配備の予定地というのは選考できると思っておりましたが、今回、まだ秋田のことよりも、まず、むつみの方が確実に落下させることができないということが分かりましたので、むつみと新屋あるいは秋田で日本を守るという計画でございましたので、山口を断念する以上、秋田のプロセスも停止をせざるを得ないと考えます。

Q:ブースターをむつみの中に落とせない、落とすことができないということでしたら、山口県内で他の候補地を探すとか、そういう考えはありますか。

A:可能性として、100パーセント、ゼロかと言われるとどうか分かりませんが、おそらくソフトウェアの改修だけでは厳しいのではないかなというふうに思います。

Q:ハードウェアの改修というところは、費用と期間と御発言されましたが、具体的にどれくらいかかるとか、期間はどれくらい延びるとか、そういうところはありますでしょうか。

A:精査しているわけではありませんが、SM-3のブロックⅡAの場合に、日本側が1,100億、アメリカ側が同額かそれ以上、つまり合計して2,200億以上かかりました。あの時の開発の期間は12年でございましたので、おそらくその近辺になるのではないかと思いますが。

Q:ソフトウェアの改修が必要だと分かり始めたのはいつなんでしょうか。

A:ソフトウェアの改修で対応しようと考えていたわけです。

Q:それができないと判断したのは。

A:今年の前半です。

Q:今も前半です。

A:もう少し前ということです。

Q:数カ月前くらいということですか。

A:これは、米側とのやり取りもありますので、どこまでそれを申し上げていいか、これは先方の了解も必要なものですから。

Q:その判断をされたのは大臣だということでよろしいでしょうか。

A:金曜日に最終的に、これは停止せざるを得ないという判断をいたしました。

Q:配備については、専門家の会議を立ち上げて色んな検証をしてきた中で、やや唐突な印象もあるのですけれども、そういった意見や世論はあると思うのですが、そういったことに対して、どのように説明していかれるお考えでしょうか。

A:北朝鮮のミサイルの状況に鑑みて、いつまでもイージス艦だけに頼っていくわけにはいかないということが導入を決めた根本にありました。その状況は未だに変わっておりません。イージス・アショアがあれば、イージス艦が常に洋上でという必要もなくなりますので、そういう負担も軽減されるということになったと思います。しかし、撃ったミサイルのブースター、それから2段目以降をどうするか、というのは地元にも大きな影響があることですから、地元の皆様には確実に演習場の中に落としますという説明を申し上げてまいりましたし、それは必要なことだと思っております。残念ながらソフトウェアで、それが確実に落とせますと言えないということでございますので、ハードウェアの改修のコストと時間を考えれば、合理的な判断をここでせざるを得ないと思っております。

Q:コロナウイルスの関係で税収が減っているというところもあると思いますが、コロナの影響はありますでしょうか。

A:全くありません。

Q:先週金曜日に総理に説明されたとき、総理から何と言われたのでしょうか。

A:御説明をして了解をいただきました。

Q:本来アショアができれば、東シナ海をはじめ非常に情勢が厳しい中で、シーレーン防衛にまわすことができたイージス艦がまわらなくなると思いますが、その分シーレーン防衛や南西諸島防衛というか、代わりに何か手当てする手段をお考えでしょうか。

A:そうしたことも、しっかり対応していかないといけない状況に変わりはありません。ただ、イージス・アショアの配備を白紙、プロセスを停止すると、当面、イージス艦でミサイル防衛をやらざるを得ないので、その上で、その後の対応をどうするかというのは防衛省として、しっかりお示しをしていかなければいけないと思います。

Q:今日の段階でそれをお示しされていないことについて、責任を果たしているとお考えでしょうか。

A:まず、イージス・アショアのプロセスについて、国家安全保障会議にきちんと報告する。それを受けて、防衛省として検討したいと思います。検討をはじめていないというわけではありませんが、プロセスとしては、まず、イージス・アショアの配備について国家安全保障会議に報告し、当然閣議にも諮っていく案件になろうかと思います。同時に防衛省として、しっかりその後の対応について検討してまいります。

Q:重大な防衛政策について、大臣の一存で御判断なさったと思いますが、ここに至るプロセスをひっくり返すということについて、これまで防衛省が説明してきたこともひっくり返ることになると思いますが、これによって防衛省への信頼とか、自衛隊への信頼というものは失われるとお考えになりますか。

A:ソフトウェアでできると認識していましたが、残念ながらハードウェアの改修まで必要だということになりました。そこについて、見通しが甘かったと言われればそうかもしれませんが、今、防衛省がやらなければならないのは、無駄に結論を先送りするのではなくて、決めなければいけないものを決めて次の手を打つということでありますので、そこはやれる限りしっかりやってまいりたいと思います。

Q:秋田と山口両県を訪れてということでしたが、そのスケジュール感的には。

A:それは先方と御相談した上で、ということになります。

Q:なるべく早くという。

A:私からは、なるべく早くお詫びにまいりたいということは知事に申し上げました。コロナの状況もありますし、色々あると思いますので。

以上