防衛大臣記者会見

日時
令和2年3月13日(金)09:35~10:02
場所
防衛記者会会見室
備考
河野防衛大臣閣議後会見

1 発表事項

 今朝2時18分頃、石川県能登地方を震源とする最大震度5強の地震が発生しました。自衛隊は自主派遣による災害派遣により、航空機計6機が揺れの大きかった地域の上空から情報収集を行ったほか、陸上自衛隊金沢駐屯地の初動対処部隊約20名が現地に向かい、地上からの情報収集を行いました。この他、石川県庁、穴水町役場及び富山県庁に連絡員を派遣し、自治体と連携して、情報収集を実施しているところです。現時点で、特段の大きな被害は確認されておりません。引き続き、情報収集に努めていきたいと思います。新型コロナウイルスの感染拡大防止のための災害派遣につきまして、クルーズ船及び一時宿泊施設での自衛隊の活動は既に終了しております。これまでに経過観察が終了した隊員については、全て陰性を確認しております。自衛隊病院につきまして、本日13日をもって、通常の診療態勢に移行するほか、明後日15日(日)には、全隊員のPCR検査及び経過観察が終了する予定です。これらの状況を踏まえまして、来週の月曜日16日に、新型コロナウイルス感染拡大防止のための災害派遣及び予備自衛官の活動を終結させる大臣命令を発出する予定です。今後、引き続き、感染症患者の受け入れを自衛隊病院で行うとともに、自治体のみで対応が困難な状況が発生した場合には、支援ニーズを踏まえ、連携して対応してまいりたいと思っております。自衛隊の保有するマスク100万枚の医療機関への拠出については、先般お知らせをいたしましたが、3月11日、12日の2日間で、厚労省が指定した場所への発送手続きを終了いたしました。拠出の内訳につきましては、陸上自衛隊において、関東補給処用賀支処など4カ所の補給処から合計48万枚、海上自衛隊において、舞鶴造修補給所など3カ所の補給処から約5万枚、航空自衛隊については、自衛隊那覇病院や各地の衛生隊など合計22カ所から48万枚を拠出いたしました。厚労省に集積されたものは、順次必要な医療機関等に配布されると聞いております。中東地域における日本関係船舶の安全確保のための情報収集活動について、国民の皆様に対する説明責任の明確化のため、閣議決定を行い、あるいは国会の場でも説明をしてきたところでございますが、海賊対処行動の場合と同様に今回の情報収集活動についても、月1回その活動状況を公表することといたします。本日、1月及び2月の活動状況を公表いたします。特段、異常な事象は起きておりません。最後、明日、明後日にかけて、航空自衛隊大滝根山分屯基地、三沢基地及び防衛装備庁下北試験場を視察いたしまして、所在部隊の状況、試験場の活用状況を確認する予定でございます。厳しい環境の中で、勤務している隊員を激励するとともに、活動状況をしっかりと見てまいりたいと思っております。

2 質疑応答

Q:災害派遣について、来週月曜日に終結させるということですが、一連の活動についてどのように受けて止めているのかと、大臣が考える今後の課題などがあれば教えてください。

A:お陰様で、現時点で、自衛隊の活動に当たった自衛隊員の中で、感染者は出ておりません。防護基準をしっかり定めて、自衛隊として、組織でそれをしっかり対応できたということ、また、「はくおう」をはじめ、2隻の船で隊員の宿泊、あるいは食事の支援等、かなりロジについてもきちんとサポートできたことが良かったのではないかと思っております。これから、こうした感染症というのが広まることも予想されますので、今回の教訓をしっかり見直して、派遣が終わった段階でしっかりレビューをやった上で、今後の対応に努めていきたいと思っております。

Q:自衛隊のマスクの放出について、全国各地で100万枚配布されたということで、政府の自粛要請が延長されるなど、事態が長期化する懸念もありますが、自衛隊自身が本来活動で使うマスクが足りなくなる可能性というのはあるのでしょうか。3週間以内に全量を返納させるという前提だったと思うのですが、この担保は取れているのでしょうか。

A:厚労省からは、27日に全量を返送するという約束をいただいております。万が一、その間に災害派遣等が発生した場合には、まだ55万枚残っておりますので、それを活用していきたいと思っております。

Q:災害派遣終了の関連で、今回自衛隊からは一人も感染者が出なかったと、大臣は胸を張っておられると思うのですが、一方で、政府内全体を見れば、厚労省や内閣官房等で感染者が出ています。自衛隊の成功体験を、今回、他の省庁に活かせなかったことについてはどのようにお考えでしょうか。

A:自衛隊としても、こうしたクルーズ船の中で感染者が多く発生したというケースに当たったのは初めてのことですので、自衛隊の成功体験を他へ活かせたかどうか、というよりは、自衛隊の中からまず感染者を出さないということが、我々としては一番重要視しなくてはいけないことであり、感染者がおそらくゼロのまま派遣終了できると思いますので、我々もきっちりとレビューをいたしますが、厚労省その他政府機関においても、この問題について振り返られると思いますので、そこで、次に繋げていきたいと思います。

Q:派遣が終わった段階でのレビューということなのですが、マニュアル化ですとか、報告書をまとめるとか、そういったものはどのように想定されていますでしょうか。

A:そこは、衛生官、統幕を中心にレビューはやってもらうことになるかと思いますので、どういう形でまとめるのかは、そこはお任せをしたいと思います。ただ、きっちりと今回の教訓を次に伝える、あるいは政府部内に横展開するというのが大事なことと思っております。

Q:政府全体の話になるかと思うのですが、夏のオリンピック・パラリンピックについて、JOC・IOCから延期論、また、トランプ大統領が東京は延期した方が良いということを言及するなど、延期論が広まっていますが、防衛省も自衛隊を協力に出したり等ですとか、そういうことで政府として貢献するかと思うのですが、この延期論についてはどのようにお考えになっていらっしゃいますか。

A:自衛隊はもう既に実施本部を立ち上げて、自衛隊として自衛隊体育学校のアスリートでオリンピックに内定している選手もいます。また、様々な競技の運営に当たる、もう一つは、オリンピックそのものの安全を確保する、3つの役割がございますので、自衛隊としては実施本部でその3つがしっかりできるようにやってまいりたいと思っております。

Q:その延期論が取りざたされているのは。

A:我々にとっては何の関係もないと思っております。

Q:新型コロナの関連で、先ほど大臣は、これから感染症もまた広がることも予想される、というようなお話をされておりましたが、この新型コロナに限らず、感染症対策として、自衛隊が国内向けに自衛隊病院の機能強化であったり、専門の医官の育成など色々考えられていると思いますが、今後どういうふうな対応が必要とお考えなのかということが1点と、海外向けに、アフリカ諸国などで感染症が発生した場合、能力構築支援なども必要と、これまで防衛白書などで指摘されていますが、どういうふうな対応を防衛省・自衛隊としてとっていくとお考えでしょうか。

A:自衛隊として、MERS以降、自衛隊の医官にきちんと感染症について、トレーニングするコースを設けました。また、防衛医大を中心に感染症に関する研究も始める、中央病院、防衛医大付属病院を感染症第一種感染症指定病院にする、そういうことをやってまいりました。そういう意味で感染症に対する対処能力というのを自衛隊としても、MERS以降、身に付けてきたと言ってもいいでのではないかと思います。もちろん、対特殊武器衛生隊のようなそういう組織もありますし、そこのメンバーが「ダイヤモンド・プリンセス号」の中で、タイベックスーツの脱ぎ方、着方、その他こういう場合にどう対応するかという知識をこと細かく伝えたということも、役に立ったと思いますので、今後もそういったことはしっかりとやっていく必要があると思います。能力構築支援については、これまで保健衛生の分野でいくつかやってまいりましたが、感染症に特化した支援というのはこれまでやってきていないと思います。そこはまた、先方のニーズ等を含め、自衛隊がやるのか、どうするのか、外務省、厚労省とも相談の上、ニーズがあって要請があれば、そこは考えていこうと思います。

Q:在沖縄米軍の訓練の件ですが、日米合意で取り決めた実弾訓練日数の上限規定35日間、これが今年度大分県と宮城県で1日ずつ予定を超過して、37日間になったのですが、在沖縄米軍は弊社の取材に対して、規定では、小火器射撃訓練は含まれないという認識を示しました。一方、防衛省としては、小火器訓練も含まれるという認識を示されていますが、この認識の相違について、大臣の見解及び大分県からは上限日数を超えないように、明確にと、申し出をしておりますが、それに対する米軍の御対応についてお聞かせください。

A:防衛省の認識は今おっしゃったとおりでございます。米軍からはこの点について直接何も聞いておりません。今年度は、この35日、天候その他で予備日を設けておりますので、その範囲だろうと考えておりますが、いずれにいたしましても、今回問題がございましたので、日米合同委員会でしっかり取り上げて、議論してまいりたいと思います。

Q:現状の議論の進捗具合というのは。

A:やり取りについては、公にするのは途中経過は差し控えたいと思います。

Q:新型コロナウイルスに関連して、米国国防省が、米兵及び職員、家族に対して、中国やイタリアなど、渡航を60日間制限すると、日本に対しても60日間出張を取り止めるということですが、これに対して、影響その他訓練への影響はいかがでしょうか。

A:正確に言いますと、日本に対しての渡航延期はありません。60日の出張をやめるというのは、レベル3の国で、日本を含めレベル3以外はレベル2になっていると思いますが、レベル2に関しては、政府関係者本人の出張は認めるが、家族の帯同は認めないという措置が取られている。それから、帰った時に、14日間の停留はあるのではないかと思います。細部は事務方に聞いていただく必要があるかと思います。現時点で何か影響があるかというと電話会議その他がありますので、影響がございません。また、共同演習、共同訓練についても、今のところ、日米間で何か影響があるかというと今のところないということですが、どれくらいの期間、この先どうなるか分かりませんので、状況が早期に終結しなければ、当然何かしかの対応を考える必要に迫られることにはなろうかと思いますが、今の時点で何かということはございませんが、注視していきたいと思います。

Q:感染症対策ですが、大臣は、現在の陸上自衛隊の態勢で、大規模なパンデミックに対する対処能力は十分とお考えでしょうか。

A:パンデミックだから、全部自衛隊がやるということにはならないと思いますが、自治体が対応できない状況、例えば、離島からの患者の搬送とか、そういうものについてはいつ起きてもおかしくないと思っております。そういう事態が起きたときに対応ができるように、準備はしてもらっております。また、自衛隊の病院については、今後も患者の受入れをしっかりやっていくということで、今想定されているものについての用意は整っていると思っておりますが、こういう感染症ですので、これからどういう事態になるのかというのは、しっかり見極めながら必要に応じてしっかり態勢がとれるように努力していきたいと思います。

Q:辺野古の埋立ての進捗状況について伺います。現在、土砂投入をしている区域②-1と、区域②、この2つの2月末現在の土砂投入の進捗状況を教えてください。

A:②-1、小さい方は9割、②の方は確か2割であったと思います。②-1の方は、一応、陸地化はできていて、後は高さの嵩上げがまだ残っているという状況だったと思います。詳細が必要であれば、事務方から後で説明させます。

Q:先日大臣が参議院の外務防衛委員会で、山本副大臣のホテル代の公金支出に関連して、在京当番に対応できるように、政務3役が議員宿舎を契約するかどうかについてルールを作っていきたい、と答弁されておりましたが、ルール作りというのは、内規を作るのか、また大臣指示とかにとどめるのか、具体的にどういうイメージを持たれておりますか。

A:どういう形式にするのかは、防衛省内で相談をしたいと思いますが、何らかのきちんとしたものがあった方が良いのかなと今のところ思っております。基本的には議員宿舎がありますから、議員の場合は、まず、議員宿舎に入ること。それから、23区内の議員は宿舎に入れないのが原則ですが、こういう危機管理の対応ですから、これは院の方にお願いをして、そういう場合は、例外的に副大臣、政務官、あるいは大臣の際、入居を認めていただけるようなお願いをした方が良いと思っております。また、住居がいっぱいであることも想定されますので、そういうときにどうするのかというのは考えていかなければいけないと思いますが、基本的にそんな方向できちんとしたルールを決める方が良いなと思っております。

Q:イメージとしては、23区内でも離れたところの議員に入ってもらうのか、千代田区とか近くの選挙区選出でも必ず議員宿舎に入ってもらうのか、どういうイメージでしょうか。

A:近場の議員は、近場から来ればいいのですから、いちいち入居する必要はないのかなと思います。私が外務大臣だったときに、辻政務官がかなり在京当番をやってくれましたが、辻さんは中央区が選挙区だったので、自宅から来る分にはそんなに時間がかかっておりませんでした。23区といっても、結構な面積がありますから、必要ならば入るし、必要なければ入る必要はないので、そこは一律に決める必要はないと思います。

Q:1月31日に命令を出して、派遣された当初は持病を持った高齢の乗客が多くて、外国人の船員とのコミュニケーションが取りづらいから医官を派遣しようとか、ビュッフェ形式の食事を個室に配りにやってくるクルーだけだと足りないから、一般隊員を派遣した方が良いのではないかとか、生活支援がメインだったかと思いますが、船内で感染が広がっているのが分かってきて、感染症対策に移行していったかと思うのですが、シフトしたタイミングとか大臣が思いのほか船内で広がっているな、これはやばいな、と思ったタイミングはありますでしょうか。

A:医療支援も結構やってくれという話で、例えばチャーター便に看護官を乗せてくれという要請もありましたので、かなり医療支援もやらざるを得ないというのと、自衛隊病院にかなりの人を受入れいたしましたので、医療支援と生活支援の2本立てという感覚でおりました。自衛隊の病院、特に中央病院には、外国の方をかなり大勢受入れいたしましたので、例えば通訳の予備自衛官、あるいは中央病院で受け入れると看護師や医者が他に行ったり来たりができなくなりますから、医師、看護師の予備自衛官を招集して、そこをしっかりやってもらった、ということもありましたので、予備自衛官の招集はどちらかというと、医療支援の関係が多くなったのかなと思います。自衛隊の中で症状がないまま来ましたので、割と防護体制はしっかりできているなと思いましたが、何とかさんがダイヤモンド・プリンセス号に乗られて「やばい」という動画を出されたときに、彼が言っていることがあっているかどうかは別として、そういう話があるならばもう一段上げた方が良いのかなということで、もう一段防護体制を見直そうという話をしました。危機感を感じたのはそのときが一番強かったかなと思いましたが、結果として、それ以前もしっかりとできていたということで、感染者ゼロで終われば当然良いことだなと思っております。

Q:沖縄県金武町が、米軍キャンプ・ハンセンの周辺の河川から高濃度のPFOSが検出されたということを明らかにしております。これを受けた防衛省の対応と、これまでに検出されている普天間や嘉手納周辺とはまた違う場所で、かつ、米軍基地の周辺であることは共通しているのですが、この点から基地由来のものである可能性が強いと思うのですが、この点はどうとらえていますでしょうか。

A:エスパー長官の下のタスクフォースの報告が、もう近々に出てくるのであろうと思いますので、それを受けて、どう対応するかを米軍とも相談をしっかりしたいと思っております。我々自衛隊としては、このPFOSに関して、自衛隊としてできることはやってきておりますので、自衛隊としてはしっかりやってまいりたいと思いますし、沖縄県から要請の立ち入りのことについても米軍にこれまでも伝えてきておりますので、報告書を見た上で米軍と調整をしていきたいと思います。

Q:新型コロナの呼称、名称についてなのですが、アメリカ政府が高官だったり、日本の国会議員の間で武漢ウイルスとか武漢肺炎という言い方を使う方がいらっしゃるのですが、今、大臣は政府の対策本部会議に出ていると思うのですが、政府内でそういった呼称を使う必要性だとか、使うという話はあるのでしょうか。

A:日本では新型コロナウイルス、あるいは国際的には新型コロナウイルス感染症COVID19でしたか、そう呼ぼうということで、定着していると思いますので、それでよろしいかと思います。

Q:その発生の経緯だったり、あと今後の検証のためには地名を入れるべきだという考え方のようで、実際に通信社の報道では、中国の報道官ですね、米軍が武漢に持ち込んだのではないかというような話もありまして、それで地名を入れる必要があるという話になっていると思うんですけれども、大臣は地名を入れる必要があるというふうには考えていない。

A:それは別に私がとやかく言う話ではなくて、WHOや厚労省で議論をしていただければと思います。自衛隊としてはその結論に従います。

Q:政府内では麻生大臣が国会とか閣僚会見とかで武漢ウイルスという言い方をしているのですけども、財務省に聞いたところ、財務省は武漢ウイルスという言葉を使う予定はないと使っていないということで、もう一人政府内だと山本副大臣がツイッターとかで、ウーハンウイルス対策への災害派遣とそういう言葉を使っているのですけれども、自衛隊・防衛省ではそういう言葉を使う予定はあるのか。

A:自衛隊・防衛省はWHO、厚労省に準拠するということであります。

Q:WHOが地名を入れるというのは、レッテル貼りに繋がるということで入れないということらしいですけれども、その考え方に従っているということですか。

A:別に自衛隊でウイルスや感染症名を議論する必要はないと思いますので、決まっていることを淡々と使おうと思います。

以上